55 / 288
第一章
甘やかな誘惑
しおりを挟む
<sideルーディー>
アズールの可愛い舌を見た瞬間、理性を飛ばしてしまいそうになりながらも爺とマクシミリアンのことを思い出し、咄嗟に可愛いアズールを胸に隠した。
アズールにそんな意図がないことはわかっている。
ただ単純に火傷したところを見せてくれただけだ。
私が勝手にそれを見て昂ってしまっただけなのだ。
そして、それを爺とマクシミリアンには見せたくないと思ってしまったのだ。
きっと爺にもマクシミリアンにも私の思いは理解してもらえるはずだ。
可愛い舌を見た上に、アズールと密着している今の状況でズボンの中はとんでもない状況になろうとしているが、それを必死に抑えつける。
そして、必死に冷静を装って、アズールに火傷をさせて申し訳ないと詫びた。
大丈夫だと言ったくせに火傷をさせるなんて文句を言われても仕方のないことだ。
だが、アズールの反応は私の予想は大いにかけ離れていた。
「るー、ぺろぺろちたら、なおりゅ」
あろうことか、キラキラとした目でそんなことをサラリと言ってきたのだ。
今、アズールはなんといった?
私が、アズールが火傷をした舌を舐めれば、治る。
私が舐めれば治る。
私が……。
ゴクリと喉がなる。
よ、よし。
アズールがそう望むなら、願いを叶えてやるのが婚約者としての務めだ。
い、いや、ルーディー。
待つんだ!
相手はアズール。
何かの聞き間違いだと言うことも有り得る。
もう一度きちんと確認しなければ。
そうだろう?
昂る気持ちを抑え、声を震わせながら
「あ、アズール、な、舐めても、いいのか?」
と尋ねると、
「んー、らいろーぶ!」
と嬉しそうに、かつ自信満々に言い切った。
これは確実だ!
勘違いではない!
そう頭が認識した瞬間、私の舌がアズールの口内に向かって一目散に突っ込んでいった。
アズールは口を開けたまま動きもせず、ただ私の舌の動くままに自分の舌を舐められている。
ああ、甘い。
なんという甘さだろう。
アズールに舐められ、手のひらについたものは幾度となく舐めとってきたが、アズールの口内にあるものはそれよりもずっとずっと甘い。
この前のケーキの甘ったるさとは全く違う。
ずっと舐めていたい甘やかな味。
ああ、これほどの甘味がここにあったか……。
もう、一滴残らずアズールの唾液を飲み干してやれ!
それをアズールも望んでいるぞ!
そうでもなければ舐めて欲しいなどと言わないはずだ!
そんな悪魔の囁きを感じながら、私はひたすらに舌を舐め尽くした。
ピチャピチャと滴る涎の音さえも興奮する。
ああ、このまま時が止まればいい。
私は最初の目的も忘れてひたすら舐め続けた。
「ルーディーさま。その辺でおやめください!」
爺の声にハッと我に返り、アズールの口から舌を離したが、自分が何をしてしまったのか、理解するまでに時間を要した。
「アズールさまのお顔がルーディーさまの涎まみれになっていますよ」
その声に急いでアズールに目をやれば、アズールの口元どころか、頬や顎からも私の卑しい涎が滴り落ちているのが見える。
慌ててアズールに詫びを入れながら、さっとマクシミリアンが手渡してくれた濡れタオルで、私の涎まみれになったアズールの顔を拭った。
こんな狼獣人から長い舌で顔を舐めまわされるなんてこと、いくら私を好きだと言ってくれるアズールであっても、恐ろしい体験だったに違いない。
もしかしたら食われると思ったかもしれない。
いくら舐めていいと言われたとしてもこれはやりすぎだ。
流石に嫌われてしまったかもしれないと落ち込みながら尋ねたが、アズールはきょとんとした顔で、私が舐めたから痛くなくなったと言ってくれた。
ああ、なんということだ!
アズールは天使だな。
私の全てを許してくれる。
私はアズールのために、もっと理性を強く保てるようにしなければな。
<sideフィデリオ>
図らずも、ルーディーさまとアズールさまの初めての口付けを目撃することになってしまった。
正確には口付けではなく、アズールさまが一方的に舐められただけだが、唾液の交換をしたことに間違いない。
これは陛下とヴォルフ公爵に報告案件だな。
それにしても、まさかアズールさまの方からルーディーさまをお誘いになるような言葉を仰られるとは……。
いや、本当のところは、私の中ではほんの少し、アズールさま自身が舐めるというのをルーディーさまに報告しただけのような気もするが、あれはたとえ勘違いだったとしてもルーディーさまを責められはしないだろう。
あれを愛しい存在に言われれば、絶対にそう思うに決まっている。
とにかく、唾液の交換をなさったお二人だ。
結びつきは今までよりさらに強くなった。
そして、これからより一層、ルーディーさまの試練の日々が続く。
それにルーディーさまが打ち勝てるかが重要になるだろう。
アズールさまが成人するまであと17年。
そこまで持たせられるように見守り続けねば。
マクシミリアン!
これからお前の仕事っぷりが重要になってくる。
しっかりと頑張るのだぞ!
マクシミリアンに目で訴えると、マクシミリアンは少し身体を強張らせながらも、強くしっかりとした眼差しで私を見つめ返した。
アズールの可愛い舌を見た瞬間、理性を飛ばしてしまいそうになりながらも爺とマクシミリアンのことを思い出し、咄嗟に可愛いアズールを胸に隠した。
アズールにそんな意図がないことはわかっている。
ただ単純に火傷したところを見せてくれただけだ。
私が勝手にそれを見て昂ってしまっただけなのだ。
そして、それを爺とマクシミリアンには見せたくないと思ってしまったのだ。
きっと爺にもマクシミリアンにも私の思いは理解してもらえるはずだ。
可愛い舌を見た上に、アズールと密着している今の状況でズボンの中はとんでもない状況になろうとしているが、それを必死に抑えつける。
そして、必死に冷静を装って、アズールに火傷をさせて申し訳ないと詫びた。
大丈夫だと言ったくせに火傷をさせるなんて文句を言われても仕方のないことだ。
だが、アズールの反応は私の予想は大いにかけ離れていた。
「るー、ぺろぺろちたら、なおりゅ」
あろうことか、キラキラとした目でそんなことをサラリと言ってきたのだ。
今、アズールはなんといった?
私が、アズールが火傷をした舌を舐めれば、治る。
私が舐めれば治る。
私が……。
ゴクリと喉がなる。
よ、よし。
アズールがそう望むなら、願いを叶えてやるのが婚約者としての務めだ。
い、いや、ルーディー。
待つんだ!
相手はアズール。
何かの聞き間違いだと言うことも有り得る。
もう一度きちんと確認しなければ。
そうだろう?
昂る気持ちを抑え、声を震わせながら
「あ、アズール、な、舐めても、いいのか?」
と尋ねると、
「んー、らいろーぶ!」
と嬉しそうに、かつ自信満々に言い切った。
これは確実だ!
勘違いではない!
そう頭が認識した瞬間、私の舌がアズールの口内に向かって一目散に突っ込んでいった。
アズールは口を開けたまま動きもせず、ただ私の舌の動くままに自分の舌を舐められている。
ああ、甘い。
なんという甘さだろう。
アズールに舐められ、手のひらについたものは幾度となく舐めとってきたが、アズールの口内にあるものはそれよりもずっとずっと甘い。
この前のケーキの甘ったるさとは全く違う。
ずっと舐めていたい甘やかな味。
ああ、これほどの甘味がここにあったか……。
もう、一滴残らずアズールの唾液を飲み干してやれ!
それをアズールも望んでいるぞ!
そうでもなければ舐めて欲しいなどと言わないはずだ!
そんな悪魔の囁きを感じながら、私はひたすらに舌を舐め尽くした。
ピチャピチャと滴る涎の音さえも興奮する。
ああ、このまま時が止まればいい。
私は最初の目的も忘れてひたすら舐め続けた。
「ルーディーさま。その辺でおやめください!」
爺の声にハッと我に返り、アズールの口から舌を離したが、自分が何をしてしまったのか、理解するまでに時間を要した。
「アズールさまのお顔がルーディーさまの涎まみれになっていますよ」
その声に急いでアズールに目をやれば、アズールの口元どころか、頬や顎からも私の卑しい涎が滴り落ちているのが見える。
慌ててアズールに詫びを入れながら、さっとマクシミリアンが手渡してくれた濡れタオルで、私の涎まみれになったアズールの顔を拭った。
こんな狼獣人から長い舌で顔を舐めまわされるなんてこと、いくら私を好きだと言ってくれるアズールであっても、恐ろしい体験だったに違いない。
もしかしたら食われると思ったかもしれない。
いくら舐めていいと言われたとしてもこれはやりすぎだ。
流石に嫌われてしまったかもしれないと落ち込みながら尋ねたが、アズールはきょとんとした顔で、私が舐めたから痛くなくなったと言ってくれた。
ああ、なんということだ!
アズールは天使だな。
私の全てを許してくれる。
私はアズールのために、もっと理性を強く保てるようにしなければな。
<sideフィデリオ>
図らずも、ルーディーさまとアズールさまの初めての口付けを目撃することになってしまった。
正確には口付けではなく、アズールさまが一方的に舐められただけだが、唾液の交換をしたことに間違いない。
これは陛下とヴォルフ公爵に報告案件だな。
それにしても、まさかアズールさまの方からルーディーさまをお誘いになるような言葉を仰られるとは……。
いや、本当のところは、私の中ではほんの少し、アズールさま自身が舐めるというのをルーディーさまに報告しただけのような気もするが、あれはたとえ勘違いだったとしてもルーディーさまを責められはしないだろう。
あれを愛しい存在に言われれば、絶対にそう思うに決まっている。
とにかく、唾液の交換をなさったお二人だ。
結びつきは今までよりさらに強くなった。
そして、これからより一層、ルーディーさまの試練の日々が続く。
それにルーディーさまが打ち勝てるかが重要になるだろう。
アズールさまが成人するまであと17年。
そこまで持たせられるように見守り続けねば。
マクシミリアン!
これからお前の仕事っぷりが重要になってくる。
しっかりと頑張るのだぞ!
マクシミリアンに目で訴えると、マクシミリアンは少し身体を強張らせながらも、強くしっかりとした眼差しで私を見つめ返した。
337
お気に入りに追加
5,346
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!
藤なごみ
ファンタジー
簡易説明
転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です
詳細説明
生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。
そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。
そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。
しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。
赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。
色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。
家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。
※小説家になろう様でも投稿しております
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる