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恋人のルール
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初日からバタバタさせてごめんなんて謝られたけれど、僕は慎一さんと恋人らしいことができたことが嬉しかったと素直に自分の気持ちを告げた。
「これからは毎日一緒だから、いつでも恋人らしいことができるよ」
毎日、一緒……それってすごく嬉しい。
いつも病院で会えるのが嬉しかったけど、帰っていく慎一さんを見送るのが寂しかったから。
「毎日、一緒……慎一さんとずっと一緒にいられるって、嬉しいですね」
心から気持ちを込めて伝えると、慎一さんも嬉しいと言ってくれて、ベッドに誘ってくれた。
これから一緒に寝るんだ。ドキドキする。
おいでと手を伸ばされてそっとその手を取り、慎一さんの隣に横たわった。
本当は少し距離を取らないと慎一さんが狭いのかもしれない。でも慎一さんの温もりと匂いを感じたくて吸い寄せられるように慎一さんの胸元に近づいた。
ふわっといい匂いがしてこれだけで安心して眠れそう。
この場所が最高に落ち着く場所だな。
「明日はゆっくり起きていいからね」
耳元で優しく囁かれて、赤ちゃんの寝かしつけのように背中をトントンと優しく叩かれて、その落ち着くリズムにあっという間に深い眠りに落ちていった。
夢の中でも慎一さんの匂いに包まれる。
ブワッと強い匂いを感じて幸せな気分で今までにないほど熟睡した気がする。
それからどれくらい経ったんだろう。感覚的にはもう朝になっている気がする。
目を覚ましてもなお、夢の中でも感じてた匂いに包まれて最高に幸せな朝を迎えたな。
「こうやって朝起きれるのって、幸せだな……」
「俺も伊月くんを腕に抱いたまま目覚められるのは幸せだよ」
「わっ! 起きてたんですか?」
まさか慎一さんが起きているとは思わなかった。
毎日こんな朝を迎えられたら本当に幸せだろうなと思った気持ちがつい漏れて、聞かれてしまって恥ずかしい。
顔も赤くなっているのがわかるけど、慎一さんは僕のこんな気持ちを嬉しいと言ってくれた。
ああ、なんて優しい人なんだろう。こんなに優しい人が恋人だなんて僕は本当に幸せすぎる。
「起きる? もう少し寝ててもいいよ」
「あ、ぐっすり寝たので大丈夫です」
「じゃあ、こっちの洗面所使っていいよ。俺はもう一つの洗面所で身支度を整えておくから」
さっとベッドから出ていく慎一さんをぼーっと見送って、慌てて飛び起きて洗面所に向かった。
朝なのに格好良すぎる慎一さんについ見惚れちゃった。
一人暮らしの時は洗顔するのもほとんど水だけだった。
一度石鹸で顔を洗ったらカピカピに乾燥して大変で、仕方なくなけなしのお金でちょこっと高いのを買ってほんの少しを一生懸命泡立てて使っていたから顔を洗うだけですごく時間がかかっていた。
でもその時の癖で慎一さんに泡洗顔というものをもらってもつい少しずつ丁寧に洗ってしまう。
歯磨きも同じ。あまりたくさんつけるのがもったいなくて少しの歯磨き粉で時間をかけて磨いていたせいか、つい歯磨きの時間が長くなってしまう。
ようやく洗顔と歯磨きを終えて洗面所を出ると、慎一さんはもうキッチンにいた。
「今日は出かけるから、朝食は軽めにしておこう。美味しいランチとスイーツを食べるからね」
そう言いながら手が動いている。すごいな。
でも外でランチか……楽しそう!
あ、でもランチ代……。
つい心の声が漏れてしまうと、
「そんなこと気にしないでいいって言っただろう? 俺たちはもう恋人だから、年上が全部払うものだよ」
と言われて驚いてしまう。
恋人ってそんなルールがあるんだ。知らなかった。
でもルールは守ったほうがいいんだよね。
「だから、なんでも甘えてくれた方が嬉しい。ねっ」
優しく笑顔を向けられながらそう言われて僕は頷いた。
慎一さんに甘える、か……。僕が甘えてもいいのかな。
まだ慣れないけれど、慎一さんに甘えられるように頑張ろう!
軽めだと言っていた朝食はパンケーキとフルーツとヨーグルト。
もうこれだけで僕にとっては豪華でしかない。
パンケーキが自宅で作れるなんて……すごいな。
そのパンケーキを食べるとあまりにもふわふわで驚いてしまう。
「あっ、生クリームがついてるよ」
どうやらがっつきすぎて口に生クリームがついてしまったみたい。
僕が食いしん坊だと慎一さんに思われたのが恥ずかしくて、慌てて取ろうとしたけれど僕が取るよりも先に慎一さんの顔が近づいてきて、
「ここだよ」
と言われたかと思ったら、唇を舐められる感触がした。
「――っ、し、慎一さんっ」
「どうかした?」
びっくりして声をあげたけれど、慎一さんに何かあった? みたいな表情を向けられて訳がわからなくなってきた。
「あ、あの……クリーム、唇で、慎一さんが……」
必死に説明をしようとした僕に慎一さんは恋人になったら唇で取るのが普通なんだと教えてくれた。
そう、なんだ……。
さっきの支払いのことといい、恋人にはいろんなルールがあるものなんだな。
僕は何も知らないんだ。
「もし、俺の唇についてても伊月くんが唇で取ってくれたらいいからね」
僕が唇で慎一さんのをとってあげる……。うわぁ、それ楽しそう!
それから食事の間、慎一さんの唇につかないかなと気になってしまう自分がいた。
「これからは毎日一緒だから、いつでも恋人らしいことができるよ」
毎日、一緒……それってすごく嬉しい。
いつも病院で会えるのが嬉しかったけど、帰っていく慎一さんを見送るのが寂しかったから。
「毎日、一緒……慎一さんとずっと一緒にいられるって、嬉しいですね」
心から気持ちを込めて伝えると、慎一さんも嬉しいと言ってくれて、ベッドに誘ってくれた。
これから一緒に寝るんだ。ドキドキする。
おいでと手を伸ばされてそっとその手を取り、慎一さんの隣に横たわった。
本当は少し距離を取らないと慎一さんが狭いのかもしれない。でも慎一さんの温もりと匂いを感じたくて吸い寄せられるように慎一さんの胸元に近づいた。
ふわっといい匂いがしてこれだけで安心して眠れそう。
この場所が最高に落ち着く場所だな。
「明日はゆっくり起きていいからね」
耳元で優しく囁かれて、赤ちゃんの寝かしつけのように背中をトントンと優しく叩かれて、その落ち着くリズムにあっという間に深い眠りに落ちていった。
夢の中でも慎一さんの匂いに包まれる。
ブワッと強い匂いを感じて幸せな気分で今までにないほど熟睡した気がする。
それからどれくらい経ったんだろう。感覚的にはもう朝になっている気がする。
目を覚ましてもなお、夢の中でも感じてた匂いに包まれて最高に幸せな朝を迎えたな。
「こうやって朝起きれるのって、幸せだな……」
「俺も伊月くんを腕に抱いたまま目覚められるのは幸せだよ」
「わっ! 起きてたんですか?」
まさか慎一さんが起きているとは思わなかった。
毎日こんな朝を迎えられたら本当に幸せだろうなと思った気持ちがつい漏れて、聞かれてしまって恥ずかしい。
顔も赤くなっているのがわかるけど、慎一さんは僕のこんな気持ちを嬉しいと言ってくれた。
ああ、なんて優しい人なんだろう。こんなに優しい人が恋人だなんて僕は本当に幸せすぎる。
「起きる? もう少し寝ててもいいよ」
「あ、ぐっすり寝たので大丈夫です」
「じゃあ、こっちの洗面所使っていいよ。俺はもう一つの洗面所で身支度を整えておくから」
さっとベッドから出ていく慎一さんをぼーっと見送って、慌てて飛び起きて洗面所に向かった。
朝なのに格好良すぎる慎一さんについ見惚れちゃった。
一人暮らしの時は洗顔するのもほとんど水だけだった。
一度石鹸で顔を洗ったらカピカピに乾燥して大変で、仕方なくなけなしのお金でちょこっと高いのを買ってほんの少しを一生懸命泡立てて使っていたから顔を洗うだけですごく時間がかかっていた。
でもその時の癖で慎一さんに泡洗顔というものをもらってもつい少しずつ丁寧に洗ってしまう。
歯磨きも同じ。あまりたくさんつけるのがもったいなくて少しの歯磨き粉で時間をかけて磨いていたせいか、つい歯磨きの時間が長くなってしまう。
ようやく洗顔と歯磨きを終えて洗面所を出ると、慎一さんはもうキッチンにいた。
「今日は出かけるから、朝食は軽めにしておこう。美味しいランチとスイーツを食べるからね」
そう言いながら手が動いている。すごいな。
でも外でランチか……楽しそう!
あ、でもランチ代……。
つい心の声が漏れてしまうと、
「そんなこと気にしないでいいって言っただろう? 俺たちはもう恋人だから、年上が全部払うものだよ」
と言われて驚いてしまう。
恋人ってそんなルールがあるんだ。知らなかった。
でもルールは守ったほうがいいんだよね。
「だから、なんでも甘えてくれた方が嬉しい。ねっ」
優しく笑顔を向けられながらそう言われて僕は頷いた。
慎一さんに甘える、か……。僕が甘えてもいいのかな。
まだ慣れないけれど、慎一さんに甘えられるように頑張ろう!
軽めだと言っていた朝食はパンケーキとフルーツとヨーグルト。
もうこれだけで僕にとっては豪華でしかない。
パンケーキが自宅で作れるなんて……すごいな。
そのパンケーキを食べるとあまりにもふわふわで驚いてしまう。
「あっ、生クリームがついてるよ」
どうやらがっつきすぎて口に生クリームがついてしまったみたい。
僕が食いしん坊だと慎一さんに思われたのが恥ずかしくて、慌てて取ろうとしたけれど僕が取るよりも先に慎一さんの顔が近づいてきて、
「ここだよ」
と言われたかと思ったら、唇を舐められる感触がした。
「――っ、し、慎一さんっ」
「どうかした?」
びっくりして声をあげたけれど、慎一さんに何かあった? みたいな表情を向けられて訳がわからなくなってきた。
「あ、あの……クリーム、唇で、慎一さんが……」
必死に説明をしようとした僕に慎一さんは恋人になったら唇で取るのが普通なんだと教えてくれた。
そう、なんだ……。
さっきの支払いのことといい、恋人にはいろんなルールがあるものなんだな。
僕は何も知らないんだ。
「もし、俺の唇についてても伊月くんが唇で取ってくれたらいいからね」
僕が唇で慎一さんのをとってあげる……。うわぁ、それ楽しそう!
それから食事の間、慎一さんの唇につかないかなと気になってしまう自分がいた。
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