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初めてのお出かけ
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結局あれから何度も生クリームを唇につけてしまうのは僕で、その度に慎一さんが優しく舐め取ってくれた。
僕は代わりにフルーツを摘んで食べさせてあげるくらいしかできなかったけれど、慎一さんが喜んでくれたからよかったかな。
食事の片付けを手伝おうと思ったけれど、フライパンもボウルもパンケーキを焼きながら慎一さんが洗って片付けていたみたいで、食洗機に食器を並べるだけで終わってしまった。次は一緒にお片付けをできるといいな。
これから出かけるから着替えようと言われて、一緒に寝ていた寝室に向かった。
慎一さんがクローゼットを開けると驚くほどたくさんの洋服が並んでいて驚いてしまう。
慎一さんの服にしては可愛いものもあるなと思っていると、これが全部僕のだと言われてさらに驚いてしまった。
僕の服は数セットを回して着ていたからこんなにたくさんの服が自分のだと言われても実感がない。
だけど、
「これは夏服と少し秋物があるくらいだから、もう少ししたら冬物も買いに行かないとね」
とサラッと言われてびっくりして慌てて、多すぎだって断ろうとしたけれど、恋人だから甘えて欲しいと言われて困ってしまう。
「俺は伊月くんに服も買ってあげられない甲斐性なしかな?」
そんなことを悲しげな顔で言われたら、そんなことないとしか言えなくて、結局甘えることになってしまった。
これが恋人に甘えるっていうことなのかな? 今までの生活と違いすぎて何が正しいのかわからなくなってきた。
でも僕がこれからも服を慎一さんの買ってくれた服を着ると言ったらものすごく嬉しそうな笑顔を返されたから、きっとこれが正しいんだろう。
「じゃあ、今日の服はこれね」
渡された服を受け取るとそれだけで着心地がいいとわかるくらい、柔らかな生地をしている。
すぐにでも着たくなって急いでパジャマを脱いだ。
慎一さんを待たせちゃいけないと思って、急いで着替えたけれど慎一さんは僕がちゃんと着られるのか心配みたいでずっと僕の着替えを見守ってくれている。すごく優しいな。
「あ、あの……着替え、ました……」
慎一さんが選んでくれた服がなんとなく慎一さんの服に似ている気がしてちょっとドキドキしながら、着替え終わったことを告げると、
「よく似合ってるよ。可愛くて見惚れてた」
と素敵な笑顔を見せてくれる。
僕に見惚れるなんてありえないけれど、慎一さんに言われると嬉しくなる。
「じゃあ、出かけようか」
僕の足のことも気遣ってくれているようで、慎一さんは僕の隣にさっと立つと、腰に手を回して抱き寄せてくれた。
こうすると足の負担がかなり減って歩きやすいし疲れなさそうだけど、慎一さんの隣に僕みたいなのがぴったりくっついて外を歩くと変に思われないか心配だ。
僕はどう思われたっていいけど、慎一さんが何か言われるのは嫌だ。
正直にその気持ちを告げたけれど、
「周りの目なんて気にしないよ。俺は伊月くんの隣にいたい。ただそれだけだ」
と堂々とした口調で言ってくれた。
慎一さんって本当に僕のこと好きでいてくれているんだ……。嬉しい。
僕も慎一さんの隣にいたい。そう堂々と言えるようになりたいな。
そのまま並んで玄関に向かうと、慎一さんがさっとしゃがんで僕の足に靴を履かせてくれた。その履き心地がまるで靴を履いていないような感覚で、まるで足にくっついているみたいなのにものすごく軽くてただただ驚きしかない。
こんなすごい靴、どこで売っているんだろうと不思議に思ってしまう。
「足の形通りに作ってるから靴擦れもしないはずだよ。でも痛くなったら我慢しないですぐにいうんだよ」
足の形通りに?
それって僕のために作ったということ? いつの間に?
「転院した時にいろいろ検査しただろう? その時についでに測っておいたんだ。二ヶ月あったから余裕で作ってもらえたよ。伊月くんは足を怪我したんだし、ぴったり合ったものを履かないと足に負担がかかるからね」
驚く僕を前に、慎一さんは当たり前のように言っていた。
靴を作るってそんなに普通のことなんだろうか? 僕が知らないだけでみんなが普通にやっていること?
「そういうもの、ですか?」
「ああ。俺は獣医だけど、人間の身体についても一般人よりはわかっているつもりだよ。だから、伊月くんは心配しないで俺が用意したものを履いてくれるだけでいいんだ。ねっ」
動物のとはいえ、お医者さんの慎一さんがいうことならそれが正しいんだろう。
これからもわからないことは慎一さんに教えてもらわないとな。
エレベーターを降りて慎一さんはそのままコンシェルジュさんの方に僕を連れたまま歩いて行った。
大園さんというコンシェルジュさんに僕のことを紹介してくれると、
「はい。田淵さまでございますね。私、このマンションのコンシェルジュの大園と申します。何なりとご用件をお申し付けください」
と僕にも丁寧な対応をされて緊張してしまう。
慎一さんが笑われたりしないように僕もちゃんと挨拶しないとな。
挨拶を終えると、僕の指紋を登録してくれた。これで僕の指紋でも鍵を開けたりエレベーターに乗ったりができるようになるらしい。これだと鍵を忘れて家に入れないなんてことがないのは嬉しいな。
それ以外にもこのマンションのいろんな施設をこの指紋だけで、しかも無料で使用できるらしいけど一人では多分行かないな。慎一さんと一緒の時じゃないと使わないだろうから、大丈夫そう。
指紋の登録を終えた僕たちはお出かけのために、駐車場に向かった。
僕は代わりにフルーツを摘んで食べさせてあげるくらいしかできなかったけれど、慎一さんが喜んでくれたからよかったかな。
食事の片付けを手伝おうと思ったけれど、フライパンもボウルもパンケーキを焼きながら慎一さんが洗って片付けていたみたいで、食洗機に食器を並べるだけで終わってしまった。次は一緒にお片付けをできるといいな。
これから出かけるから着替えようと言われて、一緒に寝ていた寝室に向かった。
慎一さんがクローゼットを開けると驚くほどたくさんの洋服が並んでいて驚いてしまう。
慎一さんの服にしては可愛いものもあるなと思っていると、これが全部僕のだと言われてさらに驚いてしまった。
僕の服は数セットを回して着ていたからこんなにたくさんの服が自分のだと言われても実感がない。
だけど、
「これは夏服と少し秋物があるくらいだから、もう少ししたら冬物も買いに行かないとね」
とサラッと言われてびっくりして慌てて、多すぎだって断ろうとしたけれど、恋人だから甘えて欲しいと言われて困ってしまう。
「俺は伊月くんに服も買ってあげられない甲斐性なしかな?」
そんなことを悲しげな顔で言われたら、そんなことないとしか言えなくて、結局甘えることになってしまった。
これが恋人に甘えるっていうことなのかな? 今までの生活と違いすぎて何が正しいのかわからなくなってきた。
でも僕がこれからも服を慎一さんの買ってくれた服を着ると言ったらものすごく嬉しそうな笑顔を返されたから、きっとこれが正しいんだろう。
「じゃあ、今日の服はこれね」
渡された服を受け取るとそれだけで着心地がいいとわかるくらい、柔らかな生地をしている。
すぐにでも着たくなって急いでパジャマを脱いだ。
慎一さんを待たせちゃいけないと思って、急いで着替えたけれど慎一さんは僕がちゃんと着られるのか心配みたいでずっと僕の着替えを見守ってくれている。すごく優しいな。
「あ、あの……着替え、ました……」
慎一さんが選んでくれた服がなんとなく慎一さんの服に似ている気がしてちょっとドキドキしながら、着替え終わったことを告げると、
「よく似合ってるよ。可愛くて見惚れてた」
と素敵な笑顔を見せてくれる。
僕に見惚れるなんてありえないけれど、慎一さんに言われると嬉しくなる。
「じゃあ、出かけようか」
僕の足のことも気遣ってくれているようで、慎一さんは僕の隣にさっと立つと、腰に手を回して抱き寄せてくれた。
こうすると足の負担がかなり減って歩きやすいし疲れなさそうだけど、慎一さんの隣に僕みたいなのがぴったりくっついて外を歩くと変に思われないか心配だ。
僕はどう思われたっていいけど、慎一さんが何か言われるのは嫌だ。
正直にその気持ちを告げたけれど、
「周りの目なんて気にしないよ。俺は伊月くんの隣にいたい。ただそれだけだ」
と堂々とした口調で言ってくれた。
慎一さんって本当に僕のこと好きでいてくれているんだ……。嬉しい。
僕も慎一さんの隣にいたい。そう堂々と言えるようになりたいな。
そのまま並んで玄関に向かうと、慎一さんがさっとしゃがんで僕の足に靴を履かせてくれた。その履き心地がまるで靴を履いていないような感覚で、まるで足にくっついているみたいなのにものすごく軽くてただただ驚きしかない。
こんなすごい靴、どこで売っているんだろうと不思議に思ってしまう。
「足の形通りに作ってるから靴擦れもしないはずだよ。でも痛くなったら我慢しないですぐにいうんだよ」
足の形通りに?
それって僕のために作ったということ? いつの間に?
「転院した時にいろいろ検査しただろう? その時についでに測っておいたんだ。二ヶ月あったから余裕で作ってもらえたよ。伊月くんは足を怪我したんだし、ぴったり合ったものを履かないと足に負担がかかるからね」
驚く僕を前に、慎一さんは当たり前のように言っていた。
靴を作るってそんなに普通のことなんだろうか? 僕が知らないだけでみんなが普通にやっていること?
「そういうもの、ですか?」
「ああ。俺は獣医だけど、人間の身体についても一般人よりはわかっているつもりだよ。だから、伊月くんは心配しないで俺が用意したものを履いてくれるだけでいいんだ。ねっ」
動物のとはいえ、お医者さんの慎一さんがいうことならそれが正しいんだろう。
これからもわからないことは慎一さんに教えてもらわないとな。
エレベーターを降りて慎一さんはそのままコンシェルジュさんの方に僕を連れたまま歩いて行った。
大園さんというコンシェルジュさんに僕のことを紹介してくれると、
「はい。田淵さまでございますね。私、このマンションのコンシェルジュの大園と申します。何なりとご用件をお申し付けください」
と僕にも丁寧な対応をされて緊張してしまう。
慎一さんが笑われたりしないように僕もちゃんと挨拶しないとな。
挨拶を終えると、僕の指紋を登録してくれた。これで僕の指紋でも鍵を開けたりエレベーターに乗ったりができるようになるらしい。これだと鍵を忘れて家に入れないなんてことがないのは嬉しいな。
それ以外にもこのマンションのいろんな施設をこの指紋だけで、しかも無料で使用できるらしいけど一人では多分行かないな。慎一さんと一緒の時じゃないと使わないだろうから、大丈夫そう。
指紋の登録を終えた僕たちはお出かけのために、駐車場に向かった。
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