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第三章
少しずつ親になる
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競うように頭を撫でている間に、ロルフくんもルルちゃんもすっかり眠ってしまった。
「ふふっ。今日は寝つきが早いですね」
「ああ、早起きしてパンを作ったのに、昼寝もせずにはしゃぎながらフランツと話していたからな。さすがの二人も電池が切れたんだろう」
「でも、本当にこんなにも小さいのに、両親のために何かしようとする気持ち、素晴らしいですね」
「ああ、それだけ義兄上とアズールが愛情たっぷりに二人を育てているからだろう。そうでもなければ、何かを作ってあげたいなんて思わないだろう」
クレイさまの仰る通りだ。
ロルフくんとルルちゃんくらい賢ければ、パンを作りに興味を持ったとしてもおかしくはないけれど、普通なら一生懸命作ったものを食べてみたいと思うもの。
まだこんなに小さいのなら尚更だ。
それなのに、お二人が美味しそうに召し上がったのをみて大喜びするなんて。
こんなに愛情に溢れた家族を私は知らない。
いや、正確に言えば、私の生まれ育った家族ではあり得なかったというべきだろう。
クレイさまと縁あって夫夫となり、このヴォルフ公爵家で生活するようになって、自分が知っていた家族の形がいい意味でどんどん覆されていく。
私の家族に愛情というものが欠落していたのだと実感するほど、このお屋敷の中は愛で溢れかえっている。
父と母は私が幼い時から構わず罵り合っていたし、兄弟もいなかった私は家にいる時の方が孤独を感じていた気がする。
自宅にいた時よりもキツイと評判の騎士団に入った当初の共同生活の方が楽しかったくらいだ。
「生まれてすぐにロルフくんを私たちの養子にできたら嬉しいなんて話をしましたけど、あの時すぐにロルフくんを引き取って、もし私たちだけでロルフくんを育てていたら、こんなにも愛情深い子には育たなかったかもしれませんね」
「いやいや、そんなことはないだろう。ティオも私も十二分にロルフに愛を与えて育てたはずだ」
「ええ、それはもちろんそうですが、やっぱり両親の力は偉大ですよ。クレイさまとアズールさまがこんなにも愛情深くお育ちになったのもお義父さまとお義母さまの愛情の賜物でいらっしゃったのでしょうし。やっぱり幼い子には両親と、そして兄妹も一緒に育てるのが心と身体を育てるには一番いいのかもしれません。ロルフくんはルルちゃんをいつも守って率先して動こうとしてくれるのも、今夜みたいに、ルルちゃんに譲ってあげられるのもルーディーさまがいつもアズールさまを守って差し上げているのをみているからかもしれません。でも、私たちだけで育てていたら、今のロルフくんはいなかったかもしれないと思ったんです」
「なるほど。そうかもしれないな。ティオは甘やかすことと愛情は違うということを言いたいのだろう?」
「はい。その通りです。それがわかっていたからお義母さまもあの時、すぐには決めないで第二の親としてそばにいるようにと仰ったんだと思うんです」
あの時はロルフくん以外の男のお子さまに愛情を持てないんじゃないかという不安が大きかったけれど、この半年、ロルフくんとルルちゃんの成長を見てそんな不安が消え去ってしまったことに気づいた。
ルーディーさまとアズールさまのお子さまなら、きっとどの子でも愛情を持って育てられる。
そんな自信がついたのもこうして一緒に過ごす時間をくださっているルーディーさまとアズールさまのおかげだ。
「ロルフとルルが大きくなっていくように私たちも少しずつ親として成長していっているのかもしれないな」
「はい、きっとそうです。だからこそこうして懐いてくれているんですよ」
腕の中のルルちゃんを抱きしめると、嬉しそうに寄り添ってきてくれる。
ああ、この温もりが本当に愛おしい。
私にも本当に母性というものが目覚めたのかもしれない。
<sideルーディー>
「ぱっぱっ、まんまっ!」
「昨日はよく眠れたか?」
「ねむりぇたぁー」
「そうか、よかったな。ティオは大丈夫だったか?」
アズールの授乳が終わってからは夜中に起きることも無くなったし、夜泣きもないから、楽にはなったが、猫族のティオにとっては眠っていても気疲れはするだろう。
そう思って声をかけたのだが、
「はい。ロルフくんもルルちゃんもすっかり気を許してくれたようで、威嚇も何も出ませんでしたから私もぐっすり眠ることができました」
という言葉が返ってきて驚いた。
そんなにも気を許せるようになったのなら大した進歩だな。
これなら将来的に二人の養子になったとしても大丈夫だろう。
「では、また週末にこちらに泊まりにくるから、二人と一緒に寝てもいいというなら、寝てやってくれ。ロルフもルルもクレイとティオと一緒に寝るのは気に入っているみたいだからな」
「はい。ぜひ。私たちも楽しみにしています」
ロルフとルルが二人の部屋で寝てくれるなら、私はアズールとゆっくり愛し合える。
ああ、最高じゃないか!
「ふふっ。今日は寝つきが早いですね」
「ああ、早起きしてパンを作ったのに、昼寝もせずにはしゃぎながらフランツと話していたからな。さすがの二人も電池が切れたんだろう」
「でも、本当にこんなにも小さいのに、両親のために何かしようとする気持ち、素晴らしいですね」
「ああ、それだけ義兄上とアズールが愛情たっぷりに二人を育てているからだろう。そうでもなければ、何かを作ってあげたいなんて思わないだろう」
クレイさまの仰る通りだ。
ロルフくんとルルちゃんくらい賢ければ、パンを作りに興味を持ったとしてもおかしくはないけれど、普通なら一生懸命作ったものを食べてみたいと思うもの。
まだこんなに小さいのなら尚更だ。
それなのに、お二人が美味しそうに召し上がったのをみて大喜びするなんて。
こんなに愛情に溢れた家族を私は知らない。
いや、正確に言えば、私の生まれ育った家族ではあり得なかったというべきだろう。
クレイさまと縁あって夫夫となり、このヴォルフ公爵家で生活するようになって、自分が知っていた家族の形がいい意味でどんどん覆されていく。
私の家族に愛情というものが欠落していたのだと実感するほど、このお屋敷の中は愛で溢れかえっている。
父と母は私が幼い時から構わず罵り合っていたし、兄弟もいなかった私は家にいる時の方が孤独を感じていた気がする。
自宅にいた時よりもキツイと評判の騎士団に入った当初の共同生活の方が楽しかったくらいだ。
「生まれてすぐにロルフくんを私たちの養子にできたら嬉しいなんて話をしましたけど、あの時すぐにロルフくんを引き取って、もし私たちだけでロルフくんを育てていたら、こんなにも愛情深い子には育たなかったかもしれませんね」
「いやいや、そんなことはないだろう。ティオも私も十二分にロルフに愛を与えて育てたはずだ」
「ええ、それはもちろんそうですが、やっぱり両親の力は偉大ですよ。クレイさまとアズールさまがこんなにも愛情深くお育ちになったのもお義父さまとお義母さまの愛情の賜物でいらっしゃったのでしょうし。やっぱり幼い子には両親と、そして兄妹も一緒に育てるのが心と身体を育てるには一番いいのかもしれません。ロルフくんはルルちゃんをいつも守って率先して動こうとしてくれるのも、今夜みたいに、ルルちゃんに譲ってあげられるのもルーディーさまがいつもアズールさまを守って差し上げているのをみているからかもしれません。でも、私たちだけで育てていたら、今のロルフくんはいなかったかもしれないと思ったんです」
「なるほど。そうかもしれないな。ティオは甘やかすことと愛情は違うということを言いたいのだろう?」
「はい。その通りです。それがわかっていたからお義母さまもあの時、すぐには決めないで第二の親としてそばにいるようにと仰ったんだと思うんです」
あの時はロルフくん以外の男のお子さまに愛情を持てないんじゃないかという不安が大きかったけれど、この半年、ロルフくんとルルちゃんの成長を見てそんな不安が消え去ってしまったことに気づいた。
ルーディーさまとアズールさまのお子さまなら、きっとどの子でも愛情を持って育てられる。
そんな自信がついたのもこうして一緒に過ごす時間をくださっているルーディーさまとアズールさまのおかげだ。
「ロルフとルルが大きくなっていくように私たちも少しずつ親として成長していっているのかもしれないな」
「はい、きっとそうです。だからこそこうして懐いてくれているんですよ」
腕の中のルルちゃんを抱きしめると、嬉しそうに寄り添ってきてくれる。
ああ、この温もりが本当に愛おしい。
私にも本当に母性というものが目覚めたのかもしれない。
<sideルーディー>
「ぱっぱっ、まんまっ!」
「昨日はよく眠れたか?」
「ねむりぇたぁー」
「そうか、よかったな。ティオは大丈夫だったか?」
アズールの授乳が終わってからは夜中に起きることも無くなったし、夜泣きもないから、楽にはなったが、猫族のティオにとっては眠っていても気疲れはするだろう。
そう思って声をかけたのだが、
「はい。ロルフくんもルルちゃんもすっかり気を許してくれたようで、威嚇も何も出ませんでしたから私もぐっすり眠ることができました」
という言葉が返ってきて驚いた。
そんなにも気を許せるようになったのなら大した進歩だな。
これなら将来的に二人の養子になったとしても大丈夫だろう。
「では、また週末にこちらに泊まりにくるから、二人と一緒に寝てもいいというなら、寝てやってくれ。ロルフもルルもクレイとティオと一緒に寝るのは気に入っているみたいだからな」
「はい。ぜひ。私たちも楽しみにしています」
ロルフとルルが二人の部屋で寝てくれるなら、私はアズールとゆっくり愛し合える。
ああ、最高じゃないか!
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