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安心安全なアプリ
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「征哉、ちょっといいかしら?」
「母さん、どうした?」
「ちょっと相談して決めたいことがあって、一花くんをそっちのソファーに運んでもらえるかしら?」
「ああ、すぐにいく」
もしかして、どこかに遊びに行きたいという相談だろうか?
流石に今日は、もう疲れているだろうしこの部屋で話すくらいで終わりにしておいた方がいいと思うが……。
そう思いつつも、とりあえずは言われた通りに一花を迎えにいく。
テラスは温泉の蒸気のおかげで一定の温度に保たれているから過ごしやすかったことだろう。
一花の体調も良さそうだ。
「何かあったか?」
移動させながら尋ねるが、
「楽しいことを話してました」
とだけ返ってくる。
一体どんな話をしていたのか気になるな。
私たちの後ろから、母と絢斗さん、直純くんがついてきて、みんながソファーに腰を下ろしたところで母が口を開いた。
「直くんが、フランスに行かれた昇くんのご両親のために編み物を習いたいというから、うちで編み物会をしようと思うのだけど、来週、みんなが我が家に集まれる日はないかしら?」
「編み物会……ああ、そういうことか。なるほど。それなら、ちょうど志摩くんと谷垣くんは来週一週間の休みをとっているから一花のリハビリは休みだし、絢斗さんと直純くんさえ良ければいつでも集まってもらって構わないよ」
「あら、そうなのね。尚孝くんにも編み物会に参加してもらおうと思っていたのだけどまぁいいわ。次回は参加してもらえるだろうし。それから、櫻葉さん……史紀さんにも編み物会に参加していただきたいのだけれど、史紀さんは時間の調整はつくかしら?」
「そういうことなら、その間は私が会社に出社して史紀の仕事をやっておくからいつでも構わないですよ。確かに編み物なら史紀はかなりの戦力になるだろうし。必ず行かせますよ」
「わぁー、パパ! ありがとう!! 大好き!」
一花が両手をお義父さんに伸ばすと、お義父さんは意気揚々と立ち上がり一花をハグした。
目の前で一花が自分以外の者と抱き合っているのは見ていて気持ちのいいものではないが、相手は父親。
しかも喜んでいるのだから水を差したくない。
これくらいは余裕でスルーできるくらいの寛大さは持ち合わせないとな。
なんせ、今日は一花との大事な夜が待っているのだから。
「一花が編んでくれたマフラーは本当に上手だったから、直純くんも未知子さんに習ったらすぐに上手になるよ」
「はい。頑張ります!」
直純くんもお義父さんを怖がらずに話すことができるようになったな。
それだけ磯山先生と絢斗さんの愛情をたっぷりと受けて育っているからだろう。
「それで絢斗くんはいつなら都合がよさそうかな?」
「そうですね、木曜日なら講義もありませんし大丈夫です」
「それなら史紀も木曜日は休みにして行かせるとしよう。史紀には後で連絡しておくよ」
今はきっと邪魔だろうからな。
「ああ、そうだ! 征哉さん、あのアプリを直くんに教えていいですか?」
「そうだったな。一花、これで一度直純くんに見せてごらん」
「はーい」
「征哉くん、どんなアプリだ?」
一花にスマホを渡すと、やっぱり可愛い息子が使うアプリは気になるようで磯山先生がすぐに尋ねてきた。
「実は蓮見さんか開発した買い物アプリなんですが……」
あの『恋する子猫の狼さん』という買い物アプリの説明をしている間に、一花は自分のスマホを直純くんに見せて教えていた。
谷垣くんにも一花が説明したと言っていたから、もう説明も慣れたものだ。
アルバムから狼の顔を好きな顔に変える方法も教えながら、どんなものを売っているかもきちんと説明できていた。
「うわぁー! これ、すっごく楽しそう!! 卓さん、このアプリ私も入れたい!」
「いろんなものがあるから楽しそうですね」
直純くん以上に興奮している絢斗さんはもちろん、買い物など今までしたことのない直純くんも興味を持っているように見えた。
「厳選された品しか売ることはできないので安心ですよ。それに支払いは……」
「なるほど。それはいいな」
アプリには値段が書かれておらず、ボタンを押すだけで購入でき、支払いは全て最初に登録したカードでの支払いとなっているため、絢斗さんも直純くんも気兼ねなく買い物ができるだろう。
「伯父さん、俺がカード持ったら登録カードは変更して」
「ははっ。さすがだな。いつまでも直純くんが楽しく買い物ができるように頑張らないとな」
「はい。大丈夫です」
私たちの会話は、アプリでも盛り上がっている一花たちには聞かれていない。
「周平くんの開発したアプリなら安心だな。早速二人のスマホにインストールしよう」
「その時はこれを入れてください。このパスワードがないとインストールできない仕組みになっています」
「ここまでか。さすがだな。ありがとう、使わせてもらうよ」
こうして、絢斗さんと直純くんのスマホにもあの買い物アプリがインストールされ、使えるようになったのだった。
「母さん、どうした?」
「ちょっと相談して決めたいことがあって、一花くんをそっちのソファーに運んでもらえるかしら?」
「ああ、すぐにいく」
もしかして、どこかに遊びに行きたいという相談だろうか?
流石に今日は、もう疲れているだろうしこの部屋で話すくらいで終わりにしておいた方がいいと思うが……。
そう思いつつも、とりあえずは言われた通りに一花を迎えにいく。
テラスは温泉の蒸気のおかげで一定の温度に保たれているから過ごしやすかったことだろう。
一花の体調も良さそうだ。
「何かあったか?」
移動させながら尋ねるが、
「楽しいことを話してました」
とだけ返ってくる。
一体どんな話をしていたのか気になるな。
私たちの後ろから、母と絢斗さん、直純くんがついてきて、みんながソファーに腰を下ろしたところで母が口を開いた。
「直くんが、フランスに行かれた昇くんのご両親のために編み物を習いたいというから、うちで編み物会をしようと思うのだけど、来週、みんなが我が家に集まれる日はないかしら?」
「編み物会……ああ、そういうことか。なるほど。それなら、ちょうど志摩くんと谷垣くんは来週一週間の休みをとっているから一花のリハビリは休みだし、絢斗さんと直純くんさえ良ければいつでも集まってもらって構わないよ」
「あら、そうなのね。尚孝くんにも編み物会に参加してもらおうと思っていたのだけどまぁいいわ。次回は参加してもらえるだろうし。それから、櫻葉さん……史紀さんにも編み物会に参加していただきたいのだけれど、史紀さんは時間の調整はつくかしら?」
「そういうことなら、その間は私が会社に出社して史紀の仕事をやっておくからいつでも構わないですよ。確かに編み物なら史紀はかなりの戦力になるだろうし。必ず行かせますよ」
「わぁー、パパ! ありがとう!! 大好き!」
一花が両手をお義父さんに伸ばすと、お義父さんは意気揚々と立ち上がり一花をハグした。
目の前で一花が自分以外の者と抱き合っているのは見ていて気持ちのいいものではないが、相手は父親。
しかも喜んでいるのだから水を差したくない。
これくらいは余裕でスルーできるくらいの寛大さは持ち合わせないとな。
なんせ、今日は一花との大事な夜が待っているのだから。
「一花が編んでくれたマフラーは本当に上手だったから、直純くんも未知子さんに習ったらすぐに上手になるよ」
「はい。頑張ります!」
直純くんもお義父さんを怖がらずに話すことができるようになったな。
それだけ磯山先生と絢斗さんの愛情をたっぷりと受けて育っているからだろう。
「それで絢斗くんはいつなら都合がよさそうかな?」
「そうですね、木曜日なら講義もありませんし大丈夫です」
「それなら史紀も木曜日は休みにして行かせるとしよう。史紀には後で連絡しておくよ」
今はきっと邪魔だろうからな。
「ああ、そうだ! 征哉さん、あのアプリを直くんに教えていいですか?」
「そうだったな。一花、これで一度直純くんに見せてごらん」
「はーい」
「征哉くん、どんなアプリだ?」
一花にスマホを渡すと、やっぱり可愛い息子が使うアプリは気になるようで磯山先生がすぐに尋ねてきた。
「実は蓮見さんか開発した買い物アプリなんですが……」
あの『恋する子猫の狼さん』という買い物アプリの説明をしている間に、一花は自分のスマホを直純くんに見せて教えていた。
谷垣くんにも一花が説明したと言っていたから、もう説明も慣れたものだ。
アルバムから狼の顔を好きな顔に変える方法も教えながら、どんなものを売っているかもきちんと説明できていた。
「うわぁー! これ、すっごく楽しそう!! 卓さん、このアプリ私も入れたい!」
「いろんなものがあるから楽しそうですね」
直純くん以上に興奮している絢斗さんはもちろん、買い物など今までしたことのない直純くんも興味を持っているように見えた。
「厳選された品しか売ることはできないので安心ですよ。それに支払いは……」
「なるほど。それはいいな」
アプリには値段が書かれておらず、ボタンを押すだけで購入でき、支払いは全て最初に登録したカードでの支払いとなっているため、絢斗さんも直純くんも気兼ねなく買い物ができるだろう。
「伯父さん、俺がカード持ったら登録カードは変更して」
「ははっ。さすがだな。いつまでも直純くんが楽しく買い物ができるように頑張らないとな」
「はい。大丈夫です」
私たちの会話は、アプリでも盛り上がっている一花たちには聞かれていない。
「周平くんの開発したアプリなら安心だな。早速二人のスマホにインストールしよう」
「その時はこれを入れてください。このパスワードがないとインストールできない仕組みになっています」
「ここまでか。さすがだな。ありがとう、使わせてもらうよ」
こうして、絢斗さんと直純くんのスマホにもあの買い物アプリがインストールされ、使えるようになったのだった。
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