歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

文字の大きさ
255 / 313

やっぱり楽しい!

しおりを挟む
「未知子さん、さっきの佐久川さんって……」

「あの上司さんでしょ。私、伊月くんを連れて着替えに向かっている時に、和泉さんと一緒に部屋に入っていくのをみたわ」

「ああ、あの人。最初はあの日南くんとカップルなのかと思ったんですけど、距離感が違うからないなと思ったんですよね。そうか、和泉さんのお相手だったんですね」

「ええ。そこまでは私も気づかなかったけど、さっきの和泉さんの様子を見ていたら間違いないわね」

「じゃあ、日南くんのお相手はあの人でしょう?」

「ええ、多分ね。一緒にいてくれたら、説得もしやすいのだけど……日南くん、どこかしら?」

有原くんたちの着替えを済ませて会場に着いた時から、彼のことはチェックしていた。
お着替えしたら可愛い姫になりそうだなって。

まさか絢斗くんも同じように思っていたとは思ってなかったけど浅香さんたちが了承してくれてよかったわ。

「私が提案する前から未知子さんもあの子、気になってたんですね」

「ええ、あの子は絶対に似合うと思ったわ。征哉と一花くんの結婚式の間もずっと泣きっぱなして本当に可愛らしかったのよ」

「千里さん、和泉さん、日南くんの三人は、お着替えは決まっているとして、着物とドレス……どちらを選ぶでしょうね?」

「うーん、そうね。あの子たち全員どちらも似合いそうだけど……千里さんと和泉さんはドレスを選ぶんじゃないかしら?」

「やっぱり! 私もそう思ってました」

「そうよねぇ」

千里さんたちここのスタッフさんが着ているのは、動きやすい作務衣。
それがここの料理や建物とよく似合っているからいいのだけど、普段から和テイストの服を着慣れているのなら、全く違うもの手を出してみたくなるというもの。

だから絶対にドレスを選ぶと思うのよね。

もし、お着物でもパステルカラーの着物なら十分いつもとは違うからそれはそれでお着替えも楽しくなりそうだけど。
どっちを選ぶか楽しみだわ。

二人で彼がどこにいるかを探していると、少し先の部屋から彼が出てくるのが見えて、慌てて駆け寄った。

「ああ、あなた! 探していたのよ。よかったわ」

私たちの声に、飛び上がりそうなほどびっくりして振り向くと、必死に冷静を保ちながら、

「何かございましたか?」

と尋ねてきた。

ふふっ、可愛いわ。

「せっかくだからあなたもお着替えしてみない?」

そんな唐突な話に、もちろん彼は驚いていたけれど、畳み掛けるように着替えた服はプレゼントしてもらえることと千里さんと和泉さんも着替えに行ったことを話した。

それでも遠慮しかけていたけれど、

「いいじゃないですか、日南さん。私もみてみたいです」

と一緒に部屋から出てきた男性が援護射撃をしてくれた。
彼の胸には麻生と刺繍が施されていて、服装を見るに板前さんのようだ。

その板前の麻生さんの言葉に戸惑いつつも、

「似合わないとは思いますが、じゃあ余興のつもりで……お願いします」

と了承してくれた。

なるほど、こっちはこっちで素敵な出会いがあったみたい。

本当に征哉と一花くんの結婚式にはあちらこちらで幸せが溢れているみたいね。

日南くんの腕を私と絢斗くんで取り、千里さんたちが衣装を選んでいる部屋に連れて行く。

ここには彼は入ったことがなかったようで、たくさんの衣装を見て驚いていたけれど、目は輝いているように見えたから私も絢斗くんも顔を見合わせて笑った。

「千里さん、和泉さん。お着替え仲間を連れてきたわ。着てみたい衣装は決まったかしら?」

どこにいるか見えないけれど、声をかけるとたくさん並べられたドレスの奥から二人が出てきて、日南くんを見てやっぱりと言いながら笑っていた。

聞けば、私と伊月くんがこの部屋に入るのを日南くんと千里さんが見ていて、女装が楽しそうと話をしていたみたい。

なんだ、日南くんも気になってくれていたのねと思うと嬉しくなった。

日南くんの名前が瀬里だったことを思い出した私は、名前で呼んでいいかと了承をとり、改めて瀬里さんにドレスと着物、どちらを着たいか尋ねた。

「あの、僕は……その、お着物がいいです……」

少し照れながらそう言ってくれて、私は思わず笑みが溢れた。

きっとあの麻生さんのことを考えたのだろう。
日本料理の板前さんで、この和テイストの店にはお着物の方がやっぱり似合うものね。

「じゃあ、お着物部屋に行きましょうか。千里さんと和泉さんはどちらにする?」

「あ、あの……私はドレスが……」

「あ、僕も……」

やっぱり想像した通り、二人はドレスみたい。

「じゃあ、私は瀬里さんのお着替えを手伝うから、絢斗くん二人を任せていいかしら?」

「はい。大丈夫です」

楽しそうな絢斗くんに二人を任せて、私は襖を挟んだ隣の部屋に瀬里さんを連れて行った。

「好きな色とかあるかしら?」

「あ、いえ。僕……全然わからなくて……ただ、赤とか強い色は似合わない気がします」

「ええ。確かに。顔が優しいから赤はちょっと強すぎるかもしれないわね。じゃあ、私も任せていただいていいかしら?」

「は、はい。お願いします」

ああ、やっぱり似合う服を選ぶのって楽しいわ。
征哉にできなかった分、今日は最高に楽しい。

浅香さんがここにある着物を全て写真に収めてファイルしてくれているから、いちいちたとう紙を開かずに済むのはありがたい。

「これはどうかしら?」

ファイルを見せて尋ねると、

「わぁ、綺麗ですね」

とまんざらでもない様子。

これなら良さそう。

私はそのファイルに書かれていた番号が振ってある棚の中からその着物を取り出した。

選んだのは淡い水色にぼかしの入った地色に桜や杜若などの可愛らしい柄が全身に入ったもの。
これに華やかな華文が入った金色の帯を合わせたら完璧ね。

「先にヘアメイクをしてもらいましょうね」

「えっ、ヘアメイクまで?」

「それはそうよ。せっかくお着物着るのにそのままじゃもったいないでしょう?」

「は、はい」

少し戸惑いつつも大人しく大きな鏡の前のスタイリングチェアに座ってくれた。

私はすぐに飯野さんを呼び、彼のヘアメイクをしてもらった。

「今日の殿方たちは皆さん、本当にお綺麗ですね」

うっとりしながらも完璧に仕上げてくれた飯野さんは、すぐに絢斗くんに呼ばれて忙しそうに隣の部屋に向かった。

「さぁ、じゃあ次はお着替えね。服を脱いで、この和装用の下着をつけてね」

「は、はい」

カーテンの向こうで戸惑っている声が聞こえるけれど、それも楽しい。

少し恥ずかしそうに出てきた瀬里さんに着付けを始める。
わざと鏡に背を向けさせたのは、着替えを終えてから驚かせるため。

どんなふうに驚いてくれるか楽しみだわ。


「さぁ、お着替え終わったわ。瀬里さん、とってもよく似合うわ」

そう言って、瀬里さんを鏡の方に向けると、

「えっ……? これ、本当に僕、ですか?」

と目を丸くして鏡を見つめていた。
しおりを挟む
感想 555

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

処理中です...