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第三章

ティオの気持ち

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<sideティオ>

私がクレイさまの運命の相手だと分かってから、まだ数時間しか経っていないというのに、もう陛下にご報告を終えてしまったなんて……あまりにも順調に事が進みすぎて怖いくらいだ。

出会ってすぐは離れたくないと思いつつも、さすがに今夜は一人で夜を過ごさないといけないと覚悟すらしていたのに、このままクレイさまとお城の客間で初夜を迎える事ができるなんて……今でも信じられない。

それもこれも団長とアズールさまのおかげだ。

アズールさまとは、毎日のようにお茶の時間をご一緒できるだけでも幸せだと思っていたのに、まさか義兄弟になれるなんて思っても見なかった。

その上、団長と、そして陛下とも姻族になれるなんて……。
今、夢だと叩き起こされても、やっぱりそうだね、夢だよねと素直に思えてしまうくらい、ありえないことが連続していて頭がパンクしてしまいそうだ。

だって、貧乏男爵家に生まれ、両親も亡くし、どうやって過ごしたらいいのかわからないほどの境遇にいた私が、騎士団の入団試験に合格できた上に、陛下の専属護衛に選ばれて、そこで一生分の運を全て使い果たしたと思っていたのに……この上、由緒あるヴォルフ公爵家嫡男さまのつまになんて……。

でも、すぐ目の前にクレイさまがいて、ずっと私に笑顔を向けてくれているのは紛れもない現実で……。
この笑顔を一生独り占めしたいと思ってしまっている自分がいるのも事実で……。

ああ、もう幸せすぎておかしくなってしまいそう。

それに何よりこのままクレイさまとお泊まりだなんて、ちゃんとうまくやれるだろうか……。

狼族の方のアレ・・は一番立派だという噂も聞いているし、私がちゃんと受け入れられるかどうか……。
そのことも緊張の一因になっている。

――ティオも今夜はお兄さまにお腹の奥をゴリゴリと擦られて蜜をいっぱい出されて愛し合うんだね。

アズールさまに言われた言葉がふと頭をよぎる。

そういえば、アズールさまはあの小さなお身体で獣人である団長のアレ・・を受け入れていらっしゃるのだ。

狼族が立派だとはいえ、流石に獣人である団長の方がもっとずっと立派そうだ。
それなら、私もクレイさまのアレも受け入れることはできそうだ!

そうだ!
きっとできるはず!

私を見つけてくださったクレイさまに満足していただけるように頑張らないと!
まずは何をしたらいいだろう……。

「……オ、ティオ。どうしたんだ? 何か心配事でもあるか?」

「あっ、いえ。クレイさまに満足していただく方法を考えてました」

「えっ?」

「えっ?」

「今、なんて、言ったんだ?」

「えっ、あっ! ちが――っ!」

突然クレイさまから話しかけられて、思わず心の中のことを言葉にしてしまった。
間違えた!
そう思った時にはすべて聞かれてしまっていて、私の目の前には、さっきまでのにこやかな笑顔から一転、ギラギラと獰猛な目をしたクレイさまの姿があった。

「陛下、義兄上、アズール。失礼します」

フゥフゥと呼吸を荒くしながらも挨拶をなさったクレイさまは、私を抱きかかえたまま一目散に部屋を出て、宿泊を許された客間に駆け出して行った。

私たちの後ろから、

「ティオーっ! がんばってねぇーっ!!」

というアズールさまの声が聞こえたような気がしたけれど、今の私にはそれに反応できるようなゆとりはどこにもなかった。

<sideクレイ>

城への宿泊が許されたというのに、腕の中のティオは突然黙り何やら考え込んだまま動こうとしない。

何か心配なことでもあるのだろうか……。

いや、運命の相手に出会えたからといって、流石に性急すぎたのかもしれない。
ティオにももう少し気持ちを落ち着かせる時間を与えた方が良かったのか……。

すぐにでもティオを身も心も私のものにしたいと思っていたが、ほんの少しならまだ待てる余裕はある。
そう。
義兄上を見習い、数日程度ならまだ我慢はできそうだ。

陛下も義兄上もティオの様子に気がついたようだ。
やはりここは気持ちが落ち着くまで待ったほうがいいか。
これから先は長いのだ。
ここでティオとの関係を悪くしたくない。

ティオの気持ちを聞いて、今夜はどうするかを尋ねようと思って声をかけると、

「クレイさまに満足していただく方法を考えてました」

と思いもかけない答えが返ってきた。

私に満足してもらう方法……それはつまり……そういうことか?
それしかないな。

なんだ、期待してくれているのかと思ったら、もう我慢などできるはずもなかった。

陛下と義兄上、そしてアズールにも挨拶し、今日泊まる部屋に駆け込んだ。

そして、扉が閉まった瞬間、私はティオの唇を奪っていた。
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