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38、国を守る方法
しおりを挟む「陛下、私達を挑発しても無駄です。全て、話していただけませんか?」
諦めたように、ぽつりぽつりとガルコス王は話し出した。
「ロレインがフィルエッタに行った後、フィルエッタとの争いを終わらせようと思っていたんだ……だが、ベンジャミンが病に倒れてしまった」
病だということを公表しないまま、長い闘病の末、ベンジャミン様は去年亡くなられたそうだ。ガルコス王には、ベンジャミン様とロレイン様以外に子が出来なかった。王太子が亡くなったとなれば、王家の血を引く誰かを次の王太子にする必要があった。
「誰を選んでも、フィルエッタと友好関係を結ぶ者はいない。たとえ私が今、友好関係を結んだとしても、私が死ねばまた争いになるだろう。国民を守る為には、フィルエッタの属国になることが一番だと考えた」
長年続いた両国の争いは、多くの人々が犠牲になって来た。友好関係という建前で仲直りするには、時が経ち過ぎたのかもしれない。特にガルコスの王家は、フィルエッタを恨んでいる者が多く、形だけの友好関係を結んだところで意味はないとガルコス王は考えた。これ以上、国民が犠牲になる争いを終わらせたいと願い、自らが死ぬことで、フィルエッタの属国になることを望んだ。
ガルコス王もベンジャミン様も、ロレイン様がフィルエッタの貴族に嫁いだことがきっかけで、国民と向き合うようになったそうだ。
「この国が、フィルエッタ王国の属国になることはありません。もう一つだけ、道があるではありませんか」
私はフィルエッタ王国の王女だけれど、ディアム様のお母様が生まれ育った国を、属国にしたいとは思わない。お父様も、そんなことは望んでいないからこそ、私達がこの国を訪れることを許可してくれたのだと思う。
「そのような道が、どこにあるというのだ!?」
「ディアム様が、いらっしゃるではありませんか」
その時初めて、ガルコス王の目にディアム様が映し出された。ディアム様を見た瞬間、涙がこぼれ落ちた。ベンジャミン様を思い出したのか、ロレイン様を思い出したのかは分からないけれど、その表情は、私を見る時のお父様と同じだった。
「レイチェル……それはまさか、俺にこの国の次の王になれと言っているのか!?」
ガルコス王よりも、ディアム様の方が驚いているようだ。
「はい!」
元気良く返事をした私に、ディアム様は苦笑いをする。
「まったく、君には勝てそうにない……」
ディアム様は、決して私の期待を裏切らない。それが分かっているのだから、私はずるい。
「そうして……くれるのか?」
ガルコス王は、すがるような目でディアム様を見つめる。それほど、切羽詰まっていたのだろう。
「この国は、俺にとっても大切な国です。国を守ることが出来るなら、やらないという選択肢はありません」
「……ロレインに、良く似ている。あの子は、幸せなのだな」
ホッと胸を撫で下ろしながら、ディアム様を慈しむような目で見つめている。
この国に来たのは友好関係を結ぶ為だったけれど、予想外な展開になってしまった。そう進言したのは、私なのだけれど。
「なんでだ!? なんでそんな話になるんだ!?」
客室に戻って、お兄様にも事情を説明した。そして、私達が婚約することも話した。
「ガルコス王国との争いがなくなったら、婚約のことを考えると約束していたので。それに、私がディアム様の人生を大きく変えてしまったのですから、責任を取らなくてはなりません」
「だからといって、ここは敵国なんだぞ!? 友好関係を結ぶからといって、他の王族が黙っているとは思えない! 危険過ぎる! せめて、もう少し時間を置いてからでもいいんじゃないか!?」
ガルコス王があんな結論に至ったのだから、危険なのは承知している。けれど、ディアム様を一人になんて出来ない。
「敵国だから……私が、フィルエッタ王国の王女だから意味があるのです。私との婚約で、ディアム様を受け入れてもらいやすくなります。お兄様が私を心配してくださるのは、とても嬉しいです。ありがとうございます」
お兄様は大きなため息をつき、諦めたように笑った。
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