ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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可愛い天使

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<side昇>

俺が選んだドレスを直くんが着てくれる。今までにも制服や着ぐるみパジャマなんかも着てくれたけれど、バッチリとヘアメイクまでしてドレスを着てくれるのとはまた違った楽しみがある。

直くんの支度時間が俺には何時間にも感じられるほど、楽しみでたまらなかった。

そして、待ちに待った直くんが部屋に来た。まず先に見えたのは綺麗な着物を着た絢斗さんの姿。
でも、俺の目はそのすぐ後ろにいる直くんに釘付けになっていた。

いつも俺が乾かしているストレートの髪が、ふわっと柔らかくカールしていて、大きな目がさらにぱっちりと可愛さを増していて、ほっぺたは撫でたいほど柔らかそうで、唇はぷっくりとしてツヤツヤしている。

そして何より俺が選んだピンクベージュのドレスが可愛い直くんを引き立てていて、とんでもなく似合っている。
頭から足先までその全てが可愛すぎて、言葉にならない。

ああ……天使だ、直くんは天使だったんだ……。俺の天使……。

あまりの可愛さに茫然と直くんを見つめていると、突然背中に大きな衝撃が来て

「昇! 何してるんだ!」

と伯父さんの怒鳴り声が飛んできた。

「――った!! な、何!?」

「何じゃない!! お前は直くんに何も言わずに何してるんだ!」

「えっ……」

伯父さんに怒鳴られてパッと直くんを見ると、大きな目に涙が潤んでいるのがわかる。

「あっ……」

俺が自分がしでかしてしまったことを理解して、一気に血の気が引いていく。

「ち、違うんだ! 直くんっ!! 俺、直くんがあまりにも可愛すぎて見惚れちゃって……っ!! 本当なんだ!! もう、直くんが、天使すぎて、やばくて、俺っ……」

「……天使、って……ふふっ」

悲しげな顔をしていた直くんが一気に笑顔を見せてくれる。

「昇さん、言い過ぎですよ」

「そんなことない!! 本当に直くんは俺の天使だよ」

「昇さん……っ、嬉しいです」

嬉しそうに抱きついてくれる直くんを抱きしめながら、そっと伯父さんに視線を向けるとまだ少し怒っていたようだったけれど、絢斗さんは笑ってくれていてホッとした。

ああ、でも本当に可愛いと反応できなくて困る。
伯父さんみたいにすぐに反応できるように訓練しないとな!

「絢斗、中に入って休もうか」

伯父さんがさっと絢斗さんを抱きかかえるのを見て、俺も真似をすることにした。
抱きついてくれている直くんをさっと抱きかかえて部屋の中に入る。

「わっ、昇さんっ」

「ドレスや着物を着ている時はこうしてもらうものなんだよ」

「そう、なんですか?」

「ああ、大好きな相手にだけだけどね」

直くんは俺の言葉に嬉しそうに頷いた。

<side卓>

可愛い直くんを見て、昇天してしまった昇の気持ちはよくわかる。絢斗が女神なら、直くんは天使のように可愛いのだから当然だ。

だが、昇が何も反応しないせいで悲しむ直くんの顔は見たくない。ほら、昇が何も言わないから泣きそうになっている。

私はすぐに昇に喝を入れ叱りつけると、昇はようやく自分がしでかしたことに気づき、直くんが可愛すぎて反応できなかったことを謝罪した。

素直な直くんは昇のいうことをすぐに信じてくれて助かったが、涙まで流させていたら許せなかったな。

なんとか直くんにも笑顔が戻り、結婚式が始まるのを待っていると、

「おはようございます。お邪魔してよろしいですか?」

と声が聞こえた。

「どうぞ」

部屋に入ってきたのは、蓮見周平くんと浅香敬介くん。彼らも今日の結婚式の招待客であり、絢斗と直くんの着物とドレスを用意してくれた功労者だ。

「ああ、周平くん、浅香くん。おはよう。君たち二人のおかげでうちの可愛い姫たちがさらに華やかになったよ」

「わぁ、緑川教授!! とてもよくお似合いです!!」

「ありがとう。敬介くんのところのお着物なんだってね。とっても綺麗で気に入ったよ」

「ありがとうございます。あの、それでそっちの可愛い子は?」

「私と卓さんの息子だよ。直くんっていうんだ」

「えっ?? 息子、さん? 男の子ですか?」

「うん。周平くんのドレスを着せてもらってヘアメイクもしてもらったの! でも、ほとんどそのままだけどね」

「ええーーっ、すっごく可愛い!! ねぇ、周平さん!!」

「ああ。うちの店のモデルにしたいくらい可愛いな」

二人からマジマジと見つめられて、直くんは恥ずかしそうに昇に抱きついた。それが昇には嬉しかったようだ。

「ああ、ごめんね。恥ずかしがらせちゃったかな? でも本当にすごく可愛いよ」

「あ、ありがとうございます……」

直くんは顔を真っ赤にしながらも、二人にお礼を言っていた。

「ねぇ、敬介くんもお着替えするんでしょう?」

「えっ?」

「ほら、緑川教授もそう言ってくださっているから、敬介……」

「ふふっ、はい。最初からそのつもりでしたよ。こういうのも楽しいですからね」

どうやら、ドレスを用意してくれる時からこうなることをわかってくれていたようだ。

「じゃあ、私は着替えに行ってきますね」

浅香くんがそう言って部屋から出ようとしたその時、

「おはようございます。失礼します」

と志摩くんの声が聞こえた。
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