イケメンスパダリ店主は愛する人が鈍感で無防備で可愛すぎて困っています

波木真帆

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二人で一緒に

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「あの、沖縄でコーヒーって作れるんですか? コーヒーってなんかすごく暑い国で栽培されてるイメージがあるんですけど……勉強不足ですみません」

平松くんの質問に思わず笑みが溢れる。
私も山入端さんからこの島でコーヒーを栽培していると言われた時は同じような質問をしてしまったものだ。
こういうところも私たちはよく似ている。

山入端さんは平松くんがコーヒーに興味を持ってくれたことが嬉しいのか、沖縄でのコーヒー栽培についての説明を始めたが、平松くんはそれをなおも興味深そうに聞いている。
こんな前のめりで話を聞いてくれたら嬉しいだろうな。

「じゃあここのカフェスタンドのコーヒーは全部……えっと、山入端さんの農園で作られたものですか?」

山入端さんの名前をちゃんと覚えていたか。
ふふっ。可愛い。

しかし、西表産のコーヒーはブラックとアイスコーヒーとホットコーヒーだけのようで、私たちが頼んだカフェラテは海外の豆が使われていると知って、残念そうな表情を浮かべた。

山入端さんはそれに気づいたのか、試飲を提案してくれた。

ぱあっと顔が明るくなるのが正直で可愛い。

山入端さんはすぐにスタッフの宗方くんに試飲用のホットとアイスのコーヒーを二杯持ってくるように頼み、私にアイコンタクトをして見せた。

平松くんは純粋に喜んでいるが、アイスとホットが一杯ずつということは、私たちが一杯を分け合って飲むのが当然の関係だと思われていることに気づいていないのだろう。

さて、その事実に気づいた時にどんな表情を見せてくれるのだろうな。

「あっ、カフェラテもどうぞ飲んでみてください。今日は彼に焙煎からやってもらったので先日との味の違いを楽しんでいただけると思います」

そうだ。
話に夢中ですっかり忘れてしまっていたな。

以前、ここでコーヒーを頼んだ時、あいつがコーヒーを淹れることができたのは、山入端さんがコーヒーの味の状態を見るために作っておいた試作品を私たちの注文に使ったからだそうだ。

時間が経っていたが、流石に山入端さんが淹れたものだったから美味しく感じられたのだ。
きっと味が悪いことに気づかれたら、自分が偽者だということがすぐにバレると思ったのだろうな。
そういうところも悪賢いやつだったな。

「――っ、すっごく美味しいです! コーヒーの苦味と香りがふわって……この間のも美味しかったですけど、今日の方が好きです」

平松くんが宗方くんの淹れた今日のコーヒーを誉めると、山入端さんはまるで自分が誉められたような笑顔を見せた。
自分の時ならばそこまで表情を崩すことはないのに、やはり自分の愛しい相手が誉められたら嬉しいものなのだろう。

「どうぞ」

宗方くんが可愛いカップに淹れたコーヒーを持って戻ってきた。

宗方くんの手作りだと聞いて平松くんは驚きつつも興味津々だ。
イラストを描くのも好きだからこういう可愛らしいものがそもそも好きなのだろう。

和風っぽいこのカップが西表産のコーヒーというキーワードと相まってなんともよく似合っている。

今はコーヒースタンドだけだが、将来的にイートインスペースを作るならば、彼の手作りカップはコーヒーの味とともに人気になることだろう。

宗方くん自身は恥ずかしそうにしているが、山入端さんが乗り気だからきっとこれは近い将来実現するだろうな。

「平松くん、どっちから飲んでみる?」

せっかく出してくれたコーヒーを飲まないのは勿体無い。
平松くんも冷めないうちに飲みたいと思ったのか、ホットを選んだ。

砂糖とミルクを淹れて飲むのが好きな平松くんだからブラックは心配だったが、

「んっ! 美味しいっ!!」

とお世辞ではない心からの声が漏れていた。

「八尋さんも飲んでみてください。すごく美味しいですよ」

手渡してくれたカップを受け取り、平松くんが口をつけたところにわざと口をつけて飲むと、平松くんは一瞬にして顔を赤く染めていた。

ふふっ。間接キスだということにすぐに気づいたのは私を意識してくれている証拠だ。
ああ、もう本当に可愛くてたまらない。

「本当に美味しいな。山入端さん、いいコーヒーができてるね」

もちろん本当に美味しいが、今日のコーヒーが私にとってさらに極上のものに感じられる理由は山入端さんにも気づかれているだろうな。

アイスコーヒーの試飲も飲み干したところで、

「平松くん、そろそろ行こうか。早く行かないと日が沈んでしまう」

と声をかけた。

平松くんと海を見るためにやってきたのだからこれを逃すわけにはいかない。
ここに車を置かせてもらい、ビーチに行こうとすると

「帰りはぜひ上のレストランに寄ってください。兄にも話を通しておきますので、個室を空けておきます」

と山入端さんに誘われ、どうしようかと思ったが、ここで食べて帰れば夜は平松くんとゆっくり過ごせるだろう。
そんなことも考えて誘いを受けることにした。

平松くんの手を取ってビーチに向かう途中、

「ごめんね、今日はうちで夕食をと思っていたんだけど、あのレストランで食べて帰ろうか。いいかな?」

勝手に決めてしまったことを謝ったが、

「俺は八尋さんと一緒ならどこでも……」

と可愛い答えが返ってきた。

慌てたようになんでもないと言ってきたが、平松くんが私を意識してくれているのは間違いない。

このまま海を見ながら、平松くんの唇を奪えたら……どんなに幸せだろうな。
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