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二人を思いながら……
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「あ、あの僕たち……」
パピーが倒れそうになったのを見て、理央くんたちの表情が青褪めている。
あまりにも驚きの反応に悪いことをしてしまったのかと思ってしまってるようだ。
どうしたらいいんだろうと思っていると、エヴァンさんが
「リオ、ソラ、ケイト。素晴らしい挨拶をありがとう。ジュールは君たちの挨拶が嬉しかっただけだ。ジュール、そうだろう?」
と声をかけると、ジョルジュさんと一緒にパピーの隣に来ていたリュカがパピーに耳元で囁くとパピーはさっと立ち上がり、滑らかなフランス語で理央くんたちに話しだした。
パピーも誤解を解きたいと必死なんだろう。
あまりにも滑らかすぎて僕も聞き取れないくらいだけど、ミシェルさんと秀吾さんが
「三人の可愛らしい挨拶に心を打たれて嬉しかったって」
「ここに来たばかりの弓弦くんを思い出して嬉しくなったってそういってるよ」
と笑顔で教えてあげると、三人の表情はようやく明るく戻り、三人の旦那さまに優しく肩を抱かれて本当に嬉しそうだった。
エヴァンさんが中に入ろうと声をかけ、ようやく家の中に入ると
「わぁー、素敵!」
と理央くんの可愛い声が聞こえてきた。
「エヴァンさん、先にお部屋に案内しますか?」
「ああ、そうだな。先に荷物を置いてのんびりしてもらうか」
ということで、リビングに入る前に僕とエヴァンさんはそれぞれの部屋に案内することにした。
2階の客間の左右にふた部屋ずつ。
「こちらがアヤシロとケイト。隣がスオウとシュウゴ。そしてあちら側がミヅキとリオ、隣がユウキとソラだ。必要なものはジュールが全て揃えてくれているはずだが、何か足りないものがあったら何でもいってくれ。すぐに用意させる」
エヴァンさんがそう説明すると、みんなそれぞれの部屋に入って行った。
それぞれの部屋から、すごい! とか綺麗っ! とか嬉しそうな声が聞こえてきて、僕とエヴァンさんも嬉しくなって顔を見合わせて笑ってしまった。
「着替えたら下りてきて下さいね」
と声をかけ、僕たちがリビングへ戻った。
リビングではミシェルさんたちが揃ってパピーと話しているようだ。
「あっ、ユヅル。部屋はどうだった?」
「うん。大丈夫そうですよ。すごく喜んでました」
「ふふっ。そっか。よかった。それにしてもリオたちのフランス語の挨拶可愛かったよね」
ミシェルさんはさっきの挨拶を思い出してうっとりしている。
『でも、ジュールが倒れるからリオたち本気で心配していたよ』
『申し訳ございません。ですが、あれほどまでに可愛いご挨拶を目の前でされたらどなたでもあのように……』
『ははっ。その気持ちはわかる。ユヅルがここにきた時、あの三人と同じように可愛いフランス語で挨拶した時は私も倒れそうだったからな』
エヴァンさんも話に加わって理央くんたちの話をしているけれど、僕もだいぶフランス語理解できるようになってきたなと違うことで嬉しくなっている自分がいた。
まぁ僕にも理解できるようにゆっくり話してくれているんだけど。
テーブルの上にはさっきミシェルさんと買いに行ったお菓子がたくさん並べられている。
早くみんな下りてこないかなーと思っていると、佳都さんと秀吾さんが二人揃って下りてきた。
その後ろから、綾城さんと周防さんも歩いてきている。
「部屋、何か足りないものはなかったですか?」
「もう! 快適すぎてびっくりするくらいだよ!」
「ふふ。よかったです」
「それはそうと、今日のサプライズの話を少ししたくて急いで来ちゃった」
「ああ、そうですね。じゃあ、あっちで。エヴァンさん、いいですか?」
「ああ、話しておいで」
理央くんたちが下りてくる前に少しでも話をしておかないとと思い、リビングの離れた場所にあるソファーに4人で座って打ち合わせをすることにした。
4人で向かい合わせに座ると、なぜか秀吾さんが顔を赤くしてミシェルさんを見つめている。
「あの、どうかしましたか?」
「ふふっ。秀吾さん、ミシェルさんのファンなんだって!」
「あっ、佳都くん!」
目の前でバラされて恥ずかしいのか、声をあげるけどミシェルさんは嬉しそうに
「ありがとう! 今日は一緒に演奏できるから楽しみにしてたんだよ」
と秀吾さんに声をかけた。
「こ、こちらこそ。一緒に演奏できるなんて光栄で……間違えないように頑張ります」
「ふふっ。間違えてもいいんだよ。リオとソラ……二人の頑張りをお祝いする演奏だから、とにかく楽しまないとね」
「はい! そうですね!」
秀吾さんは嬉しそうにミシェルさんを見つめている。
でも本当にそうだ。
二人をお祝いする楽しい気持ちで自分が楽しんで演奏しないとね。
――弓弦、ヴァイオリンはね……自分の感情が素直に出るものなの。誰かを思いながら弾けばその思いは必ず相手に届く。そういう不思議な楽器なのよ。
そういって教えてくれた母さんの言葉。
エヴァンさんのことを思いながら弾いた愛の挨拶も、母さんとお父さんのために弾いたアメイジンググレイスも思いは通じていたはず。
だから、今日は理央くんと空良くんのために楽しんで弾こう。
パピーが倒れそうになったのを見て、理央くんたちの表情が青褪めている。
あまりにも驚きの反応に悪いことをしてしまったのかと思ってしまってるようだ。
どうしたらいいんだろうと思っていると、エヴァンさんが
「リオ、ソラ、ケイト。素晴らしい挨拶をありがとう。ジュールは君たちの挨拶が嬉しかっただけだ。ジュール、そうだろう?」
と声をかけると、ジョルジュさんと一緒にパピーの隣に来ていたリュカがパピーに耳元で囁くとパピーはさっと立ち上がり、滑らかなフランス語で理央くんたちに話しだした。
パピーも誤解を解きたいと必死なんだろう。
あまりにも滑らかすぎて僕も聞き取れないくらいだけど、ミシェルさんと秀吾さんが
「三人の可愛らしい挨拶に心を打たれて嬉しかったって」
「ここに来たばかりの弓弦くんを思い出して嬉しくなったってそういってるよ」
と笑顔で教えてあげると、三人の表情はようやく明るく戻り、三人の旦那さまに優しく肩を抱かれて本当に嬉しそうだった。
エヴァンさんが中に入ろうと声をかけ、ようやく家の中に入ると
「わぁー、素敵!」
と理央くんの可愛い声が聞こえてきた。
「エヴァンさん、先にお部屋に案内しますか?」
「ああ、そうだな。先に荷物を置いてのんびりしてもらうか」
ということで、リビングに入る前に僕とエヴァンさんはそれぞれの部屋に案内することにした。
2階の客間の左右にふた部屋ずつ。
「こちらがアヤシロとケイト。隣がスオウとシュウゴ。そしてあちら側がミヅキとリオ、隣がユウキとソラだ。必要なものはジュールが全て揃えてくれているはずだが、何か足りないものがあったら何でもいってくれ。すぐに用意させる」
エヴァンさんがそう説明すると、みんなそれぞれの部屋に入って行った。
それぞれの部屋から、すごい! とか綺麗っ! とか嬉しそうな声が聞こえてきて、僕とエヴァンさんも嬉しくなって顔を見合わせて笑ってしまった。
「着替えたら下りてきて下さいね」
と声をかけ、僕たちがリビングへ戻った。
リビングではミシェルさんたちが揃ってパピーと話しているようだ。
「あっ、ユヅル。部屋はどうだった?」
「うん。大丈夫そうですよ。すごく喜んでました」
「ふふっ。そっか。よかった。それにしてもリオたちのフランス語の挨拶可愛かったよね」
ミシェルさんはさっきの挨拶を思い出してうっとりしている。
『でも、ジュールが倒れるからリオたち本気で心配していたよ』
『申し訳ございません。ですが、あれほどまでに可愛いご挨拶を目の前でされたらどなたでもあのように……』
『ははっ。その気持ちはわかる。ユヅルがここにきた時、あの三人と同じように可愛いフランス語で挨拶した時は私も倒れそうだったからな』
エヴァンさんも話に加わって理央くんたちの話をしているけれど、僕もだいぶフランス語理解できるようになってきたなと違うことで嬉しくなっている自分がいた。
まぁ僕にも理解できるようにゆっくり話してくれているんだけど。
テーブルの上にはさっきミシェルさんと買いに行ったお菓子がたくさん並べられている。
早くみんな下りてこないかなーと思っていると、佳都さんと秀吾さんが二人揃って下りてきた。
その後ろから、綾城さんと周防さんも歩いてきている。
「部屋、何か足りないものはなかったですか?」
「もう! 快適すぎてびっくりするくらいだよ!」
「ふふ。よかったです」
「それはそうと、今日のサプライズの話を少ししたくて急いで来ちゃった」
「ああ、そうですね。じゃあ、あっちで。エヴァンさん、いいですか?」
「ああ、話しておいで」
理央くんたちが下りてくる前に少しでも話をしておかないとと思い、リビングの離れた場所にあるソファーに4人で座って打ち合わせをすることにした。
4人で向かい合わせに座ると、なぜか秀吾さんが顔を赤くしてミシェルさんを見つめている。
「あの、どうかしましたか?」
「ふふっ。秀吾さん、ミシェルさんのファンなんだって!」
「あっ、佳都くん!」
目の前でバラされて恥ずかしいのか、声をあげるけどミシェルさんは嬉しそうに
「ありがとう! 今日は一緒に演奏できるから楽しみにしてたんだよ」
と秀吾さんに声をかけた。
「こ、こちらこそ。一緒に演奏できるなんて光栄で……間違えないように頑張ります」
「ふふっ。間違えてもいいんだよ。リオとソラ……二人の頑張りをお祝いする演奏だから、とにかく楽しまないとね」
「はい! そうですね!」
秀吾さんは嬉しそうにミシェルさんを見つめている。
でも本当にそうだ。
二人をお祝いする楽しい気持ちで自分が楽しんで演奏しないとね。
――弓弦、ヴァイオリンはね……自分の感情が素直に出るものなの。誰かを思いながら弾けばその思いは必ず相手に届く。そういう不思議な楽器なのよ。
そういって教えてくれた母さんの言葉。
エヴァンさんのことを思いながら弾いた愛の挨拶も、母さんとお父さんのために弾いたアメイジンググレイスも思いは通じていたはず。
だから、今日は理央くんと空良くんのために楽しんで弾こう。
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