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二人の夜の始まり

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<side卓>

征哉くんたちが帰って早々に絢斗があのアプリのインストールをしようと直くんを誘うと、喜んで私にスマホを差し出した。直くんが遠慮することなく絢斗の誘いを受けられるようになったのはとてもいいことだ。

待たせている間に明日行くパンフレットを渡し、それに見入っている間に二人のアプリの支払いに私のカード情報を入れておいた。私が所有するブラックカードは利用限度額は一応五千万ほどとなっているが、例えば自家用ジェットを買おうとしても断られることはない。それくらいの信用は持っている。まぁ、絢斗と直くんがどれだけ散財してもそこまで使うことはないだろうがたとえ使われても懐は痛みはしないだろう。

それよりもこの情報を入れることで絢斗と直くんが何を買ったかが把握できるのが楽しい。きっと昇もそんな思いを早くしたいと望むことだろう。もうしばらくは私だけの楽しみにしておいてもらおうか。愛しい夫と可愛い息子の欲しいものを好きなだけ買ってあげられる生活を独り占めしたいのだ。

アプリをインストールして二人にスマホを返すと、早速そのアプリで商品を選び始めた。

最初に選ぶものが毅たちのマフラーを編むための毛糸だというのは少々嫉妬するところではあるが、二人で仲良く選んでいる姿を見ていられるのだから、よしとしよう。

絢斗も私の毛糸を選んでくれているようだが、絢斗の手作りは期待しないようにしている。絢斗がそう思ってくれるだけで十分なのだ。

しばらくして私たちの部屋に食事が運ばれる。
地のものをふんだんに使った料理の数々に私でさえ感動したのだから、直くんの感動はこの上ないものだったろう。
刺身や天ぷらは我が家でも、それに今日の天沢くんの店でも食べたが、山菜の天ぷらや松茸はここが初めてだろう。

私の好きな食材だが、直くんも気に入ってくれたら嬉しいものだ。

初めての料理に少し緊張している様子だったけれど、隣に昇がいるからだろう。
安心して口をつけるように微笑ましく思えた。絢斗はもちろん、直くんも美味しいと言ってくれて嬉しい。
可愛い二人を愛で日本酒を飲みながらの食事は最高に美味しかった。

「ふぅ、お腹いっぱい」

「絢斗もよく食べたな」

「うん。だってすごく美味しかったもん」

「ああ。家族水入らずで食べる旅館の食事は最高だな」

食べ終わった食器を片付けてもらい、明日の朝食時間を確認すると30分前に連絡を入れればすぐに用意してくれるそうで助かる。さすが貴船コンツェルンの保養所だな。

「ねぇ、卓さん。そろそろ温泉に入りたいな」

「――っ、そ、そうか。ならそうしようか。昇、直くんもあとは部屋でゆっくり過ごすといい。朝食はまたここで食べよう」

「はーい。パパ、あやちゃん。おやすみなさい」

「ああ。おやすみ。昇、わかってるな?」

「わ、わかってるよ。伯父さん、絢斗さん。おやすみなさい」

最後にしっかりと念を押しておいたから大丈夫だろう。これからの時間は夫夫だけの時間を楽しむとしようか。

二人を玄関まで見送り、扉が閉まったと同時に絢斗の甘い唇を奪った。

<side昇>

――卓さん、そろそろ温泉に入りたいな。

絢斗さんの言葉に伯父さんの目が光った気がした。絢斗さんからの誘いを断らせるわけにはいかない。
朝から家族の時間は十分に過ごしたのだから、そろそろ伯父さんと絢斗さんの二人っきりにしてあげないとな。

聞き分けのいい直くんを連れて部屋に戻ろうとしたところで伯父さんに最後の念押しをされたけど俺だってわかってる。直くんはまだ子どもだ。俺だって18になったとはいえ、親の力で生活している身。責任を取れない行動をするわけにはいかないとわかってる。

一緒にお風呂に入って、直くんがこれから不安に思うかもしれないことを先取りで教えてあげるだけだ。
それ以上は絶対にしないと心に決めて、俺は直くんと俺たちの部屋に戻った。

ここから朝まで二人っきりだと思うと緊張するし、興奮もするが今日のメインはあくまでも直くん。
俺の欲望を押し付けるなんてことにならないように気をつけないとな。

「俺たちも温泉に入ろうか」

「はい。着替えを用意しますね」

絢斗さんと一緒に用意したお泊まりバッグの中から下着を取り出すのを見るだけで興奮してしまう。
できるだけ見ないように、俺も自分の着替えを準備して一緒に露天風呂があるテラスに向かった。


  *   *   *


大人たちのお部屋の様子も需要ありますか?
あったら露天風呂込みの甘々な夜を書いてみようかな。
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