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楽しい計画
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<side磯山卓>
いつものように絢斗の寝顔を堪能して、眠っている絢斗にキスを贈ると目を覚ましてくれる。
私の可愛い眠り姫にもう一度キスを贈るととびきりの笑顔で絢斗からもキスを返してくれる。
私の幸せな一日がこれで始まるのだ。
「直くん、よく眠れたかな?」
直くんが我が家に来てから、絢斗は毎朝この言葉を告げる。
最初こそ心配で夜中や朝方にこっそりと直くんの様子を見に行っていたが、昇が我が家に来てからは昇に任せている。
二人が信頼しあっているのはわかっていたし、昇が直くんに無理強いはしないこともわかっていたから。
直くんが安心して寝られる環境であれば、私たちは何もいうことはない。
それでも絢斗が毎朝この言葉を告げるのは、昇を信用していないわけではない。
ただ単純に直くんが眠れたかだけが気になるだけだ。
これは母性というか、親としての気持ちのようなものなのだろう。
「大丈夫だよ、昇が一緒だから」
だからこそ、私の毎日のように同じ言葉を繰り返す。
それだけで絢斗は安心するのだ。
「今日は二限からだったか?」
「うん。その前にちょっとやることあるけど、朝はゆっくりだよ」
「そうか。じゃあ絢斗の好きなワッフルにしようか」
「あ、でも直くんはご飯が好きなんじゃない?」
「いや、あの子はみんなで同じものが食べたいんだよ。もちろんご飯も好きだと思うけどね」
「そっか。じゃあ、いいっぱいトッピング並べて好きなものを選んでもらおうか」
「ああ、それはいいな」
久々のワッフルがよほど嬉しいのか、鼻歌を歌いながら着替えを済ませる絢斗を可愛いなと思いながら、私も着替えを済ませ、部屋についている洗面所で身支度を整えてから部屋を出た。
まだ少し早いと思ったが、リビングに向かうともうすでに昇と直くんがいた。
「昇、直くん。おはよう、早いな」
声をかけるとこちらを振り向き、二人で挨拶を返してくれる。
けれど、直くんの表情に少し緊張の色が見える。
何かあったのかと思っていると、
「ちょっと大事な話があるんだけど……いいかな?」
と昇が声をかけてきた。
悪いことではなさそうだが、なんだろうか。
ソファーに誘い向かい合わせに座ると、二人とも少し緊張さが増したように見えた。
「直くん、自分で言える? それとも俺から言おうか?」
「あ、僕……自分で、言います」
「うん。ゆっくりでいいよ」
そのやりとりに、二人が想いを伝え合ったのか、それとも私たちの望んでいたことのどちらかだと思ったが、いずれにしても喜ばしいことに変わりはない。
直くんは私たちを見つめながら深呼吸をした。
私も絢斗もその様子を見守り続けた。
「あの、僕…………パパと、あやちゃんの、子どもになりたいですっ!!」
直くんのその言葉は、絢斗から初めて愛の言葉をもらったのと同じくらいの喜びを私に与えてくれた。
私が父親に……。
しかも絢斗との子ども。
一生二人だけの生活で構わないと思っていたが、絢斗との子どもなら話は別だ。
心の底から湧き上がる喜びを感じている私の横で、絢斗は涙を流しながら直くんを抱きしめている。
もうすっかり親子のように涙を流して喜び合い、二人を覆うように抱きしめた。
直くんの後ろから昇も一緒に抱きしめていたことには少し笑ってしまったが、幸せならそれでいい。
「直くんが私の息子! ああ、皐月に報告しなくっちゃ!! 皐月にあわせる前に直くんが私の息子になってくれたからきっと驚くだろうな。ふふっ」
「鳴宮くんも喜んでくれるだろう。近々お祝いがてら遊びに来てもらったらいい。ご馳走を作るよ」
「わぁー、早速今日話しておくね。ねぇ、卓さん。今日は家族でお祝いしよう!」
「ああ、そうだな。夜は早く終われるように調整しよう」
「ふふっ。直くん、楽しみにしててね」
「お祝い……っ。はい。僕、嬉しいです!!」
こんな笑顔を見せてくれるのなら、思いっきり喜ばせてやりたいな。
昇とも話をしておくか。
「昇、朝食を作るから手伝ってくれ。絢斗は直くんとのんびりおしゃべりでもしているといい」
「はーい」
すっかり親子のような二人をソファーに残して、昇と二人でキッチンに向かう。
「今日の朝食はワッフルにするから、そこのワッフルメーカーを出してくれ。あ、それから冷蔵庫の果物を適当な大きさに切っておいてくれ」
「ワッフルですか? 珍しいですね」
「いや、今までずっと和食にしていたのは直くんの栄養のためだったんだ。だいぶ栄養状態も良くなってきたからな。普段はワッフルやパンが多いんだよ」
「そうだったんですね」
ワッフルの生地を作りながら、昇にある提案をした。
「今日、学校帰りにケーキを買ってきてくれないか? 二葉さんのおすすめのケーキ屋をお前も知っているだろう」
「あっ、じゃあ父さんと母さんを呼んでもいいかな? 一緒にお祝いするのはどう?」
「ああ、そうだな。毅たちとも食事をしたいと思っていたし、お祝いなら呼びやすいな。私から連絡をしておくか?」
「直くんが伯父さんたちの息子になる話もするなら、伯父さんからの方がいいですね。俺の方からも後で話しておきます。母さんも一緒にケーキを買いに行きたいっていうかもしれないし」
「わかった。じゃあ、私から誘っておくよ。じゃあ、ケーキは頼むぞ。直くんにとって初めてのデコレーションケーキだろうから豪華にな」
「ふふっ。任せておいてください」
こんなにも楽しい計画はないな。
ああ、夜が待ち遠しい。
いつものように絢斗の寝顔を堪能して、眠っている絢斗にキスを贈ると目を覚ましてくれる。
私の可愛い眠り姫にもう一度キスを贈るととびきりの笑顔で絢斗からもキスを返してくれる。
私の幸せな一日がこれで始まるのだ。
「直くん、よく眠れたかな?」
直くんが我が家に来てから、絢斗は毎朝この言葉を告げる。
最初こそ心配で夜中や朝方にこっそりと直くんの様子を見に行っていたが、昇が我が家に来てからは昇に任せている。
二人が信頼しあっているのはわかっていたし、昇が直くんに無理強いはしないこともわかっていたから。
直くんが安心して寝られる環境であれば、私たちは何もいうことはない。
それでも絢斗が毎朝この言葉を告げるのは、昇を信用していないわけではない。
ただ単純に直くんが眠れたかだけが気になるだけだ。
これは母性というか、親としての気持ちのようなものなのだろう。
「大丈夫だよ、昇が一緒だから」
だからこそ、私の毎日のように同じ言葉を繰り返す。
それだけで絢斗は安心するのだ。
「今日は二限からだったか?」
「うん。その前にちょっとやることあるけど、朝はゆっくりだよ」
「そうか。じゃあ絢斗の好きなワッフルにしようか」
「あ、でも直くんはご飯が好きなんじゃない?」
「いや、あの子はみんなで同じものが食べたいんだよ。もちろんご飯も好きだと思うけどね」
「そっか。じゃあ、いいっぱいトッピング並べて好きなものを選んでもらおうか」
「ああ、それはいいな」
久々のワッフルがよほど嬉しいのか、鼻歌を歌いながら着替えを済ませる絢斗を可愛いなと思いながら、私も着替えを済ませ、部屋についている洗面所で身支度を整えてから部屋を出た。
まだ少し早いと思ったが、リビングに向かうともうすでに昇と直くんがいた。
「昇、直くん。おはよう、早いな」
声をかけるとこちらを振り向き、二人で挨拶を返してくれる。
けれど、直くんの表情に少し緊張の色が見える。
何かあったのかと思っていると、
「ちょっと大事な話があるんだけど……いいかな?」
と昇が声をかけてきた。
悪いことではなさそうだが、なんだろうか。
ソファーに誘い向かい合わせに座ると、二人とも少し緊張さが増したように見えた。
「直くん、自分で言える? それとも俺から言おうか?」
「あ、僕……自分で、言います」
「うん。ゆっくりでいいよ」
そのやりとりに、二人が想いを伝え合ったのか、それとも私たちの望んでいたことのどちらかだと思ったが、いずれにしても喜ばしいことに変わりはない。
直くんは私たちを見つめながら深呼吸をした。
私も絢斗もその様子を見守り続けた。
「あの、僕…………パパと、あやちゃんの、子どもになりたいですっ!!」
直くんのその言葉は、絢斗から初めて愛の言葉をもらったのと同じくらいの喜びを私に与えてくれた。
私が父親に……。
しかも絢斗との子ども。
一生二人だけの生活で構わないと思っていたが、絢斗との子どもなら話は別だ。
心の底から湧き上がる喜びを感じている私の横で、絢斗は涙を流しながら直くんを抱きしめている。
もうすっかり親子のように涙を流して喜び合い、二人を覆うように抱きしめた。
直くんの後ろから昇も一緒に抱きしめていたことには少し笑ってしまったが、幸せならそれでいい。
「直くんが私の息子! ああ、皐月に報告しなくっちゃ!! 皐月にあわせる前に直くんが私の息子になってくれたからきっと驚くだろうな。ふふっ」
「鳴宮くんも喜んでくれるだろう。近々お祝いがてら遊びに来てもらったらいい。ご馳走を作るよ」
「わぁー、早速今日話しておくね。ねぇ、卓さん。今日は家族でお祝いしよう!」
「ああ、そうだな。夜は早く終われるように調整しよう」
「ふふっ。直くん、楽しみにしててね」
「お祝い……っ。はい。僕、嬉しいです!!」
こんな笑顔を見せてくれるのなら、思いっきり喜ばせてやりたいな。
昇とも話をしておくか。
「昇、朝食を作るから手伝ってくれ。絢斗は直くんとのんびりおしゃべりでもしているといい」
「はーい」
すっかり親子のような二人をソファーに残して、昇と二人でキッチンに向かう。
「今日の朝食はワッフルにするから、そこのワッフルメーカーを出してくれ。あ、それから冷蔵庫の果物を適当な大きさに切っておいてくれ」
「ワッフルですか? 珍しいですね」
「いや、今までずっと和食にしていたのは直くんの栄養のためだったんだ。だいぶ栄養状態も良くなってきたからな。普段はワッフルやパンが多いんだよ」
「そうだったんですね」
ワッフルの生地を作りながら、昇にある提案をした。
「今日、学校帰りにケーキを買ってきてくれないか? 二葉さんのおすすめのケーキ屋をお前も知っているだろう」
「あっ、じゃあ父さんと母さんを呼んでもいいかな? 一緒にお祝いするのはどう?」
「ああ、そうだな。毅たちとも食事をしたいと思っていたし、お祝いなら呼びやすいな。私から連絡をしておくか?」
「直くんが伯父さんたちの息子になる話もするなら、伯父さんからの方がいいですね。俺の方からも後で話しておきます。母さんも一緒にケーキを買いに行きたいっていうかもしれないし」
「わかった。じゃあ、私から誘っておくよ。じゃあ、ケーキは頼むぞ。直くんにとって初めてのデコレーションケーキだろうから豪華にな」
「ふふっ。任せておいてください」
こんなにも楽しい計画はないな。
ああ、夜が待ち遠しい。
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