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待ち合わせ
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<side明>
ーえっ? お待ち合わせですか?
ーああ。その方がデートという感じがするだろう? マモルは庶民なのだし、それに合わせてあげたほうが緊張せずに済むのではないか? 私はできるだけマモルに私が王子だということを考えずに気楽にして欲しいのだ。それはわかってくれるだろう?
ーは、はい。ラミロ王子のお考えは確かにその通りだと思います。ですが――
ーそうだろう。アキラなら、わかってくれると思ったよ。というわけで明日、トラファルガー広場の噴水の前で10時に待っているとマモルに伝えてくれ。頼むぞ。
そう言って私の話を聞くこともなく、一方的に電話が切れた。
まさか待ち合わせだとは思っていなかった。
てっきり我が家までお迎えにきてくださるものだと思っていたのに。
私は切れた電話を見つめながらただ茫然と立ち尽くすしかなかった。
あの真守をたった一人で街中に、しかもよりにもよって人の多いあの広場で立たせるなんて……それがどれだけ危険なことかをラミロ王子はお考えにならなかったのだろうか。
この3年、真守をそばで見守りながら私は身をもって体験してきたからよくわかる。
アロンも危ないことは多かったが、真守はそれ以上だ。
特にこのイギリスで東洋系の顔立ちである真守が目立つのは分かりきったことだが、何よりも目を惹くほどかわいらしいのだ。
顔だけではない。
仕草も何もかもかわいらしいのだ。
歳を重ねるたびにどんどん可愛らしさが増してくるとは同じ日本人の私でも不思議に思う。
私と一緒に歩いている時でさえ、真守に注がれる視線は凄まじいものがある。
カフェに入って先に席で待たせれば、この機会にとすぐに何人もの男たちが真守に声をかけにいくのが見える。
慌てて真守のそばに駆け寄ればチッと舌打ちをされながらもあっという間に散っていく。
だから私はたとえ少しの時間でも、見える位置にいたとしても離れるのはやめたのだ。
だが、当の真守は自分が目を惹く存在だということに全く気づいていない。
そんな危ない真守を人通りの多い時間に人目を惹く場所で一人で待たせる……。
ラミロ王子のそんな浅はかさにため息が漏れる。
安全のために真守にお守りだと称してブレスレットを身につけさせているが、それでも心配に変わりはない。
このブレスレットは、雪乃夫婦が依頼したあの成瀬弁護士に紹介してもらって購入したものなのだが、これはただのブレスレットではない。
超高性能GPSが内蔵されたブレスレットだ。
あの件で時々交流を深めるうちに個人的なことも話す間柄になり、仕事上でどうしても事務所に一人に居させることもあるアロンのことが心配だとぽろっと漏らしたら、それなら良いものがあると紹介してくれたのだ。
彼の親しい知人が開発に携わっているというこのGPSは、ピンポイントで正確な位置を把握する。
そしてどのような衝撃を与えたとしても壊れることはない。
たとえ、象に踏まれても壊れないというのだから素晴らしい。
アロンにも身につけさせているから性能は実証済みである。
聞けば、成瀬弁護士の愛しいパートナーにも同じブレスレットを付けさせているというのだから、その凄さは折り紙つきだ。
いつか、彼のパートナーにアロンを紹介したいと話してはいるがお互いに仕事が忙しく、まだその夢は叶えられていない。
と、その話はさておき、明日の待ち合わせをどうするか……。
広場までは送っていくにしても、一緒に立っていればラミロ王子が気を悪くするかもしれない。
だが、絶対に一人で立たせるようなことはできない。
さて、どうしたら良いか……。
そう考えたとき、私の頭には彼に連絡を入れることしか思いつかなかった。
ーアキラ。どうした? 何かあったか?
ー今、お時間よろしいですか?
ー構わん。何があった?
心配げな声を漏らす彼は、セオドアさま。
真守とラミロ王子がデートをすることを私以上に心配してくださっている。
彼なら、待ち合わせもなんとかしてくれるかもしれない。
私は、そんな期待に胸を膨らませていた。
ー実は先ごろ、ラミロ王子より真守とのデートの件でお電話をいただいたのですが、トラファルガー広場にある噴水の前でお待ち合わせをしたいと仰っておいでなのです。
ーなに? マモルをあの場所で一人で待たせるというのか?
ーはい。ラミロ王子が先に待っていらして真守をお迎えくださるおつもりかもしれませんが……。
ーいや、それはないな。ラミロの国では誘った相手がデートの時間に遅れてくるのが美徳とされている。だからラミロが先に待っていることはあり得ないな。
確かにヒビスクス王国でのマナーの一つだと聞いたことがある。
彼はそこの王子なのだから、そのマナーを違うことはしないだろう。
それなら尚更真守を一人で待たせるのは心配しかない。
ーえっ? お待ち合わせですか?
ーああ。その方がデートという感じがするだろう? マモルは庶民なのだし、それに合わせてあげたほうが緊張せずに済むのではないか? 私はできるだけマモルに私が王子だということを考えずに気楽にして欲しいのだ。それはわかってくれるだろう?
ーは、はい。ラミロ王子のお考えは確かにその通りだと思います。ですが――
ーそうだろう。アキラなら、わかってくれると思ったよ。というわけで明日、トラファルガー広場の噴水の前で10時に待っているとマモルに伝えてくれ。頼むぞ。
そう言って私の話を聞くこともなく、一方的に電話が切れた。
まさか待ち合わせだとは思っていなかった。
てっきり我が家までお迎えにきてくださるものだと思っていたのに。
私は切れた電話を見つめながらただ茫然と立ち尽くすしかなかった。
あの真守をたった一人で街中に、しかもよりにもよって人の多いあの広場で立たせるなんて……それがどれだけ危険なことかをラミロ王子はお考えにならなかったのだろうか。
この3年、真守をそばで見守りながら私は身をもって体験してきたからよくわかる。
アロンも危ないことは多かったが、真守はそれ以上だ。
特にこのイギリスで東洋系の顔立ちである真守が目立つのは分かりきったことだが、何よりも目を惹くほどかわいらしいのだ。
顔だけではない。
仕草も何もかもかわいらしいのだ。
歳を重ねるたびにどんどん可愛らしさが増してくるとは同じ日本人の私でも不思議に思う。
私と一緒に歩いている時でさえ、真守に注がれる視線は凄まじいものがある。
カフェに入って先に席で待たせれば、この機会にとすぐに何人もの男たちが真守に声をかけにいくのが見える。
慌てて真守のそばに駆け寄ればチッと舌打ちをされながらもあっという間に散っていく。
だから私はたとえ少しの時間でも、見える位置にいたとしても離れるのはやめたのだ。
だが、当の真守は自分が目を惹く存在だということに全く気づいていない。
そんな危ない真守を人通りの多い時間に人目を惹く場所で一人で待たせる……。
ラミロ王子のそんな浅はかさにため息が漏れる。
安全のために真守にお守りだと称してブレスレットを身につけさせているが、それでも心配に変わりはない。
このブレスレットは、雪乃夫婦が依頼したあの成瀬弁護士に紹介してもらって購入したものなのだが、これはただのブレスレットではない。
超高性能GPSが内蔵されたブレスレットだ。
あの件で時々交流を深めるうちに個人的なことも話す間柄になり、仕事上でどうしても事務所に一人に居させることもあるアロンのことが心配だとぽろっと漏らしたら、それなら良いものがあると紹介してくれたのだ。
彼の親しい知人が開発に携わっているというこのGPSは、ピンポイントで正確な位置を把握する。
そしてどのような衝撃を与えたとしても壊れることはない。
たとえ、象に踏まれても壊れないというのだから素晴らしい。
アロンにも身につけさせているから性能は実証済みである。
聞けば、成瀬弁護士の愛しいパートナーにも同じブレスレットを付けさせているというのだから、その凄さは折り紙つきだ。
いつか、彼のパートナーにアロンを紹介したいと話してはいるがお互いに仕事が忙しく、まだその夢は叶えられていない。
と、その話はさておき、明日の待ち合わせをどうするか……。
広場までは送っていくにしても、一緒に立っていればラミロ王子が気を悪くするかもしれない。
だが、絶対に一人で立たせるようなことはできない。
さて、どうしたら良いか……。
そう考えたとき、私の頭には彼に連絡を入れることしか思いつかなかった。
ーアキラ。どうした? 何かあったか?
ー今、お時間よろしいですか?
ー構わん。何があった?
心配げな声を漏らす彼は、セオドアさま。
真守とラミロ王子がデートをすることを私以上に心配してくださっている。
彼なら、待ち合わせもなんとかしてくれるかもしれない。
私は、そんな期待に胸を膨らませていた。
ー実は先ごろ、ラミロ王子より真守とのデートの件でお電話をいただいたのですが、トラファルガー広場にある噴水の前でお待ち合わせをしたいと仰っておいでなのです。
ーなに? マモルをあの場所で一人で待たせるというのか?
ーはい。ラミロ王子が先に待っていらして真守をお迎えくださるおつもりかもしれませんが……。
ーいや、それはないな。ラミロの国では誘った相手がデートの時間に遅れてくるのが美徳とされている。だからラミロが先に待っていることはあり得ないな。
確かにヒビスクス王国でのマナーの一つだと聞いたことがある。
彼はそこの王子なのだから、そのマナーを違うことはしないだろう。
それなら尚更真守を一人で待たせるのは心配しかない。
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