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番外編
宮古島旅行 2
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今日は昼食だけで一話になっちゃいました。
確実に長くなりそうです(汗)
楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
「おばさんっ!」
「あらまぁ、悠真くんじゃないの。おや、真琴くんも一緒に帰ってきてたの? あら、そっちのイケメンさんたちは初めて見る顔だねぇ」
「おばさんのところのそばが食べたくて、連れてきたんだよ」
「あらあら、それは嬉しいねぇ。ちょうど忙しい時間も過ぎたところだから、ゆっくりしていってちょうだい」
「ありがとう」
昼食に連れてきてもらったお店はどうやら、真琴と悠真さんの馴染みの店らしい。
古そうな佇まいだが、造りはしっかりしている。
鰹出汁のいい香りが外まで漂っていて、食欲をそそる。
「優一さん、入りましょう」
「ああ。真琴はここにはよく来ていたのか?」
「はい。農作業で忙しい時は食事を作る時間も惜しいからって、家族でよく食べに来てたんです。さっと出てきて、美味しくて、いうことなしなんですよ」
「ふふっ。そうなのか。楽しみだな」
安慶名と悠真さんが入った後から、俺たちも中に入ると、思ったより中は広く、奥には座敷もあった。
勝手知ったる様子で進んでいく悠真さんたちの跡を追うように俺たちも座敷に座った。
「雰囲気がいいですね」
「ふふっ。気に入っていただけて嬉しいです」
「悠真が子どもの頃からこのお店に来ていたんですか?」
「そうなんですよ。伊織さんも気に入ってくださると嬉しいんですけど」
悠真さんに声をかけると、笑顔で返してくれたが、安慶名は悠真さんの視線をすぐに自分に取り戻しにかかった。
ただの挨拶程度の会話だというのに、本当に独占欲が強い。
まぁ、俺も真琴のことになれば人のことは言えないが……。
安慶名と真琴が楽しそうに話をしていると、やっぱりさっきの安慶名のように割り込んでしまうんだろうな。
それが容易に想像できるだけに文句も言えないな。
「優一さん、何にします?」
「真琴のおすすめはどれ?」
「僕はいつもここに来たら、このトロトロのソーキが乗ったそばです。もうびっくりするくらいトロトロで美味しいんですよ」
「そうか、じゃあ俺もそれにしようかな」
「あっ、でも優一さんはこっちの三枚肉そばにしてください」
「んっ? 同じものじゃダメなのか?」
「ちょっと考えがあるのでいいですか?」
「真琴がそういうなら構わないが……」
そういうと、真琴は嬉しそうに笑った。
本当は同じものを食べて思い出を共有しようと思ったんだけどな。
真琴の考えとはなんだろう?
「兄さん、何にするか決めた?」
「うん、ソーキそばと三枚肉そばを一つずつね」
俺たちが頼むのと同じだ。
「ふふっ。やっぱり」
真琴の言葉に悠真さんは嬉しそうに笑った。
やっぱり何かあるんだろうな。
「おばさぁーん」
真琴が声をかけると、さっきのおばさんがすぐに席にやってきた。
「はいはい。何にするか、決まったかい?」
「おばさん、僕ね……」
「ふふっ。真琴くんはソーキそばでしょう?」
「ふふっ。当たり。おばさん、覚えててくれたの?」
「もちろんだよ。小学生の時から、あんた、うちに来たらソーキそばしか食べないでしょう?」
「だって、おばさんとこのソーキ、よそじゃ食べられないもん」
「ふふっ。そう言ってもらえると嬉しいね。そっちのお兄さんは何にする?」
「あっ、優一さんは三枚肉そばね」
「あいよ。悠真くんも同じ三枚肉そばでいいの?」
「はい。あとソーキそばも一つね。ふふっ。僕のも覚えててくれてる」
「当たり前だよ。あんたたち、いつも三枚肉とソーキを交換して両方食べてたでしょう」
おばさんのその言葉に俺と安慶名は顔を見合わせた。
なるほど、そういうことか……。
「だって、どっちも美味しくて選べないから」
「ふふっ。ありがとう。じゃあ、ソーキそばと三枚肉そば2つずつね
「はい。お願いします」
「はいはい。ちょっと待っててね」
にこやかな会話をしながら、あっという間におばさんは去っていった。
「ふふっ。あのおばさんと家族みたいな会話していたな」
「小さい集落なんで、みんなが親戚みたいな感じだから」
「そうか、楽しそうだな」
今でもこんなに愛されてるなんて、幼い時の真琴は本当に可愛かっただろう。
もちろん真琴にそっくりな悠真さんも。
ご両親は本当に二人が自慢だっただろうな。
「お待たせしましたー」
あっという間にそばが運ばれてきた。
悠真さんと俺の前に置かれたそばには美味しそうに味付けされた大きな三枚肉が二切れ乗っている。
安慶名と真琴のそばには見るからにトロトロに煮込まれたソーキが、これもまた二つ乗っていた。
なるほど交換して食べるというのはこういうことか。
「優一さん、一つどうぞ」
「ああ、ありがとう。じゃあ、真琴も一つ」
「あっ、わかっちゃいましたか?」
「ああ。いつも悠真さんとこうして食べてたんだな」
「はい。これからは優一さんと分けて食べたいです」
「ああ。そうだな。これからはずっと俺と分けて食べよう」
安慶名と悠真さんも嬉しそうに交換しているのが見えた。
ああ、これこそ思い出の共有だ。
俺は幸せに満ち足りた気持ちで真琴とお揃いのそばに箸を入れた。
トロトロのソーキと三枚肉のまた違う食感を楽しみながら、あっという間にそばを平らげた。
「ああー、美味しかったな。真琴がよそじゃ食べられないというのがわかるな」
「優一さんが気に入ってくれてよかったです」
「これからも真琴の好きなものをいっぱい教えてくれ」
「ふふっ。はい」
真琴と話をしていると、視界の隅でさっと安慶名が伝票を手に取ったのが見えて
「俺が払うよ」
と小声で言ったが、
「先に取ったもの勝ちだよ」
と同じように小声で返されてしまった。
まぁいい。ここはお義兄さんに任せるとするか。
次は俺が支払いをしよう。
真琴の分を安慶名にずっと奢ってもらうわけにはいかないからな。
確実に長くなりそうです(汗)
楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
「おばさんっ!」
「あらまぁ、悠真くんじゃないの。おや、真琴くんも一緒に帰ってきてたの? あら、そっちのイケメンさんたちは初めて見る顔だねぇ」
「おばさんのところのそばが食べたくて、連れてきたんだよ」
「あらあら、それは嬉しいねぇ。ちょうど忙しい時間も過ぎたところだから、ゆっくりしていってちょうだい」
「ありがとう」
昼食に連れてきてもらったお店はどうやら、真琴と悠真さんの馴染みの店らしい。
古そうな佇まいだが、造りはしっかりしている。
鰹出汁のいい香りが外まで漂っていて、食欲をそそる。
「優一さん、入りましょう」
「ああ。真琴はここにはよく来ていたのか?」
「はい。農作業で忙しい時は食事を作る時間も惜しいからって、家族でよく食べに来てたんです。さっと出てきて、美味しくて、いうことなしなんですよ」
「ふふっ。そうなのか。楽しみだな」
安慶名と悠真さんが入った後から、俺たちも中に入ると、思ったより中は広く、奥には座敷もあった。
勝手知ったる様子で進んでいく悠真さんたちの跡を追うように俺たちも座敷に座った。
「雰囲気がいいですね」
「ふふっ。気に入っていただけて嬉しいです」
「悠真が子どもの頃からこのお店に来ていたんですか?」
「そうなんですよ。伊織さんも気に入ってくださると嬉しいんですけど」
悠真さんに声をかけると、笑顔で返してくれたが、安慶名は悠真さんの視線をすぐに自分に取り戻しにかかった。
ただの挨拶程度の会話だというのに、本当に独占欲が強い。
まぁ、俺も真琴のことになれば人のことは言えないが……。
安慶名と真琴が楽しそうに話をしていると、やっぱりさっきの安慶名のように割り込んでしまうんだろうな。
それが容易に想像できるだけに文句も言えないな。
「優一さん、何にします?」
「真琴のおすすめはどれ?」
「僕はいつもここに来たら、このトロトロのソーキが乗ったそばです。もうびっくりするくらいトロトロで美味しいんですよ」
「そうか、じゃあ俺もそれにしようかな」
「あっ、でも優一さんはこっちの三枚肉そばにしてください」
「んっ? 同じものじゃダメなのか?」
「ちょっと考えがあるのでいいですか?」
「真琴がそういうなら構わないが……」
そういうと、真琴は嬉しそうに笑った。
本当は同じものを食べて思い出を共有しようと思ったんだけどな。
真琴の考えとはなんだろう?
「兄さん、何にするか決めた?」
「うん、ソーキそばと三枚肉そばを一つずつね」
俺たちが頼むのと同じだ。
「ふふっ。やっぱり」
真琴の言葉に悠真さんは嬉しそうに笑った。
やっぱり何かあるんだろうな。
「おばさぁーん」
真琴が声をかけると、さっきのおばさんがすぐに席にやってきた。
「はいはい。何にするか、決まったかい?」
「おばさん、僕ね……」
「ふふっ。真琴くんはソーキそばでしょう?」
「ふふっ。当たり。おばさん、覚えててくれたの?」
「もちろんだよ。小学生の時から、あんた、うちに来たらソーキそばしか食べないでしょう?」
「だって、おばさんとこのソーキ、よそじゃ食べられないもん」
「ふふっ。そう言ってもらえると嬉しいね。そっちのお兄さんは何にする?」
「あっ、優一さんは三枚肉そばね」
「あいよ。悠真くんも同じ三枚肉そばでいいの?」
「はい。あとソーキそばも一つね。ふふっ。僕のも覚えててくれてる」
「当たり前だよ。あんたたち、いつも三枚肉とソーキを交換して両方食べてたでしょう」
おばさんのその言葉に俺と安慶名は顔を見合わせた。
なるほど、そういうことか……。
「だって、どっちも美味しくて選べないから」
「ふふっ。ありがとう。じゃあ、ソーキそばと三枚肉そば2つずつね
「はい。お願いします」
「はいはい。ちょっと待っててね」
にこやかな会話をしながら、あっという間におばさんは去っていった。
「ふふっ。あのおばさんと家族みたいな会話していたな」
「小さい集落なんで、みんなが親戚みたいな感じだから」
「そうか、楽しそうだな」
今でもこんなに愛されてるなんて、幼い時の真琴は本当に可愛かっただろう。
もちろん真琴にそっくりな悠真さんも。
ご両親は本当に二人が自慢だっただろうな。
「お待たせしましたー」
あっという間にそばが運ばれてきた。
悠真さんと俺の前に置かれたそばには美味しそうに味付けされた大きな三枚肉が二切れ乗っている。
安慶名と真琴のそばには見るからにトロトロに煮込まれたソーキが、これもまた二つ乗っていた。
なるほど交換して食べるというのはこういうことか。
「優一さん、一つどうぞ」
「ああ、ありがとう。じゃあ、真琴も一つ」
「あっ、わかっちゃいましたか?」
「ああ。いつも悠真さんとこうして食べてたんだな」
「はい。これからは優一さんと分けて食べたいです」
「ああ。そうだな。これからはずっと俺と分けて食べよう」
安慶名と悠真さんも嬉しそうに交換しているのが見えた。
ああ、これこそ思い出の共有だ。
俺は幸せに満ち足りた気持ちで真琴とお揃いのそばに箸を入れた。
トロトロのソーキと三枚肉のまた違う食感を楽しみながら、あっという間にそばを平らげた。
「ああー、美味しかったな。真琴がよそじゃ食べられないというのがわかるな」
「優一さんが気に入ってくれてよかったです」
「これからも真琴の好きなものをいっぱい教えてくれ」
「ふふっ。はい」
真琴と話をしていると、視界の隅でさっと安慶名が伝票を手に取ったのが見えて
「俺が払うよ」
と小声で言ったが、
「先に取ったもの勝ちだよ」
と同じように小声で返されてしまった。
まぁいい。ここはお義兄さんに任せるとするか。
次は俺が支払いをしよう。
真琴の分を安慶名にずっと奢ってもらうわけにはいかないからな。
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