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僕……幸せです

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<side直純>

昇さんがパパと毅パパとパーティーの準備をしている間、あやちゃんとふーちゃんとお話しするのはすごく楽しかった

「直くんね、昇くんのためにおにぎり作って持たせてるんだよ」

「ええ、本当?」

「はい。この前初めて作ったばっかりでまだ上手に作れないんですけど、昇さんが美味しいって言ってくれて……すごく嬉しいです」

「そう、よかったわ。あの子、たくさん食べるからお昼ご飯までもたないのよ。直くんがおにぎり作ってくれるなら安心ね。これからも作ってあげてね」

「はい!」

ふーちゃんにそう言ってもらえるのはものすごく嬉しい。
僕にも昇さんの役に立ててるんだって実感する。

「それにしても昇、うちにいる時よりもずっと手際がよくなったわ。ふふっ。ここでお義兄さんに勉強させてもらえてるのね」

「卓さんも昇くんがいて楽しいみたい。二人で作ると結構手の込んだものも作れるみたいだから喜んでるよ」

「そうなんだ、直くんに美味しいものを食べさせたくて頑張ってるのね」

「僕のために、申し訳ないです……」

「何言ってるの。直くんが可愛いから食べさせたいの。お義兄さんの親心は遠慮なんかかしないで受け取っていいの。ねっ、絢斗さん」

「うん。そうだよ。卓さん、直くんが美味しいって言ってくれるのが何より楽しいんだから」

「そうそう! 昇もよ。直くんが美味しいって言ったらもっと頑張ろうって気になるの。直くんのおかげで頑張れるのよ」

「あやちゃん……ふーちゃん……」

こんな優しい言葉をかけてもらえるなんて……。
僕、本当に幸せだ。

「そういえば、フランス出発はいつ?」

「来週末なの。しばらく直くんと会えないのは寂しいけど、昇の合格が決まったら一時帰国するわ。その時はまたお祝いしましょう!」

「それいいね! わぁー、楽しみ!」

「まぁ、昇がちゃんと合格してくれたら、だけどね」

「大丈夫です! 昇さん、毎晩僕が寝ている間も頑張ってますから、絶対に合格します!」

そういうと、ふーちゃんがキョトンとした顔で僕を見た。

えっ?
何かおかしなこと言ったっけ?

「もしかして……昇と直くんは一緒に寝てるの?」

「えっ……は、はい。あの、一緒に寝たらすごく落ち着くって言ったら、昇さん優しいから毎日一緒に寝てくれるって……だめ、でした?」

「ううん、違うの! 気にしないで! 昇が直くんと仲良くやれてるってわかって嬉しかっただけよ。昇も直くんと一緒に寝た方が勉強も捗るだろうし、これからもずっと一緒に寝てあげて! いい?」

「は、はい」

ふーちゃんの勢いに押されるように返事をしたけれど、ダメだって言われなかったことにはホッとした。
だって、もう昇さんと一緒じゃないと夜寝られる気がしないんだもん。

そんな話をしていると、

「直くん! 準備できたよ」

と昇さんが声をかけてくれた。

僕の膝と腕に抱っこされたクマさんを見て嬉しそうに笑ってくれるのが嬉しい。

今からご飯だからといって、そのクマさんたちをソファーの上に座らせると、なんとなく僕と昇さんが一緒に座っているみたいに見えて嬉しくなる。

いいなぁ、これ。

可愛いクマさんたちの姿にキュンキュンしながら、昇さんと一緒にダイニングに向かうと、テーブルに並べられたたくさんの料理に驚いてしまった。
ほとんどが見たことがないものばかり。

特に、昇さんが作ってくれたちらし寿司というのは、どんな味なのか想像もつかなくてドキドキした。

僕の目の前に取り分けられた料理がたくさん並んで、どれから食べようか悩んだけど、やっぱりちらし寿司から食べてみた。

初めてのちらし寿司はたくさんの味が一気に口の中に押し寄せてきてびっくりしたけどものすごく美味しかった。

どれもこれも美味しくてびっくりしたのに、あんまりいっぱいは食べられなくて寂しい。

すると、

「直くん。まだ大事なものが残っているから、料理はその辺にしておいた方がいいよ」

と昇さんに言われた。

大事なものがどんなものかわからないけど、楽しみでしかない。

「直くん。サプライズがあるから、目を覆うよ」

そう言われて、昇さんの大きな手が僕の目を隠した。

真っ暗で何も見えないけど、昇さんの手だと思うと怖くなかった。

何が起こるのかドキドキしてたけど、すっと手が離れていってまぶたに明るさを感じた。

「直くん、いいよ」

小声で囁かれて、僕はゆっくりと目を開けた。

「――っ!!!」

目の前に現れたのは、僕がずっと食べてみたいと思っていた丸いケーキ。
それも僕の想像よりもずっとずっと大きな丸いケーキが二段も乗っていた。

<直純くん 磯山家にようこそ! みんなで幸せになりましょう!>

お花の飾りと果物の前に嬉しいメッセージも書かれていて、動物さんたちもいっぱいいて……もうどこを見たらいいのかわからないくらいにすごいケーキで、これは夢なんじゃないかって思ってしまう。

「こ、これ……」

嬉しいのに、なんて言っていいのかもわからない。

言葉を忘れてしまったみたいだ。
何か言わなきゃ! と思うのに、どんどんケーキが見えなくなっていく。
やっぱり夢だったのかも……そう思った瞬間、突然大きな身体に包まれた。
その匂いにすぐに昇さんだと気づいた。

「直くん、何も言わなくていい。直くんが喜んでいるのは伝わったから。だから、無理しなくていいよ」

そんな優しい言葉をかけられて、僕は何かがおかしくなったみたいに、わんわん泣き続けた。

決して悲しいんじゃない。
嬉しすぎてどこかがおかしくなってしまったんだ。

しばらく泣き続けて、ようやく落ち着いた僕が顔を上げると、優しい昇さんの瞳に見つめられた。

「落ち着いた?」

「ごめんなさい、僕……」

「謝ることはないよ。みんな嬉しいとそうなってしまうんだ」

「そうよ、私たちが用意したケーキをそんなに喜んでもらえて嬉しいわ」

「毅パパ……ふーちゃん……」

「さぁ、家族みんなでケーキ食べようか」

「ははっ。そうだな。そうしよう」

「あやちゃん……パパ……」

「直くん、これから幸せになろうね」

「昇さん……もう、僕……幸せです」

必死に思いを伝えると、昇さんがぎゅっと抱きしめてくれた。
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