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サプライズの始まり
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「ねぇ、それはそうと……アレだけど、バレないようにこっそり持ってきたんだ。演奏室で弾くんだよね? そこにアレをどうやって運ぼうかなって思ってて……」
「それ、僕も考えてたんですけど……とりあえずエヴァンさんには4人でサプライズで演奏するって話はしてるから、理央くんたち4人が下りてきたらこのリビングに留めておいてもらってる間に、僕たちとリュカが演奏室に行って先に準備始めて、佳都さんは一旦部屋に戻ってアレを持って演奏室に来るっていうのはどうですか?」
「うん、それならいけそう。でも、理央くんと空良くんだけリビングに残して僕たちが部屋から出たらおかしく思わないかな?」
「大丈夫ですよ、その点は旦那さま方の話術に期待しましょう」
佳都さんの言葉に、秀吾さんがそんなふうに返していたけれど、確かに夢中になる話をしてもらっていれば、バレずにこっそりとリビングを出るのはできそうだな。
「よし、じゃあ。二人が下りてきて、少しお茶したらサプライズ決行だよ!」
意外と乗り気なミシェルさんの心強い掛け声に、僕たちは4人で手を重ねて円陣を組んだ。
こんな経験初めてだからドキドキする。
ああ、サプライズ上手くいくといいな。
4人が下りてくる前に何事もなかったように各々自分たちの居場所に戻った。
「どうだ? 打ち合わせはオッケーか?」
「はい。あとはこっそりリビングを出て演奏室に向かうときに、理央くんたち4人に気づかれないように注意を逸らしてもらえると嬉しいんですけど……」
「ああ、そういうことか。わかった。どれくらいここで足止めしておけばいい?」
「あっ、そうですね。じゃあ15分くらいですかね」
「わかった。任せておいてくれ」
そういうとエヴァンさんは隣にいたセルジュさんに声をかけていた。
これできっと足止めは大丈夫だ。
あとは喜んでくれるような演奏をするだけ。
「みんな早いですね、遅くなっちゃったかな」
理央くんと空良くんが観月さんと悠木さんに連れられて一緒に下りてきた。
二人とも心なしかほんのりほっぺたが赤い気がするけど、部屋が暑かったのかな。
後でパピーにお願いしておこうっと。
「リオ、ソラ。こっちにおいで。美味しいおやつ買ってるんだ」
ミシェルさんが呼びかけると二人は嬉しそうにこっちに駆け出してきた。
本当に二人は双子みたいにそっくりだ。
僕も同じ歳のはずなんだけどな……。
こんなに可愛いって凄すぎる。
しばらくお菓子を食べながら、話をしていると佳都さんがそろそろと目で合図を送ってきた。
僕はエヴァンさんにすぐに視線を送りさっきの作戦をお願いすることにした。
すると、エヴァンさんとセルジュさんが観月さんと悠木さんに話を始めると、二人が理央くんと空良くんに声をかけた。
なんだかフランスの大学について話をしているみたいだ。
4人とも興味津々でエヴァンさんたちの話に聞き入っている間に僕たち4人とリュカはこっそりとリビングを出た。
「じゃあ、僕はアレとってから演奏室にいくね」
「リュカ、佳都さんに付き添って一緒に演奏室に来てね」
「承知しました」
佳都さんとリュカを見送り、僕とミシェルさん、秀吾さんは三人で演奏室に向かった。
「わぁーっ! 素晴らしい部屋ですね」
「ここは僕のお父さんがヴァイオリンを演奏するために作った部屋なんですって。ここで何度か演奏させてもらったことあるんですけど、すごく音がよく広がるので弾いていると音に包まれているようで心地いいですよ」
「ええーっ! あの、ニコラ・ロレーヌの作ったお部屋なんですか?! そんなところで僕が演奏なんて……凄く烏滸がましいんですけど……」
秀吾さんはどうやらお父さんのことを知っていたみたい。
ミシェルさんのことも知ってるくらいだから当然なんだろうけど。
「大丈夫ですよ。今日は楽しんで演奏しましょう!」
そういうと、秀吾さんは嬉しそうに笑っていた。
演奏室ですでに運ばれていたヴァイオリンを調弦していると、
「お待たせー!」
と佳都さんとリュカが演奏室に入ってきた。
「このお部屋すごいね!」
と目を輝かせながら入ってきた佳都さんは持ってきた袋からさっと中身を取り出すと、
「はい、これ弓弦くんのね。こっちはミシェルさん。そして、これは秀吾さんとリュカさん」
と順番に手渡してくれた。
「えっ? 私もですか?」
「もちろん! お祝いですからお願いします」
佳都さんにそう言われてはリュカも断れなかったようで、みんなでそれぞれ見えない位置で着替えることになった。
「えーっ、これ? 本当に着るの?」 とか、
「あっ、これ可愛いっ!」 とか、
聞こえていたけれど、僕も袖を通すと恥ずかしさよりも可愛い方が勝っていた気がする。
「みんな出てきてー」
佳都さんの掛け声に合わせるように、舞台に出てくると
「わぁー! みんな凄くよく似合ってる!!」
と嬉しそうな佳都さんの声が響いた。
「あっ、佳都さんとリュカは短パンなんですね」
「ふふっ。みんな同じデザインじゃつまらないかと思って変えたんだ」
僕と秀吾さんは上下に白いふわふわがついた胸から下の赤いワンピース。
短くてちっちゃなマントみたいな羽織もあって可愛い。
ミシェルさんは同じデザインだけど、赤いワンピースの部分が赤と黒のチェック生地になってて凄く可愛い。
佳都さんとリュカは上半身は僕たちと同じデザインだけど下だけ凄く短い短パンになってて、長くて綺麗な足が僕たちのスカートより目立ってる気がする。
そして、みんな赤色にうさぎのしっぽみたいなふわふわがついた帽子付き。
これをかぶっているだけで一気にクリスマスモードになる。
「いい? みんなきっと驚くけど、演奏に集中するんだよ。二人が入ってきたら、大検合格おめでとう!って言って演奏始めてね」
「はーい!」
佳都さんに発破をかけられ、僕たちはみんなが演奏室に入ってくるのを今か今かと待っていた。
そうして、とうとう演奏室の扉が開いた。
「それ、僕も考えてたんですけど……とりあえずエヴァンさんには4人でサプライズで演奏するって話はしてるから、理央くんたち4人が下りてきたらこのリビングに留めておいてもらってる間に、僕たちとリュカが演奏室に行って先に準備始めて、佳都さんは一旦部屋に戻ってアレを持って演奏室に来るっていうのはどうですか?」
「うん、それならいけそう。でも、理央くんと空良くんだけリビングに残して僕たちが部屋から出たらおかしく思わないかな?」
「大丈夫ですよ、その点は旦那さま方の話術に期待しましょう」
佳都さんの言葉に、秀吾さんがそんなふうに返していたけれど、確かに夢中になる話をしてもらっていれば、バレずにこっそりとリビングを出るのはできそうだな。
「よし、じゃあ。二人が下りてきて、少しお茶したらサプライズ決行だよ!」
意外と乗り気なミシェルさんの心強い掛け声に、僕たちは4人で手を重ねて円陣を組んだ。
こんな経験初めてだからドキドキする。
ああ、サプライズ上手くいくといいな。
4人が下りてくる前に何事もなかったように各々自分たちの居場所に戻った。
「どうだ? 打ち合わせはオッケーか?」
「はい。あとはこっそりリビングを出て演奏室に向かうときに、理央くんたち4人に気づかれないように注意を逸らしてもらえると嬉しいんですけど……」
「ああ、そういうことか。わかった。どれくらいここで足止めしておけばいい?」
「あっ、そうですね。じゃあ15分くらいですかね」
「わかった。任せておいてくれ」
そういうとエヴァンさんは隣にいたセルジュさんに声をかけていた。
これできっと足止めは大丈夫だ。
あとは喜んでくれるような演奏をするだけ。
「みんな早いですね、遅くなっちゃったかな」
理央くんと空良くんが観月さんと悠木さんに連れられて一緒に下りてきた。
二人とも心なしかほんのりほっぺたが赤い気がするけど、部屋が暑かったのかな。
後でパピーにお願いしておこうっと。
「リオ、ソラ。こっちにおいで。美味しいおやつ買ってるんだ」
ミシェルさんが呼びかけると二人は嬉しそうにこっちに駆け出してきた。
本当に二人は双子みたいにそっくりだ。
僕も同じ歳のはずなんだけどな……。
こんなに可愛いって凄すぎる。
しばらくお菓子を食べながら、話をしていると佳都さんがそろそろと目で合図を送ってきた。
僕はエヴァンさんにすぐに視線を送りさっきの作戦をお願いすることにした。
すると、エヴァンさんとセルジュさんが観月さんと悠木さんに話を始めると、二人が理央くんと空良くんに声をかけた。
なんだかフランスの大学について話をしているみたいだ。
4人とも興味津々でエヴァンさんたちの話に聞き入っている間に僕たち4人とリュカはこっそりとリビングを出た。
「じゃあ、僕はアレとってから演奏室にいくね」
「リュカ、佳都さんに付き添って一緒に演奏室に来てね」
「承知しました」
佳都さんとリュカを見送り、僕とミシェルさん、秀吾さんは三人で演奏室に向かった。
「わぁーっ! 素晴らしい部屋ですね」
「ここは僕のお父さんがヴァイオリンを演奏するために作った部屋なんですって。ここで何度か演奏させてもらったことあるんですけど、すごく音がよく広がるので弾いていると音に包まれているようで心地いいですよ」
「ええーっ! あの、ニコラ・ロレーヌの作ったお部屋なんですか?! そんなところで僕が演奏なんて……凄く烏滸がましいんですけど……」
秀吾さんはどうやらお父さんのことを知っていたみたい。
ミシェルさんのことも知ってるくらいだから当然なんだろうけど。
「大丈夫ですよ。今日は楽しんで演奏しましょう!」
そういうと、秀吾さんは嬉しそうに笑っていた。
演奏室ですでに運ばれていたヴァイオリンを調弦していると、
「お待たせー!」
と佳都さんとリュカが演奏室に入ってきた。
「このお部屋すごいね!」
と目を輝かせながら入ってきた佳都さんは持ってきた袋からさっと中身を取り出すと、
「はい、これ弓弦くんのね。こっちはミシェルさん。そして、これは秀吾さんとリュカさん」
と順番に手渡してくれた。
「えっ? 私もですか?」
「もちろん! お祝いですからお願いします」
佳都さんにそう言われてはリュカも断れなかったようで、みんなでそれぞれ見えない位置で着替えることになった。
「えーっ、これ? 本当に着るの?」 とか、
「あっ、これ可愛いっ!」 とか、
聞こえていたけれど、僕も袖を通すと恥ずかしさよりも可愛い方が勝っていた気がする。
「みんな出てきてー」
佳都さんの掛け声に合わせるように、舞台に出てくると
「わぁー! みんな凄くよく似合ってる!!」
と嬉しそうな佳都さんの声が響いた。
「あっ、佳都さんとリュカは短パンなんですね」
「ふふっ。みんな同じデザインじゃつまらないかと思って変えたんだ」
僕と秀吾さんは上下に白いふわふわがついた胸から下の赤いワンピース。
短くてちっちゃなマントみたいな羽織もあって可愛い。
ミシェルさんは同じデザインだけど、赤いワンピースの部分が赤と黒のチェック生地になってて凄く可愛い。
佳都さんとリュカは上半身は僕たちと同じデザインだけど下だけ凄く短い短パンになってて、長くて綺麗な足が僕たちのスカートより目立ってる気がする。
そして、みんな赤色にうさぎのしっぽみたいなふわふわがついた帽子付き。
これをかぶっているだけで一気にクリスマスモードになる。
「いい? みんなきっと驚くけど、演奏に集中するんだよ。二人が入ってきたら、大検合格おめでとう!って言って演奏始めてね」
「はーい!」
佳都さんに発破をかけられ、僕たちはみんなが演奏室に入ってくるのを今か今かと待っていた。
そうして、とうとう演奏室の扉が開いた。
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