ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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まだまだ勉強中

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「あ、ナオ。見て! あれがリューヤたちの学校だよ!」

前を歩いていたカールが笑顔で振り向きながら直くんに教えてくれる。
指をさしている先には、歴史を感じさせる校舎が見えていた。

「わぁ! 素敵!!」

「直くんが行く桜守もかなりの歴史があるけど、うちの学校も相当だからね」

「あの学校にパパもおじいちゃまも通ってたんですよね?」

「ああ。うちの父さんと大おじさんと村山の父さんもだよ。まぁ、じいちゃんの時は今の名前じゃなかったけどね」

「そうなんですね。でもみんな同じところを卒業するって思い出も共有できて楽しいですね」

「そうだね。直くんも桜守に通い始めたら、絢斗さんだけじゃなくて母さんとも村山の母さんとも同じだよ」

まぁ実際には桜守は中学からは男女別になって校舎も全く別の場所になるんだけど。

「他にも谷垣さんや浅香さんも同じだし、直くんと思い出を共有できる人もいっぱいだよ」

「そっか、嬉しいです!!」

学ラン姿も可愛かったし、俺が過ごした学校で直くんが過ごすのももちろん悪くないけど、カールの場合と違って俺は直くんを守れない。可愛い直くんをうちの学校に一人で通わせるなんて絶対に考えられないんだから、直くんには絢斗さんが通った桜守で守られながら学校生活を楽しんでほしい。それは俺だけじゃなくてみんなの総意だろう。

「あ、あの店だよ!」

タコスと書かれた幟が見えて声を上げると、直くんは興味津々に外観を見つめていた。
ここはテイクアウトもできるけれど、中で食べることもできる。

今回は大人数なこともあって、このお店のおじさんに頼んで貸切にしてもらったんだ。
普段は貸切とか対応していないみたいだけど、よく食べにきていて顔馴染みだってことはもちろん、今回はじいちゃんや伯父さんたちも一緒だと話をしたから快諾してくれた。
なんせ、この店のおじさんも俺たちと同じ高校出身で、もはや伝説となっているじいちゃんや伯父さんたちのことをものすごく尊敬しているんだ。そもその俺がその人と親戚だってことをぽろっと話したことがきっかけで好感を持ってくれたんだったし。

だから、貸切にできたのは俺のおかげじゃなくて、伯父さんたちのすごさのおかげだ。
本当にどこに行ってもじいちゃんたちの壁が高すぎて大変だが、俺はいつかそれを乗り越えられるように頑張るだけだ。

このタコス屋は良くいえば趣のある、悪くいえば古びた小さな店だけど、味は抜群に美味しいし、店の雰囲気もいい。
直くんも気に入ってくれたら嬉しい。

扉を開けると、ガランガランと店の大きさの割に大きな音を立てるドアベルが出迎えてくれる。
その音にピクッと身体を震わせて俺に抱きついてくる直くんが可愛い。

「おじさん、来たよ」

「ああ、昇くん。待ってたよ」

いつものエプロン姿のおじさんだが、少し浮かれている様子なのはきっとじいちゃんが伯父さんたちに会えるから緊張しているんだろう。

「今日は貸切にしていただいたそうでありがとう」

「え、いえ。そんなっ。うちみたいな小さい店に大先輩方がお越しいただける機会なんてそうそうありませんから。今日はゆっくりしていってください」

「ははっ。大先輩方か。そう言ってもらえて嬉しいよ」

じいちゃんの笑い声におじさんは、まるでサンタにでもあったような目をキラキラと輝かせて喜んでいた。
店のおじさんにとってはこんなにも尊敬できる相手ってことなんだよな……。ほんと、じいちゃんたちってすごいな。

「直くん、席に着いて、メニュー見てみようか」

「は、はい」

直くんは店の雰囲気が気に入ったのか笑顔でキョロキョロと辺りを見回していた。
俺が好きな店に直くんを連れてくることができて本当に嬉しいな。

「ここら辺がタコスメニューだけど、食べてみたいものある?」

中の具材に結構なバリエーションがあってここのはそのどれもうまい。

「えっと……」

「直くんはまず定番のものから食べてみるといいんじゃないか? 私はキッチンカーでよくこれを食べているよ」

直くんの隣に腰を下ろしたじいちゃんがメニューを指差しながら勧める。

「はい、僕、それにします」

直くんはじいちゃんの言葉にすぐに賛同した。
そうか、選ばせるよりまず俺が勧めた方がよかったな。
だいぶ自分で選ぶのも慣れてきたと思ったけど、バリエーションが多いとまだ難しいのかもしれない。

「直くん、チキンも食べようか。手で持ってたべるのが美味しいんだ」

「手で? わぁ、食べてみたいです!」

喜ぶ直くんの隣で、じいちゃんはそれでいいんだと言わんばかりに頷いてくれた。
今日の外出は色々と勉強になるな。
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