真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

文字の大きさ
69 / 296
第一章

我慢しないとね。

しおりを挟む
<sideマクシミリアン>

「アズールさま。今日はこの辺にして、お食事にいたしましょう」

「んー、もうちょっと、だめぇ?」

「くぅ――っ! あ、あと少しでございますよ」

「わぁーい」

はぁー。
先ほどから何度このやりとりを繰り返しているだろう。

バロンクンストがかなり気に入ったご様子で熱中しておられるが、きっと王子のためだからということもあるのだろう。

アズールさまの目の前のテーブルには最初にお教えした花はもちろん、子どもたちに人気な剣もたくさん並んでいる。
全てアズールさまがお作りになったものだ。
最初に作ったものと比べると、格段に上達されているのがわかる。

あれだけの王冠を紙でお作りになるほど手先が器用なのだから、当然といえばそうなのかもしれないがそれにしても、ものすごい上達っぷりだ。

そして、今アズールさまがお作りになっているのは、おそらくご自分で考えられたもの。
あの形はもしや……。

まさか、お教えしたその日のうちにご自分で作り出すようになるなんて思いもしなかった。

「できたぁ~!! じぃー、みてみてぇ~!」

完成したものを自分の身体で隠しながら、ぴょんと椅子から飛び降りてお祖父さまに駆け寄っていく。
それを受け止めるお祖父さまのなんと嬉しそうな顔だろう。

実の孫である私でさえ、あんな笑顔で迎えられたことなどない気がする。
お祖父さまはいつでも厳しかったのに。
まるでアズールさまの方が実の孫のように見えるのは勘違いではないだろう。

まぁ、幼い頃から身体も大きかった私と比べてアズールさまは小さくてかわいらしいのだから当然か。

本当の祖父と孫のような二人を暖かく見守っていると、

「おおっ! これはアズールさまでございますか?」

とお祖父さまが驚きの声をあげた。

見れば、真っ白な長い耳が可愛らしい、どこからどう見てもアズールさまのバロンクンストが出来上がっていた。

「見ろ、マクシミリアン。アズールさまがこんなにも素晴らしいものをお作りになったぞ」

お祖父さまはまるで自分が作ったかのように自信満々に私に見せてきたが、それも気にならないくらいアズールさまのお作りになったウサギは可愛らしくできていた。

「初めてお作りになったとは思えないほどの素晴らしい出来でございますよ。これは王子もお喜びになるでしょうね」

「わぁー、うれしいっ! あずーる、ルーのもつくって、いっしょに、ならべたいの」

「なるほど! それは素晴らしいお考えでございます。アズールさまのお作りになったお花と一緒に会場を飾れば、王子もきっと驚き、そしてお喜びになると思いますよ!」

「じゃあ、もっといっぱいがんばる!!」

そう言ってさっきまで座っていた椅子に戻ろうとした途端、

「きゅるるっ」

と可愛らしい音が鳴り響いた。

「――っ、き、こえちゃった?」

一気に顔を赤らめてこちらを見るが、流石に聞こえないふりは難しいか……。
どうやら相当恥ずかしかったご様子だ。

恥ずかしがることなどないほど可愛いらしいのにな。

そういえば、ヴェルナーも愛し合いすぎて、食事を忘れお腹の音を聞いたことがあったな。

その時は今のアズールさまと同じく顔を赤らめていた。
あの時のヴェルナーと同じ気持ちなのかもしれない。

「私も実は先ほどからお腹がずっと鳴っているのです。そろそろお食事にいたしましょうか」

「ほんと? まっくすも?」

「はい。一生懸命だとお腹が減るのが早いのですよ。だから、お腹が鳴るのは頑張った証拠なのですから、恥ずかしがらなくて良いのですよ」

「そっかぁ……あずーる、がんばったもんね」

嬉しそうにご自分が作ったバロンクンストを見つめているアズールさまを見ながら、私とお祖父さまはそっと笑みを浮かべた。


「おとうさま、おかあさま。これ、あずーるが、つくったのー」

お食事に集まってこられた公爵と公爵夫人のお姿を見つけると、すぐに駆け寄ってウサギのバロンクンストをお見せになった。

「あらあら。これはアズールかしら?」

「そう! にてる?」

「ええ。とっても可愛らしいわ。これはもしかしたら王子への贈り物なのかしら?」

「ふふっ。ないしょ~」

「あら、アズールが内緒だなんて。でもとてもよくできているわ。ねぇ、あなた」

「ああ。これはアズール一人で作ったのか?」

「あずーる、つくったの」

「そうか、それは素晴らしいな」

公爵さまと公爵夫人に褒めていただいて、アズールさまは本当に嬉しそうだ。

バロンが膨らませられないとわかった時にはどうなることかと思ったが、お教えできて本当に良かった。


<sideアズール>

初めて作ったけれど、みんなが褒めてくれて嬉しい。
ルーも喜んでくれるかな。

早く見せてルーの驚く顔が見たいな。

夕食をいつものようにお父さまたちと一緒に食べる。
いつもは夕食までルーと一緒だから、ご飯も食べさせてもらってるけれど、今日はルーがいない。
自分で食べながら、お母さまにも食べさせてもらった。

お母さまに食べさせてもらうのもすごく楽しかったけれど、でもやっぱりルーがいいなって思っちゃう。

僕はやっぱりわがままになってるな。

ルーもお父さまもお母さまも、それにマックスや爺もみんな優しいから甘えちゃってたけど、あんまりわがまま言わずに我慢しないとって思うけど、ルーと離れている時間が長くなればなるほど、早く会いたいって思っちゃう。

本当、自分の気持ちがあっちこっちに行ってて、どうしていいかわからなくなっちゃうな。

お母さまとお風呂に入って、自分の部屋に行く。
部屋に入ってすぐルーの匂いがして、吸い寄せられるようにベッドに向かった。

ルーの匂いのするブランケットに巻き付きながら、目を瞑るとルーと一緒に寝てるような気分になる。
これなら寂しくないから眠れそうだ。

ルー、やっと一日が終わったよ。
ルーが帰ってくるまで、僕……頑張るからね。

そう思いながら、僕は夢の世界に落ちていった。
しおりを挟む
感想 570

あなたにおすすめの小説

隠れオメガの整備士は自由になりたい。なのに暴走する最強騎士を身体を張って止めたら、運命の番だとバレて過保護な専属契約を結ばされました

水凪しおん
BL
※オメガバース設定。激しい戦闘描写や、執着攻めによるマーキング描写、軽度の性的な接触の描写がありますので、15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 汚染された惑星を浄化する生体兵器『機装(ギア)』。 その搭乗者は優れた能力を持つ『アルファ』に限られ、彼らの精神を安定させる鎮静剤として『オメガ』が存在する世界。 整備士のエリアンは、オメガであることを隠し、ベータと偽って軍の最前線で働いていた。 オメガは道具のように扱われるこの社会で、自由を守るための必死の嘘だった。 だがある日、軍最強のエリートパイロット・クレイドの機装が暴走する事故に遭遇する。 死を覚悟して止めに入ったエリアンだったが、暴走する機体はなぜか彼にだけ反応し、沈静化した。 それは、隠していたオメガのフェロモンが、クレイドと強烈な『共鳴』を起こした瞬間だった。 「見つけた。俺の対になる存在を」 正体がバレたと戦慄するエリアンに対し、冷徹なはずのクレイドが向けたのは、処罰ではなく執着に満ちた熱い視線で……? 孤独なエリート騎士×身分を隠した健気な整備士。 星の命運と本能が交錯する、近未来SFオメガバース!

国民的アイドルの元ライバルが、俺の底辺配信をなぜか認知している

逢 舞夏
BL
「高校に行っても、お前には負けないからな!」 「……もう、俺を追いかけるな」  中三の卒業式。幼馴染であり、唯一無二のライバルだった蓮田深月(はすだ みつき)にそう突き放されたあの日から、俺の時間は止まったままだ。  あれから15年。深月は国民的アイドルグループのセンターとして芸能界の頂点に立ち、俺、梅本陸(うめもと りく)は、アパートでコンビニのサラミを齧る、しがない30歳の社畜になった。  誰にも祝われない30歳の誕生日。孤独と酒に酔った勢いで、俺は『おでん』という名の猫耳アバターを被り、VTuberとして配信を始めた。  どうせ誰も来ない。チラ裏の愚痴配信だ。  そう思っていた俺の画面を、見たことのない金額の赤スパ(投げ銭)が埋め尽くした。 『K:¥50,000 誕生日おめでとう。いい声だ、もっと話して』  『K』と名乗る謎の太客。  【執着強めの国民的アイドル】×【酒飲みツンデレおじさんV】

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...