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夫夫らしいこと

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「じゃあ、一花。そろそろ夕食の時間だし、失礼しようか」

「はーい。じゃあ、直くん。またね。木曜日、楽しみにしてる」

「はい。僕も楽しみにしてます!」

「必要な材料はこちらで全部揃えておくから手ぶらできてくれて構わないけれど、どうしても欲しい毛糸があったら持ってきてくれていいわ。ほら、さっきのお買い物アプリでも買えるでしょう?」

「未知子さん、さすが! 直くん、二葉さんと毅さんに似合う毛糸を探そうか」

「はい!」

早速買い物アプリが役に立つようだな。
きっとこれから重宝するはずだ。

「じゃあ、またね」

一花を抱きかかえて、みんなに見送られながら部屋に戻る。

「お義父さん、母さんもよかったら一緒に夕食でも?」

「いやいや私たちに気を遣うことはない。せっかくの新婚なんだ。二人で食べたらどうだ?」

「いえ。新婚だからこそ、お二人にお礼がてら一緒に食事したいんです。私と一花が出会えたのも、お義父さんと母さんのおかげですから。なぁ、一花」

「はい。僕もパパと未知子ママと一緒にご飯食べたいです」

「一花……っ。そうか、なら未知子さん。息子たちの厚意に甘えるとしようか」

「はい。そうですね」

「じゃあ、食事は私の部屋に持ってきてもらうことにしよう。新婚の部屋に入るのはさすがに気が引けるからな」

「??? どういう意味ですか?」

一花だけはその理由がわかっていないようだったが、そんなところも可愛い。

「一花は気にしないでいいよ」

そう言って安心させて、みんなでお義父さんの部屋に向かった。


「わぁ、パパの部屋もお外に温泉があるんですね」

「ああ。あとでゆっくりと楽しませてもらうよ」

一花が外の景色に夢中になっている間に四人分の夕食が運び込まれる。

刺身にステーキ、山菜の天ぷら、そしてメインは松茸尽くし。
松茸釜飯に、土瓶蒸し、松茸と平目の蒸し焼き。

一花には松茸を食べさせるのは初めてだからきっと喜んでくれるだろう。

畳間にクッションで高さをあげた座椅子に一花を座らせる。

「一花、低くないか?」

「はい。大丈夫です」

「じゃあ、いただこうか」

「未知子さん、日本酒はどうですか?」

一花の向かいに座るお義父さんは、一花との食事が楽しみなのかかなりご機嫌の様子だ。
母に酒を勧めるが、母は父ともよく晩酌をしていたくらいだから酒は弱くはない。

「そうですね。せっかくだから少しいただきましょうか」

「ええ。そうしましょう」

母のお猪口に日本酒を注ぎ、母もまたお義父さんのお猪口に酒を注ぐ。

「征哉も」

「ああ、ありがとう」

一花だけが呑めないのは可哀想な気もするが、一花自身は何も気にしていないようだ。

乾杯しようという声に、嬉しそうにお茶の入った湯呑みを持ち上げて、一緒にカチンと鳴らす。
お義父さんはそんな一花の姿を目を細めて見ている。
やっぱりこの夕食は一緒にとって正解だったのかもしれない。

「ん! これすっごく美味しいです!」

「そうだろう。ほら、天ぷらも美味しいぞ」

「んー、サクサクしてます」

幸せそうに口を動かす一花を見ているだけで癒される。
それはきっと向かいから見ているお義父さんと母もそうかもしれない。

「このきのこ、とってもいい香りがして美味しいです」

「そうか、一花は松茸が気に入ったか」

「松茸っていうんですね。すっごく美味しいです」

こうやって一花も少しずつ食材を知っていくんだな。
我が家に来た頃を考えれば、かなりたくさんのものを知っただろう。

一花のものはどれも全て少なめにしていたから、完食できて嬉しそうだった。

満腹になってそのまま眠ってしまいそうだが、もう少し起きていてもらおうか。

「じゃあ、そろそろお開きにしようか」

「はい。明日はお好きな時間に出ていただいて構いませんので」

「わかった。ありがとう。一花、征哉くん。今日は本当におめでとう。幸せになってくれ」

「パパ……」

一花が嬉しそうにお義父さんに手を伸ばす。
二人が幸せそうに抱きしめ合うのを静かに見守った。

「征哉、一花くんを大切にね」

「ああ。絶対に幸せにすると誓うよ」

母にもしっかりと一花への思いを告げ、私は一花を抱きかかえて、自分たちの部屋に戻った。

「一花、疲れていないか?」

「大丈夫です。それより温泉が楽しみすぎて……」

「そうか、じゃあゆっくりと入ろうか。そして、今日は夫夫になったことだし、夫夫らしいことをしたいがいいか?」

「夫夫らしいこと? なんですか?」

「一花と、深く愛し合いたいってことだよ」

「よくわからないです」

「いいよ、わからなくて。一花はただ私を好きだと思ってくれていたらいい」

「征哉さんを、好き? はい。それなら大丈夫です。僕……征哉さんのこと、大好きです」

「一花……っ!」

可愛い一花に耐えきれず、私は一花の小さな唇に自分のそれを重ねた。

「んん……っ」

一花の甘い吐息を聞きながら、脱衣所に足を踏み入れた。
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