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危険人物の正体

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<sideセオドア>

『マモル、怖くないか?』

『は、はい。大丈夫です』

『それならよかった』

先ほどの広場から離れた場所で、マモルを腕に抱いたまま穏やかな時間を過ごしていると、

『セオドア!』

とラミロの声が聞こえた。

『奴はどうした?』

『ああ、もうロンドン市警に引き渡したから大丈夫だ。それで、ジャスティンがマモルに話を聞きたいと言っているのだが、できれば保護者も一緒がいいと話しているんだ』

『アキラも一緒に? ならば、今日はもう帰ったほうがいいか』

そういうと腕の中のマモルがピクリと身体を震えさせた。

『あの、セオドアさま……』

『ああ、大丈夫。心配しなくていいよ。私も一緒に帰って、ジャスティンに話す時も一緒にいるよ』

『本当ですか?』

『ああ。マモルを一人にはしないよ。安心してくれ』

私の言葉にマモルは心から安堵の表情を見せた。

『じゃあ行こうか』

そう言って私はマモルを抱いたまま、車を止めたホテルに向かった。

その間、マモルは一度も私から下りたいとは言い出さなかった。
気丈に振る舞っていたが、きっとまださっきの恐怖に怯えているのだろう。
確実に奴を捕まえるためとはいえ、可哀想なことをしてしまったな。


『車を用意してくれ』

その言葉に即座にホテルの玄関前に車が準備された。
ラミロは当然のように運転席に乗り込んでくれたのがとてもありがたかった。

今はマモルと離れていたくなかったからな。
ラミロがいてくれて本当によかった。

危なげない運転であっという間にマモルとアキラが住む家に到着した。
門をぬけ、玄関の前に車を停めるとアキラが玄関から駆け出してきた。
急いでマモルを抱きかかえたまま外に出ると、

『真守っ! 大丈夫だったか?』

と脇目もふらずにマモルに声をかけた。
今のアキラにはマモル以外目に入っていないようだ。
それもそうだろう、危険人物がマモルの近くにいたのだ。
きっと私が想像していた以上に心配していたに違いない。

『明さん。僕、大丈夫です。セオドアさまとラミロさまが守ってくださったので』

『そうか。それならよかった。セオドアさま、ラミロ王子殿下。私の大事な息子を守ってくださってありがとうございます』

『いや、礼には及ばぬ。大切な人を守るのは当然のことだからな』

はっきりと言い切るとアキラは一瞬驚きつつも、マモルの表情を見て安心しているように見えた。
きっとマモルが困っていれば、私の腕からマモルを引き離したに違いない。
だが、マモルの方から私から離れぬようにと首に手を回してくれているのだ。
アキラには、私に対するマモルの気持ちが伝わっていると思う。

『どうぞ、中にお入りください』

案内されて、中に入ると

『マモル、大丈夫?』

と心配そうな表情で駆け寄ってきた者がいた。

『アロン、ごめんね。心配かけて』

『ううん、いいんだよ。無事で本当によかった』

アキラの伴侶とはいい関係を築けているようだな。

『セオドアさま。少しお話がございますので、真守はアロンにお任せくださいますか?』

『んっ? ああ、わかった。マモル、下ろすぞ』

その言葉に少し寂しそうな表情を浮かべてくれるマモルに嬉しくなる。

『私はマモルに黙って帰ったりしないからな』

『はい。セオドアさま……』

少し安心した様子のマモルは

『マモル、僕の部屋で少し休憩しよう』

というアロンに手を引かれ、部屋を出ていった。

パタンと扉が閉まったのを確認してから、

『セオドアさま。ラミロ王子殿下。改めまして、今日は本当にありがとうございました』

と頭を下げるアキラに

『礼はいらぬと言っただろう? それで、あの男について、アキラは知っているのか?』

と尋ねた。
ジャスティンが来る前にアキラに話を聞きたいと思っていたんだ。

アキラは神妙な顔をして、ゆっくりと口を開いた。

『はい。あの男は真守の従兄弟です』

『従兄弟?』

『はい。真守の父親の兄弟の子どもなのですが、以前から真守に執着していて奴から離すために私はこのイギリスに真守を連れてきたのです。真守がここにいることは奴には一切の情報を与えずにしてきたのですが、どうやら執念で真守の居場所を突き止めたようでこちらに向かっているという情報を私は手に入れていました。本当ならば、すぐにでも確保したかったのですが、未遂で捕まえても結局すぐに出てきてしまう。それならば確実に真守を狙っていると明確にしてもう二度と真守に近づけないようにしたいと思ったのです』

『やはりな。アキラがみすみすマモルを危険な目に遭わせるとは思わなかったから意図があると思っていたのだ。だが、その従兄弟とやら。そこまでマモルに執着するとは本当に危険人物でしかないな。あの時、刃物を手にしていたぞ。手に入らないなら、マモルを殺して永遠に自分のものにしようとでも思っていたのだろう』

『本当にお二人には何度お礼を言っても足りません。ありがとうございます』

『いや、其方の情報提供があればこそだ。ジャスティンには全ての情報を渡したほうがいいな』

『承知しました』

『だが、アキラ。其方はその情報をどうやって手に入れていたんだ? ずっと日本には帰っていなかったのだろう?』

『ああ、それは日本にいる優秀な彼にお願いしていたのです。彼が今回、その全ての資料を持ってイギリスにきてくれたのですよ。セオドアさまとラミロさまにも彼をご紹介しますね』

そういうと、アキラは執事をよびその彼に部屋に来るようにと頼んだ。
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