【読み切り】現実は残酷

大竹あやめ

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1.前編

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 何も見えない。だからこそ、研ぎ澄まされる感覚がある。

 そう、それは視覚以外の感覚。しかし俺は視覚だけでなく、口も塞がれていた。ギャグが装着され、開いた口からダラダラとヨダレを垂らし、それが顎を伝って胸元に落ちていく。その感触にすら、俺は敏感に感じ取っていた。

 俺は前から尻を見せるように椅子に座らされ、手と足を縛られ吊り上げられている。何も見えないはずなのに、そばには人がいて、大きく開いた脚の間を眺めている視線を感じた。

 ああ、俺の恥ずかしい姿をもっと見て欲しい。

 そう考えると、俺の陰茎は硬く、大きくそそり立った。それが羞恥心となって更に興奮を誘う。

「何もしてないのにこんなことになってるのか」

 そばにいた俺の憧れの人──課長は冷たい声で俺を蔑んだ。

「……ああ、目隠ししてるから自分の状態も分からないな」
「……っ」

 突然、内腿に何かが触れて身体をビクつかせる。ジャリ、と鎖の音がして、その鋭い金属音にも興奮した。

 太腿に当たっているのは鞭だろう。先が何本もの革紐になっている、バラ鞭だ。それが内腿から剥き出しの股間を通り、反対の脚へと移動する。

 革紐が当たるムズムズするような感覚に、俺は呻いた。

「ろくに仕事もできないくせに、ここだけはちゃんと仕事しようとしてる、なっ!」
「うう……っ!」

 パシィッ! と言う音に続いて腿に痛みが走る。けれどバラ鞭だからか、痛みはすぐに引いていった。

 はあはあと、自分の息遣いが聞こえる。もっとなじって欲しい、もっと痛めつけて欲しい。課長になら、何をされてもいい。

 しかし俺の心を読んだのか、課長は俺の身体を鞭で打つのではなく、撫でたのだ。ザワザワする感覚が、太腿から脇腹、胸を念入りに通って頬、耳に来る。ああそれもいい、気持ちいい。

「気持ちよくなってるんじゃない!」
「うー!」

 またピシッ! と、鞭が鳴る。そしてすかさず、俺の怒張を扱かれた。

「うう! うー!」
「これは仕事をミスしたお前へのお仕置きだって事、忘れるな?」

 課長は俺を扱きながら、胸をつねってくる。快感と痛みに身体が跳ね、ジャリジャリと鎖を鳴らした。こんなお仕置をしてもらえるなら、俺はいくらでもミスをします、と腰を動かす。

「勝手にイクなよ?」

 もう少しで、というところで課長は手を止めた。俺の身体は刺激を求めてうねるけれど、拘束されているのでそれも叶わない。この、身体が自由に動かせないのも、息苦しくてもどかしくてイイ。

「涎もダラダラと汚ぇな」

 そう言って胸元や顎に硬い棒状の物が当たる。それが何か分かった瞬間、俺の後ろはギュッと締まるのだ。

 早く欲しい。それを俺のアナルに挿れて、前立腺をグリグリして欲しい!

 後ろにそれが挿れられる想像をして、俺の腰は揺れる。思わず声も上がった。
 すると課長は舌打ちする。

「これが欲しいのか? ケツにこんなの突っ込まれて喜ぶとか、本当に変態だな」

 充分に唾液を塗ったおもちゃは、俺の後ろにあてがわれる。そして……。
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