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優一さんは凄すぎる
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「優一、私は診断書を書いておくから真琴くんの手当てをしておいてくれ」
「はい。わかりました」
そういうと、優一さんは用意されていた湿布や包帯を綺麗に巻きつけてくれた。
まるで看護師さんのような手際の良さに驚いてしまう。
「真琴くん、どうした?」
「いえ、すっごく綺麗だし痛くないなぁって……優一さん、包帯巻くの上手なんですね」
「ああ、一応私も医者の端くれだからね」
「えっ? だって、優一さんは弁護士さんで……」
「元々どっちにも興味はあってね、大学では医学部に在籍していたんだよ。で、在学中に司法試験に合格して、卒業後に医師国家試験にも合格したんだ」
「えーっ!! すごいですね!!! じゃあ、お医者さんとしても働けるんですか?」
「そうだな、一応臨床研修も終えたから医師としても働けるよ。真琴くんは医者の私の方が好き?」
「えっ? そんな……」
「ふふっ、じょうだ――」
「僕、弁護士さんとかお医者さんとか関係なく好きですよ」
「えっ? それって……」
「だって、どちらも人を助ける大切なお仕事ですもんね。優一さんにぴったりです」
そう。
みんなは好奇の目で見るだけで、店長さえも助けてくれなかったのに、優一さんだけが僕を助けてくれた。
本当に優しくて素敵な人だ。
だから、お医者さんとか弁護士さんとか関係なく、優一さんならどっちも似合いそう。
白衣姿の優一さんを想像しながら、笑顔でそういうと、
「……ああっ、そうか。そういう意味ね……」
となぜか優一さんの声が少し沈んでいるように見えた。
「僕、なにか気に障ること言っちゃいましたか? ごめんなさい……」
「いや、なにも言ってないよ! 大丈夫! 本当気にしないでくれ」
「??? それなら、いいんですけど……」
焦る優一さんってレアだな……なんて思いながら見つめていると、
「はっはっ。流石の優一も真琴くんには敵わないようだな」
と先生が楽しそうな声をあげてこっちにきてくれた。
「聞いてたんですか、国生先生」
「ああ、楽しそうな話をしているなと思ってね。優一のこんな姿見られると思ってなかったから嬉しかったよ」
「そうですね、私もお見せできるとは思ってませんでしたよ」
「今度は診察じゃない用件で彼を連れてきてくれ」
「はい。ぜひ」
「ああ、これ診断書だ。思う存分懲らしめてやるんだな」
「はい。わかっていますよ」
内容はあまりよくわからなかったけれど、先生と優一さんがすごく仲がいいと言うのはよくわかる。
年が離れているのに、お互いにすごく気を許している感じがする。
氷室さんともすごく仲が良さそうだったけれど、また違う感じだな。
優一さんみたいに気を張らなきゃいけない職業の人には、こういう気楽にできる存在の人が必要なんだろうな。
僕も優一さんの心を楽にできるようなそんな存在になれたらいいのに……。
「真琴くん、怪我が治るまでは優一の言うことをよく聞いて、安静に過ごすんだよ」
「はい。ありがとうございます」
「ああ、いい返事だな。またいつでも遊びに来てくれ。優一がいない時でもいいぞ。君なら大歓迎でもてなすから」
素敵な笑顔を見せてくれる先生は、まるで亡くなった父さんみたいだ。
顔は全然似てはいないけれど、太陽みたいに安心する笑顔を見せてくれる。
優一さんはさっと僕を抱きかかえると、先生にお礼を言って家を出た。
車の助手席に優しく乗せると、そのまま車は優一さんの事務所に向かって動き始めた。
車中で
「あの、さっきの国生先生って、すごく親しそうな感じでしたけど……ご親戚か、何かですか?」
と尋ねてみた。
「ああ、いや。違うんだ。医学部の時の恩師なんだよ」
「じゃあ、医学部の教授ですか?」
「いや、先生は特別講座で一度だけ私たちの前で話をしてくれた方なんだよ。アメリカで最も権威のある病院に特別待遇で引き抜かれるほどの腕を持っていて、彼が講演を桜城大学でやってくれると決まった時は国内外から医師が押し寄せて大騒ぎになったものだよ。その時に、私が先生の話にある質問をしたんだ。それが誰からも指摘されたことのないものだったらしくてね、そこを指摘した私を気に入ってくれてそれ以来可愛がってもらってるんだよ。まぁ、先生からは本業として弁護士を選んだことを今でも会うたびに文句を言われているけどね。まぁ、それも含めて可愛がってもらってるんだが」
そう言って笑う優一さんは本当に嬉しそうだ。
優一さんもすごいけど、国生先生もすごい人なんだな……。
「さぁ着いたよ」
「ここ、ですか?」
「ああ、さっきはすぐに出すつもりだったから正面に止めたけれど、本当の駐車場はここなんだ」
どうやらあの大きなお家の地下は全部が駐車場みたい。
今、乗ってきた車以外にもたくさんの車が並べられている。
「あの、ご家族の方もいらっしゃるみたいですけど僕が泊まってご迷惑じゃないですか?」
「えっ? ご家族って……うちには誰もいないよ。私は一人暮らしだからね」
「ひとり……? えっ、でもこんなに車が……」
「ああ、なるほど。そういうことか。これは父親のコレクションが半分以上を占めているんだよ。今住んでいるマンションには3台しか駐車スペースが取れなかったみたいでね。入らない車をここに置いてるんだよ。交代で自分のマンションに連れ帰ってるけどね。私の車はこの車も合わせて5台しかないから、たいしたことないな」
5台って……いやいや、十分たいしたことありますけど……。
ここには20台近く並んでいるから、これが普通だと思っているのかもしれないな。
うん、やっぱり優一さんは凄すぎる……。
「はい。わかりました」
そういうと、優一さんは用意されていた湿布や包帯を綺麗に巻きつけてくれた。
まるで看護師さんのような手際の良さに驚いてしまう。
「真琴くん、どうした?」
「いえ、すっごく綺麗だし痛くないなぁって……優一さん、包帯巻くの上手なんですね」
「ああ、一応私も医者の端くれだからね」
「えっ? だって、優一さんは弁護士さんで……」
「元々どっちにも興味はあってね、大学では医学部に在籍していたんだよ。で、在学中に司法試験に合格して、卒業後に医師国家試験にも合格したんだ」
「えーっ!! すごいですね!!! じゃあ、お医者さんとしても働けるんですか?」
「そうだな、一応臨床研修も終えたから医師としても働けるよ。真琴くんは医者の私の方が好き?」
「えっ? そんな……」
「ふふっ、じょうだ――」
「僕、弁護士さんとかお医者さんとか関係なく好きですよ」
「えっ? それって……」
「だって、どちらも人を助ける大切なお仕事ですもんね。優一さんにぴったりです」
そう。
みんなは好奇の目で見るだけで、店長さえも助けてくれなかったのに、優一さんだけが僕を助けてくれた。
本当に優しくて素敵な人だ。
だから、お医者さんとか弁護士さんとか関係なく、優一さんならどっちも似合いそう。
白衣姿の優一さんを想像しながら、笑顔でそういうと、
「……ああっ、そうか。そういう意味ね……」
となぜか優一さんの声が少し沈んでいるように見えた。
「僕、なにか気に障ること言っちゃいましたか? ごめんなさい……」
「いや、なにも言ってないよ! 大丈夫! 本当気にしないでくれ」
「??? それなら、いいんですけど……」
焦る優一さんってレアだな……なんて思いながら見つめていると、
「はっはっ。流石の優一も真琴くんには敵わないようだな」
と先生が楽しそうな声をあげてこっちにきてくれた。
「聞いてたんですか、国生先生」
「ああ、楽しそうな話をしているなと思ってね。優一のこんな姿見られると思ってなかったから嬉しかったよ」
「そうですね、私もお見せできるとは思ってませんでしたよ」
「今度は診察じゃない用件で彼を連れてきてくれ」
「はい。ぜひ」
「ああ、これ診断書だ。思う存分懲らしめてやるんだな」
「はい。わかっていますよ」
内容はあまりよくわからなかったけれど、先生と優一さんがすごく仲がいいと言うのはよくわかる。
年が離れているのに、お互いにすごく気を許している感じがする。
氷室さんともすごく仲が良さそうだったけれど、また違う感じだな。
優一さんみたいに気を張らなきゃいけない職業の人には、こういう気楽にできる存在の人が必要なんだろうな。
僕も優一さんの心を楽にできるようなそんな存在になれたらいいのに……。
「真琴くん、怪我が治るまでは優一の言うことをよく聞いて、安静に過ごすんだよ」
「はい。ありがとうございます」
「ああ、いい返事だな。またいつでも遊びに来てくれ。優一がいない時でもいいぞ。君なら大歓迎でもてなすから」
素敵な笑顔を見せてくれる先生は、まるで亡くなった父さんみたいだ。
顔は全然似てはいないけれど、太陽みたいに安心する笑顔を見せてくれる。
優一さんはさっと僕を抱きかかえると、先生にお礼を言って家を出た。
車の助手席に優しく乗せると、そのまま車は優一さんの事務所に向かって動き始めた。
車中で
「あの、さっきの国生先生って、すごく親しそうな感じでしたけど……ご親戚か、何かですか?」
と尋ねてみた。
「ああ、いや。違うんだ。医学部の時の恩師なんだよ」
「じゃあ、医学部の教授ですか?」
「いや、先生は特別講座で一度だけ私たちの前で話をしてくれた方なんだよ。アメリカで最も権威のある病院に特別待遇で引き抜かれるほどの腕を持っていて、彼が講演を桜城大学でやってくれると決まった時は国内外から医師が押し寄せて大騒ぎになったものだよ。その時に、私が先生の話にある質問をしたんだ。それが誰からも指摘されたことのないものだったらしくてね、そこを指摘した私を気に入ってくれてそれ以来可愛がってもらってるんだよ。まぁ、先生からは本業として弁護士を選んだことを今でも会うたびに文句を言われているけどね。まぁ、それも含めて可愛がってもらってるんだが」
そう言って笑う優一さんは本当に嬉しそうだ。
優一さんもすごいけど、国生先生もすごい人なんだな……。
「さぁ着いたよ」
「ここ、ですか?」
「ああ、さっきはすぐに出すつもりだったから正面に止めたけれど、本当の駐車場はここなんだ」
どうやらあの大きなお家の地下は全部が駐車場みたい。
今、乗ってきた車以外にもたくさんの車が並べられている。
「あの、ご家族の方もいらっしゃるみたいですけど僕が泊まってご迷惑じゃないですか?」
「えっ? ご家族って……うちには誰もいないよ。私は一人暮らしだからね」
「ひとり……? えっ、でもこんなに車が……」
「ああ、なるほど。そういうことか。これは父親のコレクションが半分以上を占めているんだよ。今住んでいるマンションには3台しか駐車スペースが取れなかったみたいでね。入らない車をここに置いてるんだよ。交代で自分のマンションに連れ帰ってるけどね。私の車はこの車も合わせて5台しかないから、たいしたことないな」
5台って……いやいや、十分たいしたことありますけど……。
ここには20台近く並んでいるから、これが普通だと思っているのかもしれないな。
うん、やっぱり優一さんは凄すぎる……。
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