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特別な日

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<side昇>

ベッドで直くんが待っていると思うと、すぐにでも直くんの元に戻ってやりたいと思う。
けれど、身体がいうことを聞かない。

なんで直くんはあんなに可愛いのだろう。
普段でもものすごく可愛いのに、風呂上がりの威力は異次元だ。

ほんのりと頬をピンクに染め、美味しそうにレモン水を飲み干すあの姿を見るだけで興奮してくるのだから、どうしようもない。

伯父さんの知り合いの、将臣さんもこんな衝動と必死に戦っていたんだろうか。
それも十年以上も……。

早く会って、この対処法を教えて欲しいものだ。

そんな興奮状態にあっても直くんの髪を乾かす権利を伯父さんや絢斗さんに譲るわけにはいかない。
あれは俺のだ。

俺に身を預けてウトウトしてくれる無防備な姿を見られるのが、どんなに嬉しいか。
後ろからぎゅっと抱きしめたい衝動をグッと堪えて、今日も直くんの髪を乾かした。

手を繋いで俺の部屋に連れて行き、ベッドに寝かせると嬉しそうな表情を見せる。
俺の匂いが好きなのだと全身で表現しているようで嬉しい。

あんなのを見せられて、何もしないまま直くんの元に戻れない。

だから、直くんが待っているとわかっていても俺は欲望を発散しなければいけないんだ。

目の奥に焼き付けておいた直くんの可愛い姿を思い出しながら、刺激を与えれば欲望はあっという間に弾け飛ぶ。
それを何度か繰り返して、やっと自室に戻ると不安に満ち溢れたような表情で直くんが俺の名前を呼んだ。

自分の欲望に負けてしまったために直くんを不安にさせてしまったかと慌ててベッドに駆け寄ると、直くんは俺に腕を伸ばした。

抱っこして……そう言われているような気がした。

それほど不安になっていたのかと申し訳ない気持ちと共に、俺に甘えてくれているのが嬉しくて、すぐに直くんを抱きしめて一緒にベッドに横たわった。

どうやら一人で横になっている間に実の両親のことやこれからのことを悩んでしまっていたようだ。

俺でも養子にと言われたら悩むだろう。
直くんの立場ならそれは相当の決断を要するだろう。

だが、伯父さんたちには養子は手続き上の問題であって、気持ちはすでに自分の息子だと感じている。
養子となって自分たちの息子となれば、直くんを法的にも守れるようになるという点だけで、伯父さんたちの気持ちは今と変わらない。
いや、養子となったら遠慮がなくなって今まで以上に溺愛するだろうな。

いずれにしても直くんが幸せになる未来しかない。

そう話してやると、直くんは少し考えた上で、

「僕、明日パパとあやちゃんに言います。家族になりたいって……」

と告げた。

その表情は何の憂いもなく晴れやかで幸せそうだ。

ああ、明日はこの家にとって特別な日になりそうだな。

安心したのか、そのままぐっすりと寝入った直くんの髪にそっとキスをして、俺はベッドから抜け出た。

「んっ……」

俺の温もりがないことに気づいたのか、途端に寂しそうな声を上げる直くんに、以前絢斗さんから借りたクマの着ぐるみパジャマを急いで持ってきて直くんのそばに置いた。
すると、直くんはそれを嬉しそうに抱きしめて、また深い眠りに落ちていった。

そうだ。
早くクマを持ってきてあげないとな。
明日はお祝いになりそうだし、その時にクマのぬいぐるみをプレゼントしてやろう。

ふふっ。きっと喜んでくれるだろうな。

そんなことを考えながら、俺は机に向かった。

俺にはどうしてもクリアしなければいけない問題がある。
絶対に不合格になるわけにはいかない。必ず合格しなければ!

いや、そんな低い志ではいけないな。
トップで合格するくらいのところを見せなければ。
父さんたちにここに残ったからだと言えなければ意味がない。

よし。
俺は気を引き締めて、勉強に取り掛かった。
そこから三時間。みっちりと集中して今日の勉強を終え、直くんの待つベッドで眠りについた。

睡眠時間が少なくてもすっきりとした目覚めなのは、直くんが腕の中にいるという幸せに満ち足りているからだろう。

先に起きて、朝の生理現象を鎮めてから直くんを起こす。

「んっ……の、ぼるさん……」

ふふっ。寝起きの直くんはいつも以上に甘えん坊で可愛い。

ぎゅっと抱きしめて起こしてやると、

「おはようございます……」

とはにかみながら挨拶をしてくれる。

ああ、本当に可愛すぎる。

「おはよう。昨日の話、覚えてる?」

「はい。パパとあやちゃんに言います」

「うん、いつ言う?」

「僕……隠し事はできそうにないから、朝、すぐに言います」

「そうだね、その方がいいかも。きっと伯父さんも絢斗さんも喜ぶよ。着替えたら、一緒に行こう」

「はい」

直くんの手を取って部屋まで連れて行き、俺も急いで着替えて直くんの部屋に向かった。

ちょうど着替えて出てきた直くんの手を取って一緒に洗面所に行き、交代で顔を洗って身支度を整えてからリビングに向かうと、伯父さんと絢斗さんが部屋から出てきた。

「昇、直くん。おはよう、早いな」

「おはようございます」
「おはよう、伯父さん。絢斗さん。ちょっと大事な話があるんだけど……いいかな?」

「ああ、じゃああっちに座ろう」

少し緊張感が漂ってしまったけれど、俺たちの表情で良いことだとはわかってくれているだろう。

ソファーに向かい合わせに座ったところで、

「それで、どうしたんだ?」

と伯父さんが尋ねてくる。

「直くん、自分で言える? それとも俺から言おうか?」

「あ、僕……自分で、言います」

「うん。ゆっくりでいいよ」

その言葉に安心したように、直くんはゆっくり深呼吸して、伯父さんと絢斗さんに視線を向けた。

「あの、僕…………パパと、あやちゃんの、子どもになりたいですっ!!」

「――っ!!!!」

「直くんっ!!!!!」

その言葉に、目を丸くして驚く伯父さんと、涙を流しながら直くんを抱きしめる絢斗さんの姿を俺は一生忘れないだろう。
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