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衣装部屋に行こう!

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「ああ、入ってくれ」

「失礼します」

部屋に入ってきた志摩くんと谷垣くんは、すぐ近くにいた周平くんと浅香くんを見て

「お久しぶりですね」

と笑顔を見せた。

「そうか、君たちは知り合いだったんだな」

「はい。一花さんにグリを譲っていただくときに私と尚孝さんで浅香さんと蓮見さんのところに伺ったんですよ」

「ああ、なるほど。そういうことか」

志摩くんと言葉を交わしていると、谷垣くんの視線が私の隣に向きっぱなしなことに気づいて、

「谷垣くん、何か聞きたいことでもあるかな?」

と尋ねてみた。

「えっ、あの……もしかして、お隣にいらっしゃるのは絢斗さん……?」

「そう! 私だよ」

「あの、じゃあ昇くんの隣にいるのは直くんですか?」

目を丸くしながら尋ねてきた。

「せいかーい! 周平くんと敬介くんが綺麗なドレスとお着物を用意してくれたから着替えたんだよ」

「どうして着替えを?」

「今日招待されているお客さんが未知子さん以外男性ばかりなんだよ。それだと少し華やかさに欠けるでしょう? 今日はこのお店のパンフレット撮影だってことだし、女性の割合があまりにも少ないと変だしね。それで私たちがお着替えすることになったんだ。綺麗にヘアメイクもしてもらったから、似合ってるでしょう?」

絢斗が屈託のない笑顔を見せると、谷垣くんは大きく頷いた。

「絢斗さんも直くんもすごく良く似合ってます。磯山先生も昇くんもお二人の可愛い姿を見られて幸せですね」

「ああ、本当にそう思っているよ。だから、谷垣くんも志摩くんを幸せにしてはどうかな?」

「えっ? それって……」

「それ、私も思ってた! ねぇ、尚孝くんもお着替えしよう!! ちょうど今から敬介くんもお着替えをしにいくところだったんだよ。一緒に行こう!!」

「えっ? でも、僕が着替えなんて……」

少し困った様子で志摩くんに助けを求めるように見つめると、志摩くんは笑顔で谷垣くんを見た。

「尚孝さんが着替えをされるなら、私も見てみたいです。きっとドレスでも着物でも似合うと思いますよ」

「もう……唯人さんにそんなこと言われたら、断れないじゃないですか……」

「じゃあ、断らないでください。楽しみにしてますよ」

志摩くんが優しく声をかけると、谷垣くんはそれはそれは嬉しそうに頷いていた。

「じゃあ、着替えに行こうか。志摩くんは忙しいでしょう? 尚孝くんのは私が選んであげる。敬介くんのは……」

「大丈夫です。敬介には私が特別に誂えたドレスを用意しています。きっと敬介ならそれを選んでくれるはずです」

周平くんはやはり最初から着替えさせたいと思っていたのだろう。浅香くんもそれをわかっていたから、拒むこともしなかったし。二人はお互いのことをよく理解しているようだ。

「じゃあ、行こうか。直くんはここで待ってる? 一緒に行く?」

「あ、えっと……一緒に……」

「じゃあ行こうか」

昇はそばにいるが、絢斗もいないこの部屋には直くんには居心地が悪いと思ったのだろう。絢斗はそういう気遣いに長けている。

昇は直くんを無理に引き留めることもせず、衣装部屋まで送ると言って、絢斗と浅香くん、そして谷垣くんと共に部屋を出ていった。

<side直純>

昇さんに抱き抱えられたまま、部屋で待っていると人が入ってきた。
怖そうな人と、優しそうな人。どちらもパパたちの知り合いみたいだ。怖そうと思ったけど、笑顔が優しいことに気づいてホッとする。

話を聞いていると、僕とあやちゃんが着ているドレスと着物を用意してくれた人みたい。可愛いと言われて恥ずかしかったけれど、嬉しかった。

話の流れで、優しそうな人もお着替えをすることになった。仲間が増えるのはなんだか嬉しい。ちょうどその時に尚孝さんと志摩さんが部屋にやってきた。

僕とあやちゃんの姿を見て、似合っていると言ってくれて嬉しい。でも尚孝さんも似合いそうだけどな。
そう思っているとパパとあやちゃんが尚孝さんにもお着替えを勧め始めた。

最初は遠慮していたけれど、志摩さんからお願いされたら断れなかったみたい。僕も昇さんに言われたら断れないだろうから同じなのかも。

あやちゃんが尚孝さんのお着替えを手伝うと言って部屋から出ていくことになり、僕はどうしたらいいんだろうと思っていると一緒に行く? と声をかけてくれた。

もちろん昇さんがそばにいてくれるのは嬉しいしホッとするけれど、おっきな大人な男の人ばかりの中でドレスを着た僕が一人っていうのはなんとなく寂しい気がして、あやちゃんたちについていくことにした。

昇さんはがっかりしちゃったかなと思ったけど、

「じゃあ、衣装部屋まで送っていくね」

と笑顔を見せてくれてホッとした。

みんなで衣装部屋に入ると、昇さんはすぐにさっきの部屋に戻って行った。

「ああ、本当に直くん。可愛い!! ドレス、すっごく似合ってるね」

「ありがとうございます。これ、昇さんが選んでくれたんです」

「そっか。直くんに似合うものをよくわかってくれてるね」

尚孝さんが昇さんのことも褒めてくれるから嬉しいな。

「敬介くんはドレスだったよね。尚孝くんはどっちにしようかなぁ……。やっぱり、お着物が似合いそう!! 敬介くん、どう思う?」

「はい。僕も彼は着物が似合うと思いますよ」

「そうだよね。じゃあ、尚孝くんは着物にしようか」

「は、はい。もう絢斗さんにお任せします」

ということで尚孝さんはお着物に決まったみたい。どんなお着物になるか楽しみだな。
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