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第二章
爺の妙案
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<sideルーディー>
私の欲望を何度も何度も吐き出してきたあのベッドでアズールと一緒に寝る。
アズールが私の部屋で泊まりたいと言ってからずっと、そのことばかりを心配してきたが、それよりももっと乗り越えなければならない壁があった。
なんとかして夜を乗り切る方法を爺に相談しようと思っていたのに、
――アズールさまのお風呂はどうなさいますか?
爺のこの言葉に愕然としたのだ。
一緒に眠るだけでこんなにも心中穏やかでないというのに、アズールの風呂なんてどうすれば良いのだ?
アズールの部屋に泊まった時でさえ、風呂はアリーシャ殿にお任せしていた。
それは成人するまでは決してアズールの裸を見てはならないと父上と約束したからだ。
普段の生活でどれだけ必死に欲望を押さえつけようとしても、裸を見てしまえば、私の獣人としての本能を抑えることはできないだろう。
今までそれほど制御できなくなったことは一度もない。
だからこそ、裸を見た時が恐ろしいのだ。
だが、私以外のものにアズールの風呂を任せることは絶対にできないし、もし、私のアズールを風呂に入れるものがいれば、アズールの裸に触れた手を切り落とし、アズールの裸を見た目をくり抜いてしまうかもしれない。
そこまでやっても私の怒りを鎮めることはできないだろう。
とはいえ、アズールを一人で風呂に入らせることも絶対にできない。
この12年、ずっとアリーシャ殿に風呂の全ての世話を頼んでいるのだから、アズールが自分で洗えるとは考えられない。
それに私の部屋の風呂は小さなアズールにとっては深すぎる。
中に入っただけでアズールは溺れてしまうだろう。
私が抱いて入れば溺れる心配もないが、それ以外の心配事が増えるからどうしようもない。
困り果てている私をよそにアズールはソファーに座って美味しそうに菓子を食べている。
ああ、アズールを悲しませることなく、危険な目に遭わせることもなく、そして、私の欲望を抑えながらアズールを風呂に入れるにはどうしたら良いのだろう……。
すると爺は妙案を思いついたとでも言わんばかりに得意げな顔で、
「もうルーディーさまがアズールさまのお手伝いをなさるほかはございません」
と言い出した。
私が風呂に入れるのなら父上の約束など守れぬではないか。
それとも緊急事態ということで父上の了承をとってくれるのだろうか……。
そう思ったのだが、
「ですから見なければ良いのです。陛下とのお約束は決して裸を見てはならぬということなのですから」
と自信満々に言ってきた。
裸を見てはならぬ。
それは最重要事項だ。
それを見なければ良いというのはどういうことだろう。
「どういうことだ?」
「ルーディーさまには決して外れることのない目隠しを装着いたします。ルーディーさまは視覚を奪われようとも、気配で障害物は感じ取ることができますので、お風呂場で転んだり、ぶつかったり、それこそアズールさまを危険な目に遭わせることはなさらないでしょう」
「なるほど、見らずにというのはそういうことか」
確かに獣人である私は気配には敏感で、目を塞がれようとも迷わずに歩くことができる。
風呂場の中は熟知しているし、ぶつかったりすることは決してないと断言できる。
「次にアズールさまを洗う方法ですが、御髪は素手でお洗いいただいて構いませんが、身体はアズールさまの肌を傷つけぬように柔らかで分厚い洗い布で作った手袋を用意いたしますので、そちらでお洗いください。決してルーディーさまの素手でお洗いになりませんように。この分厚い手袋ならば、流石にルーディーさまといえどもアズールさまの感触まではお分かりにならないでしょう」
「アズールには私の鋭い爪で傷つけないためと言っておけば問題なさそうだな。だが、一番の問題があるぞ。私はどうするんだ?」
アズールの裸を見ない、触れない方法はわかった。
だが、どれだけ裸を見ずに、触れずにいても目の前に裸のアズールがいる。
その事実が私を昂らせる。
私に目隠しを施しても、私の昂りをアズールが見てしまったら?
好奇心旺盛なアズールがもし、私の昂りに触れてしまったら?
その時はもう抑えられる気がしない。
一気に蜜を弾けさせることは間違いない。
ただでさえ、アズールは私の蜜の味も匂いも知っているのだ。
もし舐められでもしたらその瞬間、私は獣人としての本能に目覚めてしまうだろう。
「大丈夫でございますよ。私に秘策がございます」
「秘策? それはなんだ?」
「下着の上から昂りを拘束させる装具があるのをご存知でしょう?」
「あの鋼鉄製のものか? あれは拷問の道具ではないのか?」
「いえ、あれはれっきとした医療用具でございますよ。初夜の前に一定期間蜜を出さないように昂りを抑えるためのものでございます。ルーディーさまにはそれをおつけいただいて、服を着たままアズールさまとお風呂に入っていただけば良いのです」
「そうすると、目隠しをして、分厚い手袋をつけて、股間に拘束具をつけて私に風呂に入れと?」
「はい。それしか方法はございません。もしくは私がアズールさまをお風呂にお入れいたします。いかがなさいますか?」
「くっ――!」
そう言われれば、どのような格好をしてでも私がアズールを風呂に入れるという結論しかなかった。
「それで良い。準備を頼む」
「承知しました」
これも今日一日のことだ。
抑えつけた昂りはアズールが寝静まってから、たっぷりと出しておけば良いだろう。
もう私にはこれしか方法がないのだから。
私の欲望を何度も何度も吐き出してきたあのベッドでアズールと一緒に寝る。
アズールが私の部屋で泊まりたいと言ってからずっと、そのことばかりを心配してきたが、それよりももっと乗り越えなければならない壁があった。
なんとかして夜を乗り切る方法を爺に相談しようと思っていたのに、
――アズールさまのお風呂はどうなさいますか?
爺のこの言葉に愕然としたのだ。
一緒に眠るだけでこんなにも心中穏やかでないというのに、アズールの風呂なんてどうすれば良いのだ?
アズールの部屋に泊まった時でさえ、風呂はアリーシャ殿にお任せしていた。
それは成人するまでは決してアズールの裸を見てはならないと父上と約束したからだ。
普段の生活でどれだけ必死に欲望を押さえつけようとしても、裸を見てしまえば、私の獣人としての本能を抑えることはできないだろう。
今までそれほど制御できなくなったことは一度もない。
だからこそ、裸を見た時が恐ろしいのだ。
だが、私以外のものにアズールの風呂を任せることは絶対にできないし、もし、私のアズールを風呂に入れるものがいれば、アズールの裸に触れた手を切り落とし、アズールの裸を見た目をくり抜いてしまうかもしれない。
そこまでやっても私の怒りを鎮めることはできないだろう。
とはいえ、アズールを一人で風呂に入らせることも絶対にできない。
この12年、ずっとアリーシャ殿に風呂の全ての世話を頼んでいるのだから、アズールが自分で洗えるとは考えられない。
それに私の部屋の風呂は小さなアズールにとっては深すぎる。
中に入っただけでアズールは溺れてしまうだろう。
私が抱いて入れば溺れる心配もないが、それ以外の心配事が増えるからどうしようもない。
困り果てている私をよそにアズールはソファーに座って美味しそうに菓子を食べている。
ああ、アズールを悲しませることなく、危険な目に遭わせることもなく、そして、私の欲望を抑えながらアズールを風呂に入れるにはどうしたら良いのだろう……。
すると爺は妙案を思いついたとでも言わんばかりに得意げな顔で、
「もうルーディーさまがアズールさまのお手伝いをなさるほかはございません」
と言い出した。
私が風呂に入れるのなら父上の約束など守れぬではないか。
それとも緊急事態ということで父上の了承をとってくれるのだろうか……。
そう思ったのだが、
「ですから見なければ良いのです。陛下とのお約束は決して裸を見てはならぬということなのですから」
と自信満々に言ってきた。
裸を見てはならぬ。
それは最重要事項だ。
それを見なければ良いというのはどういうことだろう。
「どういうことだ?」
「ルーディーさまには決して外れることのない目隠しを装着いたします。ルーディーさまは視覚を奪われようとも、気配で障害物は感じ取ることができますので、お風呂場で転んだり、ぶつかったり、それこそアズールさまを危険な目に遭わせることはなさらないでしょう」
「なるほど、見らずにというのはそういうことか」
確かに獣人である私は気配には敏感で、目を塞がれようとも迷わずに歩くことができる。
風呂場の中は熟知しているし、ぶつかったりすることは決してないと断言できる。
「次にアズールさまを洗う方法ですが、御髪は素手でお洗いいただいて構いませんが、身体はアズールさまの肌を傷つけぬように柔らかで分厚い洗い布で作った手袋を用意いたしますので、そちらでお洗いください。決してルーディーさまの素手でお洗いになりませんように。この分厚い手袋ならば、流石にルーディーさまといえどもアズールさまの感触まではお分かりにならないでしょう」
「アズールには私の鋭い爪で傷つけないためと言っておけば問題なさそうだな。だが、一番の問題があるぞ。私はどうするんだ?」
アズールの裸を見ない、触れない方法はわかった。
だが、どれだけ裸を見ずに、触れずにいても目の前に裸のアズールがいる。
その事実が私を昂らせる。
私に目隠しを施しても、私の昂りをアズールが見てしまったら?
好奇心旺盛なアズールがもし、私の昂りに触れてしまったら?
その時はもう抑えられる気がしない。
一気に蜜を弾けさせることは間違いない。
ただでさえ、アズールは私の蜜の味も匂いも知っているのだ。
もし舐められでもしたらその瞬間、私は獣人としての本能に目覚めてしまうだろう。
「大丈夫でございますよ。私に秘策がございます」
「秘策? それはなんだ?」
「下着の上から昂りを拘束させる装具があるのをご存知でしょう?」
「あの鋼鉄製のものか? あれは拷問の道具ではないのか?」
「いえ、あれはれっきとした医療用具でございますよ。初夜の前に一定期間蜜を出さないように昂りを抑えるためのものでございます。ルーディーさまにはそれをおつけいただいて、服を着たままアズールさまとお風呂に入っていただけば良いのです」
「そうすると、目隠しをして、分厚い手袋をつけて、股間に拘束具をつけて私に風呂に入れと?」
「はい。それしか方法はございません。もしくは私がアズールさまをお風呂にお入れいたします。いかがなさいますか?」
「くっ――!」
そう言われれば、どのような格好をしてでも私がアズールを風呂に入れるという結論しかなかった。
「それで良い。準備を頼む」
「承知しました」
これも今日一日のことだ。
抑えつけた昂りはアズールが寝静まってから、たっぷりと出しておけば良いだろう。
もう私にはこれしか方法がないのだから。
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