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全ての運を
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「う、わぁ……っ」
言葉にできない美しさというのはこういうことを言うんだろうか。
夕焼けの光が、海面を照らしキラキラと宝石のように輝いて見える。
現実世界とは思えないほどの綺麗な光景に俺はその場から動くこともできなくなっていた。
「この景色が見られたのはラッキーだったね」
「えっ、これって毎日ここで見られるわけじゃないんですか?」
「美しい夕焼けは見られるけど、これほど美しいのはそう数あるわけではないよ。湿度や風の影響も大きく関わってくるからね。平松くんは、初めてでこれを見られるなんてツイてるよ」
「俺が、ツイてる……」
西表島に来るまで幸運とは無縁の人生だった。
両親と暮らしていた頃は不幸ではなかったけれど、取り立てて幸運という訳でもなかった。
田舎住まいで特段裕福という訳でもなかったし、何より未成年のうちに両親と死別してからは、一気に不幸に転落していった気がする。
栗原先生が助けてくれなかったら、高校を卒業することもできなかっただろう。
バーテンダーも住み込みだったから選んだだけで、したい仕事ではなかった。
玻名崎商会に入ったのだって、藤乃くんを追いかけて無我夢中で入れてもらっただけで何をするところかもわからなかった。
だからこそ言われるがままにやるしかなかった。
あの会社での五年間は思い出したくないほど辛く厳しいものだった。
でも藤乃くんが倉橋社長と出会ってくれたおかげで、俺もここに来ることができたんだ。
もし、あの時、砂川さんからの連絡を取らずにいたら……。
もし、あの会社の告発を決意しなかったら……。
もし、社長からのお礼の100万円を受け取っていたら……。
そのどれかが欠けていれば、ここにはいられなかった。
そうしたら、八尋さんのことも知らずにこれから先の人生を過ごすことになっていたんだ……。
そう考えたら俺は本当にツイているのかもしれないな。
いや、俺の人生の幸運全てをこの島で八尋さんと出会うことに使ってしまったんだ。
だから、これ以上の幸運を求めてはいけない。
こうして同じ時を、同じ場所で過ごせるだけで幸せだと思わなくちゃいけないんだ!
「平松くん、何を考えてる?」
「えっ、あの……俺、ここに来られて幸せだなって……」
「そんなにこの場所が気に入った?」
「はい。この場所もですけど、この西表島に来られて本当に良かったなって……。俺、仕事もプライベートも毎日が楽しいなんて、本当に初めてだから……倉橋社長には感謝してもしきれません。俺、その恩に報いるためにもこれからも仕事を精一杯頑張りたいって思えました」
「そうか……」
「やっぱり海っていいですね。心が洗われる感じがします。まぁ、俺の田舎は海もなかったんでこんなに綺麗な海を見たこと自体初めてなんですけどね」
カフェラテを飲みながら、波の音を聞いていると次第に暗くなってくる。
気づけば夕日が完全に海の中に入ってしまいそうになっている。
「わぁ、暗くなるとこの辺でもハブが出ますか?」
「ああ、そうだね。そろそろ戻ろうか」
八尋さんの大きな手に包み込まれる。
ビーチを出てさっきの道に戻る時にはもうすっかり暗くなっていて、この辺には街灯もなくて真っ暗だから、安全のために繋いでくれたんだろう。
そんな理由だとわかっていても、好きな人と手を繋げるのは嬉しい。
少し離れた場所にある、あのレストランの光を頼りに俺たちは手を繋いだまま歩き続けた。
「平松くん、大丈夫?」
「はい。八尋さんが一緒だから大丈夫です」
「それなら良かった」
優しい笑顔でいつめられてドキッとする。
俺の今の受け答え、大丈夫だったよな?
変なことは言ってないはずだけど、自分の気持ちが抑えられなくなってきているから気をつけないとな。
レストランの敷地内に戻ると、明るくてホッとする。
「じゃあ、行こうか」
海からずっと繋いだままの手を外すのが勿体無くて、明るくなって歩きやすくなっても俺は何も言わなかった。
八尋さんが気づいたら手を離そうと決めていたけれど、八尋さんは繋いだ手を離そうとはしなかった。
「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ」
山入端さんが話しておくと言ってくれた通り、俺たちというか八尋さんの顔を見ただけですぐに奥の個室に案内してくれた。
「ステーキ肉のとびきり良いのが入ってるんで、ぜひお召し上がりいただきたいのですがそれでよろしいですか?」
「平松くん、大丈夫?」
「えっ、は、はい。俺はなんでも……っ」
「ふふっ。じゃあ、そのステーキを二人分お願いしようかな」
「パンとライスはどちらにしますか?」
「平松くんはどっちがいい?
「えっと、パンもいいけど……うーん、やっぱりライスで」
「ふふっ。わかった。じゃあ、ライスとパン、一つずつ頼むよ」
「かしこまりました、すぐにお持ちしますね」
そういうと店員さんはすぐに部屋を出ていった。
言葉にできない美しさというのはこういうことを言うんだろうか。
夕焼けの光が、海面を照らしキラキラと宝石のように輝いて見える。
現実世界とは思えないほどの綺麗な光景に俺はその場から動くこともできなくなっていた。
「この景色が見られたのはラッキーだったね」
「えっ、これって毎日ここで見られるわけじゃないんですか?」
「美しい夕焼けは見られるけど、これほど美しいのはそう数あるわけではないよ。湿度や風の影響も大きく関わってくるからね。平松くんは、初めてでこれを見られるなんてツイてるよ」
「俺が、ツイてる……」
西表島に来るまで幸運とは無縁の人生だった。
両親と暮らしていた頃は不幸ではなかったけれど、取り立てて幸運という訳でもなかった。
田舎住まいで特段裕福という訳でもなかったし、何より未成年のうちに両親と死別してからは、一気に不幸に転落していった気がする。
栗原先生が助けてくれなかったら、高校を卒業することもできなかっただろう。
バーテンダーも住み込みだったから選んだだけで、したい仕事ではなかった。
玻名崎商会に入ったのだって、藤乃くんを追いかけて無我夢中で入れてもらっただけで何をするところかもわからなかった。
だからこそ言われるがままにやるしかなかった。
あの会社での五年間は思い出したくないほど辛く厳しいものだった。
でも藤乃くんが倉橋社長と出会ってくれたおかげで、俺もここに来ることができたんだ。
もし、あの時、砂川さんからの連絡を取らずにいたら……。
もし、あの会社の告発を決意しなかったら……。
もし、社長からのお礼の100万円を受け取っていたら……。
そのどれかが欠けていれば、ここにはいられなかった。
そうしたら、八尋さんのことも知らずにこれから先の人生を過ごすことになっていたんだ……。
そう考えたら俺は本当にツイているのかもしれないな。
いや、俺の人生の幸運全てをこの島で八尋さんと出会うことに使ってしまったんだ。
だから、これ以上の幸運を求めてはいけない。
こうして同じ時を、同じ場所で過ごせるだけで幸せだと思わなくちゃいけないんだ!
「平松くん、何を考えてる?」
「えっ、あの……俺、ここに来られて幸せだなって……」
「そんなにこの場所が気に入った?」
「はい。この場所もですけど、この西表島に来られて本当に良かったなって……。俺、仕事もプライベートも毎日が楽しいなんて、本当に初めてだから……倉橋社長には感謝してもしきれません。俺、その恩に報いるためにもこれからも仕事を精一杯頑張りたいって思えました」
「そうか……」
「やっぱり海っていいですね。心が洗われる感じがします。まぁ、俺の田舎は海もなかったんでこんなに綺麗な海を見たこと自体初めてなんですけどね」
カフェラテを飲みながら、波の音を聞いていると次第に暗くなってくる。
気づけば夕日が完全に海の中に入ってしまいそうになっている。
「わぁ、暗くなるとこの辺でもハブが出ますか?」
「ああ、そうだね。そろそろ戻ろうか」
八尋さんの大きな手に包み込まれる。
ビーチを出てさっきの道に戻る時にはもうすっかり暗くなっていて、この辺には街灯もなくて真っ暗だから、安全のために繋いでくれたんだろう。
そんな理由だとわかっていても、好きな人と手を繋げるのは嬉しい。
少し離れた場所にある、あのレストランの光を頼りに俺たちは手を繋いだまま歩き続けた。
「平松くん、大丈夫?」
「はい。八尋さんが一緒だから大丈夫です」
「それなら良かった」
優しい笑顔でいつめられてドキッとする。
俺の今の受け答え、大丈夫だったよな?
変なことは言ってないはずだけど、自分の気持ちが抑えられなくなってきているから気をつけないとな。
レストランの敷地内に戻ると、明るくてホッとする。
「じゃあ、行こうか」
海からずっと繋いだままの手を外すのが勿体無くて、明るくなって歩きやすくなっても俺は何も言わなかった。
八尋さんが気づいたら手を離そうと決めていたけれど、八尋さんは繋いだ手を離そうとはしなかった。
「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ」
山入端さんが話しておくと言ってくれた通り、俺たちというか八尋さんの顔を見ただけですぐに奥の個室に案内してくれた。
「ステーキ肉のとびきり良いのが入ってるんで、ぜひお召し上がりいただきたいのですがそれでよろしいですか?」
「平松くん、大丈夫?」
「えっ、は、はい。俺はなんでも……っ」
「ふふっ。じゃあ、そのステーキを二人分お願いしようかな」
「パンとライスはどちらにしますか?」
「平松くんはどっちがいい?
「えっと、パンもいいけど……うーん、やっぱりライスで」
「ふふっ。わかった。じゃあ、ライスとパン、一つずつ頼むよ」
「かしこまりました、すぐにお持ちしますね」
そういうと店員さんはすぐに部屋を出ていった。
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