169 / 288
第三章
アズールさまの疑問
しおりを挟む
<sideヴェルナー>
「ねぇ、ヴェル。お兄さまとティオはまだお部屋から出てこないのかな?」
「そうでございますね。もう少しでしょう」
「もー、ヴェル! ずっとそればっかりだよ」
アズールさまのご質問に何度も同じように答えていると、アズールさまは長い耳をピクピクさせて拗ねていらっしゃったが、そんなことをされても可愛いとしか思えない。
むしろそれがみたくて、つい同じように返してしまった。
「ふふっ。ですが、アズールさまも王子と長くお過ごしでいらっしゃいましたでしょう?」
「うん。みんなそういうけど、僕はそんなに長く過ごした感じはしないんだ。ルーがずっと隣にいてくれて、気持ちよくしてくれたのは覚えているけど、途中で眠っちゃったりもいっぱいしているから、後から一週間も経ってたって聞いて驚いたんだから」
確かに、アズールさまが王子に抱きかかえられて部屋からお出になり、一週間ぶりだとお話した時にものすごく驚いていらした。
それはきっと王子が片時もアズールさまから離れることなく、寝ている以外の時間は全て愛し合っておられたのだろう。
そんなことをしていては、時間の感覚も無くなってしまうのは仕方のないこと。
むしろあのとんでもない体力をお持ちの王子が18年もの間、待ち焦がれたアズールさまとの交わりを迎えられたというのに、一週間で出てこられたのだから、早かったと思うべきことなのかもしれない。
「アズールさまが短いと思ってしまわれるほど、濃密な時間を過ごされたということではないですか? ある意味、素晴らしいことだと思いますよ」
「そうかな?」
「ええ」
大きく頷きながら、そうかえすとアズールさまは少し何かを考えられた様子で私をじっとお見つめになった。
「何か気になることでもございましたか?」
「あのね、ヴェルの時はどうだったのかなって……」
「えっ?」
「ヴェルとマックスの時は長かったの? 短かったの?」
「ええっ!! そ、それは……」
思ってもみなかった質問に言い淀んでしまうけれど、目の前でキラキラとした目でアズールさまに見つめられたら、答えないわけにはいかない。
「あの、王子とアズールさまよりはうんと短いですよ。マクシミリアンとの初めての時は翌日の夜には部屋を出ていましたから」
「ええっ、そうなの? そういうものなの? 短すぎない?」
「あの時私は騎士団の団長の職を担っていましたから、さすがに騎士団の訓練をお休みするわけにはいかなかったのですよ。それにマクシミリアンもまだ騎士団に入って間なしで騎士団の休日もあってないようなものでしたから、王子とアズールさまのように一週間もずっとベッドで過ごすなんてことはできなかったのですよ」
「そうなんだ……でも、寂しくなかったの? 僕は今が一番ルーとの時間を長く過ごしている気がするけど、離れ離れで過ごしていた時より、今の方が余計に離れている時間が寂しくなったよ」
「アズールさま……」
それはきっとアズールさまが王子の肌の温もりをお知りになったからだろう。
触れ合うことを知り、心地よい温もりを知り、そして、快感を知ってしまったら、離れている時間がやけに長く感じられるようになる。
普段なら我慢できたことも、離れている時は不安でたまらなくなるのもそれだろう。
以前、王子がこの国の次期国王として認められるための儀式に望まれた時、私も護衛として同行したのだが、物理的な距離が離れていくと同時に不安も寂しさも募ってしまった。
早くマクシミリアンの元に帰って、あの逞しい腕に抱かれたい、そして、奥にたっぷりと蜜を注いでほしい……。
一人になるたびにそんなことばかりを思っていた。
王子がアズールさまへの欲望を理性で必死に押し留めていた時に、そして、アズールさまが王子と離れて辛い思いをしていた時に、私はマクシミリアンのことばかり考えてしまっていたのだ。
それもこれもマクシミリアンと愛し合う喜びを知っていたからだ。
「それが正常でございますよ。私もいつでも寂しいと思っています」
「ふふっ。そっか、ヴェルもそうなんだ。ねぇ、ヴェルとマックスはどうやってお付き合いすることになったの? お兄さまみたいにひと目見てすぐに運命だってわかったの? それとも、僕とルーみたいに生まれた時から、許嫁だったの?」
アズールさまにとってはその二つしか知らないのだから、私とマクシミリアンもどちらかだと思ったのだろう。
でも私にとってはどちらでもないというのがが正しいのかもしれない。
「私は、最初はマクシミリアンのことは特になんとも思っていなかったのですよ」
そうして、私はマクシミリアンとの出会いからのことをアズールさまにお話していた。
「ねぇ、ヴェル。お兄さまとティオはまだお部屋から出てこないのかな?」
「そうでございますね。もう少しでしょう」
「もー、ヴェル! ずっとそればっかりだよ」
アズールさまのご質問に何度も同じように答えていると、アズールさまは長い耳をピクピクさせて拗ねていらっしゃったが、そんなことをされても可愛いとしか思えない。
むしろそれがみたくて、つい同じように返してしまった。
「ふふっ。ですが、アズールさまも王子と長くお過ごしでいらっしゃいましたでしょう?」
「うん。みんなそういうけど、僕はそんなに長く過ごした感じはしないんだ。ルーがずっと隣にいてくれて、気持ちよくしてくれたのは覚えているけど、途中で眠っちゃったりもいっぱいしているから、後から一週間も経ってたって聞いて驚いたんだから」
確かに、アズールさまが王子に抱きかかえられて部屋からお出になり、一週間ぶりだとお話した時にものすごく驚いていらした。
それはきっと王子が片時もアズールさまから離れることなく、寝ている以外の時間は全て愛し合っておられたのだろう。
そんなことをしていては、時間の感覚も無くなってしまうのは仕方のないこと。
むしろあのとんでもない体力をお持ちの王子が18年もの間、待ち焦がれたアズールさまとの交わりを迎えられたというのに、一週間で出てこられたのだから、早かったと思うべきことなのかもしれない。
「アズールさまが短いと思ってしまわれるほど、濃密な時間を過ごされたということではないですか? ある意味、素晴らしいことだと思いますよ」
「そうかな?」
「ええ」
大きく頷きながら、そうかえすとアズールさまは少し何かを考えられた様子で私をじっとお見つめになった。
「何か気になることでもございましたか?」
「あのね、ヴェルの時はどうだったのかなって……」
「えっ?」
「ヴェルとマックスの時は長かったの? 短かったの?」
「ええっ!! そ、それは……」
思ってもみなかった質問に言い淀んでしまうけれど、目の前でキラキラとした目でアズールさまに見つめられたら、答えないわけにはいかない。
「あの、王子とアズールさまよりはうんと短いですよ。マクシミリアンとの初めての時は翌日の夜には部屋を出ていましたから」
「ええっ、そうなの? そういうものなの? 短すぎない?」
「あの時私は騎士団の団長の職を担っていましたから、さすがに騎士団の訓練をお休みするわけにはいかなかったのですよ。それにマクシミリアンもまだ騎士団に入って間なしで騎士団の休日もあってないようなものでしたから、王子とアズールさまのように一週間もずっとベッドで過ごすなんてことはできなかったのですよ」
「そうなんだ……でも、寂しくなかったの? 僕は今が一番ルーとの時間を長く過ごしている気がするけど、離れ離れで過ごしていた時より、今の方が余計に離れている時間が寂しくなったよ」
「アズールさま……」
それはきっとアズールさまが王子の肌の温もりをお知りになったからだろう。
触れ合うことを知り、心地よい温もりを知り、そして、快感を知ってしまったら、離れている時間がやけに長く感じられるようになる。
普段なら我慢できたことも、離れている時は不安でたまらなくなるのもそれだろう。
以前、王子がこの国の次期国王として認められるための儀式に望まれた時、私も護衛として同行したのだが、物理的な距離が離れていくと同時に不安も寂しさも募ってしまった。
早くマクシミリアンの元に帰って、あの逞しい腕に抱かれたい、そして、奥にたっぷりと蜜を注いでほしい……。
一人になるたびにそんなことばかりを思っていた。
王子がアズールさまへの欲望を理性で必死に押し留めていた時に、そして、アズールさまが王子と離れて辛い思いをしていた時に、私はマクシミリアンのことばかり考えてしまっていたのだ。
それもこれもマクシミリアンと愛し合う喜びを知っていたからだ。
「それが正常でございますよ。私もいつでも寂しいと思っています」
「ふふっ。そっか、ヴェルもそうなんだ。ねぇ、ヴェルとマックスはどうやってお付き合いすることになったの? お兄さまみたいにひと目見てすぐに運命だってわかったの? それとも、僕とルーみたいに生まれた時から、許嫁だったの?」
アズールさまにとってはその二つしか知らないのだから、私とマクシミリアンもどちらかだと思ったのだろう。
でも私にとってはどちらでもないというのがが正しいのかもしれない。
「私は、最初はマクシミリアンのことは特になんとも思っていなかったのですよ」
そうして、私はマクシミリアンとの出会いからのことをアズールさまにお話していた。
218
お気に入りに追加
5,350
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

【完結】嬉しいと花を咲かせちゃう俺は、モブになりたい
古井重箱
BL
【あらすじ】三塚伊織は高校一年生。嬉しいと周囲に花を咲かせてしまう特異体質の持ち主だ。伊織は感情がダダ漏れな自分が嫌でモブになりたいと願っている。そんな時、イケメンサッカー部員の鈴木綺羅斗と仲良くなって──【注記】陽キャDK×陰キャDK
推しの恋を応援したかっただけなのに。
灰鷹
BL
異世界転生BL。騎士×転生者の王子。
フィアリス王国の第3王子であるエドワードは、王宮で開かれていた舞踏会で前世の推しである騎士と出会い、前世で好きだった恋愛ファンタジー小説の世界に転生していたことに気づく。小説の通りに推しが非業の死を遂げないよう、奮闘するエドワードであったが……。
攻め:カイン・ド・アルベール(騎士/20才)
受け:エドワード・リーヴェンス・グランディエール(第3王子/転生者/18才)
※ こちらはBLoveさんの短編コンテストに応募した作品を加筆修正したものです。後半は大幅に内容を変えているので、BLoveさんで既読の方にも楽しんでいただけたらいいなと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる