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38、エルビンの想い 前編 ―エルビン視点―
しおりを挟むドラナルドに来て、3ヶ月が経った。1度だけ、アナベルを見る機会があり、遠くから姿を見られた。この国に来て、分かったことがある。
アンダーソンという公爵が、何か不穏な動きをしていることだ。俺は、父の知り合いのコーリン公爵に紹介して欲しいと頼み、アンダーソン公爵家で偽名を使って使用人として働くことになった。
「なぜエルビンが使用人などになるんだ? バディスト侯爵も嘆いていたぞ?」
と、説教はされたが、俺の気持ちが変わる事はない。バディスト侯爵家は、弟のジェイソンが継げばいい。俺は俺なりに、アナベルを想い続けると決めたんだ。
「こんな時に、なぜ新しい使用人など雇ったのだ!?」
アンダーソン公爵は、夫人に激怒している。こんな時……ということは、何かするつもりなのだろう。
「仕方がないではありませんか! コーリン公爵の紹介なのですよ? こんな時だからこそ、断って波風立てるわけにいかなかったのよ!」
その為に、わざわざコーリン公爵に頼んだ。どうやら正解だったようだ。
「お前! 邸の掃除でもしていろ!」
「かしこまりました、旦那様」
掃除か。願ってもない。
色々と調べさせてもらう。
まずは書斎から調べることにした。旦那様の部屋と奥様の部屋と娘の部屋を掃除するのは、執事と決まっていて、部屋に入るのは厳しそうだ。
「あら、あなたが新しい使用人? 随分と綺麗な顔してるのね……」
これが娘のリンダか。聞いたところによると、アナベルを散々バカにしているようだ。
令嬢達はリンダの方が嫌いだと言っていた。この国の令嬢達は、アナベルの味方のようだ。それを知った時は嬉しかった。
夜会の時に、アナベルを侮辱していた令嬢を思い出す。必死に言い返すアナベルが、とっても可愛かった。
「今から買い物に行くから、着いてきて」
なんで俺がこの女の買い物に付き合わなければならないんだ? と、思ったが、令嬢達にベラベラ話すような女なら、俺にも色々話すかもしれないな。
「かしこまりました」
馬車に乗り、街へと向かう。
女の買い物とは、こんなに長いものなのか……
かれこれ5時間は、店を回っている。
「疲れたわ。お茶にしましょう」
疲れたのはこっちだ。
お茶をする為に、レストランへと入る。
「立ってないで座ってよ」
「ですが、私は使用人です」
「あなたならいいのよ。誰かに見られても恥ずかしくないし、私があなたの顔を見ながらお茶を飲みたいの」
「……かしこまりました」
正直、疲れていたからありがたい。
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「オーウェン、私と付き合わない?」
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