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18. 蘇りし王朝

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    「ラウの国が滅んだのは五百年前?」

    世良さんの放った言葉に私もひいばあも衝撃を受ける。

    「驚くのも無理はないわね。    私もそうよ、なにせ五百年前の人物と話をしているのだから」

 そう言いつつも世良さんは神妙な面持ちのままだ。
 しかし、ひいばあからしてみれば、世良さんは五百年後の未来の異世界にいた事になるが、何故二人の間にはこのような年月の開きがあるのだろうか。

    「……ねぇ、世良さん」

    「世良で良いですよ、理音さん」

    「世良、貴女が五百年後のあちらにいたとして、当時幼かったのにどうやって生き延びたの?」

 言葉も習慣も違う世界に齢三歳の少女が一人投げ出されて生き延びられる道理は無い。
 あちらに転移した直後、世良さんは早々にとある人物に保護される事になる。

 「アスレア?」

 「そう、異世界に転移した直後気を失っていた私が目覚めた時、彼が居たの。 彼は旅をしていたのだけれど、私を保護してそれ以降二人で旅を続けたのよ」

 世良さんはアスレアという人物に助けられ、異世界でも何とか生き延びる事が出来た。
 話は更に続く。

 「そして、理音さん。 アスレアは貴女にとって縁のある人物なの」

 「私に?」

 「彼は普段、土木屋の息子又は流浪の旅人と名乗っていたわ。 でもこれは本当の名前では無いの」

 名前というのはこの場合苗字を含むものを指すのだが、偽名だということだろうか。

 「彼の本当の名は、亡国の王子アルスの末裔にしてラウ王朝の正当なる後継者アスレア……ラウ王朝の血統を継ぐ者よ」

 「アルスの末裔」

 「ラウ王朝の後継者」

 「そうよ、アスレアは理音さんの弟の子孫なの。 彼の旅の目的は、一つは王朝の復活、そしてもう一つは帝国の打倒よ」

 王朝の復活とは、帝国の打倒とは何か、私達は世良さんの話に真剣に聞き入る。
 ラウの国が滅びた後、いくつかの王朝が立ち、そして倒れ他国の影響下にあった時代もあったという。
 そして、世良さんがいた時代は帝国が国を支配し、人々を圧政で苦しめていた。
 帝国の圧政に苦しむ人々は、かつて賢王の元に繁栄を極めた王国の復活を望むようになる。
 やがて神託は下され、帝国打倒のために一人の少年が使わされる。
    それが、王家の血を引く者アスレア

    「それで、どうなったの?」

    「十二年に及ぶ戦いの末に帝国は倒され、アスレアは王に即位したわ。ラウの国は甦ったのよ」

    世良さんは幼い頃こそ非力な少々だったが、成長に伴い力をつけて、アスレアと共に帝国打倒の戦いに身を投じた。
    戦鳥の力もその過程で授かったという。
    だが、ここで疑問が湧く、これは人同士の争いなのだ。
    何故戦鳥の力が必要だったのか世良さんは疑問に答える。

    「帝国が隆盛を誇っていたのは一重に、強大な軍事力があったからこそなの。    そしてその戦力の要になっていたのが、厄災だったのよ」

    「そんな!    厄災が人間に力を貸したというの?」

  「力を貸したというか、帝国は単に利用されていただけだと思うわ。 最後の戦いの時、皇帝は厄災の力で怪物と成り果てて私達の前に立ちはだかったの」

 最終決戦の地は皇帝の築いた城の最深部、攫ってきた人々を厄災に作り変える施設があったそうだが、皇帝の死と共に最期の爆発で炎に包まれ城も何もかも全て焼失しまったという。
 そして帝国の崩壊と共に厄災は姿を消した。

 帝国が倒された後、アスレアが王に即位するのを見届け、五百年後も健在だった転移の間を利用して世良さんはこちらに帰って来た。

 「私が転移した後、五百年後の世界でそんな事があったのね」

 「そうよ、そしてラウの国は蘇ったの。 きっと今でもアスレアは良き王として国を治めているはずだわ」

 世良さんの瞳は遠くを見つめている、何か遠い記憶を思い出しているかのようなそんな表情だ。
 それにしてもラウの国は滅んでしまったが、遠い未来に蘇った。
 そしてそれは、王朝の血を引く者の手によって成されたのだから、ひいばあの思いも一入ひとしおだろう。
 しかし、未だ話しは終わりでは無い。
 これからの事を考えなければならないのだから……。
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