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ダンピールのハンターと闇の城
過去にさよならを
しおりを挟む夢を見た、父と母と暮らしていた平和な頃の夢を。
誰かが来ている、顔がよく見えない、誰だ。
ディストは目を覚ます、いつもの天井が目に入った。
あの事件以来、仕事漬けだったディストの日常はクロウに完全に管理されるようになった。
結果として同棲することになったのだ。
仕事を終えると、そのまま抱かれる回数が異常に増えたというのが昔との違いだ。
ほぼ毎日抱かれているので、基本今まで日中も仕事をこなしていたのができなくなっていた。
ダンピールのディストは体力に普通の人間等とは比べ物にならない位あると自負しており、実際他のハンター達よりも体力はある方である。
しかし、クロウの文字通り底なしの体力の前には霞んでしまう。
本人は無自覚だが、快楽に非常に弱い。
普段はそれに無意識にロックをかけているが、クロウの前ではそのロックが勝手に解除されている状態になっているのを本人は気づいていない。
気づいているのはクロウのみ。
クロウはそれでいいと思っているので伝えることなく一人秘密にしてそれを喜んでいる。
ただ、たまにそのロックを何らかの方法で破壊して犯す魔族が居たりするので、クロウは気が気でなかったりするが、それにディストは気づいていない。
「ハニーおはよう」
「……」
クロウがディストの顔を覗き込む。
「今は何時だ?」
「夜の十時だ。もう情報屋の方は店じまいだ」
ディストはベッドから起き上がり、服を着替える。
クロウはそれをソファーに座りながら眺めていた。
「仕事は何かあるのか?」
「んー今日はスケルトン系の魔族退治だってよ、楽なのが一番」
「……そうか」
ディストはクロウから武器を受け取る。
「んじゃ、そろそろ行こうぜ」
「ああ」
クロウは空間に穴を開けた、その穴をディストとともにくぐると穴を消した。
目の前は墓場だった。
「墓こわさねぇようにしないとな、修復がめんどい」
「そうか」
地面から骨の手が生えてきた。
気配に反応したのだろう。
がしゃがしゃと音を立てながら骸骨のような魔物が無数に姿を現した。
「よっしゃやるか」
「わかった」
ディストとクロウは背中合わせに魔物を討伐し始めた。
近くの魔物は蹴り倒して、足で頭蓋骨を粉々に砕いて塵に返し、遠くの魔物は墓に当たらないように気を付けながら銃で撃ち頭蓋骨を破壊して塵に返した。
「……これで終わりか?」
「見たいだな、さっさと浄化するか」
クロウは剣を手にして、地面に突き立て何かを呟く。
すると魔法陣のような陣が広がり、周囲が光で包まれる。
光が亡くなると、クロウは目を開ける。
「よしこれで問題ない、マリーに報告するか」
「ああ」
クロウは空間に穴を開けようとした途端浄化の術を覆うように、少し離れたところから瘴気が漂ってきた。
「……クロウ」
「あー厄介ごと発生かー……報告がめんどいけど行くか」
瘴気が漂ってくる場所へ向かうとそこには死体の山ができていた。
死体の山を肉塊の魔物が貪り瘴気を吐き出していた。
「あー……なるほど、ここは――」
「クロウ」
「はいよ」
バキンと鈍い音がした。
クロウに襲い掛かった仮面をかぶった男が振りかぶった鉈が折れた音だった。
「そういや、依頼書に殺人鬼が住む村って書いてたなぁ、うるさい旅行客を中心に殺して回ってるって」
クロウは男の手首をつかみぼきりと、へし折ると、腹部を加減して蹴り飛ばした。
男は吹っ飛び、地面に倒れてぴくぴくと痙攣していた。
「依頼書にも載ってたし突き出すか」
「それがいい」
「じゃ、そこで大人しくしてな」
クロウは男に拘束の術をかけると、肉塊の魔族を剣で切りつけた。
魔物は耳障りな叫び声をあげてグネグネと悶えたが、クロウが手を異形化させ、焔を纏わせると、その手で掴んで魔物の顔らしき部分と胴体をちぎった。
ねじ切られ、ぐねぐねと蠢きコアを露出する魔物のコアをディストが銃を何発か撃ち込んで破壊した。
コアを破壊された魔物はどろどろと溶け、跡形もなく消え去った。
「さて、んじゃ行くか」
クロウは男を引きずりながら空間に穴を開けて、ディストと共に男を連れてマリーの仲介店に移動した。
仲介店で、マリーが男を突き出すということで了承し、また想定外の魔物退治があった為、追加報酬をもらうという事で話は収まり、クロウとディストは帰宅した。
ディストは仕事を受けたそうにしていたが、クロウが「緊急性があるのがない」との主張を曲げず、ディストを引きずるようにして家に帰宅したのだ。
「そんなに不満そうな顔するなよ」
「……」
ディストが壁に背持たれていると、ソファーに座っていたクロウは立ち上がり、ディストに近寄ると足払いして一瞬宙に浮かせ、その一瞬で抱きかかえた。
抱きかかえたディストをクロウはベッドに運び、落とした。
ベッドに落とされたディストはクロウを睨みつけるが、首についた血を見て目を赤く染めた。
クロウはベッドに座ると、喉元をさらす。
ディストはクロウの首に手を回し、喉元に牙を立てた。
吸血行為だ。
今もまだディストがあまりやりたくない行為だが、クロウがうまく誘導し血を欲するようにしている為血をほぼ毎日一回は飲んでいる。
クロウの血は非常に蠱惑的な血なのだ、吸血種にとってもディストにとっても。
吸血種は処女や童貞のような汚れてない血を好むといわれているが、実際のところは健康的な人間の血ならなんでもいいのだ。
クロウは人間などよりも遥か上の存在の血を引いている、その血は栄養価も高く、またいくら飲んでも人間と違って死なないというところも特筆すべき点だった。
ハンターの仕事上、ハンター業を行っていないダンピールよりも血を欲し、ほぼ血以外摂取ができないのもあって血を普通以上に必要としている。
だから、いまこのように血を飲まされているのだ。
血を飲み終わったディストの頭をクロウは撫で、その後自分の喉元の吸血痕を撫でて消した。
「食事も終わったし、今度は俺を満足させてくれないか」
「……いつもそれではないか……」
「いいだろう?」
血を吸って欲情しているディストは顔を背けた。
「好きにするといい……」
「よっしゃ」
クロウは嬉々としてディストの服を脱がせ始めた。
服を脱がせ終えると、クロウはローションを取り出して指を濡らし、ディストの後孔に指を入れる。
粘質的な音がなり、ディストの後孔がほぐされる。
ぐぷ……と音を立てて、指が抜かれると、何を思ったかクロウは何か小さな穴が開いている球状物体が連なったディルドのようなものを取り出した。
「ちょっと色々試したいからいいかー?」
嬉々として言う、クロウにディストは若干意識が飛びそうになっていた。
正直なところ、ディストは道具を使われるのが苦手だった。
異物感が酷いのだ。
滅多に使わない触手を加工して作った道具なら状況によっては感じなくはないが、人間が作ったような魔力も何もこもってない道具は使うだけで苦痛を感じるのだ。
自慰もしない為、その為の道具も使わないので、より異物感が酷いのだ。
ぐっと押し込まれ、腹に異物が入ってくる感覚をディストは感じた。
動かされるが、腸内は異物を拒否するような動きを無意識に行っており、ディストの体も快感を感じていなかった。
「まぁ、このままだと気持ちよくないよな、ハニーの場合」
クロウはそう言ってから何かスイッチを入れると、腸内にどろりとした液体が満ちてくる感触をディストは感じた。
その瞬間から、腹のナカの動きが変わった。
異物を拒否するのではなく、快感を得ようとする動きになったのだ。
「っあ?!」
「魔女制作の特注品、ダンピール用の特注の催淫液を出すアナルバイブ。いやー店探すの大変だったんだぜ?」
クロウは楽し気にそう言って、じゅぷじゅぷと粘質な音を立てながら動かしていく。
薬の所為で、否応なく快感を拾うようになり、絶頂しそうになるが、ぐっとこらえる。
「我慢しなくていいんだぜ?」
手がぬるぬるになったクロウに、勃ち上がりかけた自身の雄を扱かれ、ディストは口を押えた。
みっともない声が上がりそうで嫌だったのだ。
クロウはその手をはがすような事はせず、ただディストの男根を扱き、玩具を動かしてディストの感じる箇所を刺激し続けた。
「っ~~!!」
ディストは口を覆ったまま、体を震えさせて、射精した。
白く濁った液体がクロウの手を汚す。
「一回な、じゃあ次の道具」
クロウはアナルバイブを抜いて、また道具を漁りだした。
「っ……まだ、やるのか?」
「今日は道具使ってから抱きたい気分なんだよ」
玉が一つずつ紐のようなもので繋がっている物体を取り出した。
これも穴が開いている。
「……おい、まさかこれも……」
「お、察しがいいな。さっきの同様玉の穴からダンピール用の催淫液を出すんだよ」
クロウは一つずつゆっくりと後孔に押し込んでいった。
玉が入る度、先ほどの液体ので所為ですっかり出来上がった腸壁は悦んで異物を締め付け、快感を得ようと勝手に動き始める。
ディストは口を手で閉ざしたまま、体をわずかに震わせる。
全ての玉が入ると、とろとろとディストの男根から白く濁った液体が流れだす。
「じゃあ、排出してみせてくれよ。ゆっくりでいいから」
排出する行為をしたことがないディストにクロウはそう言った。
ディストは困惑しながら、よくわからないまま腹に力を入れるが、玉を締め付けて勝手に体は快感を得てしまう。
うまく玉を排出できないのを続けて、荒い呼吸を繰り返しているディストを見て、クロウはゆっくりと紐を引っ張り、手助けを始めた。
ディストはずるずると疑似的な排出をさせられている感触が、耐えがたかった。
一つ、また一つと玉が排出される。
口を手で押さえてなければ声が上がりそうだった。
全ての玉が排出されると、ディストは荒い息を何度もした。
ディストの後孔が開きっぱなしになり、とろとろと液体をこぼしていた。
「本当はもう少し玩具で遊びたかったんだけど……ハニーの体の方が持たなそうだな、じゃあ俺ので最後だ」
クロウはそういうと、昂った自身の雄を取り出して、ディストの後孔に挿れた。
玩具で慣らされたソコは、ひどく柔らかく、それでいて絡みつくように締め付けてきた。
挿入の感触で、発情しきったディストは達したらしく、締め付け、男根からどぷりと精液をこぼしていた。
ばちゅんばちゅんと突き、押し倒し、口を覆っている手を引きはがして深くキスをする。
深い口づけに、入ってくる舌に、ディストは戸惑っているようだった。
だからクロウは好きなように口の中を味わった。
血の味がわずかにするが気にならない程、ディストの口が甘く感じられた。
クロウにとって、ディストは甘い菓子のようなものでもあった。
普段甘味をあまり食べないクロウだが、甘味が嫌いなわけではなかった、一度食べると食べ続けてしまうのだ、飽きることもなくずっと。
幼い頃、母親にその性分をしつけられてから、滅多に食べないようにしていた。
だが、ディストの場合はその我慢が聞かなかった。
いつまでも体を抱き続けていた、愛でていたいという感情が強くなってしまい、結果ディストの意識が飛ぶまで抱いてしまうことがほとんどだ。
また飽きることがない為、毎日のように抱いてしまう。
ディストが断ったり嫌がれば我慢がきくのだが、ディストがそこまで嫌がる気配を見せない為抱き続けてしまう。
ディストと会うまではこういう状態になったことは無かった、ディストの存在がそれほどクロウに大きいものだった。
ただ、抱いてる時、たまに良心が自分を責めてくることがあった。
何故なら、クロウはディストの幼少時を知っている。
その時には既に成人という次元は超えていて、相棒を亡くしてハンター業から半ば足を洗う形で、一人で情報屋として活動していた頃にディストと会った事がある。
ディストの両親とは古い付き合いともいえる。
その為か、年齢はともかく子ども時代を知っている位の付き合いをしているディストをこんな風に扱ってお前恥ずかしくないのかと鬱陶しい声がたまに聞こえてくる。
それを無視してクロウはディストを抱いている。
年齢など関係ない種族同士なのだから気にする必要なんてない、それ言ったら、ディストの両親と、自分の両親、片方人間なのだからこの二組もダメじゃないか、第一抱くようになったのはディストが成人してからだとか言い訳もしながらディストを抱く。
ちょうどこの時、玩具でいじめすぎたのと、発情しすぎて体が疲弊しきっている蕩けた表情のディストを見た時、その責めが頭をよぎった。
抱きながら少し考えて、一度熱を吐き出すとずるりと、自身の男根を抜いた。
「……」
発情の熱に浮かされているディストに頬に口づけを落としながら、優しく頭を撫で始めた。
ぼんやりとしているディストはクロウの腕の中でされるがままだった。
「今日はもうお終いだ、休め」
クロウがディストの長い髪を撫でながら言うと、ディストは静かに目を閉じ眠りに落ちた。
クロウは眠ったディストをベッドの上に寝かせると、唇にそっとキスをして自分も横になった。
何故久しぶりにこの考えが浮かんだのは不明だが、クロウは亡くなったディストの両親のことを思い出していた。
「……そういや、俺あの二人の墓参り全然いってねぇなぁ……ディストもだけどな……」
仇を討つまであの場所には戻らないと決めた幼いころのディストの発言を思い出した。
その重荷はもう取れたのだ、行ってもいいだろう。
明日仕事を休みにして墓参りに行こう、そう思って目を閉じた。
翌朝、ディストが目を覚ますと、クロウが居なかった。
とりあえず、昨日の汚れを落とそうとバスルームに向かい、シャワーを浴びる。
どろりと脚を伝って昨日の液体が漏れてきた。
ディストはそれをどうすればいいのか分からなかったため、とりあえず流れてきた液体を流して終わらせた。
汚れを落とした後、置いてあるタオルで体を拭き、バスルームを後にする。
そして服を着替えて、これからどうしようか悩んでいると、クロウが花束を抱えて寝室にやってきた。
「お、起きてたか」
「……その花束どうしたんだ? もらったのか?」
花束を買うとは到底考えていなかったが、帰ってきた答えは予想外のものだった。
「いや、買ったんだよ」
「……何のために?」
少し心がざわついたが、それを表に出さず静かに尋ねる。
「お前の両親の墓参りだよ」
「……何だと?」
「ほら、お前もあの日から全然行ってないだろう、もう仇討ちは終わったんだし行くぞ!」
戸惑うディストの腕をつかみ、クロウは空間に穴を開けて移動した。
移動した先はうっそうと茂る森の中だった。
クロウはディストの腕をつかみ道には見えぬ道を歩いていく。
するとわずかに日が差す場所があり、そこに花畑があった。
その中央に何か黒い物体があった。
名前が書かれていないその黒い墓石の前に来るとクロウは持っていた墓をそっと置いた。
「手入れされてるな、マリーが度々来てたんだな」
「……」
墓の様子を見ているクロウから少し離れてディストはそれを見ている。
「……本当にこの下にいるのか?」
「ん? ……そうだな、亡骸と塵は全部この下に埋めたな、だがもう残ってないだろうな」
「……そうか」
ディストはどこか暗い表情をしていた。
クロウはそれを見て立ち上がり、わしゃわしゃとディストの頭を撫でた。
「……百年、あっという間だ。人間には長いが俺たちには短い時間だ」
「……ここに来た途端、これからどうするべきかと急に不安になった」
ディストは遠くを見るような目で呟く。
「……本当どうするべきなのだろうな……」
そう言うディストの頭をもう一度撫でる。
「……まぁ、見つかるまで俺のところいればいい、今の家は俺の家なんだからな」
「……そうか、そうだな」
「ま、それまでは今まで通りハンターやってればいいだろ。さすがに俺の情報屋を手伝えとは言えねぇよ、ハニーが出てくると別の問題がでちまう」
「?」
クロウの言っている言葉の意味を理解してないのかディストは首をかしげている。
美しすぎるディストを表に出すと、客が黙っていないと予測できたのだ。
あの手この手で引き抜こうとするか、自分のものにしようと企むに違いないと予測できた。
もちろん、そういう客には痛い目に会って貰う気満々だが。
理解できてないディストの頭を撫でてから、クロウは墓に祈りを捧げた。
永遠の眠りについているディストの両親にたいして。
ディストも少しそれを眺めてから、クロウの隣にしゃがみ祈りを捧げた。
しばらく祈りを捧げてから、立ち上がった。
「さぁ、帰るか」
「……」
ディストとクロウはそう言って立ち上がり、クロウは少し歩きはじめた。
ディストは少し止まって振り返って墓を見た。
「……父さん、母さん……また来るから……」
そう小声で言うと、クロウの後を追った。
本当の意味で、過去を振り切れたのかディストにはよくわからなかった。
ただ、今まで通り、歩みを止めずに行こうと亡き両親に対して誓った――
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