真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

文字の大きさ
上 下
170 / 289
第三章

新しい家族

しおりを挟む
ヴェルナーとマクシミリアンの話は独立させたので、その続きから再開しています。
ヴェルナーとマクシミリアンのお話
『最強の黒豹騎士団長は新人熊騎士にロックオンされちゃいました』は9時に更新予定です。


  *   *   *

<sideルーディー>

私たちの部屋に戻ると、アズールが私が戻ってきたのにも気づかずにヴェルナーと話し込んでいるのが見える。

「それで、どうなったの?」

「楽しそうだな」

「わっ!」
「王子!」

そっと近づいて声をかけると、アズールだけでなくヴェルナーまでもが驚きの声をあげた。

ヴェルナーまで私が来ていることに気づいていないとは……。

「私が来ていることに気づかないほど一体何の話をしていたのだ?」

「あのね、今ヴェルとマックスのお話を聞いていたの」

「ヴェルナーとマクシミリアンの?」

そう聞き返すと、ヴェルナーは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。

ああ、なるほど。
そういうことか。

アズールにせがまれて、マクシミリアンとの馴れ初めや初夜のことでも語っていたのか。

それなら私が来ていたことに気づかないのも無理はない。

「うん。とっても素敵でね……」

「そうか。それはアズールと、ヴェルナーの二人だけの秘密にするが良い」

「えっ? ルーは聞かないの?」

「私はマクシミリアンから聞くとしよう」

そう言ってヴェルナーを見ると、恥ずかしそうにしながらも少しホッとしているように見えた。

もちろん、マクシミリアンからわざわざ聞くつもりはない。
だが、そう言わなければアズールはきっと私にもマクシミリアンとヴェルナーとのことを教えてくれただろう。

アズールに悪気がないのはわかっているが、ヴェルナーはきっとアズールだから聞かせたのだ。
それを私が聞いてしまうのは本意ではないだろう。

だから、そう返したのだ。
けれど、アズールは私の言葉を素直に聞き入れ、

「そっか、そうだね。それは楽しそう! ねぇ、じゃあお兄さまともお話しするの?」

と尋ねてきた。

「んっ? ああ、そうだな。クレイからも聞いてみるのも楽しいかもしれないな」

アズールに話を合わせて言ってみると、

「ふふっ。じゃあ、アズールはティオとヴェルと三人でお話しする!」

と嬉しそうに宣言した。

あれほど、ティオと話したがっていたアズールだ。
ティオがクレイと共に部屋から出てきたら、きっとすぐに話を聞くに違いない。

これはもう止められないだろうな。
まぁ、ティオも無事に初夜を終えて、ヴェルナーやアズールに聞きたいこともできたかもしれない。

意外とこのような時間を作るのもいいことなのかもしれないな。

「じゃあ、クレイとティオが出てきたら、その時間を作るように話をしてみよう」

「わぁー! ヴェル、楽しみだね」

無邪気に喜ぶアズールの隣で、ヴェルナーは若干戸惑い気味の様子だったが、何か思うところがあったのか

「そうですね、楽しみですね」

と笑顔を見せていた。


<sideクレイ>

「ティオ……」

「クレイさま……」

たっぷりと存分に愛し合い、この部屋にいる間ほとんどティオの中に挿入ったまま幸せな時間を過ごした。
このまま一ヶ月でも二ヶ月でもティオと全ての時間をベッドで過ごしたいが、そうも言っていられない。

いつまでも王家の客間に居続けるわけにもいかないし、日常に戻らなければいけない。
それでもティオとはこの部屋に入る前とは確実に違う関係になった。

一生愛し続ける大切な存在ができるのはこんなにも幸せなことなのだと、ティオが教えてくれた。

「これからティオは、私の伴侶としてヴォルフ公爵家で共に生活をすることになるが構わないか? もし、二人で暮らすことを望むなら、父上に話をして家を出ても構わないがティオはどうしたい? 遠慮せずに話してほしい」

「私はお義父さまとお義母さまと一緒に暮らしたいです」

「本当か? 無理をしていないか?」

「無理だなんて! 私は両親をすでに亡くしましたし、家族で過ごすことに憧れがあります。クレイさまがお育ちになったあの家でクレイさまとお義父さまとお義母さまと一緒に暮らすことができたら、これ以上幸せなことはありません」

「ティオ……ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ。父も母もアズールが王子の元に嫁いで毎日が寂しそうにしていたから、ティオが一緒に住んでくれたらまた我が家に明るさが戻るよ」

「そんな……っ、私がアズールさまの代わりになんて……到底なれません」

「ティオ、違うよ。アズールの代わりなんかじゃない。ティオはティオだ。ティオがいてくれるだけで幸せになれるんだよ」

「クレイさま……」

「これから家族で幸せに暮らそう」

「はい」

ティオは目にうっすらと涙を浮かべながら私に抱きついてくれた。
ああ、ティオは本当に可愛い。

名残惜しく思いつつも、二人で客間から出ると執事のフィデリオ殿がやってきた。

「無事に初夜を過ごされましておめでとうございます」

「ああ、ありがとう。いろいろと世話になった」

「いいえ、滅相もございません。お二人のお世話ができまして光栄にございます」

フィデリオ殿は笑顔でそう言いながら、話を続ける。

「クレイさま、ティオさま。陛下と王子がお待ちでございますのでご案内いたします」

「えっ? 陛下と義兄上が?」

「はい。初夜を恙無く終えられましたご報告を」

「ああ、そういうことか。わかった」

私とティオはフィデリオ殿に案内され、陛下と義兄上がいらっしゃる部屋に向かった。
しおりを挟む
感想 549

あなたにおすすめの小説

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

魔王様が子供化したので勇者の俺が責任持って育てていたら、いつの間にか溺愛されているみたい

カミヤルイ
BL
顔だけが取り柄の勇者の血を引くジェイミーは、民衆を苦しめていると噂の魔王の討伐を指示され、嫌々家を出た。 ジェイミーの住む村には実害が無い為、噂だけだろうと思っていた魔王は実在し、ジェイミーは為すすべなく倒れそうになる。しかし絶体絶命の瞬間、雷が魔王の身体を貫き、目の前で倒れた。 それでも剣でとどめを刺せない気弱なジェイミーは、魔王の森に来る途中に買った怪しい薬を魔王に使う。 ……あれ?小さくなっちゃった!このまま放っておけないよ! そんなわけで、魔王様が子供化したので子育てスキル0の勇者が連れて帰って育てることになりました。 でも、いろいろありながらも成長していく魔王はなんだかジェイミーへの態度がおかしくて……。 時々シリアスですが、ふわふわんなご都合設定のお話です。 こちらは2021年に創作したものを掲載しています。 初めてのファンタジーで右往左往していたので、設定が甘いですが、ご容赦ください 素敵な表紙は漫画家さんのミミさんにお願いしました。 @Nd1KsPcwB6l90ko

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

狼騎士は異世界の男巫女(のおまけ)を追跡中!

Kokonuca.
BL
異世界!召喚!ケモ耳!な王道が書きたかったので ある日、はるひは自分の護衛騎士と関係をもってしまう、けれどその護衛騎士ははるひの兄かすがの秘密の恋人で…… 兄と護衛騎士を守りたいはるひは、二人の前から姿を消すことを選択した 完結しましたが、こぼれ話を更新いたします

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

処理中です...