イケメンスパダリ店主は愛する人が鈍感で無防備で可愛すぎて困っています

波木真帆

文字の大きさ
68 / 104

二人で一緒に

しおりを挟む
「あの、沖縄でコーヒーって作れるんですか? コーヒーってなんかすごく暑い国で栽培されてるイメージがあるんですけど……勉強不足ですみません」

平松くんの質問に思わず笑みが溢れる。
私も山入端さんからこの島でコーヒーを栽培していると言われた時は同じような質問をしてしまったものだ。
こういうところも私たちはよく似ている。

山入端さんは平松くんがコーヒーに興味を持ってくれたことが嬉しいのか、沖縄でのコーヒー栽培についての説明を始めたが、平松くんはそれをなおも興味深そうに聞いている。
こんな前のめりで話を聞いてくれたら嬉しいだろうな。

「じゃあここのカフェスタンドのコーヒーは全部……えっと、山入端さんの農園で作られたものですか?」

山入端さんの名前をちゃんと覚えていたか。
ふふっ。可愛い。

しかし、西表産のコーヒーはブラックとアイスコーヒーとホットコーヒーだけのようで、私たちが頼んだカフェラテは海外の豆が使われていると知って、残念そうな表情を浮かべた。

山入端さんはそれに気づいたのか、試飲を提案してくれた。

ぱあっと顔が明るくなるのが正直で可愛い。

山入端さんはすぐにスタッフの宗方くんに試飲用のホットとアイスのコーヒーを二杯持ってくるように頼み、私にアイコンタクトをして見せた。

平松くんは純粋に喜んでいるが、アイスとホットが一杯ずつということは、私たちが一杯を分け合って飲むのが当然の関係だと思われていることに気づいていないのだろう。

さて、その事実に気づいた時にどんな表情を見せてくれるのだろうな。

「あっ、カフェラテもどうぞ飲んでみてください。今日は彼に焙煎からやってもらったので先日との味の違いを楽しんでいただけると思います」

そうだ。
話に夢中ですっかり忘れてしまっていたな。

以前、ここでコーヒーを頼んだ時、あいつがコーヒーを淹れることができたのは、山入端さんがコーヒーの味の状態を見るために作っておいた試作品を私たちの注文に使ったからだそうだ。

時間が経っていたが、流石に山入端さんが淹れたものだったから美味しく感じられたのだ。
きっと味が悪いことに気づかれたら、自分が偽者だということがすぐにバレると思ったのだろうな。
そういうところも悪賢いやつだったな。

「――っ、すっごく美味しいです! コーヒーの苦味と香りがふわって……この間のも美味しかったですけど、今日の方が好きです」

平松くんが宗方くんの淹れた今日のコーヒーを誉めると、山入端さんはまるで自分が誉められたような笑顔を見せた。
自分の時ならばそこまで表情を崩すことはないのに、やはり自分の愛しい相手が誉められたら嬉しいものなのだろう。

「どうぞ」

宗方くんが可愛いカップに淹れたコーヒーを持って戻ってきた。

宗方くんの手作りだと聞いて平松くんは驚きつつも興味津々だ。
イラストを描くのも好きだからこういう可愛らしいものがそもそも好きなのだろう。

和風っぽいこのカップが西表産のコーヒーというキーワードと相まってなんともよく似合っている。

今はコーヒースタンドだけだが、将来的にイートインスペースを作るならば、彼の手作りカップはコーヒーの味とともに人気になることだろう。

宗方くん自身は恥ずかしそうにしているが、山入端さんが乗り気だからきっとこれは近い将来実現するだろうな。

「平松くん、どっちから飲んでみる?」

せっかく出してくれたコーヒーを飲まないのは勿体無い。
平松くんも冷めないうちに飲みたいと思ったのか、ホットを選んだ。

砂糖とミルクを淹れて飲むのが好きな平松くんだからブラックは心配だったが、

「んっ! 美味しいっ!!」

とお世辞ではない心からの声が漏れていた。

「八尋さんも飲んでみてください。すごく美味しいですよ」

手渡してくれたカップを受け取り、平松くんが口をつけたところにわざと口をつけて飲むと、平松くんは一瞬にして顔を赤く染めていた。

ふふっ。間接キスだということにすぐに気づいたのは私を意識してくれている証拠だ。
ああ、もう本当に可愛くてたまらない。

「本当に美味しいな。山入端さん、いいコーヒーができてるね」

もちろん本当に美味しいが、今日のコーヒーが私にとってさらに極上のものに感じられる理由は山入端さんにも気づかれているだろうな。

アイスコーヒーの試飲も飲み干したところで、

「平松くん、そろそろ行こうか。早く行かないと日が沈んでしまう」

と声をかけた。

平松くんと海を見るためにやってきたのだからこれを逃すわけにはいかない。
ここに車を置かせてもらい、ビーチに行こうとすると

「帰りはぜひ上のレストランに寄ってください。兄にも話を通しておきますので、個室を空けておきます」

と山入端さんに誘われ、どうしようかと思ったが、ここで食べて帰れば夜は平松くんとゆっくり過ごせるだろう。
そんなことも考えて誘いを受けることにした。

平松くんの手を取ってビーチに向かう途中、

「ごめんね、今日はうちで夕食をと思っていたんだけど、あのレストランで食べて帰ろうか。いいかな?」

勝手に決めてしまったことを謝ったが、

「俺は八尋さんと一緒ならどこでも……」

と可愛い答えが返ってきた。

慌てたようになんでもないと言ってきたが、平松くんが私を意識してくれているのは間違いない。

このまま海を見ながら、平松くんの唇を奪えたら……どんなに幸せだろうな。
しおりを挟む
感想 157

あなたにおすすめの小説

朝目覚めたら横に悪魔がいたんだが・・・告白されても困る!

渋川宙
BL
目覚めたら横に悪魔がいた! しかもそいつは自分に惚れたと言いだし、悪魔になれと囁いてくる!さらに魔界で結婚しようと言い出す!! 至って普通の大学生だったというのに、一体どうなってしまうんだ!?

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

処理中です...