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第9章 トゥルヤ半島
第49話 ほっほっほっ ……じゃねぇぇぇぇ!!
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砲士は肩に掛けて飛ばした火矢を撃ったあと、普通の兵士となった。片手剣を抜刀して突撃して、巨岩の化け物にすぐに潰された。飛騎も粘ったが、飛んでいるハエを叩くように撃ち落とされて煙となって消えた。
詠唱はまだなの? ボクにはもう時間を稼ぐ術がない。巨剣も先ほどマグマを浴びて少し変形してしまっている。次にマグマが飛んで来たらもう……。
目の端で、なにか動いていた。ボクはそこに視線を合わせると、息絶えてしまった水人族の槍を手に取って振りかぶっているゴンゾさんが映った。
ゴンゾさんの手から放たれた槍は、もの凄い速さに達し、今まさにボクに向かってマグマを掬ってかけようとしていたフレイムロックの片目を射抜いた。
これはあきらかにダメージを受けている。フレイムロックが仰け反り左目に刺さった槍を引き抜く。このタイミングでルナさんの超長文の詠唱が完成した。
「……をもって、其を断罪せよ。〝冥府凍獄〟」
フレイムロックの頭上に黒く点滅する球体が現れたかと思うと、コンマ1秒にも満たない一瞬の間にフレイムロックを中心に周囲10mが灰色となり、時間が切り取られたようにそのなかではすべてが凍り停止している。
「行け」
「はいッ!」
ゴンゾさんの言葉に背中を叩かれて、フレイムロックに向かって突撃する。大きく跳躍したボクの視線の先には、序盤にルナさんが氷の槍魔法で開けた胸にある穴……。
ガギィッと、腕にとてつもない衝撃が伝わり同時に巨人殺しが折れてしまった。しかし、その刃は肩から胸まで届いており、爆発するように煙となり、大きな茶色の石が凍った地面に落ちる。ボクはその石を拾い上げると、マグマの池の真上にいるため、地面にヒビが入り始めたので、離脱した。
「いやーお見事ですな」
「──ッ⁉」
声のした方向をみると、この火山島に住んでいる村の住人が、住人と同じ数のキラー・マンティスの背に乗り、大空洞のなかに次々と侵入してきていた。
「なんだアンタら……その魔物になんで乗ってるんだ?」
「ふふっ、愚かな道化は黙っておれ。のう? 英雄セル・モティック殿」
ペッチさんの問いかけに応じず、他のキラー・マンティスよりひと回り大きな個体の背に乗って長老がボクへ暗く不気味な笑顔を向けた。
「やっぱり全部知ってたんですね?」
「ええ、ええ知ってましたとも、なにせ我々は冥府の女神〝ミープル〟を崇めるものですから」
この火山島が女神ミープルの信徒の隠れ里のひとつであること。12年周期で現れるフレイムロックの胸に真・星降石があると、デマを流し、座礁や予測できない天候、または潮に流され行方不明になるなか、運よく辿りついた冒険者や財宝追跡者は残らず、キラー・マンティスのエサにしていたそうだ。
「それにしても驚きました。まさかフレイムロックまで倒してしまうとはさすが神プレイヤに選ばれた使徒殿」
上陸時にキラー・マンティスをあっさり倒したボクたちを手強いとみなして、挑めば死が待っているフレイムロックと戦わせて、万が一にも勝って生き残ってもこうやって確実にトドメを刺そうと大量のキラー・マンティスを引き連れてここへ来たそうだ。
「ですが、意外でした」
長老は外部の魔人たちと繋がっており、神プレイヤとの関係性をある程度見抜いているらしく、ボクを使ったのに先ほどの最後の一撃があまりにも不格好だったので、勝手に落胆したそうだ。
「やはり神プレイヤはたいしたものではないようですの」
(はぁ?)
やっぱり、反応した……。
「この程度のチカラしかないのでしたら、フレイムロックを当てずとも私達の方で始末してしまえばよかったですのぉ。ほっほっほっ」
(ほっほっほっ……よし潰すッ!)
<ムフフ99【司会者】>
:ほっほっほってホントに言うんだw
<早朝の紅茶>
:どこからともなく処刑用BGMが聞こえる気gas……
<崖っぷちのお腹ぽにょん>
:Gさん、見事な煽りw
(セル、オレが、コイツら全員を●るってまわりに伝えろ)
いや、なに言ってるんですか、神さまぁぁ! ぼぼぼボクのカラダで、なにしようとしてるんですかぁぁ~~~ッ⁉
────────────────────
Autoモード
▶Manualモード
────────────────────
ああ、もうイヤな予感しかしない。これまで愛用していた巨人殺しが壊れたからといって、手に赤い刃をした真銀製の【血吸の猫】という物騒な名前のダガーを片手に(ふふふっ)と笑っている。
長老の「やれ」という冷たい声が響くと、村人たちはキラー・マンティスから降りて、その中のひとりが、コチラになにか小袋に入ったものを投げつけてきた。
(どうせエサで調教してんだろ?)
神プレイヤの見立てどおり、まだ宙に浮いている小袋目がけて移動し始めるキラー・マンティスだが、神プレイヤがその小袋を鮮やかに蹴り返し、投げた男に命中すると袋の中身がこぼれて村人たちが粉まみれになる。
キラー・マンティスが村人たちへ牙を剥き、ちょっと口にはできないくらいの惨状が広がる。その間に神プレイヤは、捕食のために頭を地上に近づけている個体から順に首を刈り取っていく。
シュッと風を切る音がする前に飛びながら前転し、立ち上がるとひと際大きなキラー・マンティスがボクに狙いを定めていた。
詠唱はまだなの? ボクにはもう時間を稼ぐ術がない。巨剣も先ほどマグマを浴びて少し変形してしまっている。次にマグマが飛んで来たらもう……。
目の端で、なにか動いていた。ボクはそこに視線を合わせると、息絶えてしまった水人族の槍を手に取って振りかぶっているゴンゾさんが映った。
ゴンゾさんの手から放たれた槍は、もの凄い速さに達し、今まさにボクに向かってマグマを掬ってかけようとしていたフレイムロックの片目を射抜いた。
これはあきらかにダメージを受けている。フレイムロックが仰け反り左目に刺さった槍を引き抜く。このタイミングでルナさんの超長文の詠唱が完成した。
「……をもって、其を断罪せよ。〝冥府凍獄〟」
フレイムロックの頭上に黒く点滅する球体が現れたかと思うと、コンマ1秒にも満たない一瞬の間にフレイムロックを中心に周囲10mが灰色となり、時間が切り取られたようにそのなかではすべてが凍り停止している。
「行け」
「はいッ!」
ゴンゾさんの言葉に背中を叩かれて、フレイムロックに向かって突撃する。大きく跳躍したボクの視線の先には、序盤にルナさんが氷の槍魔法で開けた胸にある穴……。
ガギィッと、腕にとてつもない衝撃が伝わり同時に巨人殺しが折れてしまった。しかし、その刃は肩から胸まで届いており、爆発するように煙となり、大きな茶色の石が凍った地面に落ちる。ボクはその石を拾い上げると、マグマの池の真上にいるため、地面にヒビが入り始めたので、離脱した。
「いやーお見事ですな」
「──ッ⁉」
声のした方向をみると、この火山島に住んでいる村の住人が、住人と同じ数のキラー・マンティスの背に乗り、大空洞のなかに次々と侵入してきていた。
「なんだアンタら……その魔物になんで乗ってるんだ?」
「ふふっ、愚かな道化は黙っておれ。のう? 英雄セル・モティック殿」
ペッチさんの問いかけに応じず、他のキラー・マンティスよりひと回り大きな個体の背に乗って長老がボクへ暗く不気味な笑顔を向けた。
「やっぱり全部知ってたんですね?」
「ええ、ええ知ってましたとも、なにせ我々は冥府の女神〝ミープル〟を崇めるものですから」
この火山島が女神ミープルの信徒の隠れ里のひとつであること。12年周期で現れるフレイムロックの胸に真・星降石があると、デマを流し、座礁や予測できない天候、または潮に流され行方不明になるなか、運よく辿りついた冒険者や財宝追跡者は残らず、キラー・マンティスのエサにしていたそうだ。
「それにしても驚きました。まさかフレイムロックまで倒してしまうとはさすが神プレイヤに選ばれた使徒殿」
上陸時にキラー・マンティスをあっさり倒したボクたちを手強いとみなして、挑めば死が待っているフレイムロックと戦わせて、万が一にも勝って生き残ってもこうやって確実にトドメを刺そうと大量のキラー・マンティスを引き連れてここへ来たそうだ。
「ですが、意外でした」
長老は外部の魔人たちと繋がっており、神プレイヤとの関係性をある程度見抜いているらしく、ボクを使ったのに先ほどの最後の一撃があまりにも不格好だったので、勝手に落胆したそうだ。
「やはり神プレイヤはたいしたものではないようですの」
(はぁ?)
やっぱり、反応した……。
「この程度のチカラしかないのでしたら、フレイムロックを当てずとも私達の方で始末してしまえばよかったですのぉ。ほっほっほっ」
(ほっほっほっ……よし潰すッ!)
<ムフフ99【司会者】>
:ほっほっほってホントに言うんだw
<早朝の紅茶>
:どこからともなく処刑用BGMが聞こえる気gas……
<崖っぷちのお腹ぽにょん>
:Gさん、見事な煽りw
(セル、オレが、コイツら全員を●るってまわりに伝えろ)
いや、なに言ってるんですか、神さまぁぁ! ぼぼぼボクのカラダで、なにしようとしてるんですかぁぁ~~~ッ⁉
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Autoモード
▶Manualモード
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ああ、もうイヤな予感しかしない。これまで愛用していた巨人殺しが壊れたからといって、手に赤い刃をした真銀製の【血吸の猫】という物騒な名前のダガーを片手に(ふふふっ)と笑っている。
長老の「やれ」という冷たい声が響くと、村人たちはキラー・マンティスから降りて、その中のひとりが、コチラになにか小袋に入ったものを投げつけてきた。
(どうせエサで調教してんだろ?)
神プレイヤの見立てどおり、まだ宙に浮いている小袋目がけて移動し始めるキラー・マンティスだが、神プレイヤがその小袋を鮮やかに蹴り返し、投げた男に命中すると袋の中身がこぼれて村人たちが粉まみれになる。
キラー・マンティスが村人たちへ牙を剥き、ちょっと口にはできないくらいの惨状が広がる。その間に神プレイヤは、捕食のために頭を地上に近づけている個体から順に首を刈り取っていく。
シュッと風を切る音がする前に飛びながら前転し、立ち上がるとひと際大きなキラー・マンティスがボクに狙いを定めていた。
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