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お帰りなさい!
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美味しいお茶休憩を過ごして、また昼までひたすらに絵を描き続ける。
社長が西表にやってくるまでに終わらせないと!
手は抜きたくないから必死にやるだけだ。
でも、この分なら明日には完成できるかも。
そうしたら砂川さんに確認してもらって、手直し箇所を教えて貰えばいい。
自分でもいい出来だと思ってるから手直し箇所もそこまで多くなければいいな。
「平松くん、お昼にしよう」
「はい。名嘉村さんは今日はお弁当ですか?」
「うん、平松くんもそうだよね?」
当然のように尋ねられて頷くと名嘉村さんはにっこりと笑った。
「だよね、八尋さんちに泊まったならお弁当作ってくれるよねー」
「っ、それは……」
「いいから、いいから。じゃあ、社食で食べようか」
「は――」
「おはようございます」
お弁当を持って立ちあがろうとした瞬間、突然声が聞こえて振り向くとそこには砂川さんがいた。
「あっ、砂川さんっ! お帰りなさい!」
数日ぶりにみる砂川さんはなんだかとても幸せそうで見ているだけで俺も元気をもらえる気がする。
「ただいま帰りました。留守中、特に問題はありませんでしたか?」
「大丈夫ですよ、砂川さん。平松くんもしっかりやってくれてましたから」
「そうですか。名嘉村くんと平松くんがいてくれたら安心して出掛けられますね」
「そんな……っ、俺は何も……」
頑張っていたのは名嘉村さんで俺は何もできなかったのに。
「何言ってるの。平松くんがいてくれたら僕も気負わずに仕事ができたんだから。平松くんのおかげでもあるんだよ」
「その辺の話もゆっくり聞かせてくださいね。今から、お昼なら私の部屋で食べましょうか。ちょうどお土産も持ってきましたし。あっ、先に他の方の分を置いておきますね」
砂川さんは持ってきた紙袋からいくつか菓子箱を取り出す。
<お土産です。皆さんでどうぞ>
とメッセージをつけて、みんなが通る場所に並べた。
「じゃあ行きましょうか」
そう言って、俺たちを自分の部屋に案内してくれた。
「すごいですね」
「えっ? 何がですか?」
「あんなにお土産のお菓子を並べて……砂川さんって、どこかに行くたびに必ずああしてお土産を買ってくるんですか?」
「ええ、そうですね。社長からのお土産もありますから私からだけではないですけど」
「社長からも? 普段のお茶菓子も用意してくださってるのに、お土産まで……? 本当にすごいですね」
あの会社で上司からお土産をもらうなんて考えられなかったし、そもそもお土産の箱を並べて<どうぞ>なんて……あんなの映画やドラマだけの出来事だと思ってた。
「自分が会社を留守にしている間、頑張ってくれている人への感謝の気持ちですから、特別すごいことをしているとは思ってませんが、自分が美味しいと思ったものだけを買うことにしているので、喜んでもらえるのは嬉しいですよ」
「僕も石垣に帰省して帰ってきた時は、特に珍しいものじゃないけど自分の好きなお菓子をお土産で並べたりするよ。みんなに知ってもらって喜んでもらえるのは嬉しいし」
「確かにそうですね!」
みんながそういう気持ちでいるんだな……
やっぱりこの会社っていい人たちの集まりだ。
ここの一員に慣れて本当に良かったな。
「平松くん。お茶どうぞ」
「すみません。帰ってこられたばかりでお疲れなのに……」
「私がお茶を飲みたかったからいいんですよ。ゆっくりお昼を食べてください」
「砂川さんは食べないんですか?」
「私は飛行機の中でいただいてきたので、今は大丈夫です」
そう言われて、俺はお弁当を開けた。
美味しそうな魚が入っていて、食欲をそそる。
「わぁ、鰆の西京焼きだね。美味しそう!」
「さわらの、さいきょうやき?」
「西京味噌っていう白味噌と味醂とか入れたものにさわらを漬け込んで焼いたものだよ。ご飯に合ってすごく美味しいから平松くんも気にいると思うな」
初めて聞く料理名に驚いたけれど、名嘉村さんが教えてくれてなんとなくわかった気がする。
海苔で巻かれたおにぎりを頬張りながら、その西京焼きを口に入れるとものすごく美味しくてびっくりしてしまった。
「気に入ったみたいだね」
「はい。すっごく美味しいです」
「きっと八尋さんも喜ぶよ」
帰ったらすぐにお礼を言わないと!!
そう思いながら、俺はあっという間にお弁当を完食していた。
食後のデザートに砂川さんからのお土産の美味しいキャラメルサンドを食べていると、
「藤乃くん。ますます社長に愛されて幸せになってましたよ」
と砂川さんが教えてくれた。
「それにね、勇気を持って告発してくれた人のこと感謝してるって。せっかくあの会社から抜け出せたから、これからは生まれ変わったと思って祐悟さんの力になれるように頑張ろうと思ってるってそう言ってましたよ。だから、平松くんのこと絶対に恨んだりしてませんよ。大丈夫です」
「砂川さん……」
俺が前に不安に思ってたことを覚えていてくれたんだ……。
「だから、藤乃くんがきた時は安心して会ってくださいね」
「はい。ありがとうございます!」
もうこれで怖くない。
今度こそ本当に会えるのが楽しみだって思えるな。
社長が西表にやってくるまでに終わらせないと!
手は抜きたくないから必死にやるだけだ。
でも、この分なら明日には完成できるかも。
そうしたら砂川さんに確認してもらって、手直し箇所を教えて貰えばいい。
自分でもいい出来だと思ってるから手直し箇所もそこまで多くなければいいな。
「平松くん、お昼にしよう」
「はい。名嘉村さんは今日はお弁当ですか?」
「うん、平松くんもそうだよね?」
当然のように尋ねられて頷くと名嘉村さんはにっこりと笑った。
「だよね、八尋さんちに泊まったならお弁当作ってくれるよねー」
「っ、それは……」
「いいから、いいから。じゃあ、社食で食べようか」
「は――」
「おはようございます」
お弁当を持って立ちあがろうとした瞬間、突然声が聞こえて振り向くとそこには砂川さんがいた。
「あっ、砂川さんっ! お帰りなさい!」
数日ぶりにみる砂川さんはなんだかとても幸せそうで見ているだけで俺も元気をもらえる気がする。
「ただいま帰りました。留守中、特に問題はありませんでしたか?」
「大丈夫ですよ、砂川さん。平松くんもしっかりやってくれてましたから」
「そうですか。名嘉村くんと平松くんがいてくれたら安心して出掛けられますね」
「そんな……っ、俺は何も……」
頑張っていたのは名嘉村さんで俺は何もできなかったのに。
「何言ってるの。平松くんがいてくれたら僕も気負わずに仕事ができたんだから。平松くんのおかげでもあるんだよ」
「その辺の話もゆっくり聞かせてくださいね。今から、お昼なら私の部屋で食べましょうか。ちょうどお土産も持ってきましたし。あっ、先に他の方の分を置いておきますね」
砂川さんは持ってきた紙袋からいくつか菓子箱を取り出す。
<お土産です。皆さんでどうぞ>
とメッセージをつけて、みんなが通る場所に並べた。
「じゃあ行きましょうか」
そう言って、俺たちを自分の部屋に案内してくれた。
「すごいですね」
「えっ? 何がですか?」
「あんなにお土産のお菓子を並べて……砂川さんって、どこかに行くたびに必ずああしてお土産を買ってくるんですか?」
「ええ、そうですね。社長からのお土産もありますから私からだけではないですけど」
「社長からも? 普段のお茶菓子も用意してくださってるのに、お土産まで……? 本当にすごいですね」
あの会社で上司からお土産をもらうなんて考えられなかったし、そもそもお土産の箱を並べて<どうぞ>なんて……あんなの映画やドラマだけの出来事だと思ってた。
「自分が会社を留守にしている間、頑張ってくれている人への感謝の気持ちですから、特別すごいことをしているとは思ってませんが、自分が美味しいと思ったものだけを買うことにしているので、喜んでもらえるのは嬉しいですよ」
「僕も石垣に帰省して帰ってきた時は、特に珍しいものじゃないけど自分の好きなお菓子をお土産で並べたりするよ。みんなに知ってもらって喜んでもらえるのは嬉しいし」
「確かにそうですね!」
みんながそういう気持ちでいるんだな……
やっぱりこの会社っていい人たちの集まりだ。
ここの一員に慣れて本当に良かったな。
「平松くん。お茶どうぞ」
「すみません。帰ってこられたばかりでお疲れなのに……」
「私がお茶を飲みたかったからいいんですよ。ゆっくりお昼を食べてください」
「砂川さんは食べないんですか?」
「私は飛行機の中でいただいてきたので、今は大丈夫です」
そう言われて、俺はお弁当を開けた。
美味しそうな魚が入っていて、食欲をそそる。
「わぁ、鰆の西京焼きだね。美味しそう!」
「さわらの、さいきょうやき?」
「西京味噌っていう白味噌と味醂とか入れたものにさわらを漬け込んで焼いたものだよ。ご飯に合ってすごく美味しいから平松くんも気にいると思うな」
初めて聞く料理名に驚いたけれど、名嘉村さんが教えてくれてなんとなくわかった気がする。
海苔で巻かれたおにぎりを頬張りながら、その西京焼きを口に入れるとものすごく美味しくてびっくりしてしまった。
「気に入ったみたいだね」
「はい。すっごく美味しいです」
「きっと八尋さんも喜ぶよ」
帰ったらすぐにお礼を言わないと!!
そう思いながら、俺はあっという間にお弁当を完食していた。
食後のデザートに砂川さんからのお土産の美味しいキャラメルサンドを食べていると、
「藤乃くん。ますます社長に愛されて幸せになってましたよ」
と砂川さんが教えてくれた。
「それにね、勇気を持って告発してくれた人のこと感謝してるって。せっかくあの会社から抜け出せたから、これからは生まれ変わったと思って祐悟さんの力になれるように頑張ろうと思ってるってそう言ってましたよ。だから、平松くんのこと絶対に恨んだりしてませんよ。大丈夫です」
「砂川さん……」
俺が前に不安に思ってたことを覚えていてくれたんだ……。
「だから、藤乃くんがきた時は安心して会ってくださいね」
「はい。ありがとうございます!」
もうこれで怖くない。
今度こそ本当に会えるのが楽しみだって思えるな。
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