ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

文字の大きさ
上 下
211 / 360

二人の夜の始まり

しおりを挟む
<side卓>

征哉くんたちが帰って早々に絢斗があのアプリのインストールをしようと直くんを誘うと、喜んで私にスマホを差し出した。直くんが遠慮することなく絢斗の誘いを受けられるようになったのはとてもいいことだ。

待たせている間に明日行くパンフレットを渡し、それに見入っている間に二人のアプリの支払いに私のカード情報を入れておいた。私が所有するブラックカードは利用限度額は一応五千万ほどとなっているが、例えば自家用ジェットを買おうとしても断られることはない。それくらいの信用は持っている。まぁ、絢斗と直くんがどれだけ散財してもそこまで使うことはないだろうがたとえ使われても懐は痛みはしないだろう。

それよりもこの情報を入れることで絢斗と直くんが何を買ったかが把握できるのが楽しい。きっと昇もそんな思いを早くしたいと望むことだろう。もうしばらくは私だけの楽しみにしておいてもらおうか。愛しい夫と可愛い息子の欲しいものを好きなだけ買ってあげられる生活を独り占めしたいのだ。

アプリをインストールして二人にスマホを返すと、早速そのアプリで商品を選び始めた。

最初に選ぶものが毅たちのマフラーを編むための毛糸だというのは少々嫉妬するところではあるが、二人で仲良く選んでいる姿を見ていられるのだから、よしとしよう。

絢斗も私の毛糸を選んでくれているようだが、絢斗の手作りは期待しないようにしている。絢斗がそう思ってくれるだけで十分なのだ。

しばらくして私たちの部屋に食事が運ばれる。
地のものをふんだんに使った料理の数々に私でさえ感動したのだから、直くんの感動はこの上ないものだったろう。
刺身や天ぷらは我が家でも、それに今日の天沢くんの店でも食べたが、山菜の天ぷらや松茸はここが初めてだろう。

私の好きな食材だが、直くんも気に入ってくれたら嬉しいものだ。

初めての料理に少し緊張している様子だったけれど、隣に昇がいるからだろう。
安心して口をつけるように微笑ましく思えた。絢斗はもちろん、直くんも美味しいと言ってくれて嬉しい。
可愛い二人を愛で日本酒を飲みながらの食事は最高に美味しかった。

「ふぅ、お腹いっぱい」

「絢斗もよく食べたな」

「うん。だってすごく美味しかったもん」

「ああ。家族水入らずで食べる旅館の食事は最高だな」

食べ終わった食器を片付けてもらい、明日の朝食時間を確認すると30分前に連絡を入れればすぐに用意してくれるそうで助かる。さすが貴船コンツェルンの保養所だな。

「ねぇ、卓さん。そろそろ温泉に入りたいな」

「――っ、そ、そうか。ならそうしようか。昇、直くんもあとは部屋でゆっくり過ごすといい。朝食はまたここで食べよう」

「はーい。パパ、あやちゃん。おやすみなさい」

「ああ。おやすみ。昇、わかってるな?」

「わ、わかってるよ。伯父さん、絢斗さん。おやすみなさい」

最後にしっかりと念を押しておいたから大丈夫だろう。これからの時間は夫夫だけの時間を楽しむとしようか。

二人を玄関まで見送り、扉が閉まったと同時に絢斗の甘い唇を奪った。

<side昇>

――卓さん、そろそろ温泉に入りたいな。

絢斗さんの言葉に伯父さんの目が光った気がした。絢斗さんからの誘いを断らせるわけにはいかない。
朝から家族の時間は十分に過ごしたのだから、そろそろ伯父さんと絢斗さんの二人っきりにしてあげないとな。

聞き分けのいい直くんを連れて部屋に戻ろうとしたところで伯父さんに最後の念押しをされたけど俺だってわかってる。直くんはまだ子どもだ。俺だって18になったとはいえ、親の力で生活している身。責任を取れない行動をするわけにはいかないとわかってる。

一緒にお風呂に入って、直くんがこれから不安に思うかもしれないことを先取りで教えてあげるだけだ。
それ以上は絶対にしないと心に決めて、俺は直くんと俺たちの部屋に戻った。

ここから朝まで二人っきりだと思うと緊張するし、興奮もするが今日のメインはあくまでも直くん。
俺の欲望を押し付けるなんてことにならないように気をつけないとな。

「俺たちも温泉に入ろうか」

「はい。着替えを用意しますね」

絢斗さんと一緒に用意したお泊まりバッグの中から下着を取り出すのを見るだけで興奮してしまう。
できるだけ見ないように、俺も自分の着替えを準備して一緒に露天風呂があるテラスに向かった。


  *   *   *


大人たちのお部屋の様子も需要ありますか?
あったら露天風呂込みの甘々な夜を書いてみようかな。
しおりを挟む
感想 543

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話

天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。 レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。 ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。 リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

愛する人

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」 応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。 三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。 『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。

処理中です...