163 / 288
第三章
ティオの気持ち
しおりを挟む
<sideティオ>
私がクレイさまの運命の相手だと分かってから、まだ数時間しか経っていないというのに、もう陛下にご報告を終えてしまったなんて……あまりにも順調に事が進みすぎて怖いくらいだ。
出会ってすぐは離れたくないと思いつつも、さすがに今夜は一人で夜を過ごさないといけないと覚悟すらしていたのに、このままクレイさまとお城の客間で初夜を迎える事ができるなんて……今でも信じられない。
それもこれも団長とアズールさまのおかげだ。
アズールさまとは、毎日のようにお茶の時間をご一緒できるだけでも幸せだと思っていたのに、まさか義兄弟になれるなんて思っても見なかった。
その上、団長と、そして陛下とも姻族になれるなんて……。
今、夢だと叩き起こされても、やっぱりそうだね、夢だよねと素直に思えてしまうくらい、ありえないことが連続していて頭がパンクしてしまいそうだ。
だって、貧乏男爵家に生まれ、両親も亡くし、どうやって過ごしたらいいのかわからないほどの境遇にいた私が、騎士団の入団試験に合格できた上に、陛下の専属護衛に選ばれて、そこで一生分の運を全て使い果たしたと思っていたのに……この上、由緒あるヴォルフ公爵家嫡男さまの夫になんて……。
でも、すぐ目の前にクレイさまがいて、ずっと私に笑顔を向けてくれているのは紛れもない現実で……。
この笑顔を一生独り占めしたいと思ってしまっている自分がいるのも事実で……。
ああ、もう幸せすぎておかしくなってしまいそう。
それに何よりこのままクレイさまとお泊まりだなんて、ちゃんとうまくやれるだろうか……。
狼族の方のアレは一番立派だという噂も聞いているし、私がちゃんと受け入れられるかどうか……。
そのことも緊張の一因になっている。
――ティオも今夜はお兄さまにお腹の奥をゴリゴリと擦られて蜜をいっぱい出されて愛し合うんだね。
アズールさまに言われた言葉がふと頭をよぎる。
そういえば、アズールさまはあの小さなお身体で獣人である団長のアレを受け入れていらっしゃるのだ。
狼族が立派だとはいえ、流石に獣人である団長の方がもっとずっと立派そうだ。
それなら、私もクレイさまのアレも受け入れることはできそうだ!
そうだ!
きっとできるはず!
私を見つけてくださったクレイさまに満足していただけるように頑張らないと!
まずは何をしたらいいだろう……。
「……オ、ティオ。どうしたんだ? 何か心配事でもあるか?」
「あっ、いえ。クレイさまに満足していただく方法を考えてました」
「えっ?」
「えっ?」
「今、なんて、言ったんだ?」
「えっ、あっ! ちが――っ!」
突然クレイさまから話しかけられて、思わず心の中のことを言葉にしてしまった。
間違えた!
そう思った時にはすべて聞かれてしまっていて、私の目の前には、さっきまでのにこやかな笑顔から一転、ギラギラと獰猛な目をしたクレイさまの姿があった。
「陛下、義兄上、アズール。失礼します」
フゥフゥと呼吸を荒くしながらも挨拶をなさったクレイさまは、私を抱きかかえたまま一目散に部屋を出て、宿泊を許された客間に駆け出して行った。
私たちの後ろから、
「ティオーっ! がんばってねぇーっ!!」
というアズールさまの声が聞こえたような気がしたけれど、今の私にはそれに反応できるようなゆとりはどこにもなかった。
<sideクレイ>
城への宿泊が許されたというのに、腕の中のティオは突然黙り何やら考え込んだまま動こうとしない。
何か心配なことでもあるのだろうか……。
いや、運命の相手に出会えたからといって、流石に性急すぎたのかもしれない。
ティオにももう少し気持ちを落ち着かせる時間を与えた方が良かったのか……。
すぐにでもティオを身も心も私のものにしたいと思っていたが、ほんの少しならまだ待てる余裕はある。
そう。
義兄上を見習い、数日程度ならまだ我慢はできそうだ。
陛下も義兄上もティオの様子に気がついたようだ。
やはりここは気持ちが落ち着くまで待ったほうがいいか。
これから先は長いのだ。
ここでティオとの関係を悪くしたくない。
ティオの気持ちを聞いて、今夜はどうするかを尋ねようと思って声をかけると、
「クレイさまに満足していただく方法を考えてました」
と思いもかけない答えが返ってきた。
私に満足してもらう方法……それはつまり……そういうことか?
それしかないな。
なんだ、期待してくれているのかと思ったら、もう我慢などできるはずもなかった。
陛下と義兄上、そしてアズールにも挨拶し、今日泊まる部屋に駆け込んだ。
そして、扉が閉まった瞬間、私はティオの唇を奪っていた。
私がクレイさまの運命の相手だと分かってから、まだ数時間しか経っていないというのに、もう陛下にご報告を終えてしまったなんて……あまりにも順調に事が進みすぎて怖いくらいだ。
出会ってすぐは離れたくないと思いつつも、さすがに今夜は一人で夜を過ごさないといけないと覚悟すらしていたのに、このままクレイさまとお城の客間で初夜を迎える事ができるなんて……今でも信じられない。
それもこれも団長とアズールさまのおかげだ。
アズールさまとは、毎日のようにお茶の時間をご一緒できるだけでも幸せだと思っていたのに、まさか義兄弟になれるなんて思っても見なかった。
その上、団長と、そして陛下とも姻族になれるなんて……。
今、夢だと叩き起こされても、やっぱりそうだね、夢だよねと素直に思えてしまうくらい、ありえないことが連続していて頭がパンクしてしまいそうだ。
だって、貧乏男爵家に生まれ、両親も亡くし、どうやって過ごしたらいいのかわからないほどの境遇にいた私が、騎士団の入団試験に合格できた上に、陛下の専属護衛に選ばれて、そこで一生分の運を全て使い果たしたと思っていたのに……この上、由緒あるヴォルフ公爵家嫡男さまの夫になんて……。
でも、すぐ目の前にクレイさまがいて、ずっと私に笑顔を向けてくれているのは紛れもない現実で……。
この笑顔を一生独り占めしたいと思ってしまっている自分がいるのも事実で……。
ああ、もう幸せすぎておかしくなってしまいそう。
それに何よりこのままクレイさまとお泊まりだなんて、ちゃんとうまくやれるだろうか……。
狼族の方のアレは一番立派だという噂も聞いているし、私がちゃんと受け入れられるかどうか……。
そのことも緊張の一因になっている。
――ティオも今夜はお兄さまにお腹の奥をゴリゴリと擦られて蜜をいっぱい出されて愛し合うんだね。
アズールさまに言われた言葉がふと頭をよぎる。
そういえば、アズールさまはあの小さなお身体で獣人である団長のアレを受け入れていらっしゃるのだ。
狼族が立派だとはいえ、流石に獣人である団長の方がもっとずっと立派そうだ。
それなら、私もクレイさまのアレも受け入れることはできそうだ!
そうだ!
きっとできるはず!
私を見つけてくださったクレイさまに満足していただけるように頑張らないと!
まずは何をしたらいいだろう……。
「……オ、ティオ。どうしたんだ? 何か心配事でもあるか?」
「あっ、いえ。クレイさまに満足していただく方法を考えてました」
「えっ?」
「えっ?」
「今、なんて、言ったんだ?」
「えっ、あっ! ちが――っ!」
突然クレイさまから話しかけられて、思わず心の中のことを言葉にしてしまった。
間違えた!
そう思った時にはすべて聞かれてしまっていて、私の目の前には、さっきまでのにこやかな笑顔から一転、ギラギラと獰猛な目をしたクレイさまの姿があった。
「陛下、義兄上、アズール。失礼します」
フゥフゥと呼吸を荒くしながらも挨拶をなさったクレイさまは、私を抱きかかえたまま一目散に部屋を出て、宿泊を許された客間に駆け出して行った。
私たちの後ろから、
「ティオーっ! がんばってねぇーっ!!」
というアズールさまの声が聞こえたような気がしたけれど、今の私にはそれに反応できるようなゆとりはどこにもなかった。
<sideクレイ>
城への宿泊が許されたというのに、腕の中のティオは突然黙り何やら考え込んだまま動こうとしない。
何か心配なことでもあるのだろうか……。
いや、運命の相手に出会えたからといって、流石に性急すぎたのかもしれない。
ティオにももう少し気持ちを落ち着かせる時間を与えた方が良かったのか……。
すぐにでもティオを身も心も私のものにしたいと思っていたが、ほんの少しならまだ待てる余裕はある。
そう。
義兄上を見習い、数日程度ならまだ我慢はできそうだ。
陛下も義兄上もティオの様子に気がついたようだ。
やはりここは気持ちが落ち着くまで待ったほうがいいか。
これから先は長いのだ。
ここでティオとの関係を悪くしたくない。
ティオの気持ちを聞いて、今夜はどうするかを尋ねようと思って声をかけると、
「クレイさまに満足していただく方法を考えてました」
と思いもかけない答えが返ってきた。
私に満足してもらう方法……それはつまり……そういうことか?
それしかないな。
なんだ、期待してくれているのかと思ったら、もう我慢などできるはずもなかった。
陛下と義兄上、そしてアズールにも挨拶し、今日泊まる部屋に駆け込んだ。
そして、扉が閉まった瞬間、私はティオの唇を奪っていた。
212
お気に入りに追加
5,343
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

いつかコントローラーを投げ出して
せんぷう
BL
オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。
世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。
バランサー。
アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。
これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。
裏社会のトップにして最強のアルファ攻め
×
最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け
※オメガバース特殊設定、追加性別有り
.

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。
N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い)
×
期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい)
Special thanks
illustration by 白鯨堂こち
※ご都合主義です。
※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる