上 下
1 / 8

私の知らない旦那様

しおりを挟む

 「お義兄様はお姉様を、本当に愛しているのですか?」

 遊びに来ていた妹ミシェルは、私が席を外している間にそんな事を聞いていた。すぐに戻って来てしまったのだけど、入りづらいわ。
 
 「もちろん、愛している。あんなに可愛らしい女性を妻に持つことが出来て、私は幸せ者なのだと毎日思っている。」

 旦那様……私もです。旦那様の妻になれてとても幸せです。
 
 旦那様の言葉に嬉しくなったと同時に、ドアの前で聞き耳を立ててしまっている自分が恥ずかしくなり、ドアノブに手をかけると……

 「それなら、他の女性に触れたいと思った事はないのですか? こんな風に……」

 「……やめなさい!」

 ドアの向こうで、ミシェルが旦那様に寄り添ったのだと感じた。おそるおそる、ドアを少しだけ開けてみると……

 「お義兄様……目を閉じてください。」
  
 「……いや。こんな事をしてはいけない……」

 「お義兄様……お義兄様の事が、好き。バレなければ大丈夫です。もうすぐ……唇が……触れ……ん……」

 口では拒否していたのに、旦那様はミシェルの唇を受け入れた……
 
 先程の言葉はなんだったのでしょう? 私を愛していると言った口で、ミシェルとキスをしている。

 「……ミシェル……んん……ハアハア……」

 妹の名前を呼んだ旦那様は、次第にミシェルの唇を貪るように激しいキスを交わしていた。

 「……旦那様、何をしているのですか?」

 その光景を見ている事が出来ず、部屋の中へと入り問いかけていた。



 私はマリベル。アンダーソン伯爵の長女で、イーサン・ジーベル伯爵と結婚して2年が経っていた。3年前、イーサン様からの熱烈な愛の告白を受け、次第にイーサン様に惹かれていった私は2年前に、イーサン様からの婚姻の申し出を受け入れ結婚した。
 
 
 「マ、マリベル!? これは違うんだ!!」

 慌ててミシェルから離れるイーサン。

 「違う? 私はこの目でハッキリと見ました。それの何が違うのですか?」

 「あら、お姉様は何か勘違いをなさってますよ? 口づけしかしていません。お義兄様は他の方とはもっと凄いことをなさっています。」

 「お、お前は何を言い出すのだ!?」

 ミシェルの衝撃的な言葉……まさかそんな事……

 「……嘘ですよね? 旦那様が他の女性となんて……」

 「嘘に決まってるではないか! 俺が愛しているのはマリベルだけだ! 信じてくれ!」

 「お義兄様、そんなこと言ってもいいんですか? お義兄様の愛人のドーラは、子供が出来たそうですよ。」

 「それは本当か!?」

 イーサンは目をキラキラさせながらミシェルを見た。

 「旦那様……お認めになるのですね……」

 「あ、いや……だが、子が出来たのだぞ!? 喜ばしいことではないか!?」

 何が喜ばしいのですか? 私は一度も、旦那様に抱かれたことはありません。結婚してから旦那様は忙しかった事もあり、やっとこれから少しづつ二人の時間が増える……そう思っていたのに……もう旦那様を信じる事が出来なくなりました。私はいったいどうすればいいの……?

 「マリベル、子を引き取り、私達の子として育てよう!」

しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。 なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと? 婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。 ※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。 ※ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※元サヤはありません。

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

【完結】誠意を見せることのなかった彼

野村にれ
恋愛
婚約者を愛していた侯爵令嬢。しかし、結婚できないと婚約を白紙にされてしまう。 無気力になってしまった彼女は消えた。 婚約者だった伯爵令息は、新たな愛を見付けたとされるが、それは新たな愛なのか?

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。

白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。 ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。 ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。 それは大人になった今でも変わらなかった。 そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。 そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。 彼の子を宿してーー

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。

しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。 だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

「大嫌い」と結婚直前に婚約者に言われた私。

狼狼3
恋愛
婚約してから数年。 後少しで結婚というときに、婚約者から呼び出されて言われたことは 「大嫌い」だった。

処理中です...