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両親への紹介
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少し遅くなった。
航はまだ頼んだ仕事をしているだろうか?
『ただいま』と声をかけたが航の姿が見えない。
心配になり急いで中に入ると、玄関へと来ようとしている航の姿があった。
何かあったのかと思ったが、どうやら渡したパソコンでネット記事を読んでいたようだ。
まさか前の会社でも調べていたのかと心配したが、画面には蓮見と朝陽くんの結婚に関する記事が出ていた。
そうか、これを読んでいたのか。
俺たちの芸能事務所にどんな人が所属しているのかと調べたら朝陽くんが出てきたと言って驚いていたが、芸能に疎い航でさえ朝陽くんのことは知っているということに俺は改めて朝陽くんの人気っぷりを知ることになった。
嬉しそうに蓮見と朝陽くんの記事をみる航に、蓮見と朝陽くんが出会った頃のことや蓮見がどれほど朝陽くんにベタ惚れなのか教えてやると、『いいな』と羨ましがっていた。
だから俺も航に自分の気持ちを伝えることにした。
「私も航と出逢うまでは誰かを本気で好きになるなんてことあり得ないと思っていたんだ。
蓮見と南條くんのようにお互いを愛し愛される関係にまさか自分が出逢えるなんて思っても見なかった。
だから、航に出逢って蓮見が言ってたことがその時やっと理解できたんだ。
運命の相手は出逢った瞬間わかるんだって。
航に出逢って、絶対離さないってあの時もう決めてたんだ。
だから、今こうして航が傍にいてくれることが私にとって幸せ以外の何ものでもないよ」
航が傍にいてくれることの幸せを噛み締めながら抱きしめると、航も嬉しそうに背中に手を回してくれた。
ああ、本当に幸せ者だな。俺は。
今日蓮見と浅香に会って、『浅香が大切な人ができたと言い出したから俺も自慢したくて航のことを話してきた』と伝えると目を丸くして驚いていたが、大きな目には紹介してくれて嬉しいという気持ちが溢れていた。
そのことにホッとしながら、『今度一緒に会ってほしい』と頼むと少し緊張しているようだったが『はい、ぜひ』と言ってくれた。
ついでに浅香の大切な人が実は男性でしかも蓮見の兄貴なんだと教えてやると、かなり驚いていた。
まぁそれはそうだろうな。
航が蓮見兄弟に興味を持たないように、兄弟揃って独占欲が強く、蓮見の兄貴に至っては浅香をストーカーのように見張っていて俺のことも警戒していたと話すと流石の航もドン引きしているように見えた。
しまった、驚かせすぎたかと慌てて航は大丈夫だからとフォローしたが小さく『うん』と頷いていて少し心配になってしまった。
その後俺は話題を変えるようにそういえばデータの方はどうなったかと声をかけると、航はすぐに仕事モードの顔になりさっとパソコンを広げ作り終わったものを見せてくれた。
正直想像していた以上の出来栄えに驚きつつも、これなら俺の秘書として十分やってもらえそうだと嬉しい誤算を喜びながら航の頭を撫で褒め続けた。
航はおそらくこの5年、仕事で褒められたことは皆無なのだ。
これだけの能力があるのに飼い殺しにされ心身ともに相当辛かったに違いない。
そもそもあんな梅崎のような奴が上司でいる会社で航が仕事をできるわけがなかったんだ。
思いっきり褒めて伸ばしてやると航は目を輝かせながら次への意欲を漲らせていた。
翌日朝早くから砂川が家へとやって来た。
航のまとめたデータを受け取りに来ると言う名目だったが、昨日の梅崎との件をまとめた資料と梅崎から得た航への慰謝料を正式に航のものにするための手続きを安慶名さんに頼むことが目的だ。
梅崎との対峙に浅香と周平さんが参加したことに驚いている様子だったが、浅香が咄嗟についた嘘には砂川も笑っていた。
全ての資料を手に『お預かりします。平松さんの件はお任せください』と言って空港へと向かっていった。
その後俺が航を連れ向かった先は親父のやっている病院。
借りていた電動車椅子を返し、航の足を診察してもらうついでに航を紹介するのが目的だ。
車に車椅子を詰め込み、病院に到着するとすぐに頼んでいた病院スタッフたちが車椅子の回収に来てくれた。
てっきりここでも車椅子に乗るんだろうと思っていた航はキョトンとした顔をしていたが、2人でいる時に航を車椅子なんかに乗せるわけないだろう。
なんのために俺がいるんだ、勿体無い。
俺は診察が終わるまでは歩かせるわけにはいかないと言って航を抱きかかえ病院へと入った。
『見て! 姫抱っこされてる子めちゃくちゃ可愛いっ!!』
『うわ、ほんとだっ! しかもキュッと抱きついててちょっと震えてる』
『可愛すぎるんだけど!! うさぎ? りす? 可愛いよ~!!』
『代わりに抱っこしたいわ~!!』
『ほんと、柔らかそうだよな』
『ひぃっ、俺今あのイケメンに睨まれたんだけど』
『お前が抱っこしたいとか言うからだろ! あんなのと張り合っても負けるだけだぞ』
時々俺が病院によっても目立ちはするが航を連れてると余計だな。
変なのがすぐに航に目をつけやがる。
少しでも触れようとしてみろ! 承知しないからな。
待合室のざわざわとした雰囲気に航が俺の腕から下りようとしたのを必死に止め、俺はさっさと診察してもらおうとカーテンを開け診察室へと向かった。
元々予約している時間なのだから問題はないはずだ。
白いカーテンを開け診察室へ入るとその音に親父がこっちを向いた瞬間、航の口から
『かっこいい……』という言葉が漏れ聞こえた。
かっこいい?
親父が??
いくら相手が親父とはいえ、航が俺の前で他の奴をカッコいいなんていうのは聞きたくない。
「航、浮気か? しかも親父に」
つい咎めるように言ってしまったが、航は俺に似ているからと言ったんだ。
それならまぁ……と少しは思ったが、それでもカッコいいなんて言葉は俺だけにしてもらいたい。
2人でそう話していると、大きな咳払いの音に航の身体がビクリと震えた。
親父め、少し話していただけで航を驚かせるなよ。
そう思ったがまずは診察をしてもらわないとな。
航を抱いたまま診察用の椅子に座ると『お前は座らなくてもいい』と言われたがスルーしてやった。
ズボンを捲り足首を見せ、診察してもらうとどうやら捻挫はもう治っているようだった。
俺もわかってはいたが、大っぴらに航を抱きかかえられなくなったのは寂しい。
『もう歩いてもいい』と言われて航が嬉しそうにお礼をいうと、親父が航の笑顔に一瞬で落ちたのがわかった。
「ふーん、なるほどね」
意味深な笑みを浮かべながら俺を見てくる。
俺が航のどこに惚れたのかおそらく気がついたんだろう。
親父は俺にも見せたことがないような笑顔を見せ、
「航くん……だったかな。君みたいな息子ができるなんて私も嬉しいよ」
と航の目を見ていうと航は『許してもらえるんですか? 僕、祐悟さんのそばにいていいんですか?』と信じられないという声と嬉しそうな声が混ざったようなそんな声をあげた。
許すも何も俺には航しかいないんだ!
そう言ってやると、航は蓮見たちのようにみんなに祝福されたいと言ってくれた。
ああ、もうなんでこの子はこんなにも俺が喜ぶようなことばかり言ってくれるのだろう。
俺は航をギュッと抱きしめながら、航に手を差し伸べようとしていた親父に
『親父、航は俺のだからな』と釘を刺してやると『祐悟、よかったな』と言ってくれた。
親父は俺が初めて人を本気で好きになったことに気がついたんだろうな。
こうやってしみじみ言われると少し恥ずかしい気持ちもする。
今日は親父だけにして、母さんに会わせるのは今度にしようかと思っていると、母さんが突然診察室にやってきた。
「わぁーっ、なに、この子!! 可愛いっ!!」
航を一目見るなり、俺が抱きしめている上から重なるように航に抱きついてきて、航の小さな顔が母さんの胸で押し潰されてしまっている。
苦しそうにもがく航を必死に母さんから引き離し奪い返し、『俺のだから』と言ってやったが、
「何よ、ケチ! 祐悟のなら私にも息子でしょ。私、こういう可愛い息子が欲しかったのよね」
と航に満面の笑みを向ける。
ああ、そうだった。
この人は可愛いもの好きなんだよな。
俺がデカくなりすぎたって、もっと可愛い息子が欲しかったんだって何度言われたことか……。
そう考えたら母さんにとって理想通りの息子がやっとできたわけか。
親父も航のことは気に入ったみたいだし、航さえよければ養子縁組してもいいかもしれないな。
俺の息子になるよりは親父たちの息子になったほうがいい場合も出てくるかもな。
航と兄弟になってしまうのは少し考えてしまうがまぁそれもおいおい考えるとしよう。
母さんにまた今度家に連れて行くからと約束をして診察室を出ようとすると、
「祐悟。アレ用意しておいたぞ」
と親父が声をかけてくれた。
よし、ちょうどいいな。
今日きてよかった。
『ありがとう』とお礼を言って、俺は診察室を後にした。
会計の時にこっそりとスタッフから親父が用意してくれていたアレを受け取り、俺は航を車に乗せ
『テリフィックオフィス』へと向かった。
航はまだ頼んだ仕事をしているだろうか?
『ただいま』と声をかけたが航の姿が見えない。
心配になり急いで中に入ると、玄関へと来ようとしている航の姿があった。
何かあったのかと思ったが、どうやら渡したパソコンでネット記事を読んでいたようだ。
まさか前の会社でも調べていたのかと心配したが、画面には蓮見と朝陽くんの結婚に関する記事が出ていた。
そうか、これを読んでいたのか。
俺たちの芸能事務所にどんな人が所属しているのかと調べたら朝陽くんが出てきたと言って驚いていたが、芸能に疎い航でさえ朝陽くんのことは知っているということに俺は改めて朝陽くんの人気っぷりを知ることになった。
嬉しそうに蓮見と朝陽くんの記事をみる航に、蓮見と朝陽くんが出会った頃のことや蓮見がどれほど朝陽くんにベタ惚れなのか教えてやると、『いいな』と羨ましがっていた。
だから俺も航に自分の気持ちを伝えることにした。
「私も航と出逢うまでは誰かを本気で好きになるなんてことあり得ないと思っていたんだ。
蓮見と南條くんのようにお互いを愛し愛される関係にまさか自分が出逢えるなんて思っても見なかった。
だから、航に出逢って蓮見が言ってたことがその時やっと理解できたんだ。
運命の相手は出逢った瞬間わかるんだって。
航に出逢って、絶対離さないってあの時もう決めてたんだ。
だから、今こうして航が傍にいてくれることが私にとって幸せ以外の何ものでもないよ」
航が傍にいてくれることの幸せを噛み締めながら抱きしめると、航も嬉しそうに背中に手を回してくれた。
ああ、本当に幸せ者だな。俺は。
今日蓮見と浅香に会って、『浅香が大切な人ができたと言い出したから俺も自慢したくて航のことを話してきた』と伝えると目を丸くして驚いていたが、大きな目には紹介してくれて嬉しいという気持ちが溢れていた。
そのことにホッとしながら、『今度一緒に会ってほしい』と頼むと少し緊張しているようだったが『はい、ぜひ』と言ってくれた。
ついでに浅香の大切な人が実は男性でしかも蓮見の兄貴なんだと教えてやると、かなり驚いていた。
まぁそれはそうだろうな。
航が蓮見兄弟に興味を持たないように、兄弟揃って独占欲が強く、蓮見の兄貴に至っては浅香をストーカーのように見張っていて俺のことも警戒していたと話すと流石の航もドン引きしているように見えた。
しまった、驚かせすぎたかと慌てて航は大丈夫だからとフォローしたが小さく『うん』と頷いていて少し心配になってしまった。
その後俺は話題を変えるようにそういえばデータの方はどうなったかと声をかけると、航はすぐに仕事モードの顔になりさっとパソコンを広げ作り終わったものを見せてくれた。
正直想像していた以上の出来栄えに驚きつつも、これなら俺の秘書として十分やってもらえそうだと嬉しい誤算を喜びながら航の頭を撫で褒め続けた。
航はおそらくこの5年、仕事で褒められたことは皆無なのだ。
これだけの能力があるのに飼い殺しにされ心身ともに相当辛かったに違いない。
そもそもあんな梅崎のような奴が上司でいる会社で航が仕事をできるわけがなかったんだ。
思いっきり褒めて伸ばしてやると航は目を輝かせながら次への意欲を漲らせていた。
翌日朝早くから砂川が家へとやって来た。
航のまとめたデータを受け取りに来ると言う名目だったが、昨日の梅崎との件をまとめた資料と梅崎から得た航への慰謝料を正式に航のものにするための手続きを安慶名さんに頼むことが目的だ。
梅崎との対峙に浅香と周平さんが参加したことに驚いている様子だったが、浅香が咄嗟についた嘘には砂川も笑っていた。
全ての資料を手に『お預かりします。平松さんの件はお任せください』と言って空港へと向かっていった。
その後俺が航を連れ向かった先は親父のやっている病院。
借りていた電動車椅子を返し、航の足を診察してもらうついでに航を紹介するのが目的だ。
車に車椅子を詰め込み、病院に到着するとすぐに頼んでいた病院スタッフたちが車椅子の回収に来てくれた。
てっきりここでも車椅子に乗るんだろうと思っていた航はキョトンとした顔をしていたが、2人でいる時に航を車椅子なんかに乗せるわけないだろう。
なんのために俺がいるんだ、勿体無い。
俺は診察が終わるまでは歩かせるわけにはいかないと言って航を抱きかかえ病院へと入った。
『見て! 姫抱っこされてる子めちゃくちゃ可愛いっ!!』
『うわ、ほんとだっ! しかもキュッと抱きついててちょっと震えてる』
『可愛すぎるんだけど!! うさぎ? りす? 可愛いよ~!!』
『代わりに抱っこしたいわ~!!』
『ほんと、柔らかそうだよな』
『ひぃっ、俺今あのイケメンに睨まれたんだけど』
『お前が抱っこしたいとか言うからだろ! あんなのと張り合っても負けるだけだぞ』
時々俺が病院によっても目立ちはするが航を連れてると余計だな。
変なのがすぐに航に目をつけやがる。
少しでも触れようとしてみろ! 承知しないからな。
待合室のざわざわとした雰囲気に航が俺の腕から下りようとしたのを必死に止め、俺はさっさと診察してもらおうとカーテンを開け診察室へと向かった。
元々予約している時間なのだから問題はないはずだ。
白いカーテンを開け診察室へ入るとその音に親父がこっちを向いた瞬間、航の口から
『かっこいい……』という言葉が漏れ聞こえた。
かっこいい?
親父が??
いくら相手が親父とはいえ、航が俺の前で他の奴をカッコいいなんていうのは聞きたくない。
「航、浮気か? しかも親父に」
つい咎めるように言ってしまったが、航は俺に似ているからと言ったんだ。
それならまぁ……と少しは思ったが、それでもカッコいいなんて言葉は俺だけにしてもらいたい。
2人でそう話していると、大きな咳払いの音に航の身体がビクリと震えた。
親父め、少し話していただけで航を驚かせるなよ。
そう思ったがまずは診察をしてもらわないとな。
航を抱いたまま診察用の椅子に座ると『お前は座らなくてもいい』と言われたがスルーしてやった。
ズボンを捲り足首を見せ、診察してもらうとどうやら捻挫はもう治っているようだった。
俺もわかってはいたが、大っぴらに航を抱きかかえられなくなったのは寂しい。
『もう歩いてもいい』と言われて航が嬉しそうにお礼をいうと、親父が航の笑顔に一瞬で落ちたのがわかった。
「ふーん、なるほどね」
意味深な笑みを浮かべながら俺を見てくる。
俺が航のどこに惚れたのかおそらく気がついたんだろう。
親父は俺にも見せたことがないような笑顔を見せ、
「航くん……だったかな。君みたいな息子ができるなんて私も嬉しいよ」
と航の目を見ていうと航は『許してもらえるんですか? 僕、祐悟さんのそばにいていいんですか?』と信じられないという声と嬉しそうな声が混ざったようなそんな声をあげた。
許すも何も俺には航しかいないんだ!
そう言ってやると、航は蓮見たちのようにみんなに祝福されたいと言ってくれた。
ああ、もうなんでこの子はこんなにも俺が喜ぶようなことばかり言ってくれるのだろう。
俺は航をギュッと抱きしめながら、航に手を差し伸べようとしていた親父に
『親父、航は俺のだからな』と釘を刺してやると『祐悟、よかったな』と言ってくれた。
親父は俺が初めて人を本気で好きになったことに気がついたんだろうな。
こうやってしみじみ言われると少し恥ずかしい気持ちもする。
今日は親父だけにして、母さんに会わせるのは今度にしようかと思っていると、母さんが突然診察室にやってきた。
「わぁーっ、なに、この子!! 可愛いっ!!」
航を一目見るなり、俺が抱きしめている上から重なるように航に抱きついてきて、航の小さな顔が母さんの胸で押し潰されてしまっている。
苦しそうにもがく航を必死に母さんから引き離し奪い返し、『俺のだから』と言ってやったが、
「何よ、ケチ! 祐悟のなら私にも息子でしょ。私、こういう可愛い息子が欲しかったのよね」
と航に満面の笑みを向ける。
ああ、そうだった。
この人は可愛いもの好きなんだよな。
俺がデカくなりすぎたって、もっと可愛い息子が欲しかったんだって何度言われたことか……。
そう考えたら母さんにとって理想通りの息子がやっとできたわけか。
親父も航のことは気に入ったみたいだし、航さえよければ養子縁組してもいいかもしれないな。
俺の息子になるよりは親父たちの息子になったほうがいい場合も出てくるかもな。
航と兄弟になってしまうのは少し考えてしまうがまぁそれもおいおい考えるとしよう。
母さんにまた今度家に連れて行くからと約束をして診察室を出ようとすると、
「祐悟。アレ用意しておいたぞ」
と親父が声をかけてくれた。
よし、ちょうどいいな。
今日きてよかった。
『ありがとう』とお礼を言って、俺は診察室を後にした。
会計の時にこっそりとスタッフから親父が用意してくれていたアレを受け取り、俺は航を車に乗せ
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