真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

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第三章

アズールさまの疑問

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<sideヴェルナー>

「ねぇ、ヴェル。お兄さまとティオはまだお部屋から出てこないのかな?」

「そうでございますね。もう少しでしょう」

「もー、ヴェル! ずっとそればっかりだよ」

アズールさまのご質問に何度も同じように答えていると、アズールさまは長い耳をピクピクさせて拗ねていらっしゃったが、そんなことをされても可愛いとしか思えない。
むしろそれがみたくて、つい同じように返してしまった。

「ふふっ。ですが、アズールさまも王子と長くお過ごしでいらっしゃいましたでしょう?」

「うん。みんなそういうけど、僕はそんなに長く過ごした感じはしないんだ。ルーがずっと隣にいてくれて、気持ちよくしてくれたのは覚えているけど、途中で眠っちゃったりもいっぱいしているから、後から一週間も経ってたって聞いて驚いたんだから」

確かに、アズールさまが王子に抱きかかえられて部屋からお出になり、一週間ぶりだとお話した時にものすごく驚いていらした。
それはきっと王子が片時もアズールさまから離れることなく、寝ている以外の時間は全て愛し合っておられたのだろう。
そんなことをしていては、時間の感覚も無くなってしまうのは仕方のないこと。
むしろあの・・とんでもない体力をお持ちの王子が18年もの間、待ち焦がれたアズールさまとの交わりを迎えられたというのに、一週間で出てこられたのだから、早かったと思うべきことなのかもしれない。

「アズールさまが短いと思ってしまわれるほど、濃密な時間を過ごされたということではないですか? ある意味、素晴らしいことだと思いますよ」

「そうかな?」

「ええ」

大きく頷きながら、そうかえすとアズールさまは少し何かを考えられた様子で私をじっとお見つめになった。

「何か気になることでもございましたか?」

「あのね、ヴェルの時はどうだったのかなって……」

「えっ?」

「ヴェルとマックスの時は長かったの? 短かったの?」

「ええっ!! そ、それは……」

思ってもみなかった質問に言い淀んでしまうけれど、目の前でキラキラとした目でアズールさまに見つめられたら、答えないわけにはいかない。

「あの、王子とアズールさまよりはうんと短いですよ。マクシミリアンとの初めての時は翌日の夜には部屋を出ていましたから」

「ええっ、そうなの? そういうものなの? 短すぎない?」

「あの時私は騎士団の団長の職を担っていましたから、さすがに騎士団の訓練をお休みするわけにはいかなかったのですよ。それにマクシミリアンもまだ騎士団に入って間なしで騎士団の休日もあってないようなものでしたから、王子とアズールさまのように一週間もずっとベッドで過ごすなんてことはできなかったのですよ」

「そうなんだ……でも、寂しくなかったの? 僕は今が一番ルーとの時間を長く過ごしている気がするけど、離れ離れで過ごしていた時より、今の方が余計に離れている時間が寂しくなったよ」

「アズールさま……」

それはきっとアズールさまが王子の肌の温もりをお知りになったからだろう。
触れ合うことを知り、心地よい温もりを知り、そして、快感を知ってしまったら、離れている時間がやけに長く感じられるようになる。

普段なら我慢できたことも、離れている時は不安でたまらなくなるのもそれだろう。

以前、王子がこの国の次期国王として認められるための儀式に望まれた時、私も護衛として同行したのだが、物理的な距離が離れていくと同時に不安も寂しさも募ってしまった。

早くマクシミリアンの元に帰って、あの逞しい腕に抱かれたい、そして、奥にたっぷりと蜜を注いでほしい……。
一人になるたびにそんなことばかりを思っていた。

王子がアズールさまへの欲望を理性で必死に押し留めていた時に、そして、アズールさまが王子と離れて辛い思いをしていた時に、私はマクシミリアンのことばかり考えてしまっていたのだ。

それもこれもマクシミリアンと愛し合う喜びを知っていたからだ。

「それが正常でございますよ。私もいつでも寂しいと思っています」

「ふふっ。そっか、ヴェルもそうなんだ。ねぇ、ヴェルとマックスはどうやってお付き合いすることになったの? お兄さまみたいにひと目見てすぐに運命だってわかったの? それとも、僕とルーみたいに生まれた時から、許嫁だったの?」

アズールさまにとってはその二つしか知らないのだから、私とマクシミリアンもどちらかだと思ったのだろう。
でも私にとってはどちらでもないというのがが正しいのかもしれない。


「私は、最初はマクシミリアンのことは特になんとも思っていなかったのですよ」

そうして、私はマクシミリアンとの出会いからのことをアズールさまにお話していた。
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