イケメン店主に秘密の片想いのはずが何故か溺愛されちゃってます

波木真帆

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初めて尽くし

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「美味しいっ!!!」

お弁当がこんなに美味しいなんて知らなかった!
あの会社に行ってた時は、いつも朝コンビニで弁当を買って持って行っていた。

でも会社にレンジがなかったから、冷たくなったものをそのまま食べていたけど、決して美味しいとは感じられなかった。
多分温かかったらその数倍は美味しく感じられただろう。

でも、決してまずいわけでもない。
こういうものだと妥協しながら、口に運んでいた。
なんせ食べなきゃやってられない。
藤乃くんを助け出す時に動けなかったら困る。

いつしか俺にとって食事は食べたいものを食べて幸せを感じるというよりは、動けるエネルギーを摂るため、生きるための動きの一つになっていたのかもしれない。

でもここにきてからの食事は全て美味しくて幸せを感じる。

ようやく俺は人間的な生活を送れるようになったのかもしれない。

「平松くん、よかったらこの卵焼き食べない?」

「えっ、いいんですか?」

「もちろん。食べて感想聞かせて」

そう言われてドキドキしながら名嘉村なかむらさんのお弁当から卵焼きを一つもらう。

人の作った卵焼きを一日に二度も食べる機会が来るなんて想像できなかったな。

名嘉村さんの卵焼きは噛むとジュワッと出汁の味がして、すごく美味しかった。
今までの卵焼きなら一番好きだったかも。

でも、一番好きなのは今朝食べた八尋さんの卵焼き……。
甘さも完璧に俺好みでびっくりしたくらいた。

「平松くんは甘い方が好みかな?」

「えっ、はい。でもこれ、出汁の味がしてすっごく美味しいです」

「ふふっ。そっか。よかった」

「平松くん、こっちのハンバーグも一つもらってください」

「いいんですか? 恋人さんの手作りなのに……」

「ええ、大丈夫ですよ。最初から平松くんと分けて食べようと思っていたので、多めに作ってもらったんです」

「そうだったんですか、すみません。俺のためにわざわざ」

「いえ、私が自慢したいだけですから、気にしないでください」

そういって嬉しそうに笑う砂川さんはとても可愛らしく見えた。

「んんっ! このハンバーグ、すっごく美味しいです!」

「ふふっ。よかったです。私もこの煮込みハンバーグ、大好きなんですよ」

「煮込みハンバーグって初めて食べました。ほんと、美味しいですね」

「平松くんの初めてをもらってしまいましたね」

「えっ……」

にこやかな笑顔でさりげなくそんなことを言われてしまって一瞬驚いたけれど、きっとこの場を盛り上げるための砂川さんの冗談なのだろう。
そう思ったら、俺も笑顔になっていた。

ああ、本当にこの時間最高だ!



「さぁ、午後も頑張りましょうね。八尋さんの件は今から連絡しておきますので、平松くんは別の仕事……名嘉村くん、任せてもいいですか?」

「はい。ちょうど手伝って欲しいことがあるので、平松くん。行きましょうか」

「は、はい」

昼休憩を終え、仕事モードに変わっていく。
このメリハリがなんだかすごく心地よかった。

以前は昼を食べながらも電話番をさせられて、用事を言いつけられたりもしていたから休憩なんてあってないようなものだた。
もちろん昼休憩の間は給料にカウントされず、何かにつけて罰金もよく取られていたから、仕事をしているのが苦痛でしかなかった。

でもここではしっかり休憩時間は休めるし、罰金なんて話にも出ない。
それだけでここが快適な職場だとわかる。

午後は名嘉村さんについて、手伝いをしているだけであっという間に時間が経った。

「平松くんが手伝ってくれたおかげで今日のうちに終わらせられたよ。ありがとう」

「いえ、名嘉村さんのやり方を覚えられてすごく勉強になりました」

「ふふっ。平松くん、かなりの即戦力だよ! 本当に来てもらえてよかったよ」

「――っ!!!」

俺の人生でそんなことを言われる日が来るなんて、思っても見なかった。

「平松くん? どうしたの? 大丈夫?」

慌てたようにハンカチを差し出されて、自分が泣いていることに気づいた。

「す、すみません……っ、そんなこと、言われたの、初めてで、嬉しくて……っ」

「そっか。でも大丈夫、ちゃんと見てくれる人はいるからね」

ポンポンと腕を優しく叩かれて、名嘉村さんを見ると優しい笑顔で見てくれている。
それがすごく安心した。

「さぁ、今日はもう終わりだから帰っていいよ。あっ、八尋さんのお店にいくんだよね?」

「は、はい。お弁当のお礼も言いたいですし、それに毎日行くって約束しましたから」

「うん。店まで一緒に行こうか」

「えっ、でも反対方向じゃ……」

「ああ、大丈夫。気にしないで」

そんな話をしていると、奥の部屋から砂川さんがやってきた。

「お疲れさま。八尋さんのガイド了承してもらったから、明日は出勤せずにそのまま観光に向かっていいですよ。これ、どうぞ」

そういってカメラを手渡してくれた。

「えっ、八尋さん、本当にOKしてくださったんですか?」

「はい。明日は定休日だから食材採集に行く予定だったそうで、ちょうどよかったと仰ってましたよ。この島をたっぷり見てきてくださいね」

「わかりました。ありがとうございます!」

明日は八尋さんとこの島を観光……。
なんだかすごく楽しくなりそうだ。
俺はカメラを片手にすっかりやる気になっていた。
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