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第三章
優しさとときめき
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<sideクレイ>
「クレイさま。今夜はロルフくんとルルちゃんはここでおねんねするんですよね」
「ああ、ロルフとルルも楽しみにしていたよ。あーあ、今日も二人でティオの隣を取り合うのだろうな」
「ふふっ。寂しいですか?」
「わかっているだろう? 私はいつだってティオとくっついて寝ていたいのだから」
「――っ、クレイさまったら」
揶揄っていたくせに私が本音を告げれば、すぐに顔を真っ赤にして照れてしまう。
いつまで経っても私のティオは初心で可愛らしい。
ロルフとルルと一緒に寝るのは確かに幸せだ。
やはり血が繋がっているからだろうか。
それとも大切な弟の子どもだからだろうか。
そばで温もりを感じながら眠っていると愛しい存在を守ってやりたいという気にさせられる。
だが、まだまだ新婚とも呼べる私たちだから、ティオと触れ合わずに寝るのは寂しいものだ。
決して子どもたちの前で盛ったりはしないが、手を繋いで寝るくらいは許してもらうとしよう。
そして、明日の夜は今夜の分までたっぷり愛し合うとしようか。
「ベン、義兄上たちはもう朝食を召し上がったか?」
「はい。先ごろ旦那さまと奥さまとご一緒にお召し上がりになりました」
「早いな。そんなに早起きだったとは珍しいな」
「ふふっ。今日は特別でございますよ」
「特別? どういうことだ?」
「実は、ロルフさまとルルさまがルーディーさまとアズールさまに朝食用のパンを手ずからお作りになったのです」
「えっ? ロルフとルルが? 自分で?」
「はい。朝から厨房でフランツがお教えしたそうですよ」
まだ生後半年だというのに、両親のためにパンを作るとは……。
なんと将来有望な子たちなのだろう。
「それはルーディーさまもアズールさまもお喜びになられたことでしょう」
「ええ、それはもう。美味しい、美味しいと一口召し上がるたびに嬉しそうなお声をあげていらっしゃいましたよ」
「ふふっ。その時のご様子が目に浮かぶようです」
「ああ、本当だな。ロルフもルルも、義兄上とアズールに褒められて喜んでいただろうな。両親に認められるというのは嬉しいものだからな」
「ええ、そうですね」
私の言葉にティオが少し遠い目をしたような気がして、私は余計なことを言ってしまったかと思った。
ベンはその空気を察したのか、私たちの朝食の用意をすると言って離れていった。
ああ、そういえば、ティオは家族に恵まれなかったと話していたな。
男爵という地位にあったとはいえ、決して裕福な家庭ではなく家族仲もあまり良くなかった上、相次いで両親を失い、生きるために騎士団に入団したと言っていた。
両親に認められるよりも先に永遠の別れとなってしまったに違いない。
「どうだ? ティオ。私たちもお互いにパンを作って食べさせ合うというのは」
「えっ? 私たちが、お互いに?」
「ああ。どうだ、いい考えだろう?」
「ふふっ。クレイさまったら」
「冗談ではないぞ。私は本気だ。以前、アズールも義兄上にオニギリを作っていたことがあったろう?」
「はい。私はその瞬間に立ち会わせていただいております。ルーディーさまもアズールさまもとても幸せそうでいらっしゃいましたよ」
そうだ。
あの時はティオは護衛ではなく騎士団で訓練を受けていたのだったな。
「私もティオの作るものを食べてみたいし、私もティオに食べてもらいたい。ほら、いい考えだろう?」
「はい。クレイさま。では、近いうちにフランツ殿にお願いしましょうか」
「ああ、そうだな。そうしようか」
そう返した時のティオの嬉しそうな顔。
私はその表情を見られるだけで幸せだ。
<sideティオ>
あっという間に夜になり、あとは寝るだけの状態になったロルフくんとルルちゃんが、お義母さまに抱っこされて私たちの部屋にやってきた。
「クレイ、ティオ。二人をよろしくね」
「はい。お任せください。ロルフくん、ルルちゃん。こっちにおいで」
手を差し出すと我先に来ようとしてくれるのが嬉しい。
「あのねー、ちおー。うう、とにゃり、ねりゅのー」
「そっか。ルルちゃんが寝てくれるんだね」
「ろーふが、ゆじゅって、あげちゃのー」
「ふふっ。さすがお兄ちゃんだね」
「ろーふ、えりゃい?」
「うん、えらいよ。いいこ、いいこ」
耳に触れないように優しく撫でてやると、
「ちおー、ううも、よちよち、ちてー」
「ふふっ。ルルちゃんも、いいこ。いいこ」
「えー、なんで、ううも、よちよちちゅるの? じゅるい!」
そう言われて困っていると、
「ロルフ、私がティオの分までたくさんよしよししてやろう」
とクレイさまが仰って、お義母さまからロルフくんを受け取り、ギュッと抱きしめて優しく頭を撫でていた。
その表情が私がいつも見ているあの優しい表情でなんだかキュンとときめいてしまった。
「クレイさま。今夜はロルフくんとルルちゃんはここでおねんねするんですよね」
「ああ、ロルフとルルも楽しみにしていたよ。あーあ、今日も二人でティオの隣を取り合うのだろうな」
「ふふっ。寂しいですか?」
「わかっているだろう? 私はいつだってティオとくっついて寝ていたいのだから」
「――っ、クレイさまったら」
揶揄っていたくせに私が本音を告げれば、すぐに顔を真っ赤にして照れてしまう。
いつまで経っても私のティオは初心で可愛らしい。
ロルフとルルと一緒に寝るのは確かに幸せだ。
やはり血が繋がっているからだろうか。
それとも大切な弟の子どもだからだろうか。
そばで温もりを感じながら眠っていると愛しい存在を守ってやりたいという気にさせられる。
だが、まだまだ新婚とも呼べる私たちだから、ティオと触れ合わずに寝るのは寂しいものだ。
決して子どもたちの前で盛ったりはしないが、手を繋いで寝るくらいは許してもらうとしよう。
そして、明日の夜は今夜の分までたっぷり愛し合うとしようか。
「ベン、義兄上たちはもう朝食を召し上がったか?」
「はい。先ごろ旦那さまと奥さまとご一緒にお召し上がりになりました」
「早いな。そんなに早起きだったとは珍しいな」
「ふふっ。今日は特別でございますよ」
「特別? どういうことだ?」
「実は、ロルフさまとルルさまがルーディーさまとアズールさまに朝食用のパンを手ずからお作りになったのです」
「えっ? ロルフとルルが? 自分で?」
「はい。朝から厨房でフランツがお教えしたそうですよ」
まだ生後半年だというのに、両親のためにパンを作るとは……。
なんと将来有望な子たちなのだろう。
「それはルーディーさまもアズールさまもお喜びになられたことでしょう」
「ええ、それはもう。美味しい、美味しいと一口召し上がるたびに嬉しそうなお声をあげていらっしゃいましたよ」
「ふふっ。その時のご様子が目に浮かぶようです」
「ああ、本当だな。ロルフもルルも、義兄上とアズールに褒められて喜んでいただろうな。両親に認められるというのは嬉しいものだからな」
「ええ、そうですね」
私の言葉にティオが少し遠い目をしたような気がして、私は余計なことを言ってしまったかと思った。
ベンはその空気を察したのか、私たちの朝食の用意をすると言って離れていった。
ああ、そういえば、ティオは家族に恵まれなかったと話していたな。
男爵という地位にあったとはいえ、決して裕福な家庭ではなく家族仲もあまり良くなかった上、相次いで両親を失い、生きるために騎士団に入団したと言っていた。
両親に認められるよりも先に永遠の別れとなってしまったに違いない。
「どうだ? ティオ。私たちもお互いにパンを作って食べさせ合うというのは」
「えっ? 私たちが、お互いに?」
「ああ。どうだ、いい考えだろう?」
「ふふっ。クレイさまったら」
「冗談ではないぞ。私は本気だ。以前、アズールも義兄上にオニギリを作っていたことがあったろう?」
「はい。私はその瞬間に立ち会わせていただいております。ルーディーさまもアズールさまもとても幸せそうでいらっしゃいましたよ」
そうだ。
あの時はティオは護衛ではなく騎士団で訓練を受けていたのだったな。
「私もティオの作るものを食べてみたいし、私もティオに食べてもらいたい。ほら、いい考えだろう?」
「はい。クレイさま。では、近いうちにフランツ殿にお願いしましょうか」
「ああ、そうだな。そうしようか」
そう返した時のティオの嬉しそうな顔。
私はその表情を見られるだけで幸せだ。
<sideティオ>
あっという間に夜になり、あとは寝るだけの状態になったロルフくんとルルちゃんが、お義母さまに抱っこされて私たちの部屋にやってきた。
「クレイ、ティオ。二人をよろしくね」
「はい。お任せください。ロルフくん、ルルちゃん。こっちにおいで」
手を差し出すと我先に来ようとしてくれるのが嬉しい。
「あのねー、ちおー。うう、とにゃり、ねりゅのー」
「そっか。ルルちゃんが寝てくれるんだね」
「ろーふが、ゆじゅって、あげちゃのー」
「ふふっ。さすがお兄ちゃんだね」
「ろーふ、えりゃい?」
「うん、えらいよ。いいこ、いいこ」
耳に触れないように優しく撫でてやると、
「ちおー、ううも、よちよち、ちてー」
「ふふっ。ルルちゃんも、いいこ。いいこ」
「えー、なんで、ううも、よちよちちゅるの? じゅるい!」
そう言われて困っていると、
「ロルフ、私がティオの分までたくさんよしよししてやろう」
とクレイさまが仰って、お義母さまからロルフくんを受け取り、ギュッと抱きしめて優しく頭を撫でていた。
その表情が私がいつも見ているあの優しい表情でなんだかキュンとときめいてしまった。
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