真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

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第一章

ルーはいつでも優しい

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<sideアズール>

マックスが大きなかごに見たこともないような果物をたくさん持ってきてくれて、僕は驚いてしまった。
でも甘い匂いがしてるから絶対に美味しいに違いない!

以前の僕も果物は好きだったけれど、りんごとかバナナくらいしか食べたことがなかった。
でもこの世界だとずっと食べてみたかった果物がいっぱい食べられる。

この前、ルーと一緒に行ったケーキ屋さんも果物がいっぱい乗っててすっごくおいしかった。
知らなかったけど、ウサギさんってきっと果物が好きなんだろうな。

「まっくちゅ、こりぇこれどうちたのどうしたの?」

「祖父からアズールさまに贈り物ですよ」

「じぃー?」

「ええ。はい。そうです。その爺からの贈り物です」

ルーの爺はマックスのおじいちゃんなんだって。
聞いた時はびっくりしたけど、にっこりと微笑むマックスは、爺にすごく似ている。

うれちぃうれしい! あじゅーる、じぃー、ありあとありがとうちたいしたい

「えっ? 祖父にお礼を?」

「んー。あじゅーる、るーと、おちろおしろ、いくぅー!」

「あっ、ですが、今は祖父はお城にはいないのですよ」

その言葉にびっくりして尋ねると、お城の中で転んで足を捻挫しちゃったんだって。
だから、家で安静にしているらしい。

それを聞いたら、一人で病院のベッドに寝ていた時のことを思い出す。
お見舞いの人が来て、楽しそうに話をしているのがすごく羨ましかったっけ。

だから、誰か来てくれないかなっていつも思ってた。

爺は家にいるから、家族の人がずっとそばにいてくれるのかもしれないけど、でもお見舞いに行ったらきっと喜んでくれるはず!

「あじゅーる、まっくちゅの、おうち、いきちゃい!」

何度も何度も言い続けたけれど、マックスはルーに聞かないとわからないって。

だからルーが来てすぐに頼んだんだ。

爺のお見舞いに行きたいからってマックスが説明してくれたら、いいよって言ってくれた。

やっぱりルーって優しいな。

早速爺のところに連れて行ってもらうことになって、初めて馬車にも乗ったんだ!
おっきなお馬さんが馬車を引っ張ってて、窓から見える景色もすっごく楽しかった。

爺にお土産を持って行きたいって言ったら、どこかのお店に連れて行ってくれた。

ここは爺の好きなお菓子が売っているお店なんだって。

中を見たら、羊羹とかもなかとか美味しそうなものがいっぱい置いてある。
これ、ずっと食べてみたいって思ってたやつだ。

この前、ルーと一緒に食べた果物もすごく美味しかった。
だけど前の世界で一度だけ、まだ大部屋にいた時に隣の子のところにお見舞いに来ていたお母さんが、僕にどうぞってくれたどら焼きがすごく嬉しくて、びっくりするくらい美味しくて……食べ終わった時、もう二度と食べられないんだって……すごく美味しかったのに悲しかったんだ。

でも、今、僕の目の前にあれによく似たのがいっぱい並んでる。
どれも全部美味しそうで選べなくて、ルーと爺が好きなものを選んでもらった。

もしかしたら、爺と一緒に僕も食べられるかも……なんて、ちょっと図々しいことを考えてしまったことは内緒にしておかなくちゃ!
ルーに嫌われちゃうな。

お店の人がお菓子をくれる時に、お礼を言ったけど突然目の前からいなくなったと思ったら、下に座り込んでてびっくりした。
この前のお店でも同じようなことがあって、僕がお礼を言うとみんな目の前からいなくなっちゃうんだ。

最初はびっくりしたけど、ルーがこれが普通だからって教えてくれた。

どれが普通?
目の前からいなくなっちゃうことが?
それとも座り込んじゃうことが?
でもどうして?

そう思ったけど、僕の今の言葉じゃうまく聞けない。

でもルーが普通だと言っているのなら、もうそれでいいかと思ってしまう。
だって、ここの世界のルールみたいなものがあるのかもしれないしね。
僕はまだ外に出たばかりで何も知らないから、きっとこんなわからないルールがいっぱいあるんだろう。

これからゆっくりとルーに教えて貰えばいいか。

爺のいるお家に到着して、マックスがこっそりお部屋に案内してくれる。

「アズール、爺を驚かせるから上着の中に隠れていてくれ」

「あいっ」

誰かを驚かせるなんて初めて!!
なんだかすっごく楽しいっ!!

ドキドキしながら待っていると、僕の驚かす順番が来た。
ルーの合図で外に飛び出すと、爺の驚く顔が見えた。

ふふっ。大成功だ!

でも足に包帯を巻いているのが見える。
ああ、痛そう……。

「あじゅーる、じぃー、いちゃいいたい、いちゃい、ちんぱいしんぱいちちゃしたおみみゃいおみまいきちゃかっちゃのきたかったの

心配で爺にそういうと、爺は嬉しそうに笑って大丈夫だと教えてくれた。
本当によかった。

爺は以前の僕と違ってちゃんと治るんだ!
本当によかった……安心した。

ルーがお見舞いのお菓子を渡そうとするのをわがまま言って、僕があげたいと言ったけれどルーは怒ったりしなかった。
いつも優しく返してくれるから僕はいつもわがままを言ってしまうんだ。

なぜか今はわがままを言いたい気分の時が多くて自分でもわからない。
でも本当にいつもルーは優しいんだ。

ルーと一緒にお菓子を渡すと、爺は嬉しそうに笑っていた。
大好きなお菓子だって言ってたもんね。
きっと喜んでくれるだろうな。

ああ、僕もちょっとだけ食べてみたいな……。
あの時と同じ味なのかな。
すごく気になる……。

ああ、食べてみたいな……。

じーっと箱を見つめていたけど、爺は嬉しそうに箱を見つめるだけで開けようとしない。
気になって、

「じぃー、こりぇこれたべりゅたべる?」

と聞くと、一緒に食べようと言ってくれた。

嬉しいっ!
本当に嬉しいっ!

もしかして、僕が食べたいと思っていたのがわかったのかな?
爺ってすごいな。

このお菓子に合うお茶をマックスが淹れてくれることになったけど、すごく熱そう。
今まで熱いものはあんまり食べたことがないけど、これは飲めるのかな?

心配していたら、ルーがフウフウしてくれた。
これで飲めるはず!

嬉しくて口をつけたら、びっくりするくらい熱くて思わず

「あちっ」

って声が出た。

ルーが真っ青な顔をして、大丈夫かと聞いてくるから、

ちたした、あちち、ちた」

って正直にピリピリする舌を見せたらなぜかびっくりされちゃった。

どうしたのかなって思ってたら、突然ルーにギュッて抱きしめられて驚いた。

「るー、どうちたの?」

「えっ、いや……あの、アズールを火傷させても申し訳なかったなって……」

いやいや、僕がちゃんと飲めなかっただけでルーはちゃんとフウフウしてくれたし。
全然ルーのせいじゃないのに、それがうまく言えないのが辛い。

こう言う時ってどうしたらいいんだっけ?

そういえば、前の世界でも同じようなことがあったな。
いつもは温い食事だったのに一度だけ熱々で来たことがあって、汁物を飲んで今と同じように舌先がピリピリしたことがあった。

師長さんに舌先が痛いって言ったら、

――口の中は唾液ですぐに治るから大丈夫。これくらいの火傷なら舐めておけば大丈夫よ。

って教えてくれた。

それからずっと気になって自分でぺろぺろしてたら、いつの間にか治ってて感動したんだ。

そうそう、舐めてれば治るんだった!
ちゃんと覚えてて偉いな、僕。

だから、ルーに舐めてたら治るから大丈夫だよって言ったら安心してくれると思って、

「るー、ぺろぺろちたら、なおりゅなおる

って言ったら、ルーはなぜか目を丸くして

「えっ? あ、アズール、な、舐めても、いいのか?」

と尋ねてきた。

「んー、らいろーぶだいじょうぶ!」

僕が自信満々にそう答えながら、自分で舌を舐めようと口を開けたら、突然僕の口の中にルーの長い舌が入り込んできた。

「んんっ……んっ」

ピチャピチャとまるでこのまま舌を食べられるんじゃないかと思うくらい、ルーの長い舌が僕の舌に絡みついて、火傷して痛かったところを舐めていく。

あ、もしかして、僕の火傷を早く治そうとしてくれてるの?

そっか、そうなんだ。
やっぱりルーって優しいな。

ルーが治してくれている間、邪魔しないように舌をずっと舐められていると、

「ルーディーさま。その辺でおやめください!」

と爺の大きな声が聞こえた。

その声にルーの舌の動きがパッと止まって、僕の舌から一気に離れていく。

「アズールさまのお顔がルーディーさまの涎まみれになっていますよ」

「うわぁっ! アズール、すまないっ!」

ルーは慌ててタオルで僕の顔を拭いてくれた。
長い舌で舐めてくれたんだから、別にルーの涎くらい気にならないのに。
それよりも舌の痛みがなくなっていることの方が嬉しい。

「アズール、私のことを嫌いになってはいないか?」

「んっ? どうちてどうして? るー、ぺろぺろちたから、いたい、ない」

「――っ!! アズールっ!! ありがとう! ありがとう!!」

ルーのおかげで舌のピリピリする痛みも無くなったのに、どうしてルーがお礼を言うんだろう?
僕は不思議に思いながらも、痛くなくなった舌を自分でぺろっと舐めた。
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