52 / 159
獣人族(羊人)チャイチャイ編
Chapter 049 出発
しおりを挟む
眩しい……。
目を覚ますと、頭はモンテールの膝の上にあり、想力回復薬を飲ませてもらったようだった。
「想力切れを起こしたようだな」
ジオにそう教えてもらう。
生まれつき、想力は他人と比べると突出していて、想力が尽きたことなんて今まで一度もなかった。
恐らく主な原因は夢の中で使った英雄スキル【智系】【写封眼】……。
消失スキルでも、天使様の恩恵スキルでもない、確認されていない未知のスキル!?
夢の中で出てきた見知らぬ人達……。
海人族の強い意志を秘めた少女や小人族の笑顔を絶やさない斥候等、夢にしてはやけに生々しくて夢の中では彼らも手の甲に光を帯びていた。
おそらく彼らも自分と同じ天使様に選定されしもの……。
ただの夢ではない……。
だが、あの夢のとおりになるとは思わない!?
いえ、させません……。
チャイチャイはあることを心の中で決めた。
★
その後、謎の島を離れた一行は、三日月東半島を時計廻りでガルーバ岬を経由し、商国パームとオルズベク皇国の境界に隣接する。海上街道「ナミシマ」の港にたどり着き、銀閃ジオや愉快な双子たちと別れを済ませ、フェルブを父親の町長へ送り届けるため、町長の屋敷へと向かった。
海上街道ナミシマは商国パームが山林国ケルウッドとの国境上や地形上の関係で直接、皇国オルズベクに繋がっていないため、山林国ケルウッドによる足元をみた高い関税を嫌い、無理やり浅瀬に道を作り、商国パームとオルズベク皇国をつないだのが始まりだった。
その後、大国オルズベク皇国と東大陸との交易も盛んな商国パームとの中間地点として、宿場町や流通先の乗せ替え等の中継地点として栄えていき、一つの街に形成されていった。
フェルブを父親のナミシマの町長に引き合わせたところ、もう少し時間を置けば誤認逮捕だったことが証明できそうだと、町長から話があった。
事件のことを知らされた町長は、息子が罠にはめられただろうことをいち早く察知し、方々に手を廻し、何とか、首都ヴェーダの司法部署との話しが内々でつき、冤罪を証明してもらえることになりそうだとのことだった。
今時点ではまだ指名手配されているため、もうすこしの猶予が必要なので、不眠街テンジクのデザン三豪の一人の手がこの街にまだまわっていないうちにオルズベク皇国にしばらくの間、逃がしてほしいとのことだった。
しかし、フロスについては現にテンジクで〝黒影〟として、ひと騒動起こしており、顔もはっきり確認されているので言い逃れできない。
町長に何もしてやれなくすまないと謝られる。
「私は大丈夫です。オルズベク皇国の首都に連れていってもらえれば、何とかなります」
意味深な返事をするフロスの言葉の意味に疑問を持ったが、まあ本人がそういうなら問題ないだろう。チャイチャイとモンテールだけで素早く買い出しなどを済ませ、その日のうちにオルズベク皇国側の国境に到着した。
オルズベク皇国の国境には関所が設けられており、荷物のチェックを入念に行っている。
幸い、町長の情報でオルズベク皇国側の方に手配書はまわっていないとのことだったため、フェルブを堂々と荷車に乗せている。変に怪しまれず、こちらとしても好都合だ。
自分たちの番が回ってきたが特に怪しまれもせず、そのまま通過して、オルズベク皇国に入国できた。しかし、関所を抜けて建物の死角になっている部分に十騎程度の騎兵が待ち構えていた。
──ッ、これは迂闊でした!
罠でしたか?
警戒していると騎兵の先頭にいた人物が馬から降り、こちらに向かいながら兜を取る。顔立ちの整った女性で年齢は三十代前半くらいだろうか? そのままこちらに近づき、フロスの前で立ち止まる。
フロスは荷台から降り、近づいてきた女性に片膝をつく。
「向こうでの名前はフロス……だったかしら、ご苦労様、こちらは大体状況は理解しているわ……」
「金香様、どうしてこちらへ?」
目の前の女性はフロスに〝金香〟と呼ばれたが、金香とは、オルズベク皇国女王カルノアの側近〝六花〟と呼ばれる六人の女性のうちのひとりで、その中でも女王の右腕と呼ばれているものの名前だ。
「貴方が捕まるのはオルズベク皇国としても色々と都合が悪いの……関所で手配が回ってしまったら抜けることができなかったはずだから待っていたのよ」
金香はちらっとチャイチャイの方を見て言葉を続ける。
「あと女王様から別件で〝そちらの羊人〟とその侍従を匿う様に指示を受けているわ……なんでも〝元仲間〟のよしみの頼み事で、銀閃ジオ様から何日か前にもし二人がオルズベク皇国に来るようなら匿ってくれと連絡を受けていたみたい」
──なるほど。
まず、フロスは二年前に海上街道ナミシマに来たと言っていたが、オルズベク皇国から何かしらの使命を与えられ派遣されたもので、たとえばその使命が商国パームの諜報活動だとすると、不眠街テンジクでの騒動が原因で逮捕されている間にオルズベク皇国のスパイであることが露呈してしまう等を心配したのかもしれない。
あと銀閃ジオが目的地を伝えた時点……港町プランナあたりで、すでに手を廻していてくれていたのだろう。銀閃ジオに心の中で感謝する。
チャイチャイ達は、金香達に連れられ関所を離れ、オルズベク皇国の首都「ベイルム」に向けて出発した。
目を覚ますと、頭はモンテールの膝の上にあり、想力回復薬を飲ませてもらったようだった。
「想力切れを起こしたようだな」
ジオにそう教えてもらう。
生まれつき、想力は他人と比べると突出していて、想力が尽きたことなんて今まで一度もなかった。
恐らく主な原因は夢の中で使った英雄スキル【智系】【写封眼】……。
消失スキルでも、天使様の恩恵スキルでもない、確認されていない未知のスキル!?
夢の中で出てきた見知らぬ人達……。
海人族の強い意志を秘めた少女や小人族の笑顔を絶やさない斥候等、夢にしてはやけに生々しくて夢の中では彼らも手の甲に光を帯びていた。
おそらく彼らも自分と同じ天使様に選定されしもの……。
ただの夢ではない……。
だが、あの夢のとおりになるとは思わない!?
いえ、させません……。
チャイチャイはあることを心の中で決めた。
★
その後、謎の島を離れた一行は、三日月東半島を時計廻りでガルーバ岬を経由し、商国パームとオルズベク皇国の境界に隣接する。海上街道「ナミシマ」の港にたどり着き、銀閃ジオや愉快な双子たちと別れを済ませ、フェルブを父親の町長へ送り届けるため、町長の屋敷へと向かった。
海上街道ナミシマは商国パームが山林国ケルウッドとの国境上や地形上の関係で直接、皇国オルズベクに繋がっていないため、山林国ケルウッドによる足元をみた高い関税を嫌い、無理やり浅瀬に道を作り、商国パームとオルズベク皇国をつないだのが始まりだった。
その後、大国オルズベク皇国と東大陸との交易も盛んな商国パームとの中間地点として、宿場町や流通先の乗せ替え等の中継地点として栄えていき、一つの街に形成されていった。
フェルブを父親のナミシマの町長に引き合わせたところ、もう少し時間を置けば誤認逮捕だったことが証明できそうだと、町長から話があった。
事件のことを知らされた町長は、息子が罠にはめられただろうことをいち早く察知し、方々に手を廻し、何とか、首都ヴェーダの司法部署との話しが内々でつき、冤罪を証明してもらえることになりそうだとのことだった。
今時点ではまだ指名手配されているため、もうすこしの猶予が必要なので、不眠街テンジクのデザン三豪の一人の手がこの街にまだまわっていないうちにオルズベク皇国にしばらくの間、逃がしてほしいとのことだった。
しかし、フロスについては現にテンジクで〝黒影〟として、ひと騒動起こしており、顔もはっきり確認されているので言い逃れできない。
町長に何もしてやれなくすまないと謝られる。
「私は大丈夫です。オルズベク皇国の首都に連れていってもらえれば、何とかなります」
意味深な返事をするフロスの言葉の意味に疑問を持ったが、まあ本人がそういうなら問題ないだろう。チャイチャイとモンテールだけで素早く買い出しなどを済ませ、その日のうちにオルズベク皇国側の国境に到着した。
オルズベク皇国の国境には関所が設けられており、荷物のチェックを入念に行っている。
幸い、町長の情報でオルズベク皇国側の方に手配書はまわっていないとのことだったため、フェルブを堂々と荷車に乗せている。変に怪しまれず、こちらとしても好都合だ。
自分たちの番が回ってきたが特に怪しまれもせず、そのまま通過して、オルズベク皇国に入国できた。しかし、関所を抜けて建物の死角になっている部分に十騎程度の騎兵が待ち構えていた。
──ッ、これは迂闊でした!
罠でしたか?
警戒していると騎兵の先頭にいた人物が馬から降り、こちらに向かいながら兜を取る。顔立ちの整った女性で年齢は三十代前半くらいだろうか? そのままこちらに近づき、フロスの前で立ち止まる。
フロスは荷台から降り、近づいてきた女性に片膝をつく。
「向こうでの名前はフロス……だったかしら、ご苦労様、こちらは大体状況は理解しているわ……」
「金香様、どうしてこちらへ?」
目の前の女性はフロスに〝金香〟と呼ばれたが、金香とは、オルズベク皇国女王カルノアの側近〝六花〟と呼ばれる六人の女性のうちのひとりで、その中でも女王の右腕と呼ばれているものの名前だ。
「貴方が捕まるのはオルズベク皇国としても色々と都合が悪いの……関所で手配が回ってしまったら抜けることができなかったはずだから待っていたのよ」
金香はちらっとチャイチャイの方を見て言葉を続ける。
「あと女王様から別件で〝そちらの羊人〟とその侍従を匿う様に指示を受けているわ……なんでも〝元仲間〟のよしみの頼み事で、銀閃ジオ様から何日か前にもし二人がオルズベク皇国に来るようなら匿ってくれと連絡を受けていたみたい」
──なるほど。
まず、フロスは二年前に海上街道ナミシマに来たと言っていたが、オルズベク皇国から何かしらの使命を与えられ派遣されたもので、たとえばその使命が商国パームの諜報活動だとすると、不眠街テンジクでの騒動が原因で逮捕されている間にオルズベク皇国のスパイであることが露呈してしまう等を心配したのかもしれない。
あと銀閃ジオが目的地を伝えた時点……港町プランナあたりで、すでに手を廻していてくれていたのだろう。銀閃ジオに心の中で感謝する。
チャイチャイ達は、金香達に連れられ関所を離れ、オルズベク皇国の首都「ベイルム」に向けて出発した。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
41
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる