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Violonが繋いだ縁 10
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『ミシェル……愛しているよ』
そんな声を夢の中で聞いた気がして、
『ふふっ。僕も……』
と返すと、ギュッと大きなものに抱きしめられた感覚がした。
『んっ……』
目を開けると、温かなものに浸かっている。
『あれ?』
『ミシェル、目が覚めたか?』
『せ、るじゅ……』
目の前のセルジュの頬に触れようとして手を挙げると、ちゃぽっと音がする。
『わっ……おふろだ……』
僕が寝ている間にセルジュが入れてくれるときは、シャワーだけで済ますことが多いのに珍しい。
こうやってお風呂に浸かるときは僕がちゃんと目覚めてて……というか、二人でお風呂場で愛し合うことが多いのに。
『今日は他のお部屋も、お風呂に浸かっているからジュールが我々の部屋の風呂の準備を整えてくれたようだ』
『そっか。そういえば、ユヅルはお風呂が好きだもんね』
『ユヅルさまだけでなく、日本人は皆お風呂にこだわりがあるそうだから、他の方々も楽しんでいるだろう』
『ふふっ。そうだね。ねぇ、セルジュ……』
『どうした?』
『僕も、一度日本に行ってみたいな。そして、リオたちの住んでいるところを見てみたい』
『ああ、それは楽しそうだな。私も仕事以外では行ったことがないから、ミシェルと日本で過ごすのもいいな』
『わぁー、じゃあ約束だよ!』
自分の小指とセルジュの小指とを絡める。
約束をするときはこうするんだってユヅルに教えてもらったんだ。
『なんだっけ? あっ、「ゆ、びきり、げんまん、うそついたら……『うーん、何にしようかな』」
『ふふっ。どうする?』
『えっと、じゃあ「ウソついたら、セルジュの香りもーらう」ふふっ、いい?』
『私の香り? 香水のことか?』
『うん、そう。だめ?』
そう尋ねると、セルジュは嬉しそうに笑って
『そんなわけないだろう』
と僕をギュッと抱きしめた。
今は香水の香りは何もしない。
僕だけが知ってるセルジュだけの香り。
これは一生誰にも教えたくない、僕だけのものだ。
セルジュは普段は昔から愛用しているという香水をつけている。
これは成人した頃に特別に作ってもらってから変わらないというのだから、本当に気に入っているんだろう。
僕がセルジュの恋人というか、伴侶になってから、セルジュは調香師さんに頼んで僕の香りを作ってくれた。
セルジュの香りとも喧嘩しない、とても柔らかで甘い香りがして、僕のお気に入りだ。
でも、自分からセルジュの香りがしたらもっと楽しそうじゃない?
一度でいいからセルジュと同じ香りを身に纏ってみたいって思っていたんだ。
指切りの代償にするのはダメだったかなと思ったけれど、セルジュは嬉しそうに理由を聞いてきた。
『だが、どうして私の香りが欲しいんだ?』
『離れている時もセルジュを感じたいから……』
そういうと、僕を抱きしめる力が強くなった。
直に抱きしめられているからセルジュの鼓動がよく聞こえる。
僕の鼓動と同じタイミングなことに気づいて、まるで一人の人間のように感じられて心地良い。
『ミシェル……それなら、いっそのこと私たちの香りを作ろうか?』
『えっ? 僕たちの、香り? あの、エヴァンさんがユヅルに作っていた特別な香水?』
『ああ、私もずっとそれぞれが別のものをつけるのではなくて、同じ香りを纏いたいと思っていたんだ』
『――っ、そうだったの? それならそうと言ってくれたら……』
『いや、これだけ執着しておきながら香りまで同じにしたいなんてそんな独占欲に駆られたことを言ったら、流石にミシェルに嫌われるかと思ったんだ』
恥ずかしそうに教えてくれるセルジュを見て、愛おしさが募る。
ああ、もうなんでこの人はあんなに獰猛な姿を見せながら、こんなにも可愛いことを言ってくれるのだろう。
『ふふっ。セルジュの独占欲なんて僕にとっては嬉しいだけだよ。それに、エヴァンさまやミヅキさんたちを見ていると、みんな同じくらい独占欲を持っている気がするけどな。だから、セルジュも気にしないで。僕はセルジュに嫉妬されるのも好きだよ』
『ミシェル……っ。じゃあ、これからは今まで抑えていた分もたっぷりと出すようにしよう』
『ふふっ。楽しみにしてる』
『じゃあ、早速エヴァンさまに話をして、調香師を呼ぶとしようか』
『うん。きっとリオたちも喜ぶと思うよ。ユヅルの香りが気になっていたみたいだったから……』
『そうか。なら、ここにいる間に手配しようか。だが、その前にもう一度だけミシェルの香りをたっぷり身体に染み込ませたい……いい?』
『いいよ。いっぱい愛して……』
『ミシェルっ!!』
そのまま僕たちはお風呂場の明るい灯の下で何度も愛を確かめ合った。
それこそ同じ香りを纏うほどに……。
もう一生それは変わらない。
甘い甘い香り。
* * *
セルジュ&ミシェルの出会いからの物語、一旦ここで完結して、
これから先は不定期で番外編のお話を続けていきます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回から本編に戻ります。
そんな声を夢の中で聞いた気がして、
『ふふっ。僕も……』
と返すと、ギュッと大きなものに抱きしめられた感覚がした。
『んっ……』
目を開けると、温かなものに浸かっている。
『あれ?』
『ミシェル、目が覚めたか?』
『せ、るじゅ……』
目の前のセルジュの頬に触れようとして手を挙げると、ちゃぽっと音がする。
『わっ……おふろだ……』
僕が寝ている間にセルジュが入れてくれるときは、シャワーだけで済ますことが多いのに珍しい。
こうやってお風呂に浸かるときは僕がちゃんと目覚めてて……というか、二人でお風呂場で愛し合うことが多いのに。
『今日は他のお部屋も、お風呂に浸かっているからジュールが我々の部屋の風呂の準備を整えてくれたようだ』
『そっか。そういえば、ユヅルはお風呂が好きだもんね』
『ユヅルさまだけでなく、日本人は皆お風呂にこだわりがあるそうだから、他の方々も楽しんでいるだろう』
『ふふっ。そうだね。ねぇ、セルジュ……』
『どうした?』
『僕も、一度日本に行ってみたいな。そして、リオたちの住んでいるところを見てみたい』
『ああ、それは楽しそうだな。私も仕事以外では行ったことがないから、ミシェルと日本で過ごすのもいいな』
『わぁー、じゃあ約束だよ!』
自分の小指とセルジュの小指とを絡める。
約束をするときはこうするんだってユヅルに教えてもらったんだ。
『なんだっけ? あっ、「ゆ、びきり、げんまん、うそついたら……『うーん、何にしようかな』」
『ふふっ。どうする?』
『えっと、じゃあ「ウソついたら、セルジュの香りもーらう」ふふっ、いい?』
『私の香り? 香水のことか?』
『うん、そう。だめ?』
そう尋ねると、セルジュは嬉しそうに笑って
『そんなわけないだろう』
と僕をギュッと抱きしめた。
今は香水の香りは何もしない。
僕だけが知ってるセルジュだけの香り。
これは一生誰にも教えたくない、僕だけのものだ。
セルジュは普段は昔から愛用しているという香水をつけている。
これは成人した頃に特別に作ってもらってから変わらないというのだから、本当に気に入っているんだろう。
僕がセルジュの恋人というか、伴侶になってから、セルジュは調香師さんに頼んで僕の香りを作ってくれた。
セルジュの香りとも喧嘩しない、とても柔らかで甘い香りがして、僕のお気に入りだ。
でも、自分からセルジュの香りがしたらもっと楽しそうじゃない?
一度でいいからセルジュと同じ香りを身に纏ってみたいって思っていたんだ。
指切りの代償にするのはダメだったかなと思ったけれど、セルジュは嬉しそうに理由を聞いてきた。
『だが、どうして私の香りが欲しいんだ?』
『離れている時もセルジュを感じたいから……』
そういうと、僕を抱きしめる力が強くなった。
直に抱きしめられているからセルジュの鼓動がよく聞こえる。
僕の鼓動と同じタイミングなことに気づいて、まるで一人の人間のように感じられて心地良い。
『ミシェル……それなら、いっそのこと私たちの香りを作ろうか?』
『えっ? 僕たちの、香り? あの、エヴァンさんがユヅルに作っていた特別な香水?』
『ああ、私もずっとそれぞれが別のものをつけるのではなくて、同じ香りを纏いたいと思っていたんだ』
『――っ、そうだったの? それならそうと言ってくれたら……』
『いや、これだけ執着しておきながら香りまで同じにしたいなんてそんな独占欲に駆られたことを言ったら、流石にミシェルに嫌われるかと思ったんだ』
恥ずかしそうに教えてくれるセルジュを見て、愛おしさが募る。
ああ、もうなんでこの人はあんなに獰猛な姿を見せながら、こんなにも可愛いことを言ってくれるのだろう。
『ふふっ。セルジュの独占欲なんて僕にとっては嬉しいだけだよ。それに、エヴァンさまやミヅキさんたちを見ていると、みんな同じくらい独占欲を持っている気がするけどな。だから、セルジュも気にしないで。僕はセルジュに嫉妬されるのも好きだよ』
『ミシェル……っ。じゃあ、これからは今まで抑えていた分もたっぷりと出すようにしよう』
『ふふっ。楽しみにしてる』
『じゃあ、早速エヴァンさまに話をして、調香師を呼ぶとしようか』
『うん。きっとリオたちも喜ぶと思うよ。ユヅルの香りが気になっていたみたいだったから……』
『そうか。なら、ここにいる間に手配しようか。だが、その前にもう一度だけミシェルの香りをたっぷり身体に染み込ませたい……いい?』
『いいよ。いっぱい愛して……』
『ミシェルっ!!』
そのまま僕たちはお風呂場の明るい灯の下で何度も愛を確かめ合った。
それこそ同じ香りを纏うほどに……。
もう一生それは変わらない。
甘い甘い香り。
* * *
セルジュ&ミシェルの出会いからの物語、一旦ここで完結して、
これから先は不定期で番外編のお話を続けていきます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回から本編に戻ります。
応援ありがとうございます!
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