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初めての感覚※

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あんな紳士的な八尋さんも興奮して反応するんだろうか……。
今は恋人いないって言っていたし一人でしたり……?

そんな下世話なことまで考えてしまう。

そういえばあれって、いつまでヤるんだろうな。
人に聞いたこともないし、何が正しいのかもわからないけれど俺はほとんどしない。

高校生の時、クラスの別グループにいた男子が週に三回はヌいてるって大声で話してて、周りの女子にドン引きされていたのを見たことがある。
もしかしたら大袈裟に言っていたのかもしれないけれど、周りにいた奴らも俺たちの年ならそれくらい当たり前だろって話していたから、本当なのかもしれない。

俺も全くしないわけでなかったけれど、なんとなく溜まったかなと感じた時に面倒だけど出してたって感じで、それが月に一度あったかどうかくらい。

両親が亡くなってからは、生きるのに必死でそんなことに時間を割いている暇もなくて、ほとんどしていなかったと思う。
住み込みで働くようになってからは、薄い壁越しに何か聞かれるのも嫌だったし、周りの声も聞くのも嫌だったから、いつも布団かぶって寝ていた。

あの会社に勤めるようになって、ようやく一人暮らしも始めたけれど毎日限界まで疲れ果てててそんな気力もなかった。

考えてみたらここ数年意識的にそんなことをした記憶がない。
それくらい性に対して無欲だったのに、八尋さんのソレを考えるだけで反応してしまっている俺って、そういうこともひっくるめて八尋さんのことが好きだってことなんだな。

もしかしたら、人として好きなだけでキスしたいとが抱かれたいとかは別物なのかも……とか思ったりもしてた。

でも現にこうして自分の身体が反応しているんだ。
信じないわけにはいかない。

――平松くん、いけない子だな。こんなに大きくして……

ほんのり首を擡げたソレを握りながら、目を瞑ると妄想の八尋さんが俺の耳元で甘く囁いてくる。
それだけで俺のささやかなソレは一気に昂りを増した。
こうなったら自分でも手の動きを止めることもできなくて、妄想の八尋さんを思い浮かべながら刺激を与え続けると、あまりの気持ちよさにあっという間に精を飛ばした。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

いつもの処理とは全然違う。
精を出すって、こんなに気持ちいいものだったんだ。
初めて知ったな。

今までのものをあまり覚えていないけれど、今出たものはかなり濃くて粘り気も強い気がする。
久しぶりだからなのかはわからないけれど、八尋さんを思い浮かべて出したのが気持ちよかったということだけはわかる。

俺の妄想の中で八尋さんを勝手に登場させてしまったことに罪悪感はあったけれど、絶対に報われることのない恋なのだからそれくらいは許してもらおう。

そう思いながら、綺麗に身体を洗い流し、湯船に浸かった。

身体がスッキリしているのは、ずっと溜まっていた欲を出したからかな。
気持ちいい疲れにそのまま眠ってしまいそうだ。

危ない、このままじゃ溺れてしまう。

必死に起きようとする自分と、このまま眠ってしまいたい自分が戦いを始める。

ああ、やばいな……。

そう思いつつも、瞼が閉じる。
だめだ、だめだ。

必死に抗おうとする俺の耳に、微かに音が聞こえてきた。

あっ!! これっ!!

スマホが鳴ってる!!

それに気づいた途端、一気に眠気がとんで行った気がした。

急いで湯船から飛び出して、脱衣所に足を踏み入れると棚の上でスマホが鳴っているのが聞こえる。

画面を覗くと八尋さんの名前が見える。
すぐにでも取りたいけれど、ここでスマホを取ろうとしたらこの前の二の舞になってしまう。

またビデオ通話にでもなったら目も当てられない。

八尋さん、待たせてごめんなさい。

心の中で謝りつつ、急いでバスタオルを広げ身体を乱雑に拭きまくった。
ある程度拭き終えて、下着と部屋着に着替えやっとスマホを手に取った。

急いだけれどやっぱりというか、当然というか、電話は切れてしまっていた。

せっかくかけてきてくれたのに申し訳ない。
しかもわざわざビデオ通話でかけてきてくれていたのに。

今からでも間に合うだろうか。
とりあえず一度かけてみて撮らなかったら今度は普通の電話でかけてみようと思い、冷蔵庫から水のペットボトルを一本とってソファーに腰をかけた。

「ふぅ……っ」

深呼吸をして気持ちを整えてからスマホを持ち上げた途端、突然スマホがなり始めて、慌てて画面をタップすると。

ー平松くん、大丈夫?

と俺を心配する八尋さんの声が聞こえた。

ーすみません、お風呂に入ってて。電話は聞こえてたんですけど、着替えている間に切れちゃって……。

慌てて伝えるとホッとしたように画面の八尋さんが笑ったのが見えた。

ーそうか、ごめんね。急がせてしまったんだね。安慶名さんと話したらもうとっくに帰ったと聞いたものだから電話したんだ。それで取らなかったからちょっと心配になって。

ーあ、いえ。すごく助かりました。湯船の中で眠りかけてたら八尋さんの電話の音が聞こえたんで目を覚ましたんです。もし電話がなかったらあのまま寝ちゃってたかも。

ーえっ、それは危ないな。これからはお風呂に入る前に電話でもメッセージでもいいから入れておいて。ある程度の時間になったら連絡入れるから。ねっ。

ーは、はい。わかりました。

あまりにも八尋さんが心配してくれるものだから、ついその勢いに押されるようにわかったと言ってしまっていた。
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