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直くんの喜び

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その日の夜は、悶々と泊まりの夜のことを考えながら過ぎて行った。

その間も俺の隣には可愛い直くんがいて、この子と一緒に温泉に入ることを考えただけで興奮してくる。

それなのに、肌の接触は禁止だなんて……伯父さんもかなり無茶なことを言う。

まぁでも触ったり、逆に直くんに触られたりしたら我慢できる自信がないのは確かだ。
学ランを着せた時、肌着も着てなかったから丸見えになった乳首を見ただけでやばいくらいに興奮したのを覚えてる。
いや、あれは忘れようと思ったって忘れられないけれど。

乳首であんなに興奮したんだ。

直くんの全てを見たら興奮しないわけがない。

俺のとは全然違うんだろうな……。

「――っ!!!」

直くんの顔を見ながら下半身を想像するだけで、俺の中心に熱が篭ってくる。

想像だけでこんなだぞ。
本当、考えないといけないな。

結局泊まりのことが気になって寝付けず、朝方ようやく数時間眠ったからだけで、起きる時間を迎えた。

「んっ……の、ぼるさん……おはよう、ございます……」

「おはよう。よく眠れた?」

「はい。あれ? 昇さんは眠れなかったですか?」

「いや。大丈夫。今日はカールが来るから、ちょっと早く起きただけだよ」

「そっか、楽しいことがあると早く起きちゃうって言いますね」

「ああ。そうなんだよ。俺、先に身支度整えるから、直くんはまだ早いからのんびりしてて」

「はーい」

直くんの笑顔を見ると、今までよりもさらに表情が柔らかくなった気がする。

正式に伯父さんの息子になったことが、こんなにも直くんの精神的緊張を和らげることになったのだと思うと、迫田という家族、特に母親の存在にどれだけ縛られていたかがわかる。

普通の養子縁組ではなく、特別養子縁組で伯父さんの実子になれて本当に良かった。

さっと身支度を済ませて、直くんと交代し、一緒にリビングに向かうとちょうど伯父さんたちもリビングにやってきた。

直くんは絢斗さんとソファーに腰を下ろし、楽しそうにおしゃべりを始めるのを微笑ましく思いながら、俺と伯父さんはキッチンで朝食を作り始めた。

「昇、毅から連絡あったか?」

「いや、特になかったけど、何かあった?」

「飛行機に乗る前に二葉さんが直くんと少し長く過ごしたいから、予定より早めに空港に来て欲しいと言っていた。直くんとお茶をしたいそうだよ」

「はぁーっ、母さんったら……」

「まぁ、そういうな。当分会えなくなるのが寂しいんだよ。直くんにドーナツを食べさせたいって言っているから、朝食は少し少なめにしておこう」

「わかった」

母さん、直くんのこと気に入ってたもんな。
今の直くんの様子を見たら、前に会った時とは変わっていることに気づくだろう。
そういうところは目敏いからな。

俺と直くんが恋人同士になったのも気づかれるかもしれないな。
いや、もう絢斗さんから聞いているのかもしれないけど、まぁ悪いことはしてないから堂々としておけばいいか。

いつもの七割程度の朝食を食べ、あっという間に家を出る時間だ。

「直くん、準備できた?」

俺たちの部屋に来た絢斗さんは、なぜか嬉しそうにしている。

「はい。おでかけ楽しみです!」

「そうだね。私も楽しみ。おでかけの記念に直くんにこれ」

そう言って、絢斗さんは直くんの頭に帽子を被せた。

「私とお揃いだよ」

「わぁー、あやちゃんとお揃い! 嬉しい!!」

「うん、よく似合ってる」

「昇さんも似合ってるって思いますか?」

「ああ、よく似合ってるよ。可愛い」

「やったぁ!」

無邪気に喜ぶ直くんを見て、俺も絢斗さんも顔が綻ぶ。
本当にこんなに素直に直くんが感情を出せるようになって嬉しい限りだ。

きっとこの帽子には万が一のための顔隠しの意味もあるんだろうけれど、直くんが絢斗さんとお揃いを喜んでいるのならそれをわざわざいう必要もない。

そうして、俺たちは喜ぶ直くんを連れて駐車場に向かった。

直くんにしてみれば、かなり久しぶりの外出だ。
緊張もしているかもしれないが、俺たちがついているから安心してもらいたい。

こう考えると、直くんと二人で空港に行こうだなんて、本当に俺……無謀だったな。

伯父さんに教えてもらって本当に良かった。

地下駐車場から、道路に出ると窓から一気に外の景色が見えてくる。

直くんはそれを感慨深そうに見て、

「僕、外に出られるんですね……」

とポツリと呟いた。
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