110 / 287
二人が会う場所は
しおりを挟む
「絢斗、直くんには話をしたのか?」
「うん。今、よかったねって言ってたところ」
「そうか。それでだが、今櫻葉さんと話をしたんだが、早ければ今週中には直くんと一花くんが会える場を設ける機会を作れそうだ」
「えっ、そんなに早く?」
「こういうことはあまり時間を置かない方がいいと思ってね」
そういうと直くんも絢斗さんも大きく頷いた。
「それで、二人が会う場所なんだが……我が家にきてもらおうと思っている」
「えっ? でも一花くんは……」
歩けないのにわざわざ出向いてもらうなんて……。
そう思ったけれど、
「ああ。足の怪我も考慮した上で、征哉くんが所有しているキャンピングカーの中で対面させるのはどうかという話になった」
という言葉に俺はつい鸚鵡返ししてしまった。
「キャンピングカー?」
「ああ、以前征哉くんが一花くんを連れて遠出する機会があって…………ああ、そうだ。未知子さんが我が家に来てくれた日だよ。その遠出の外出で一花くんを疲れさせないために用意したのが、そのキャンピングカーらしい。車内には一花くんがのんびりと過ごせるようにベッドも用意されているというから、それで我が家の駐車場まで来てもらう。その中なら、直くんと一花くんだけでゆっくりと話ができるだろう」
まさかの場所の提案に俺はただただ驚きしかなかったが、確かにそれなら直くんは外に出ずにすむし、一花さんものんびりと寛げる。
それなら安心かも。
「櫻葉さんの提案だが、征哉くんもおそらく了承してくれるだろうから、そこで会うことになるのはほぼ決まりだな」
「こんなふうにとんとん拍子に決まるなら、いい方向にいきそうだね。ね、直くん」
「僕は……こんなにも早く一花さんに会って謝罪ができるのが何よりも嬉しいです。パパ、ありがとうございます」
「いや、みんなが直くんと一花くんの気持ちを考慮した結果だ。さぁ、いい気分になったところで朝食にしよう。昇、準備を手伝ってくれ。絢斗と直くんは着替えておいで」
「はーい」
伯父さんはきっと話をしながらもまだパジャマ姿だった絢斗さんが気になっていたんだろう。
さっと俺をキッチンに連れていくと、
「絢斗から抱きつかれなかったか?」
と眼光鋭く問いかけられた。
こ、怖いっ!
「いや、あの……確かに抱きつかれそうにはなったけど、身体を逸らしたから大丈夫。本当だよ!」
「そうか、ならいい」
嘘をついているわけではないけれど、伯父さんにじっと目を見つめられると冷や汗が出る。
とりあえずは俺の主張を信じてくれたようで助かった。
「じゃあ、直くんと絢斗が好きなパンケーキにしようか。そのほうがすぐにできる」
そう言って作業を始めた。
伯父さんの指導でふわふわのパンケーキが焼けるようになった俺が焼いている間に、伯父さんはパンケーキに乗せるベリー系のフルーツを切り分け、それとは別に俺たち用の甘くないパンケーキのおかずであるベーコンとオムレツを焼いてくれていた。
白い器に小さなパンケーキを二枚重ねて、生クリームと切り分けたフルーツを乗せ、チョコレートソースを用意した。
俺たちの皿には大きめのパンケーキ三枚とちぎったレタスとカリカリに焼いたベーコンとオムレツを一緒に並べてなんともボリュームのあるパンケーキが出来上がった。
直くん用の甘いカフェオレと俺用のブラックを淹れて準備は整った。
同じように伯父さんもコーヒーを淹れて出来上がったようだ。
やっぱり二人で準備すると早い。
テーブルに並べていると、ちょうど直くんと絢斗さんがやってきた。
「わぁ、美味しそう!! ねぇ、直くん」
「はい。すっごく美味しそうです」
その笑顔がいつも以上に嬉しそうに見えるのはきっと一花さんとの出会いの場がもうすぐそこまで近づいているからだろう。
もちろん緊張はしているだろうし、不安もあるだろうけど、自分が決めたことをできるのが嬉しいに違いない。
話を聞いている限り、一花さんが直くんを罵ったり、怒鳴ったりしない人であるのは想像できるけれど、本当にどんな人なのか俺も正直会ってみたい。
早いうちにと言っていたけれど、いつになるんだろうな……と思っていると、朝食を終えてすぐに伯父さんのスマホに連絡が来たようだ。
「直くん、会うのは明後日の午後三時に決まったよ」
その言葉に直くんはグッと表情を引き締めた。
そして、あっという間に一花さんと会う日がやってきた。
「うん。今、よかったねって言ってたところ」
「そうか。それでだが、今櫻葉さんと話をしたんだが、早ければ今週中には直くんと一花くんが会える場を設ける機会を作れそうだ」
「えっ、そんなに早く?」
「こういうことはあまり時間を置かない方がいいと思ってね」
そういうと直くんも絢斗さんも大きく頷いた。
「それで、二人が会う場所なんだが……我が家にきてもらおうと思っている」
「えっ? でも一花くんは……」
歩けないのにわざわざ出向いてもらうなんて……。
そう思ったけれど、
「ああ。足の怪我も考慮した上で、征哉くんが所有しているキャンピングカーの中で対面させるのはどうかという話になった」
という言葉に俺はつい鸚鵡返ししてしまった。
「キャンピングカー?」
「ああ、以前征哉くんが一花くんを連れて遠出する機会があって…………ああ、そうだ。未知子さんが我が家に来てくれた日だよ。その遠出の外出で一花くんを疲れさせないために用意したのが、そのキャンピングカーらしい。車内には一花くんがのんびりと過ごせるようにベッドも用意されているというから、それで我が家の駐車場まで来てもらう。その中なら、直くんと一花くんだけでゆっくりと話ができるだろう」
まさかの場所の提案に俺はただただ驚きしかなかったが、確かにそれなら直くんは外に出ずにすむし、一花さんものんびりと寛げる。
それなら安心かも。
「櫻葉さんの提案だが、征哉くんもおそらく了承してくれるだろうから、そこで会うことになるのはほぼ決まりだな」
「こんなふうにとんとん拍子に決まるなら、いい方向にいきそうだね。ね、直くん」
「僕は……こんなにも早く一花さんに会って謝罪ができるのが何よりも嬉しいです。パパ、ありがとうございます」
「いや、みんなが直くんと一花くんの気持ちを考慮した結果だ。さぁ、いい気分になったところで朝食にしよう。昇、準備を手伝ってくれ。絢斗と直くんは着替えておいで」
「はーい」
伯父さんはきっと話をしながらもまだパジャマ姿だった絢斗さんが気になっていたんだろう。
さっと俺をキッチンに連れていくと、
「絢斗から抱きつかれなかったか?」
と眼光鋭く問いかけられた。
こ、怖いっ!
「いや、あの……確かに抱きつかれそうにはなったけど、身体を逸らしたから大丈夫。本当だよ!」
「そうか、ならいい」
嘘をついているわけではないけれど、伯父さんにじっと目を見つめられると冷や汗が出る。
とりあえずは俺の主張を信じてくれたようで助かった。
「じゃあ、直くんと絢斗が好きなパンケーキにしようか。そのほうがすぐにできる」
そう言って作業を始めた。
伯父さんの指導でふわふわのパンケーキが焼けるようになった俺が焼いている間に、伯父さんはパンケーキに乗せるベリー系のフルーツを切り分け、それとは別に俺たち用の甘くないパンケーキのおかずであるベーコンとオムレツを焼いてくれていた。
白い器に小さなパンケーキを二枚重ねて、生クリームと切り分けたフルーツを乗せ、チョコレートソースを用意した。
俺たちの皿には大きめのパンケーキ三枚とちぎったレタスとカリカリに焼いたベーコンとオムレツを一緒に並べてなんともボリュームのあるパンケーキが出来上がった。
直くん用の甘いカフェオレと俺用のブラックを淹れて準備は整った。
同じように伯父さんもコーヒーを淹れて出来上がったようだ。
やっぱり二人で準備すると早い。
テーブルに並べていると、ちょうど直くんと絢斗さんがやってきた。
「わぁ、美味しそう!! ねぇ、直くん」
「はい。すっごく美味しそうです」
その笑顔がいつも以上に嬉しそうに見えるのはきっと一花さんとの出会いの場がもうすぐそこまで近づいているからだろう。
もちろん緊張はしているだろうし、不安もあるだろうけど、自分が決めたことをできるのが嬉しいに違いない。
話を聞いている限り、一花さんが直くんを罵ったり、怒鳴ったりしない人であるのは想像できるけれど、本当にどんな人なのか俺も正直会ってみたい。
早いうちにと言っていたけれど、いつになるんだろうな……と思っていると、朝食を終えてすぐに伯父さんのスマホに連絡が来たようだ。
「直くん、会うのは明後日の午後三時に決まったよ」
その言葉に直くんはグッと表情を引き締めた。
そして、あっという間に一花さんと会う日がやってきた。
1,577
お気に入りに追加
2,134
あなたにおすすめの小説
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!
ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー]
特別賞受賞 書籍化決定!!
応援くださった皆様、ありがとうございます!!
望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。
そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。
神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。
そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。
これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、
たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる