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優しくて困る
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予約設定を間違えていたようですみません(汗)
* * *
大きな玄関の前に立つと、チャイムを鳴らす前にガチャリと重厚な扉が開いた。
「優一、久しぶりだな」
にっこりと笑顔で迎え入れてくれたのは、優一さんより随分と歳の離れたロマンスグレーがよく似合う渋いおじさんだった。
「ご無沙汰しています」
「この子か? 診察して欲しいというのは」
「はい。そうです」
「お前がこんなに大切そうに抱きかかえてくるとは……よほど大事な人だと見える」
その人の言葉に自分が優一さんにお姫さまのように抱っこされたままだと思い出す。
わぁっ!
僕こんな格好で人様の前に出ちゃった。
兄さんに怒られちゃうな……。
「あ、あの……優一さん、僕下ります」
「大丈夫、気にすることはないよ。ですよね、国生先生」
「ハハッ。君、諦めた方がいい。優一はこうと決めたら頑固だからな。さぁ、中に入りなさい」
「失礼します」
優一さんは靴を脱ぐとさっと僕の靴を脱がしてスタスタと中へ入って行った。
まるで自分の家にでも入るような気楽な感じに驚いてしまう。
ただの知り合いじゃないみたいだ。
「優一、そこのソファーに座らせてくれ」
そう言われて、優一さんは僕をそっとソファーに座らせた。
すぐ後ろには優一さんがピッタリと寄り添っていてまだ抱っこされているみたいな温もりを感じる。
「もう少し離れてもいいんだが……まぁいい」
少し呆れた様子の先生は、診察するよと言って僕の手を取った。
「これはまたひどく強く掴まれたな。筋は……なんとか大丈夫なようだな。んっ? ここもぶつけた跡があるな。他にどこか痛みがあるところはあるかい?」
にっこりと優しく問いかけられて、
「実は少し足首が……」
と正直に言うと、優一さんは
「やっぱりな。少し庇っているように見えたんだ」
と心配そうに僕の足に触れた。
そうか……気づかれてたんだ。
だから優一さん、僕を抱きかかえてくれてたんだ……。
優一さんってなんでこんなに優しいんだろうな……。
でも、そうか……。
怪我してなかったら抱っこしてもらえてなかったんだ……。
あんなに優しく抱っこしてくれてたのにな。
てっきり僕は……って、ちょっと!
なんで僕……こんな気持ちになってるんだろう?
もう、なんだか僕は優一さんと出会ってからよくわからない感情ばかりが出てきて、おかしくなってしまいそうだ。
一体どうしちゃったんだろう?
自分で自分がよくわからないな。
ひとりでうだうだと考えていると、
「真琴くん? 大丈夫? まだ他に痛いところがある?」
と優一さんの心配そうな声が聞こえる。
「あっ、いえ。それ以外は。はい、全然。痛みはない、です……」
「そう? とりあえず証拠写真撮るから靴下脱がすね」
「えっ? いや、あの、自分で――っ」
慌てて靴下に手をやった時には、もうすでにスルスルと脱がされてしまっていた。
一日歩き回った足なのに……恥ずかしい。
足が臭くなってないかなと心配したけれど、優一さんも先生も特に反応はないことにホッとする。
ただそれだけが救いだった。
「ああ、少し腫れてるね。湿布を出しておくから、2、3日は無理しないように」
「はい。わかりました。あっ、でも僕……」
「んっ? どうしたのかな?」
「いえ、明日から優一さんの事務所で働く予定で……」
「優一、彼はそう言ってるが働かせるのか?」
先生が優一さんに視線を向けると、
「真琴くん、早く治すことのほうが大事なんだから仕事のことは気にしないでいいよ」
と優しい声が降ってきた。
でも……せっかく天職になるかもなんて思ってたのに、出鼻挫かれちゃった気分だな……。
怪我しちゃった自分が悪いんだけど……でも、ちょっとへこむ。
あーあ、明日から優一さんと一緒に仕事ができるって楽しみだったんだけどな……。
でもここまで散々迷惑をかけてしまって、これ以上自分勝手なこといえないもんね。
「……はい。わかりました」
自分で納得しつつも、沈んでしまった気持ちが浮上できないまま返事をすると
「怪我が治るまではうちに泊まってもらうからね」
と声が聞こえた。
えっ?
今、なんて?
優一さんの家に、泊まる?
「えっ? な――っ、あの、それって……?」
「んっ? だって、真琴くん一人暮らしだろう? 足と手を怪我して、安静に過ごすなんてできる?」
確かにそう言われればそうだけど……。
でも、優一さんの家に泊まるだなんて急に言われて混乱してしまう。
「あの、でもそんな迷惑……」
「迷惑なんてあるわけないだろう? それとも他に面倒を見てくれる人がいるのかな?」
「それは……いない、ですけど……」
「だろう? それなら私のところに居てくれる方が安心するよ。ねっ」
そんな優しくされたら……うん、って言っちゃいそう。
でも、本当にいいのかな?
「真琴くん、と言ったね? 優一のいうことを聞いた方がいい。もしかしたら今夜は熱が出るかもしれない。ひとりは危険だよ」
悩んでいる僕の背中を押すように先生にそう言われて、
「はい。お願いします」
と言ってしまった。
でもできるだけ、優一さんに迷惑をかけないようにしないとな!
* * *
大きな玄関の前に立つと、チャイムを鳴らす前にガチャリと重厚な扉が開いた。
「優一、久しぶりだな」
にっこりと笑顔で迎え入れてくれたのは、優一さんより随分と歳の離れたロマンスグレーがよく似合う渋いおじさんだった。
「ご無沙汰しています」
「この子か? 診察して欲しいというのは」
「はい。そうです」
「お前がこんなに大切そうに抱きかかえてくるとは……よほど大事な人だと見える」
その人の言葉に自分が優一さんにお姫さまのように抱っこされたままだと思い出す。
わぁっ!
僕こんな格好で人様の前に出ちゃった。
兄さんに怒られちゃうな……。
「あ、あの……優一さん、僕下ります」
「大丈夫、気にすることはないよ。ですよね、国生先生」
「ハハッ。君、諦めた方がいい。優一はこうと決めたら頑固だからな。さぁ、中に入りなさい」
「失礼します」
優一さんは靴を脱ぐとさっと僕の靴を脱がしてスタスタと中へ入って行った。
まるで自分の家にでも入るような気楽な感じに驚いてしまう。
ただの知り合いじゃないみたいだ。
「優一、そこのソファーに座らせてくれ」
そう言われて、優一さんは僕をそっとソファーに座らせた。
すぐ後ろには優一さんがピッタリと寄り添っていてまだ抱っこされているみたいな温もりを感じる。
「もう少し離れてもいいんだが……まぁいい」
少し呆れた様子の先生は、診察するよと言って僕の手を取った。
「これはまたひどく強く掴まれたな。筋は……なんとか大丈夫なようだな。んっ? ここもぶつけた跡があるな。他にどこか痛みがあるところはあるかい?」
にっこりと優しく問いかけられて、
「実は少し足首が……」
と正直に言うと、優一さんは
「やっぱりな。少し庇っているように見えたんだ」
と心配そうに僕の足に触れた。
そうか……気づかれてたんだ。
だから優一さん、僕を抱きかかえてくれてたんだ……。
優一さんってなんでこんなに優しいんだろうな……。
でも、そうか……。
怪我してなかったら抱っこしてもらえてなかったんだ……。
あんなに優しく抱っこしてくれてたのにな。
てっきり僕は……って、ちょっと!
なんで僕……こんな気持ちになってるんだろう?
もう、なんだか僕は優一さんと出会ってからよくわからない感情ばかりが出てきて、おかしくなってしまいそうだ。
一体どうしちゃったんだろう?
自分で自分がよくわからないな。
ひとりでうだうだと考えていると、
「真琴くん? 大丈夫? まだ他に痛いところがある?」
と優一さんの心配そうな声が聞こえる。
「あっ、いえ。それ以外は。はい、全然。痛みはない、です……」
「そう? とりあえず証拠写真撮るから靴下脱がすね」
「えっ? いや、あの、自分で――っ」
慌てて靴下に手をやった時には、もうすでにスルスルと脱がされてしまっていた。
一日歩き回った足なのに……恥ずかしい。
足が臭くなってないかなと心配したけれど、優一さんも先生も特に反応はないことにホッとする。
ただそれだけが救いだった。
「ああ、少し腫れてるね。湿布を出しておくから、2、3日は無理しないように」
「はい。わかりました。あっ、でも僕……」
「んっ? どうしたのかな?」
「いえ、明日から優一さんの事務所で働く予定で……」
「優一、彼はそう言ってるが働かせるのか?」
先生が優一さんに視線を向けると、
「真琴くん、早く治すことのほうが大事なんだから仕事のことは気にしないでいいよ」
と優しい声が降ってきた。
でも……せっかく天職になるかもなんて思ってたのに、出鼻挫かれちゃった気分だな……。
怪我しちゃった自分が悪いんだけど……でも、ちょっとへこむ。
あーあ、明日から優一さんと一緒に仕事ができるって楽しみだったんだけどな……。
でもここまで散々迷惑をかけてしまって、これ以上自分勝手なこといえないもんね。
「……はい。わかりました」
自分で納得しつつも、沈んでしまった気持ちが浮上できないまま返事をすると
「怪我が治るまではうちに泊まってもらうからね」
と声が聞こえた。
えっ?
今、なんて?
優一さんの家に、泊まる?
「えっ? な――っ、あの、それって……?」
「んっ? だって、真琴くん一人暮らしだろう? 足と手を怪我して、安静に過ごすなんてできる?」
確かにそう言われればそうだけど……。
でも、優一さんの家に泊まるだなんて急に言われて混乱してしまう。
「あの、でもそんな迷惑……」
「迷惑なんてあるわけないだろう? それとも他に面倒を見てくれる人がいるのかな?」
「それは……いない、ですけど……」
「だろう? それなら私のところに居てくれる方が安心するよ。ねっ」
そんな優しくされたら……うん、って言っちゃいそう。
でも、本当にいいのかな?
「真琴くん、と言ったね? 優一のいうことを聞いた方がいい。もしかしたら今夜は熱が出るかもしれない。ひとりは危険だよ」
悩んでいる僕の背中を押すように先生にそう言われて、
「はい。お願いします」
と言ってしまった。
でもできるだけ、優一さんに迷惑をかけないようにしないとな!
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