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結婚
しおりを挟む「……え?」
「事情は理解しているつもりです。あなたがジーベル伯爵を忘れるまでは、手を出すつもりもありません。ですが、今も毎日、ジーベル伯爵はあなたに会いに行っていますよね? あなたが会っていないのは分かっていますが、このままでは、ジーベル伯爵はあなたを忘れる事が出来ないのでは?」
確かに、そうなのかもしれません。このままでは、いつまでもイーサン様は私に会いに邸を訪れるかも……
「……ダメですね。焦るつもりはなかったのですが、あなたに会って、焦ってしまったようです。」
そういえば、ケール侯爵はいつまでも待つとおっしゃってくれていたのに、どうしてでしょう?
「ずっと分からなかったのです。私は、女性に興味を持ったことがなかったはずなのに、なぜかマリベル嬢が頭から離れなかった。その理由が、やっと分かりました。」
「どんな理由だったのですか?」
「……どうやら、あなたを好きだったようです。」
好き? 私を!?
「ですが、話した事はありませんでした……」
「だから余計に分からなかったのです。あなたの笑顔に、私は一目惚れをしていたようです。愛する人に裏切られたばかりのあなたに、こんな話をするべきではないことも、分かっているのですが、伝えずにはいられないほどに好きなのです。」
「………………」
なんて答えたらいいのか分かりません。私はケール侯爵をよく知りませんし、まだ誰かを信じる事は出来そうにありません。真っ直ぐに想いを伝えてくださっているのは分かっていますが、その言葉を信じきる事が出来ません。
「あなたがまだ、ジーベル伯爵を想っていることは承知しています。だから、不安なのです。ですが、これは私のわがままです。これから先、信じていただけるように、全力を尽くしていきます。」
「……少しづつ、歩み寄って行けたらと思います。私はケール侯爵と婚約をする事を決めていました。それは、いつ結婚をしてもいいということです。」
「では!?」
「よろしくお願いします。」
「あ~!! 良かった~!! 断られたらどうしようと、ドキドキしていました。」
まるで、子供みたいに喜ぶケール侯爵が、何だか可愛く思えてきました。いつの間にか緊張もなくなり、楽しく食事をする事が出来ました。ケール侯爵は思ったより気さくな方で、この方とならゆっくり信頼関係を築いていけそうな気がします。
食事を終えて邸に戻ると、イーサン様が邸の前で待っていました。
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