ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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僕の気持ち

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「僕の母が……彼を連れ出す手伝いをしたせいで、彼は両親と離れて施設で辛い生活をしていたんですよね」

「そうだね、施設が悪い場所だということではないけれど、一花くんの場合は、連れ去った犯人がその施設の責任者だったから、小さな頃から食事も満足に与えられないまま働かされて、学校にも通わせてもらえていなかったと聞いている。大体の施設は原則18歳まで居られるとされているんだけど、高校に進学しない場合はほとんどが中学卒業と同時に退所することになっているって知ってるかな?」

「はい……僕も、もうすぐ15歳で今、施設に入ってもすぐに出ないといけないかもしれないからっていうことで、パパが僕を預かってくれることになったので……」

あの時、パパが僕を引き取ってくれなかったら……今頃、こんなふうに幸せに過ごしては居られないだろう。
あと一年で施設を出なければいけないから、その後どうやって生きていくかを悩んでいたはずだ。
そう考えたら僕は恵まれすぎている。

「そうだったね。一花くんは中学校を卒業する年齢になった時に、ある店に養子という名目である店に引き取られたんだけど、実際には子どもとしてではなく、無料で使える労働力として朝から晩まで働かされていたようだよ」

「えっ……」

無料で、朝から晩まで……。
そんな酷すぎる。

「お金も何も持っていないからどんなに苦しくても逃げ出すこともできずにいたんだ。そんな生活を3年ほど続けていたその時に、たまたま買い出しに行かされていた彼を僕が怪我を負わせてしまったというわけだよ。そして、その店主は一花くんが歩けないとわかったら、もう労働力として使えないと思ったんだろうね。自分には関係ないと言って一花くんを捨てたんだ」

「ひどい……」

いいように使ってきたのに、怪我をして働けなくなったら捨ててしまうなんて……。
一花さんのことをなんだと思っているんだろう。

「その時、捨てられてしまった一花くんを保護して面倒を見ていたのが、貴船さんなんだよ」

「だから、あの時母に怒りを見せていたんですね」

「そうだね。間近で一花くんが苦しんでいたのを知っているから、その元凶ともなった君のお母さんがしたことが許せなかったんだろうと思う」

「当然です……それだけのことを、母はしたんですから」

もし、母さんが病院から一花さんを連れ去らなかったら……櫻葉さんの家で大切に育てられて、怪我もすることなく幸せに暮らしていたはずなのに。
母さんのせいで、一花さんも周りの人もみんな不幸になったんだ。
そんなことをしでかした母さんの息子なんて、敵と思われたって仕方がない。

「でもね、今日こうして僕に直純くんと話をする機会を与えてくれたのは、貴船さん自身なんだよ」

「えっ……」

「貴船さんはね、君が息子だというだけで手を差し伸べてあげなかったことを悔やんでいらっしゃったよ。両親を一気に失って、これから一人になってしまう直純くんに声をかけるべきだったとね」

「そんな……っ、僕は当然だと思ってます。貴船さんは何も悪くないです」

「でも、一番悪くないのは直純くんだよ」

「えっ……」

「僕は、わざとではなかったとはいえ実際に一花くんに怪我を負わせた。それは紛れもない事実で、たとえ一花くんが元通り歩けるようになったとしてもその罪と一生向き合っていこうと思ってる。でも、直純くんは違う。君のお母さんが事件を起こしたのは事実でも、その時に生まれてもなくて、その事実を知らなかった直純くんにはどうすることもできないよ」

「谷垣さん……」

「でもね、罪悪感を持ってしまう直純くんの気持ちもよくわかる。どうしたって忘れることなんてできないもんね。なんて言ったって自分の母親なんだから」

「はい……」

「じゃあ、どうしたい? 直純くんの気持ちを聞かせてくれないかな?」

「僕の、気持ち……」

人として、絶対にやってはいけないことをしてしまった母さんのことを、家族として謝りたい。
けれど謝ったとしても、一花さんの18年間の辛い人生は決して戻ってはこない、
それはよくわかっているけれど、どうしても謝らずにはいられない。
たとえ、一生許してもらえなくても僕は一生謝り続ける。
僕にできることはそれしかないんだから。

「僕は……一花さんに、直接謝りたいです……。決して許されなくても、母がしたことの謝罪をしたいです」

「わかった。それを貴船さんに伝えるよ」

「本当ですか?」

「うん。そのために僕は今日、ここにきたんだ。でもね、一つだけ約束して欲しい」

「約束?」

「うん。もし、一花くんに直接謝罪をして、もう謝らないでと言われたら、それ以上は謝らないであげてほしい」

「えっ、でも……」

「一花くんは、心にないことを言う子じゃないんだ。だから、彼の願いを聞き入れてあげて欲しい」

心にないことを言わない……。
と言うことは、一花さんから出てくる言葉は全て本心?
やっぱり一花さんは、神さまなのかもしれない。

「わかりました」

「うん、ちょっとは気持ちが晴れたかな?」

「はい。こうして自分の気持ちを誰かに話したりするのはあまりないことだったから」

「そうか。僕たちはいわば同志だよ。これからもお互いになんでも話ができる相手になりたいと思ってるんだけど、直純くんはどうかな?」

「――っ!! はい、僕……嬉しいです!!」

「ふふっ。よかった。じゃあ、握手!」

谷垣さんの差し出してくれた手にそっと乗せると、優しく包まれた。
その優しい温もりに僕はホッとしたんだ。



  *   *   *

いつも読んでいただきありがとうございます!
気づくの遅くなりましたが、このお話も前回で100話を迎えました。
ここまで続けてこられたのも読んでくださる皆様のおかげです。
ちょうど節目あたりで100話を迎えられて嬉しく思っています。
完結までしっかりと続けていきますのでこれからもどうぞよろしくお願いします!
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