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八尋さんと一緒なら……
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「どうぞ」
「わぁ、いい香り。それに、このカップ可愛いですね」
宗方さんが置いてくれた小さなグラスと小さなカップにそれぞれアイスとホットのコーヒーが淹れられていて、ホットコーヒー用の小さなカップがなんとも味があって可愛い。
「ありがとうございます。実はこのコーヒーカップ、僕が作ったんです」
「えっ? 作った? カップを?」
思いがけない言葉が返ってきて、聞き返しながら何度もカップと宗方さんの顔を見ていると、隣にいた山入端さんが笑顔で口を開いた。
「ふふっ。実はこの宗方くん、趣味で陶芸をやっているらしくてね。知り合いの工房でたまに作らせてもらっているそうなんですよ。それで、今回うちのカフェスタンドでバイトすることになって、試飲用でぜひ使って欲しいって持ってきてくれたんです」
「わぁ、それはすごいですね」
まさか手作りだとは夢にも思っていなかったから、驚いてしまった。
でも、このカップ……本当に可愛い。
「和風っぽい感じがするカップなのに、このコーヒーにはすごく似合いますね」
「ええ。そうなんです。日本生まれのコーヒーにはピッタリですよね。私もそれが気に入って、彼のカップを試飲用に使わせてもらってるんです」
「試飲だけなんて勿体無いくらいですよ。ねぇ、八尋さん」
「ああ、そうだね。山入端さん、もし、テイクアウトだけじゃなくてイートインスペースを作るんだったら、彼のコーヒーカップで飲むコーヒーは人気になるんじゃないかな」
「そんなっ、お金を出してもらって飲んでくださる方に僕のカップなんて…‥」
宗方さんはとんでもないと言いたげだけど、山入端さんは満更でもなさそうだ。
「八尋さん、それはいいアイディアですね。もう少し軌道に乗ったら、カフェを作るつもりでしたからその時には彼のコーヒーカップで飲めるようにしたいですね。宗方くん、どう?」
「僕は……山入端さんが、そう仰ってくれるなら喜んで……」
「わぁ、それすっごくいいですよ!」
そうなったらここのコーヒーがもっと人気になりそう。
本当に可愛くて、これで飲んでみたいって思うもん。
宗方さんは褒められてすごく嬉しそうだ。
ほっぺたが少し赤い。
「平松くん、どっちから飲んでみる?」
「あ、じゃあホットから」
「火傷しないようにね」
「はい」
ブラックで飲むのは初めてだけど、香りはものすごく好きな感じだ。
「んっ! 美味しいっ!!」
思っていたより苦味が少ない上にフルーツのような甘さを感じる。
優しい香りが鼻から抜けて、素直に美味しいと思えた。
「ふふっ。ブラックが飲めない平松くんが美味しいというのなら本物だな」
「八尋さんも飲んでみてください。すごく美味しいですよ」
八尋さんに手渡すと、
「じゃあ私も試飲させてもらおうかな」
と嬉しそうに口をつけた。
「――っ!」
八尋さんが口をつけたところが、俺が口をつけていたところだということに気づいて、ドキッとしてしまう。
そういえば以前もここのコーヒーで間接キスしちゃったんだっけ。
「んっ? どうかした?」
「えっ、あ、なんでもないです」
あの時は八尋さんが好きだと自覚していなかったけど、今は好きな人と間接でもキスしちゃったことにドキドキが止まらない。
でも八尋さんは気にしてなさそう。
だって友人だもんな。
「本当に美味しいな。山入端さん、いいコーヒーができてるね」
「ありがとうございます。八尋さんにそう仰っていただけると嬉しいです」
親しげに会話をしている二人を見ながら、俺はアイスコーヒーにも手を伸ばした。
「これも美味しい」
「あの、平松さん……今日は来てくださって嬉しいです。それにカップまで褒めてくださって……ありがとうございます」
「いえ、俺はそんな……」
「いつでも飲みに来てください。八尋さんと一緒に……」
「えっ?」
どうして八尋さんと? と思ったけれど、宗方さんはニコニコと笑顔を浮かべているだけでそれ以外は何も言わなかった。
「平松くん、そろそろ行こうか。早く行かないと日が沈んでしまう」
「あっ! そうでした!」
「ああ、夕焼けの海を見に行かれるんですね。それは見逃したら大変だ。あそこからすぐにビーチに行けますから、ぜひ行ってきてください。車はここに置かれて構いませんよ」
そんな山入端さんの好意に甘えて、俺と八尋さんはそこからカフェラテを持ってビーチに行くことにした。
「帰りはぜひ上のレストランに寄ってください。兄にも話を通しておきますので、個室を空けておきます」
山入端さんにそう言われて、八尋さんはどうするんだろうと思っていると、
「ありがとう、お邪魔させてもらうよ」
と返していた。
俺は頭を下げながら、八尋さんに案内されるままにビーチへ向かった。
「ごめんね、今日はうちで夕食をと思っていたんだけど、あのレストランで食べて帰ろうか。いいかな?」
「は、はい。俺は八尋さんと一緒ならどこでも……」
「えっ?」
「な、なんでもないですっ! あっ! ビーチが見えてきましたよ!!」
慌てて話題を変えると、
「ああ、本当だね」
と優しい声が返ってきた。
俺はホッとしながらも、自分の気持ちが抑えられなくなってきていることに不安になっていた。
「わぁ、いい香り。それに、このカップ可愛いですね」
宗方さんが置いてくれた小さなグラスと小さなカップにそれぞれアイスとホットのコーヒーが淹れられていて、ホットコーヒー用の小さなカップがなんとも味があって可愛い。
「ありがとうございます。実はこのコーヒーカップ、僕が作ったんです」
「えっ? 作った? カップを?」
思いがけない言葉が返ってきて、聞き返しながら何度もカップと宗方さんの顔を見ていると、隣にいた山入端さんが笑顔で口を開いた。
「ふふっ。実はこの宗方くん、趣味で陶芸をやっているらしくてね。知り合いの工房でたまに作らせてもらっているそうなんですよ。それで、今回うちのカフェスタンドでバイトすることになって、試飲用でぜひ使って欲しいって持ってきてくれたんです」
「わぁ、それはすごいですね」
まさか手作りだとは夢にも思っていなかったから、驚いてしまった。
でも、このカップ……本当に可愛い。
「和風っぽい感じがするカップなのに、このコーヒーにはすごく似合いますね」
「ええ。そうなんです。日本生まれのコーヒーにはピッタリですよね。私もそれが気に入って、彼のカップを試飲用に使わせてもらってるんです」
「試飲だけなんて勿体無いくらいですよ。ねぇ、八尋さん」
「ああ、そうだね。山入端さん、もし、テイクアウトだけじゃなくてイートインスペースを作るんだったら、彼のコーヒーカップで飲むコーヒーは人気になるんじゃないかな」
「そんなっ、お金を出してもらって飲んでくださる方に僕のカップなんて…‥」
宗方さんはとんでもないと言いたげだけど、山入端さんは満更でもなさそうだ。
「八尋さん、それはいいアイディアですね。もう少し軌道に乗ったら、カフェを作るつもりでしたからその時には彼のコーヒーカップで飲めるようにしたいですね。宗方くん、どう?」
「僕は……山入端さんが、そう仰ってくれるなら喜んで……」
「わぁ、それすっごくいいですよ!」
そうなったらここのコーヒーがもっと人気になりそう。
本当に可愛くて、これで飲んでみたいって思うもん。
宗方さんは褒められてすごく嬉しそうだ。
ほっぺたが少し赤い。
「平松くん、どっちから飲んでみる?」
「あ、じゃあホットから」
「火傷しないようにね」
「はい」
ブラックで飲むのは初めてだけど、香りはものすごく好きな感じだ。
「んっ! 美味しいっ!!」
思っていたより苦味が少ない上にフルーツのような甘さを感じる。
優しい香りが鼻から抜けて、素直に美味しいと思えた。
「ふふっ。ブラックが飲めない平松くんが美味しいというのなら本物だな」
「八尋さんも飲んでみてください。すごく美味しいですよ」
八尋さんに手渡すと、
「じゃあ私も試飲させてもらおうかな」
と嬉しそうに口をつけた。
「――っ!」
八尋さんが口をつけたところが、俺が口をつけていたところだということに気づいて、ドキッとしてしまう。
そういえば以前もここのコーヒーで間接キスしちゃったんだっけ。
「んっ? どうかした?」
「えっ、あ、なんでもないです」
あの時は八尋さんが好きだと自覚していなかったけど、今は好きな人と間接でもキスしちゃったことにドキドキが止まらない。
でも八尋さんは気にしてなさそう。
だって友人だもんな。
「本当に美味しいな。山入端さん、いいコーヒーができてるね」
「ありがとうございます。八尋さんにそう仰っていただけると嬉しいです」
親しげに会話をしている二人を見ながら、俺はアイスコーヒーにも手を伸ばした。
「これも美味しい」
「あの、平松さん……今日は来てくださって嬉しいです。それにカップまで褒めてくださって……ありがとうございます」
「いえ、俺はそんな……」
「いつでも飲みに来てください。八尋さんと一緒に……」
「えっ?」
どうして八尋さんと? と思ったけれど、宗方さんはニコニコと笑顔を浮かべているだけでそれ以外は何も言わなかった。
「平松くん、そろそろ行こうか。早く行かないと日が沈んでしまう」
「あっ! そうでした!」
「ああ、夕焼けの海を見に行かれるんですね。それは見逃したら大変だ。あそこからすぐにビーチに行けますから、ぜひ行ってきてください。車はここに置かれて構いませんよ」
そんな山入端さんの好意に甘えて、俺と八尋さんはそこからカフェラテを持ってビーチに行くことにした。
「帰りはぜひ上のレストランに寄ってください。兄にも話を通しておきますので、個室を空けておきます」
山入端さんにそう言われて、八尋さんはどうするんだろうと思っていると、
「ありがとう、お邪魔させてもらうよ」
と返していた。
俺は頭を下げながら、八尋さんに案内されるままにビーチへ向かった。
「ごめんね、今日はうちで夕食をと思っていたんだけど、あのレストランで食べて帰ろうか。いいかな?」
「は、はい。俺は八尋さんと一緒ならどこでも……」
「えっ?」
「な、なんでもないですっ! あっ! ビーチが見えてきましたよ!!」
慌てて話題を変えると、
「ああ、本当だね」
と優しい声が返ってきた。
俺はホッとしながらも、自分の気持ちが抑えられなくなってきていることに不安になっていた。
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