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許せない言葉
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「そ、それって……ご婚約、ですか? おめでとうございます!!」
「ああ、ありがとう。まぁ正式なプロポーズはこれからだが、ようやく出会えた運命の相手だから絶対に離す気は無いよ」
「そんなっ、警視正みたいに素敵な方にプロポーズされたら、お相手さんもすぐにオッケーなさるでしょう」
「そうだと良いがな」
入籍することにこだわりがあるわけではないが、要さんのこれまでの背景を思えば、久代姓から真壁姓に変わった方がこれからの人生を過ごす上で安心だ。私の籍に入るとなると戸籍上は伴侶ではなく、息子となってしまうが同じ苗字の方がいろんな場面において対処しやすい。
それに、真壁要、か……。最高だな。
これからの人生を共に同じ苗字で過ごすのも良いかもしれない。
「あ、あの……真壁警視正!」
新海との談笑中に、突然背後から声がかけられて振り向くと数人の女性職員が立っていた。
「なんだ?」
「あ、あの……ご結婚、なさるって本当ですか?」
「ああ、それが何か?」
「そんなっ、ずるいです!」
「ずっと独身貴族でいらっしゃったのに、どうしてご結婚なさるんですか!」
「てっきり結婚には興味ないと思っていたから声をかけなかったのに!」
「私たちの方がずっと前から警視正を思ってました!」
「彼女さんがどういう人か知らないですけど警視正、絶対に騙されてます!」
「そうです! どうせ警視正の肩書に擦り寄ってるだけですよ!」
「私たちの方が警視正を癒してあげられます!!」
「その結婚、やめた方がいいです!」
女性職員から口々に訳がわからない言葉を浴びせられ、もはや呆れしかない。
ここで反論するのも面倒になりそうだが、要さんのことを悪く言われてそのままにはできない。
「言いたいことはそれだけか?」
「えっ……」
「私は一生独身を通そうと思ったことは一度もない。結婚に興味がないんじゃなく、君たちに全く興味がないだけだ。そもそも私のことを思っていたというが、君たちは私の何を知っているんだ?」
「えっ、あ、あの……それは……」
冷ややかな目で彼女たちに満遍なく視線を向けながら尋ねれば、皆身体を震わせて何も話そうとしない。
「私のことを何も知らないで、癒してあげられるだの、騙されているだの、よく言えたものだ。私の肩書きに擦り寄ってきているのは君たちのほうだろう。私の愛しい人は、君たちのように他人を貶んで自分が上に立とうとするようなことは絶対にしない。これ以上、私の愛しい人を侮辱するようなら出るところに出てもいいぞ!」
「ひぃっ――!!」
自分の感情をここまで表すことは今までに一度もなかっただろう。だが要さんのことを思えば思うほど、目の前の彼女たちへの怒りが湧いてくる。
「け、警視正。落ち着いてください」
私のあまりの激昂ぶりに新海が慌てて止めてくれた。ここで入ってもらって良かった。
これ以上になれば自分でも歯止めが効かなかったかもしれないからな。
「警視正のお相手に対する皆さんの暴言の数々は全て録音しています。これらは然るべきところに提出して厳正に対処していただきますので覚悟しておいてください」
「――っ、も、申し訳ありませんでしたー!!」
彼女たちは必死に頭を下げてバタバタと去っていったが、あんな謝罪の言葉だけで許す気はない。
だが、私も彼女たちの音声を録音していたが、まさか新海までがそんなことをしてくれているとは思わなかったな。
「警視正……」
「新海、止めてくれて助かった」
「い、いえ。元はと言えば、私がこんな場所で警視正のプライベートなことを尋ねてしまいましたから。この騒ぎは私の責任です。申し訳ございません」
深々と頭を下げる新海の姿に、私は良い部下を持ったと心から思った。
「新海が謝る必要は無い。それより、音声を録音していたとはさすがだな」
「はい。警視正の教えをしっかりと受け継いでいます」
「ははっ。頼もしいな」
朝の幸せな気分が奴らのせいでぶち壊されたことの怒りが消えたわけではないが、これにより新海への信頼が深まったのはいうまでもない。
「そういえば舞川さんの方はどうなった?」
「はい。氷室先生が今日、スアヴィスに直接足を運んでくださるそうで今日中に解決できると仰ってくださいました」
さすが氷室だな。仕事が早い。やっぱり氷室に頼んで正解だったな。
「そうか。それは良かった。それで舞川さんの次の就職先の話だが、少し長い話になりそうだから今度舞川さんも含めて話をしようと思う。近いうちに私のマンションに二人で来てくれるか?」
「えっ! 警視正のご自宅ですか?」
「と言っても他にも会わせたい人がいるからゲストルームだがな。どうだ?」
「は、はい。お伺いいたします」
周平さんとも都合を合わせて、話をするとしよう。
舞川さんが周平さんの会社にデザイナーとして入るなら、きっと新海も安心することだろうな。
「ああ、ありがとう。まぁ正式なプロポーズはこれからだが、ようやく出会えた運命の相手だから絶対に離す気は無いよ」
「そんなっ、警視正みたいに素敵な方にプロポーズされたら、お相手さんもすぐにオッケーなさるでしょう」
「そうだと良いがな」
入籍することにこだわりがあるわけではないが、要さんのこれまでの背景を思えば、久代姓から真壁姓に変わった方がこれからの人生を過ごす上で安心だ。私の籍に入るとなると戸籍上は伴侶ではなく、息子となってしまうが同じ苗字の方がいろんな場面において対処しやすい。
それに、真壁要、か……。最高だな。
これからの人生を共に同じ苗字で過ごすのも良いかもしれない。
「あ、あの……真壁警視正!」
新海との談笑中に、突然背後から声がかけられて振り向くと数人の女性職員が立っていた。
「なんだ?」
「あ、あの……ご結婚、なさるって本当ですか?」
「ああ、それが何か?」
「そんなっ、ずるいです!」
「ずっと独身貴族でいらっしゃったのに、どうしてご結婚なさるんですか!」
「てっきり結婚には興味ないと思っていたから声をかけなかったのに!」
「私たちの方がずっと前から警視正を思ってました!」
「彼女さんがどういう人か知らないですけど警視正、絶対に騙されてます!」
「そうです! どうせ警視正の肩書に擦り寄ってるだけですよ!」
「私たちの方が警視正を癒してあげられます!!」
「その結婚、やめた方がいいです!」
女性職員から口々に訳がわからない言葉を浴びせられ、もはや呆れしかない。
ここで反論するのも面倒になりそうだが、要さんのことを悪く言われてそのままにはできない。
「言いたいことはそれだけか?」
「えっ……」
「私は一生独身を通そうと思ったことは一度もない。結婚に興味がないんじゃなく、君たちに全く興味がないだけだ。そもそも私のことを思っていたというが、君たちは私の何を知っているんだ?」
「えっ、あ、あの……それは……」
冷ややかな目で彼女たちに満遍なく視線を向けながら尋ねれば、皆身体を震わせて何も話そうとしない。
「私のことを何も知らないで、癒してあげられるだの、騙されているだの、よく言えたものだ。私の肩書きに擦り寄ってきているのは君たちのほうだろう。私の愛しい人は、君たちのように他人を貶んで自分が上に立とうとするようなことは絶対にしない。これ以上、私の愛しい人を侮辱するようなら出るところに出てもいいぞ!」
「ひぃっ――!!」
自分の感情をここまで表すことは今までに一度もなかっただろう。だが要さんのことを思えば思うほど、目の前の彼女たちへの怒りが湧いてくる。
「け、警視正。落ち着いてください」
私のあまりの激昂ぶりに新海が慌てて止めてくれた。ここで入ってもらって良かった。
これ以上になれば自分でも歯止めが効かなかったかもしれないからな。
「警視正のお相手に対する皆さんの暴言の数々は全て録音しています。これらは然るべきところに提出して厳正に対処していただきますので覚悟しておいてください」
「――っ、も、申し訳ありませんでしたー!!」
彼女たちは必死に頭を下げてバタバタと去っていったが、あんな謝罪の言葉だけで許す気はない。
だが、私も彼女たちの音声を録音していたが、まさか新海までがそんなことをしてくれているとは思わなかったな。
「警視正……」
「新海、止めてくれて助かった」
「い、いえ。元はと言えば、私がこんな場所で警視正のプライベートなことを尋ねてしまいましたから。この騒ぎは私の責任です。申し訳ございません」
深々と頭を下げる新海の姿に、私は良い部下を持ったと心から思った。
「新海が謝る必要は無い。それより、音声を録音していたとはさすがだな」
「はい。警視正の教えをしっかりと受け継いでいます」
「ははっ。頼もしいな」
朝の幸せな気分が奴らのせいでぶち壊されたことの怒りが消えたわけではないが、これにより新海への信頼が深まったのはいうまでもない。
「そういえば舞川さんの方はどうなった?」
「はい。氷室先生が今日、スアヴィスに直接足を運んでくださるそうで今日中に解決できると仰ってくださいました」
さすが氷室だな。仕事が早い。やっぱり氷室に頼んで正解だったな。
「そうか。それは良かった。それで舞川さんの次の就職先の話だが、少し長い話になりそうだから今度舞川さんも含めて話をしようと思う。近いうちに私のマンションに二人で来てくれるか?」
「えっ! 警視正のご自宅ですか?」
「と言っても他にも会わせたい人がいるからゲストルームだがな。どうだ?」
「は、はい。お伺いいたします」
周平さんとも都合を合わせて、話をするとしよう。
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