2 / 18
結婚式を終えた夜に 2
しおりを挟む
幼い頃に生き別れたまま一度も会っていない実の母が今どこで何をしているのかは知らないけれど、祖母が母のことを俺に一言も話さないところを見ると、きっと俺のことなど忘れて幸せに暮らしているのだろう。
そんなことを考えていたらつい長湯してしまい、のぼせそうになりながら湯舟を出ようとすると、葉月が浴室のドアをノックした。
「志岐、えらい長風呂やけど大丈夫?寝てもうてへん?」
「ちゃんと起きてるよ。一緒に入る?」
「入らへんわ!志岐がはよ上がってくれんと私が入られへんから待ってんねん!」
相変わらずつれない新妻だ。
葉月が素直に甘えたり簡単にデレたりできない性格なのはよくわかっているし、そんなところもたまらなく可愛いのだけど、神様の前で永遠の愛を誓った今日くらいはもう少しデレて欲しい気がして、ちょっとしたいたずら心がわき上がる。
「えー、そんなこと言わずにさぁ。俺は葉月が入って来るの待ってたんだけどなぁ」
「待たんでええからはよ上がって!」
「いやだ!葉月が入って来るまで動かない!」
俺が子どものように駄々をこねると、葉月は浴室のドアを勢いよく開け、ツカツカと中に入ってきて俺の腕をつかんだ。
「子どもみたいなこと言うてんと、はよ上がれ!」
葉月は部屋着のTシャツに短パンというラフな格好をしているし、濡れても問題なさそうだ。
つかまれた腕とは反対の手で葉月の腕をつかんで強く引っ張り、バランスを崩して倒れそうになった体ごと思いきり引き寄せると、葉月はお湯を跳ね上げながら見事に湯舟の中に突っ込んだ。
「なにすんのよ!」
「ん?一緒に入ろうと思って」
「だからって普通は服着たまんま入らへんやろ!」
「じゃあ脱がせてやる」
首筋に唇を這わせながら濡れて肌に貼り付いたTシャツをまくり上げると、葉月はあわてふためき手足をバタバタさせて暴れだした。
「ちょっ……!やめえや!」
「やだ、葉月が一緒に入ってくれないとやめない」
「もう!ええ加減にせんと……!あっ……」
逃げられないように羽交い締めにして、形の良い胸を撫でながら短パンの中に手を忍び込ませると、葉月は肩をすくめて甘い声をあげる。
葉月の弱いところなんて知り尽くしている。
唇にキスをして舌を絡めながら柔らかいところを指先でゆっくり探るうちに、葉月は借りてきた猫のようにおとなしくなって俺に身を委ねた。
「かわいいな、葉月。俺もうヤバイ……」
葉月の肩に額を乗せて耳元で囁くと、葉月は唇から吐息混じりの小さな声をもらしながらうなずく。
もう少しゆっくりじっくり焦らしてやろうと思ったけれど、俺の方がもう限界みたいだ。
「マジでヤバイ……。完全にのぼせた……」
「えっ?!ヤバイってそっちか!」
「とりあえず俺は先に上がるから、続きは葉月が風呂から上がったあとで」
「カッコ悪……。あんたホンマにアホやな……」
かなり惜しい状況ではあったけど、ここでぶっ倒れてしまってはどうしようもないので、少しふらつきながら浴室を出た。
濡れた頭や体を拭いて部屋着に着替え、リビングのソファーで冷たい水を飲みながらぼんやりしていると、また子どもの頃のことや母のことを思い出した。
俺の遠い記憶の中の母は、二つの顔を持っている。
壊れてしまいそうなほど儚げで寂しげな顔と、あやしげな笑みを浮かべる華やかな女の顔だ。
そんなことを考えていたらつい長湯してしまい、のぼせそうになりながら湯舟を出ようとすると、葉月が浴室のドアをノックした。
「志岐、えらい長風呂やけど大丈夫?寝てもうてへん?」
「ちゃんと起きてるよ。一緒に入る?」
「入らへんわ!志岐がはよ上がってくれんと私が入られへんから待ってんねん!」
相変わらずつれない新妻だ。
葉月が素直に甘えたり簡単にデレたりできない性格なのはよくわかっているし、そんなところもたまらなく可愛いのだけど、神様の前で永遠の愛を誓った今日くらいはもう少しデレて欲しい気がして、ちょっとしたいたずら心がわき上がる。
「えー、そんなこと言わずにさぁ。俺は葉月が入って来るの待ってたんだけどなぁ」
「待たんでええからはよ上がって!」
「いやだ!葉月が入って来るまで動かない!」
俺が子どものように駄々をこねると、葉月は浴室のドアを勢いよく開け、ツカツカと中に入ってきて俺の腕をつかんだ。
「子どもみたいなこと言うてんと、はよ上がれ!」
葉月は部屋着のTシャツに短パンというラフな格好をしているし、濡れても問題なさそうだ。
つかまれた腕とは反対の手で葉月の腕をつかんで強く引っ張り、バランスを崩して倒れそうになった体ごと思いきり引き寄せると、葉月はお湯を跳ね上げながら見事に湯舟の中に突っ込んだ。
「なにすんのよ!」
「ん?一緒に入ろうと思って」
「だからって普通は服着たまんま入らへんやろ!」
「じゃあ脱がせてやる」
首筋に唇を這わせながら濡れて肌に貼り付いたTシャツをまくり上げると、葉月はあわてふためき手足をバタバタさせて暴れだした。
「ちょっ……!やめえや!」
「やだ、葉月が一緒に入ってくれないとやめない」
「もう!ええ加減にせんと……!あっ……」
逃げられないように羽交い締めにして、形の良い胸を撫でながら短パンの中に手を忍び込ませると、葉月は肩をすくめて甘い声をあげる。
葉月の弱いところなんて知り尽くしている。
唇にキスをして舌を絡めながら柔らかいところを指先でゆっくり探るうちに、葉月は借りてきた猫のようにおとなしくなって俺に身を委ねた。
「かわいいな、葉月。俺もうヤバイ……」
葉月の肩に額を乗せて耳元で囁くと、葉月は唇から吐息混じりの小さな声をもらしながらうなずく。
もう少しゆっくりじっくり焦らしてやろうと思ったけれど、俺の方がもう限界みたいだ。
「マジでヤバイ……。完全にのぼせた……」
「えっ?!ヤバイってそっちか!」
「とりあえず俺は先に上がるから、続きは葉月が風呂から上がったあとで」
「カッコ悪……。あんたホンマにアホやな……」
かなり惜しい状況ではあったけど、ここでぶっ倒れてしまってはどうしようもないので、少しふらつきながら浴室を出た。
濡れた頭や体を拭いて部屋着に着替え、リビングのソファーで冷たい水を飲みながらぼんやりしていると、また子どもの頃のことや母のことを思い出した。
俺の遠い記憶の中の母は、二つの顔を持っている。
壊れてしまいそうなほど儚げで寂しげな顔と、あやしげな笑みを浮かべる華やかな女の顔だ。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。


甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる